昨年、初戦敗退と苦汁をなめた天皇杯東京都予選から1年。その悔しさを晴らすべく、対戦相手に迎えたのは東京都リーグ1部に在籍する大東文化大。本大会出場権を獲得しJリーグのチームとの対戦を目標とするワセダにとっては負けられない一戦となった。その気持ちを体現するように前半からゲームの主導権を握る。その中で幾度とチャンスを演出するも、ゴールネットを揺らすことはできない。後半からは相手もペースを合わせ始め、カウンター攻撃からゴールまで迫られる場面も。苦しい時間が続く中で迎えた87分、セットプレーからのこぼれ球をFW山内寛史(商3=東京・国学院久我山)が逃さずシュート。結果は1-0と、見事に初戦突破を果たした。
「所属しているリーグは下だが、しっかりと戦ってくる相手」(山内)と格下相手とはいえ、決して油断はできない今節。前半の流れはワセダに傾いた。序盤からFW陣を中心にボール保持に成功すると、13分にはMF田中太郎(商4=静岡・藤枝東)がゴール正面から豪快なシュート。続けて堀田がファールを誘発し、チャンスをつくり出す。しかし、どちらも決定的な一打には及ばずもどかしい時間が続く。そんな中でも「得意とするプレーはキック」と語り、公式戦初出場のDF鈴木準弥(スポ2=清水エスパルスユース)が積極的にロングボールで前線へとつなげチームに貢献。一方のDFでは大きなピンチを迎えることなく、スコアレスドローで前半を折り返す。
今季リーグ戦初出場ながら堂々としたプレーを見せた鈴木
後半もペースを崩すことは無かったが、徐々に相手が合わせ始める。49分には中盤でボールを失うと、ドリブルで左サイドを突破されてしまう。61分にはゴール右からのクロスに合わせヘディングを打たれるも、GK後藤雅明(スポ3=東京・国学院久我山)の好セーブによりピンチをしのいだ。そんな中で迎えた64分、MF堀田稜(商4=浦和レッズユース)からのパスを山内がPA内で捉え好機を演出。しかしDFに阻まれ、またもやゴールは遠のく展開に。ようやく巡ってきたチャンスは87分、相手のファールからFKを獲得。田中のキックにMF小林大地(スポ3=千葉・流通経大柏)が合わせたボールは弾かれてしまうがゴール前での混戦の末、山内がこぼれ球を押し込みゴール。残り時間が少ない中での得点は、チームに活気をもたらした。1-0で試合終了のホイッスルを迎え、2回戦へと駒を進めた。
貴重な決勝点を挙げた山内
「少しの隙が生まれた時に、強いチームだったらゴールまでつなげられていたと思う。」と鈴木が言うように、小さなミスから相手にチャンスを与える場面も見られた今節。次節に対戦するのは法大と、その小さな隙を逃さない相手とぶつかる。またここ数年敗戦を喫している強敵であることからも、厳しい戦いが強いられることに違いない。長年の雪辱を果たすことはできるか――。次節、ワセダの真価が問われる。
(記事 中澤奈々、写真 渡部歩美)
スターティングメンバ―
天皇杯東京都予選 | ||||
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早大 | 1 | 0-0 1-0 |
0 | 大東文化大 |
【得点者】87(早)山内 |
早大メンバー | ||||
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ポジション | 背番号 | 名前 | 学部学年 | 前所属 |
GK | 1 | 後藤雅明 | スポ3 | 東京・国学院久我山 |
DF | 2 | 新井純平 | スポ3 | 浦和レッズユース |
DF | 26 | 鈴木純弥 | スポ2 | 清水エスパルスユース |
DF | ◎4 | 金澤拓真 | スポ4 | 横浜F・マリノスユース |
DF | 12 | 八角大智 | 社4 | 千葉・流通経大柏 |
MF | 6 | 平澤俊輔 | スポ3 | JFAアカデミー福島 |
MF | →64分 | 奥山政幸 | スポ4 | 名古屋グランパスU-18 |
MF | 14 | 小林大地 | スポ3 | 千葉・流通経大柏 | MF | 7 | 田中太郎 | 商4 | 静岡・藤枝東 |
