合宿を経て一回りたくましくなったエンジイレブンは、東京23FCとの天皇杯東京都予選準決勝に挑んだ。社会人相手でも怖気づくことなく、序盤から強気のプレーを見せる。互いに前半を無得点で折り返し、迎えた後半。MF平澤俊輔(スポ3=JFAアカデミー福島)がセットプレーから先制すると、FW山内寛史(商3=東京・国学院久我山)とFW宮本拓弥(スポ4=千葉・流通経大柏)が立て続けにシュートを沈めリードを広げる。守っては、DFが強固な最終ラインを形成しゴールを割らせず、結果、3-0で快勝。天皇杯本戦出場に王手を掛けた。
貴重な先制点を挙げた平澤
「自分たちはいつも通りサッカーをするだけ」(DF八角大智、社4=千葉・流通経大柏)。その言葉を体現するかのように立ち上がりから前に出る。前半4分、早速CKを獲得。MF田中太郎(商4=静岡・藤枝東)が出したボールに山内が頭で合わせるも枠を捉えることができない。しかし、流れに乗ったワセダは次々とゴールに迫る。一方の守備ではたびたび相手FWに裏を取られるも、DF金澤拓真主将(スポ4=横浜F・マリノスユース)をはじめとする守備陣がしっかりと連携を取り決定機をつくらせない。0-0で前半を終え、後半に望みを託した。
豪快な一本で試合を決定付けた宮本
前半は互いに決定力を欠いた両チーム。しかし、後半に試合が動いた。59分、MF堀田稜(商4=浦和レッズユース)が蹴ったFKに「良いボールが来たのであとは触るだけという感じでした」と平澤が反応し、待望の先制点を獲得する。続く65分、DF新井純平(スポ3=浦和レッズユース)のクロスを山内がダイレクトでゴールに流し込み追加点。さらには、79分、八角のアシスト受けた宮本がダメ押しの一本を決め、一挙に3点差をつけたワセダ。このまま押し切れるか――。しかし、FC23東京もそう簡単に引き下がらない。巧みなパスワークで守りを崩され、何本もシュートを浴びてしまう。しかしGK後藤雅明(スポ3=東京・国学院久我山)が好セーブを連発し得点を許さない。敵の猛攻をチーム一丸となって凌ぎ、無失点で試合終了のホイッスルを聞いたワセダ。3-0で相手を下し、決勝に駒を進めた。
「自分たちが積み上げたものが出た」(山内)。攻撃と守備の両面で成長を実感できたこの試合。社会人チームに完封勝利を果たしたことは選手たちにとって自信となるに違いない。次はいよいよ決勝の舞台。ここで勝てば東京都代表の座を得られる大一番である。いままで以上に厳しい戦いとなることが予想される次戦でどこまで自分たちらしさを出すことができるか。いまこそワセダの神髄を見せる時だ。
(記事 佐藤諒、写真 松本理沙)
スターティングメンバー
天皇杯東京都予選準決勝 | ||||
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早大 | 3 | 0-0 3-0 |
0 | 東京23FC |
【得点者】(早)59平澤、65山内、79宮本 |
早大メンバー | ||||
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ポジション | 背番号 | 名前 | 学部学年 | 前所属 |
GK | 1 | 後藤雅明 | スポ3 | 東京・国学院久我山 |
DF | 2 | 新井純平 | スポ3 | 浦和レッズユース |
DF | 3 | 奥山政幸 | スポ4 | 名古屋グランパスU-18 |
DF | ◎4 | 金澤拓真 | スポ4 | 横浜F・マリノスユース |
DF | 12 | 八角大智 | 社4 | 千葉・流通経大柏 |
MF | 6 | 平澤俊輔 | スポ3 | JFAアカデミー福島 |
MF | 14 | 小林大地 | スポ3 | 千葉・流通経大柏 | MF | 7 | 田中太郎 | 商4 | 静岡・藤枝東 |
MF | →83分 | 鈴木裕也 | スポ2 | 埼玉・武南 |
MF | 8 | 堀田稜 | 商4 | 浦和レッズユース |
MF | →84分 | 秋山陽介 | スポ2 | 千葉・流通経大柏 |
FW | 9 | 宮本拓弥 | スポ4 | 千葉・流通経大柏 |
