「FIRST」を目指すもう一つの戦い、ついに開幕

ア式蹴球男子

 関東大学リーグ戦(リーグ戦)の出場時間が270分に満たない選手たちのもう一つの戦い、インディペンデンスリーグ(Iリーグ)がついに開幕した。ワセダの初戦の相手は東洋大。前半開始早々に失点を許すもFW石川大貴(スポ2=名古屋グランパスU-18)のゴールですぐに追いつく。後半は両チームがチャンスをつくりだすもお互い追加点が奪えないまま試合は終了。開幕戦は痛み分けに終わった。

 リーグ戦での出場機会に恵まれない選手たちが集うこの大会。チームの勝利、そしてAチーム入りへの強い思いを胸にもう一つのエンジイレブンがリーグ初戦に臨んだ。試合はいきなり動く。前半5分、相手のFKを一度は跳ね返すもそのこぼれ球に誰も反応できない。一瞬の隙を逃さなかった相手のシュートはバーに当たって吸い込まれ、ワセダは早くもリードを許す苦しい幕開け。しかし、このまま相手のペースに持ち込まれるかと思われたが試合はすぐさま振り出しに戻る。失点から5分後、相手のパスを奪ったDF安田壱成(スポ2=ベガルタ仙台ユース)がそのまま駆け上がり中央へクロス。「思い切ってシュートを打った」と話すように、巧みなボールタッチで相手を置き去りにした石川がニアサイドへ豪快に突き刺した。少ないタッチ数でテンポよくボールを回すワセダに対し、東洋大はロングボールを前線に供給する対象的な試合運び。その後はお互い決定機に欠け、1-1で前半が終了する。

豪快な同点弾を決めた石川

 追加点が欲しい後半、試合は手に汗握る展開に。応援に駆け付けたAチームの選手の声援を背に、次々と相手ゴールに襲い掛かるエンジイレブン。プレーの一つ一つに勝利への熱い思いがこもる。FW岡田優希(スポ1=川崎フロンターレU-18)を投入するなど、交替策で前線を活性化。追加点は時間の問題かに思われた。しかしその一点が遠い。78分には中央でフリーとなった石川がクロスに頭で合わせるも枠を捉えられず。88分の相手の決定機はGK中村大志(法4=東京・早大学院)の好守でなんとか切り抜ける。最後まで前線にボールを託すがゴールは奪えず、試合はこのままタイムアップ。Iリーグ初戦は悔しい引き分け発進となった。

最後方からチームを鼓舞した中村

 「チームの目標である日本一達成のためにもIリーグでの日本一が絶対に必要」。ピッチの最後方から声を出し続けた中村は試合後このように語った。Iリーグはただの試合ではない。ここでの活躍がア式蹴球部全体のレベルアップには欠かせないのだ。リーグ戦制覇、そして悲願の日本一へ。その瞬間をピッチに立って迎えるために――。「WASEDA THE FIRST」を目指すもう一つの戦いはまさに始まったばかりだ。

(記事 桝田大暉、写真 大森葵)

スターティングメンバ―

Iリーグ第1節
早大U-22 1-1
0-0
東洋大U-22
【得点者】(早)10石川 (東洋)5宮吉
早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 中村大志 法4 東京・早大学院
DF 10 安田壱成 スポ2 ベガルタ仙台ユース
MF →56分 小長谷勇太 人科4 静岡・清水東
DF 日高裕介 スポ4 横河武蔵野FCユース
DF 渋谷勇太郎 社3 神奈川・桐蔭学園
DF 山本有一 人科4 神奈川・桐蔭学園
DF →85分 鈴木崇文 文構3 東京・早実
MF 榎本大輝 社1 東京・早実
MF 山本隼平 スポ1 新潟・北越
MF 小笠原学 社1 青森山田
MF 11 秋葉遼太 文1 東京・駒場
FW 14 石川大貴 スポ2 名古屋グランパスU-18
FW 直江健太郎 商1 東京・早実
FW →72分 岡田優希 スポ1 川崎フロンターレU-18
監督は竹谷昂祐(平26スポ卒=ガンバ大阪ユース)
コメント

GK中村大志(法4=東京・早大学院)

――率直にいまの感想をお願いします

昨日慶大戦に勝って(関東大学リーグ戦、◯1ー0)きょうのIリーグでも勝ってチーム全体に流れをもってこようと試合に臨んだので、勝ち切れなかったことが本当に悔しいです。

――Iリーグの開幕戦となったこの試合、どのような気持ちで試合を迎えましたか

やっぱりBチームが日本一じゃないとAチームも日本一にはなれないと思っていて、チームの目標である日本一達成のためにもIリーグでの日本一が絶対に必要だと思っています。すべてはチームの日本一のためだと思うので、そこを目標にIリーグでも優勝したいと思ってやっています。