MF | 8 | 堀田稜 | 商4 | 浦和レッズユース |
FW | 9 | 宮本拓弥 | スポ4 | 千葉・流通経大柏 | FW | 10 | 山内寛史 | 商3 | 東京・国学院久我山 |
FW | →87分 | 中山雄希 | スポ3 | 大宮アルディージャユース |
◎はゲームキャプテン 監督は古賀聡(平4教卒=東京・早実) |
DF金澤拓真主将(スポ4=横浜F・マリノスユース)
――天皇杯東京都予選は、昨年初戦敗退と苦汁をなめた大会でしたが
今シーズン始まるにあたって、天皇杯に出場することを目標に掲げていたので、その目標に立ち向かうときが来たと思います。本戦に出場するための4戦は自分たちとしてのノルマとして捉えて向き合っていこう、といった意気込みで試合に入りました。
――実際に試合に入ってみて、相手の攻撃に対する手応えはいかがでしたか
相手は割り切って守ったり、リスクを冒さない攻撃をしてきたりするチームだったので注意していたのは、一つ一つのカウンターやセットプレーでした。そういった意味では、きょう準弥(DF鈴木準弥、スポ2=清水エスパルスユース)と初めて組んだ中でも、うまく連携を取って守れたのかなと思います。セットプレーに関しても、全員で声を掛け合って集中して守れたと思うので、そういった意味では自分たちの攻撃の時間の方が長かったので、あまり評価に値するものではないと思いますが、準弥のデビュー戦というものも含めて問題なかったかなと思います。
――早慶サッカー定期戦(早慶サッカー、◯1-0)からおよそ2週間が経って、チームとしては新しいビジョンを立てていますか
自分たちがどれだけ高い位置でゴールを奪えるか、ということと早くゴールを決められるか、ということをコンセプトに掲げている中で守備の面でどれだけ領域を広げられるかということに意識を置いて練習してきました。きょうは自分たちの攻撃が長かったので、そこにチャレンジする場面は少なかったと思うので、次戦に当たる法大にどれだけその展開を繰り広げられるか、関東大学リーグ戦(リーグ戦)の負けからどれだけ成長できたか、ということを発揮できる試合なのかな、と思います。
――きょうは悪天候により、スリッピーだったと思いますがやりにくさは感じましたか
局所局所のボールコントロールであったり、ミスは目立ったのかなと思います。そういったところからピンチを迎える場面が前半多かったと思うので、練習の中でも同じボールを使っていますがもっと環境や、用具の変化には対応していかないといけないと思います。そういったところでミスをしてしまっていてはこの先進めないと思うので、修正すべき一つの要因かなと思います。
――攻撃面でワセダが優位な中で、DFとして前線への意識というものはいかがでしたか
自分たちがフリーな分、自分たちからスイッチを入れなくてはいけないと思っていますし、そういった点では準弥はフィードなどを強みとしている中で攻撃へのスイッチになってくれたと思うので、もっともっとDFラインから配球できれば優位に攻撃できたと思うので、自分自身も含めて攻撃につながる守備を心がけるべきだと思います。
――次戦は、1日空けて法大との試合になりますが意気込みをお願いします
自分自身、ワセダに4年間いて公式戦で法大に勝っていないというのが現状なので越えなくてはいけないカベだと捉えています。自分たちの目標達成のためにも負けられないので、しっかり勝てるように準備していきたいと思います。
DF奥山政幸(スポ4=名古屋グランパスU-18)
――ユニバーシアード明けということもあり、ベンチからのスタートとなりました。外から見ていていかがでしたか
早慶サッカーもネットから生中継で見ていて気持ちが伝わってくる戦いぶりだったので、心配とかはありませんでした。ワセダの強みを体現して欲しいなと思いながら見ていたのですが、少し切り替えのところでまだまだだと思うこともありました。外から見ていて、割り切ってサッカーをしてくる相手の中でチャンスをあまりつくり出せないことや決め切ることができないというのは相変わらずの課題だったと思うので、自分が入ったらそういった切り替えやセカンドボールのところを意識してやろうと考えていました。