FW | →81分 | 中山雄希 | スポ3 | 大宮アルディージャユース |
FW | 10 | 山内寛史 | 商3 | 東京・国学院久我山 |
◎はゲームキャプテン 監督は古賀聡(平4教卒=東京・早実) |
コメント
DF金澤拓真主将(スポ4=横浜F・マリノスユース)
――社会人相手に結果的には快勝となりましたが、いまのお気持ちはいかがですか
勝てただけだったかなと言うのが率直な感想です。自分たちが目指しているサッカーであったり、夏に意識して取り組んできたことであったりが出てきたかというと、やはり物足りないです。結果が付いてきたことは良かったですけど、次につながっただけかなと。それが一応最低限のことですけど、もっともっと高いところを求めなくてはいけないので、そういった意味では反省の多い試合でした。
――夏に意識して取り組んできたこととは
どれだけボール奪う回数を増やせるか。その位置を高くすることができるか。そしてそこからどれだけ早くゴールに迫れるか。その守備での向上がそのまま攻撃での向上につながるよう、そこのつながりを意識してやってきました。ただ、前半相手が長くボールを保持してくる中で、自分たちの思うような守備はできませんでしたし、相手のブロックに対して早さを伴った攻撃もできませんでした。そういった意味ではまだまだ守備の面でもそうですし、攻撃の質の部分でも課題は多いかなと。
――きょうの試合を無失点に抑えられたことについてはいかがですか
守備に比重を置いていたのもありますし、集中力を切らさずに後ろがやっていれば失点は無いと思っていました。相手の圧を感じる場面も少なかったですし、無失点で抑えたっていうのはある意味では抑えられなくてはいけなかったと思います。それができて良かったです。
――スカウティングの部分で注意をしていたことは
中間ポジション取ってそこから早さを出してくるというイメージがあったので、中間中間に立たれた時のファーストディフェンダーの決定っていうのは意識してやろうと話していました。けどスカウティングのように攻撃するというよりはカウンター気味だったので、スカウティング通りに攻めてこなかったのでそこでずれはあったのかなと思います。
――前半は我慢の時間も長かったと思いますが
2年前に横河武蔵野FCと戦った時も同じような展開でしたし、自分としてはそういう展開もあるなと思っていたのであわてるようなことはありませんでした。あのまま0-0で延長戦、PK戦もあると思っていたので、しっかり我慢してやっていこうとハーフタイムに話していました。
――先制点はセットプレーからの得点となりましたが振り返っていかがですか
あの1点が大きかったかなと思います。セットプレーが勝敗を分けるよ、といった意識でセットプレー攻防には臨んでいましたし、合宿で共有したところでもあったので、その成果は少しは出ているのかなと。
――そこからの2得点はカウンターということで、カウンターの精度の高さも見られましたが
後ろから早いスイッチが入ったりとか、ある程度高い位置でボールを奪って早くつないだりとか、まさにあれが自分たちが目指している攻撃だと思います。ただそれは相手の運動量が落ちたりとか、相手のプレーの質が落ちたりしてからだと思いますし、それをどれだけ前半の立ち上がり、相手がフレッシュな状態でできるかだと思うので、そういうプレーが出てくる時間帯は遅かったと思います。
――合宿を振り返っていかがですか
いままでよりも長い期間の合宿でしたけど、それだけみんなでいる時間も長く、いろいろな話ができましたし、その中で共通認識として捉えたこともあります。あくまで自分たちが成長するきっかけだと思います。そこでどれだけ東伏見に帰ってきて、東京に帰ってきて継続してできるかだと思うので、そのきっかけが実ったかっていうのは今後の結果で示したいと思います。
――では、次戦への意気込みをお願いします
まだ自分たちはなにも得たわけではなく、次勝って天皇杯本戦に出場することが自分たちの目標の一つを達成することにつながると思うので、あしたあさって良い準備をして勝てるよう頑張っていきたいなと思います。
DF八角大智(社4=千葉・流通経大柏)
――きょうの試合は社会人相手の戦いとなりましたがなにか違いはありましたか