――試合前、きょうのメンバーとはどのような話をしましたか

2月からいままでBチームとしてやっていた球際、切り替え、相手を見るという3つのことを絶対に出し切ろうという話をしました。

――バーに当たったボールが吸い込まれるという不運なかたちで失点した場面を振り返っていかがですか

試合の入りの部分でしっかりやろうと話をしていたんですけど、安田(DF安田壱成、スポ2=ベガルタ仙台ユース)がヘディングしたところに誰も反応していませんでした。ああいったシュートにはなりましたが、あそこの場面は距離があったので自分が触らないといけなかったとすごい感じています。

――前半は相手がロングボールを前線に当ててくる攻撃をしてきましたが守備陣の対応を振り返っていかがですか

東洋大ということで中盤で回してくる攻撃を予想していたんですけど、予想と違って最初は面食らった部分もありました。その後で修正してクリアした後のセカンドボール拾おうと思ってチームに促していたんですけど、ボランチの二人が拾い切れなくて前半の流れを引き寄せられなかったのかなと。もっとその二人にセカンドボールの意識を試合中に植えつけさせれば良かったなと思います。

――最後方からのコーチングが印象的でした。どのような意識をもっていましたか

チームの状況を見て、苦しい状況なら鼓舞する声だったり叱咤激励することを意識していて、良い状況なら褒めてのびのびとプレーできるような声を意識しています。

――きょうは1年生が多く先発に名を連ねました。チームをまとめる上でどのようなことを考えましたか

こんなに1年生が固くなっちゃうのかなというのが率直な感想です。もっとのびのびやれるようにするのは4年生の責任なので、試合中に1年生を和らげられるようにしないといけないなと感じました。

――Iリーグはアピールの場でもありますが、ア式蹴球部全体の底上げに向けてどのようにお考えですか

関東大学リーグ戦(リーグ戦)に出ることを皆目標にしていてそのためのステップアップの場でもあるので、この場で良いプレーができなければリーグ戦でも良いプレーができないと考えて、ここで良いプレーをしてAチームに上がることを意識してます。

――4年生として迎える今季、どのようなことを目標にしていきますか

リーグ戦優勝と日本一を目標に掲げている中で、チームは前半戦つまづいてしまい、まだまだ4年生のパワーが足りないからこういう結果になっていると思います。絶対に優勝するんだという強い意識をもって、残りの試合を4年生で勝たせることを意識してやっていきたいです。

FW石川大貴(スポ2=名古屋グランパスUー18)

――Iリーグ開幕戦となりましたがきょうの試合を振り返って

今シーズンに入ってから、いままでのワセダの強みというものにプラスして、新しい試みとして足元での早さというのをオフシーズンからやってきました。Iリーグ初戦ということもあって1年生も多かったので、公式戦慣れしていないメンバーが多くて最初は固さもあったのですが、前半の途中や後半に入ってからは、自分たちのやりたいサッカーがある程度かたちになって、何本か良いチャンスはあったと思います。ですが、最後に決め切る力やいま課題としてやってるところは、ゲームでもそのまま課題として出てくるので、そこはもう一回次の試合に向けて調整してやっていきたいです。

――ご自身のゴールシーンはいかがでしたか

あのシーンに関しては、ずっと自分のところにボールが入ってこなくて、ひとつ来たらとりあえずシュートに持っていこうと思っていました。思い切ってシュートを打った結果、ニア上も空いていたので狙い通りでした。

――ベンチからタッチ数を少なく攻撃しようという指示もありましたが、攻撃陣として意識したことは

足元で早さを出すという点でも、タッチ数が多くなってしまうとリズムが遅くなってしまうので、とにかくボールを動かして足元だったり裏だったりを意識しました。ゴールに直結するプレーというのが一番だと思いますが、それができない時に長く持つのではなくて、周りを使ってどんどん動かすことはトレーニングから意識していたので、それを試合でも意識してやっていました。

――守備の面はいかがでしたか

本職はボランチなのですが最近はFWをやっているので、ボランチの気持ちやセンターバックの気持ちもわかります。プレッシャーがかかった時にただかけるだけではなくて、どこ切れば良いのかというのは感覚的にわかっているので、意識してやっていました。

――Iリーグはトップチームへのアピールの場でもあると思いますが、ご自身のストロングポイントは

あまり身体能力は恵まれた方ではないと思うのですが、技術だったり戦術というのはワセダのAチームの選手にも負けないのかなとは思っていますし、それにプラスして関東リーグ(関東大学リーグ戦)で活躍するのもそうですが、その先のプロを考えた時にいまのままではダメだと思っています。自分のストロングポイントはやはり最終的なパスだと思うので、そこはもっとこれからも伸ばしていきたいです。

――次節への意気込みをお願いします

Aチームがこの前6試合ぶりに勝利して(〇1ー0)チームの流れが良い時に、僕たちが引き分けてしまって、チームの流れを断ち切ってしまった感がありますが、次の試合はトップチームも勝ってくれると思うので、そこで自分たちも勝って関東リーグ優勝に向けて弾みになるような試合になればなと思います。