――自身のポジションでもあるCBにDF飯泉涼矢(スポ2=三菱養和SCユース)選手やDF鈴木準弥(スポ2=清水エスパルスユース)選手が入っている点で、意識して見たりしましたか
リーグ戦では自分がずっと試合に出ていたのでどうなるのかなというのは興味ありました。2人共信頼でき、練習中から信頼できるプレーを見せてくれましたし、リーダーシップの面も持っていると思うので心配というよりは期待の方が大きかったです。涼矢については早慶戦でMVPにもなったり、準弥もチームの中心かのようなボールさばきをして引っ張ってくれていたので頼もしい後輩がいるなと改めて感じさせられました。
――今節を終え、大東文化大の印象はいかがでしたか
徹底したサッカー、割り切ったサッカーをして勝ちへのこだわりが見えるチームでした。球際や空中戦というのは気持ちを入れてやってきていたのでワセダとしては非常にやりにくい相手でしたし、まとまりのある良いチームだという印象でした。
――いざ交代でボランチとして入ってみて、自身のプレーはいかがでしたか
全日本大学選抜ではずっとボランチをやっていて、そこで求められているものとここで求められているものは多少違いました。ワセダでのボランチ像というのは、攻守にわたっての貢献度や運動量豊富にボールに絡み続けるということだと思ったので、そういった部分はまだまだでした。セカンドボールという面では自分の強みでもあると思うので、そういったところで他の選手に無いものを見せ続けることをしていかなければならないと思います。
――87分には見事にワセダが得点を奪いました。後ろから見ていていかがでしたか
寛史(FW山内、商3=東京・国学院久我山)も試合開始の時から非常にアグレッシブにゴールに向かっていましたし、相手がセットプレーを得意としてくる中でその流れから得点できたというのは、早慶戦に引き続き大きなことだったと思います。
――相手のセットプレーによるピンチも迎えましたが、そこでのDFを振り返って
相手はロングボール1本や、セットプレーにかけてくる思いが強かったです。スカウティングの段階からGK陣が中心になってしっかりと分析してくれていたので、そこを練習からしっかり意識していたことできょうは何回もセットプレーがありましまが全員で集中して守ることができました。そういうプレーを強みとしてくる相手をゼロで抑えたというのは自身になったのかなと思います。
――次戦、法大戦への意気込みをお願いします
前期リーグ戦では破れていますし、自分が在籍する4年間1度も勝てていない相手なのでなにがなんでも勝ちたいです。天皇杯の本戦に出るということをチームの目標として掲げているので、それを達成するためにもまずは勝つことだけだと思います。どのようなかたちであれ、しっかりと勝ち切るということを意識していきたいと思います。
――
DF八角大智(社4=千葉・流通経大柏)
――早慶サッカーからおよそ3週間経ちましたが、チームとしてはどのような練習に取り組んできましたか
早慶戦も含めてリーグ戦も終わってからはオフシーズンという位置付けで調整するのではなくて、自分たちの中で前期シーズンに出た課題と強みを成長させる期間として、向き合って練習してきました。
――天皇杯東京都予選は昨年悔しい結果に終わりましたが、きょうの試合はどのような手応えを感じましたか
やはり天皇杯本戦出場というのを目標として掲げている中で、きょうの試合は勝たなくてはいけなかったので、所詮特有の固さはありましたが勝てることができたので良かったと思います。
――雨の中でのやりにくさは感じましたか
自分たちは練習の中でも、雨や風が強い中でも練習をしているので特に動じることはなくいつも通り全員で協力しながらサッカーができたのかなと思います。
――時折左サイドからカウンターを仕掛けられるシーンが見られましたが、どういったプレーを心がけましたか
高い位置でボールを受けられても、中さえ守っていれば失点することはないので、そこはどちらのサイドであってもそこさえ守れば大丈夫だと思うので、きょうもそういった意味ではそこまで持ち込まれた部分に関しては反省すべき点ですが、しっかりゼロで抑えられたことはチームとして評価できると思います。