特には感じなかったです。いつも通りのサッカーをできたと思います。
――スピードのある攻撃を仕掛けられていましたが振り返ってみていかがですか
相手がどういうサッカーをしてきても、自分たちはいつも通りサッカーをするだけだと思っています。前半は我慢の時間が続きましたが後半は、自分たちの強みを出せるようになって、それが点に結びついたと思います。ゲーム運びとしては守るところは守って攻めるところは攻められたと思います。
――合宿後から今大会を迎えましたが、どのようなトレーニングに励んできましたか
合宿では一人一人の守るエリアを広げようというところで、守備の面では一人一人がボールを奪える範囲を広げる取り組みをしたことで一人一人のエリアが大きくなってチームとしてボールを奪うという強みにつながったと位置付けています。きょうの試合でもボールを奪ってから少しかたちになったのがよかったかなと思います。
――きょうの試合ではやってきたことが生かせたということでしょうか
オフシーズン積み上げてきたものが少なからず出せたと思います。
――連日の試合だと思いますが体調面はいかがですか
合宿からハードな練習をこなしてきてユニオンカップに行って帰ってきて、とハードなスケジュールでしたが試合になったらやらなくてはならないのでそこは自分たちのサッカーを90分間する努力をするだけであったのでそれが結果に結びついたのでよかったです。
――八角選手自身もアシストに貢献していましたが
切り替えの部分で先手を決めればチャンスになるとわかっていたので、後半相手の運動量が落ちた中で強みである運動量を生かしてCKからカウンターで、相手が戻りきる前に攻められたことは得点につながったと思います。
――週末には決勝戦が控えていますが、そちらに向けての意気込みをお願いします
天皇杯本戦には17年出られていなくて、関東大学リーグ戦(リーグ戦)も19年制覇できていない中で天皇杯本戦に出場することはリーグ戦制覇の基準になると思うので、どっちが勝ち上がってきても自分たちのサッカーをして本戦に出場することが目標なのでしっかり2日間準備していきたいと思います。
FW宮本拓弥(スポ4=千葉・流通経大柏)
――きょうの相手は社会人相手でしたが、何か違いを感じましたか
学生にはない雰囲気や緊張感がありました。勝つことが難しいということを直に感じたのですが、社会人の方より運動量豊富ということを持ち味にしている中で、後半はそれがうまく生きたので自分たちにとっては予想通りの展開かな、というのはありました。
――相手は体が強かった印象ですが、プレーしていていかがでしたか
センターバックの選手は本当に体が強かったのですが、そういうところでこれまでの積み重ねというものを要所要所で見せてきたのかなと思います。
――空いているスペースへの絶妙なパスで、ゴール前で揺さぶりを掛けていたという印象ですが
相手の嫌がるスペースにボールを回し続けることはオフシーズンでやってきたことであったので、前半はなかなか出せなかったのですが、後半相手が疲れてスペースができたところで運動量を生かしながらつけたと思うのでよかったです。
――流れをつかんだきっかけは、相手の運動量が落ちたということでしょうか
それもありますし、僕たちが前線からの守備という点にもう一度重点を置くことができたことが大きかったと思います。なおかつ、ボランチの選手がバイタルケアをし続けて後ろの選手が隙あらばゴールに向かえたことがよかったと思います。
――自身のシュートシーンを振り返ってみていかがですか
前半決められるシーンがあったところで決め切れず、あそこで決め切れていればもっと優位な試合になったと思います。後半になって八角さん(DF八角大智、社4=千葉・流通経大柏)からのパスっていうのは練習通りの展開だったので、その左足でシュートが決められてよかったです。
――合宿ではどのような強化をしてきましたか
単純に走力と、強みに磨きをかけるという点で前線からのプレスを奪ってからのカウンターの推進力、あとは相手の嫌がるところをし続ける、という頭を使ったプレーに重点を置いてきました。
――決勝戦への意気込みをお願いします