――早慶サッカーという大きな試合を終えて、八角選手自身が新たに掲げているビジョンはありますか
やはり後期シーズンに勝つためには、サイドバックが得点に絡むシーンが必要だと思っています。例年、ワセダは後期に勝てていないので、そういった点では4年である自分が、得点に絡むプレーを数多くして、得点につなげることで勝率を上げられると思うのでそういった攻撃面でのアグレッシブさというのを課題にして取り組んでいます。
――最後になりますが、中1日空けて法大との試合を迎えますが、そちらに向けての意気込みをお願いします
法大は、自分が入学してからAチームで1度も勝てていない相手で、リーグ戦でも0-2でとても悔しい負け方をしたので、そういった雪辱を果たすために中1日しかない中でしっかり勝てるように準備をしていきたいと思います。
FW山内寛史(スポ3=東京・国学院久我山)
――きょうはどのような気持ちで試合に臨みましたか
相手は所属しているリーグでは下ですけど、スカウティングのときにもしっかり戦ってくる相手だなって話をしていて、厳しい戦いになるっていうのはみんなで共有してたので、1点を争う戦いになるっていうのを覚悟して入りました。
――調子はいかがでしたか
前半からそんなに身体がキレていたわけではないんですけど、いつもよりボールを持っている中でできたかっていうとまだまだで。チームも自分自身も引いてくる相手に対しての課題がはっきり見えた試合でした。
――課題をどのような練習で克服しますか
基礎的なパスコントロールとかはちゃんとやっていますし、そういうところでしか攻撃の質やバリエーションは上がらないと思うので、一つ一つのプレーに練習からこだわっていきたいです。
――決勝点を取ることができました
その前に1つ決定的なシーンで外しているので、点を取らないとまずいなっていう気持ちはありましたし、監督(古賀聡監督、平4教卒=東京・早実)も自分を信じて走れなくなってきても出し続けてくれていたので、取るしかないっていう気持ちでやっていて、最後相手に当たって入ったかたちでしたけど、良かったと思います。
――献身的な姿が目立ったのはやはりそういった気持ちの現れだったのでしょうか
後半このまま終わって延長戦になったら自分のせいだなっていうのを強く思ってたので、それがプレーに現れたのかなと思います。
――次戦へ向けての意気込みを教えてください
連戦っていう課題もありますし、法大ということで厳しい戦いになると思うんですけど、本選出場するまでは負けられないので準備して絶対勝てるようにしていきたいと思います。
DF鈴木準弥(スポ2=清水エスパルスユース)
――きょうの試合はどのような気持ちで臨みましたか
公式戦初出場でしたが、自信を持って自分のプレーを出せばいいと思ってやりました。
――緊張などは
緊張は特にないです。
――ロングボールをよく入れていましたがその意図は
自分の得意なプレーとしてキックがあるので、どんどんそこを生かしていくっていうのもあったし、チームとしてもそこを狙いとしてくれたので、ボールを持ったときに前線の選手も動いてくれたので狙って蹴れたかなと思います。
――相手のオフェンスはいかがでしたか
多少ヘディングは強いところはありましたが、もう一人のセンターバックとカバーをすればそこまで恐い相手ではなかったので、しっかりやるべきことをやれば守れる相手だったと思います。
――ヒヤッとする場面もありました
自分がヘディングで負けてしまったりだとか、少し隙が生まれたとき、あれが強い相手だったら多分ゴールまでつなげられたと思うので、そこの隙っていうのをなくしていかないとなと思います。
――なんとか勝ち切ることができました
チャンスはあったと思うので、そこを前半のうちから決めておけば自分たちの流れになっていたと思います。
――きょうの収穫は
この雰囲気を経験できたっていうことが自分にとって大きかったかなと思います。まだ相手はリーグ戦上位のチームではなかったので自信を持ってできたんですけど、次戦の法大とか、相手が強くなったときに自分がどこまでできるのか楽しみだし、やってみたいなと思います。