簡単に勝てる相手ではないということはわかっていて、きょう以上に難しい相手になると思うのでもう一度調子を整えて勝って天皇杯本戦に進めるようにしたいです。
MF平澤俊輔(スポ3=JFAアカデミー福島)
――3―0で勝利となりましたが、いまのお気持ちは
合宿などで積み上げてきたものを出そうとしていた中で、前半は苦しい時間帯が多かったですが、後半に3点が取れたのは良かったなと思います。――先制点となったご自身のゴールを振り返っていかがですか
自分が入っているところに堀田君(MF堀田稜、商4=浦和レッズユース)から良いボールが来たのであとは触るだけという感じでした。
――セットプレーでしたが何か作戦などはありましたか
特にそういったものはありませんでした。中にいる人たちで入る位置は決めていたのですが、その中でたまたま自分のところに良いボールが来たのでそこで決められて良かったと思います。
――今試合無失点で抑えましたが、守備を振り返っていかがですか
合宿のところでそういった守備を高めるということをやっていました。センターバックの金澤さん(DF金澤拓真主将、スポ4=横浜Fマリノスユース)と奥山さん(DF奥山政幸副将、スポ4=名古屋グランパスU―18)が本当に良い守備をしてくれるので、自分はカバーに入るだけなので安心してできたかなと思います。
――いまは夏休みの期間ですが何かいつもと違う練習はしているのですか
合宿や東伏見でハードなトレーニングをしています。天皇杯や後期のリーグ戦(関東大学リーグ戦)開幕に向けてやってきていたので、それが1戦目でつながったというのが良かったですね。
――天皇杯出場まであと1勝ですが、次戦への意気込みをお願いします
総理大臣杯に出ていない分、天皇杯は公式戦の経験を積める貴重な場だと感じていますし、勝つに連れて良い相手と対戦できるので、次の決勝に勝って天皇杯の本戦につなげられるようにしたいです。
FW山内寛史(商3=東京・国学院久我山)
――きょうは快勝でした
3-0で勝てたっていうのが良かったと思うのですが、前半の入りは良くなかったですし、次の戦いがもっと激しくなる中で、あと2日で準備をして勝たないと自分たちの目標は果たせないので、次に向けてまたやっていきたいと思います。
――前半、決め切れなかったことの原因は何ですか
得点は最後は個人の力だと思いますし、決め切ればもっと試合展開は違ったかなと思います。
――得点したとき、ボールを蹴ったときの感触はいかがでしたか
狙ったところとは違いましたし、キーパーのミスもありましたけど、ボールをちゃんと見られて足にも当たったので、結果的に入って良かったと思います。
――左足でのゴールとなりました
自分はこだわりとかはなかったのですが、両足でシュートを撃てますし、今後両足でどんどん決められるようにやっていきたいと思います。
――相手のディフェンスはいかがでしたか
前に強かったりとかボールを動かすのがうまかったりはしましたけど、大学リーグのトップと比べてもそんなに差はなかったですし、もっと裏を取って先手を打てばもっと楽に試合を進められたのかなと思います。
――いつもはサイドをよく使っているのに対し、今回の試合では縦でつないでボールを運んでいた印象を受けましたが
いや、方針はなにも変えていません。普段は前から来たときにサイドで裏を取ったり、サイドで先手を取って早く上げるっていう場面はありましたけど、相手がそれほど来なかったので、中央でも蹴れましたし、相手のDFを見てやれていたのかなと思います。
――合宿はいかがでしたか
合宿は長かったんですけど、個人としてもチームとしても成長するためにみんなやっていましたし、クロスだったりセットプレーでの得点も増えていますし、そういうところの成果はあると思います。
――合宿で得たものはこの試合に生かせましたか
カウンターで2点、セットプレーで1点だったので、そこに関しては自分たちが積み上げたものが出たと思います。
――次戦に向けて
自分たちの天皇杯本戦出場という目標を掲げている中で次勝たないといままで勝ってきた意味がないですし、そこに向けてあと2日間で準備して全員で勝てるようにやっていきたいと思います。