【連載】『逆襲のホイッスル』 第3回 田中進之介×金澤拓真×新井純平

ア式蹴球男子

今季のア式蹴球部を語るうえで欠かせない3人の選手がいる。センターバックコンビのDF田中進之介(スポ4=湘南ベルマーレユース)、DF金澤拓真(スポ3=横浜F・マリノスユース)、そして今季から不動の右サイドバックに定着したDF新井純平(スポ2=浦和レッズユース)だ。『無失点』にこだわり続けた関東大学リーグ戦での戦いについて、そして来る全日本大学選手権(インカレ)へ向けて。ワセダのディフェンスラインからその胸中をうかがった。

※この取材は11月26日に行われたものです。

「どれだけ自分たちの強みを出せるか」(新井)

2年生ながら全試合に出場した新井

――きょうもつい先ほどまで練習されていましたが、最近の練習ではどのようなことに取り組んでいるのでしょうか

田中進 最近の練習は、関東大学リーグ戦(リーグ戦)に出ていたとか出ていないとか関係なく、もう一度フラットにしていま状態のいい選手がインカレ(全日本大学選手権)に出て活躍すべきだと監督(古賀聡監督、平4教卒=東京・早実)がおっしゃっていて、その中で一人一人がインカレへ向けてアピールをしているというところです。

――練習量的にもハードなのでしょうか

金澤 そうですね。この大会が無い期間というのはいつもオフシーズンと捉えてチームとして取り組んでいて、(チームが)始動した1月から開幕までの4月頭だったり、前期が終わった後の7月、8月であったり、そういったところは練習強度をしっかり上げて、自分たちの体力の向上だったり、精神面の強化だったりを含めて量を上げるので、それは毎年あるのでことしに限ったことではないんですが。毎年この時期は競争の面とフィジカル面の強化は重点的に行っているように思います。

――練習試合も組まれていますが、アウェーでの試合が多いという印象を受けました。その点については何か意図があるのでしょうか

金澤 どうなんですかね(笑)。Bチームの竹谷コーチ(竹谷昂祐、平26スポ卒=ガンバ大阪ユース)がアウェーの良さを話していたというのを噂で聞いたので。具体的に自分が聞いた訳ではないので、どういう面なのかは分からないですけど、そういったアウェーでやることに対する考えはあってやっていると思うんですが、具体的に自分たちの方には言われていないので、なかなかどういったものかは…。

――練習試合の手応えはどうでしょうか

新井 この前はボランティアに行っている人たちがいなかったり、ブラインドサッカーの方にア式のPRというかたちで(行って)いなかったりした中での明大との練習試合だったんですけど、キャプテンや副将が抜けた中で残った選手が試合をやったんですが、どうしても抜けたところを他の選手が補うだけのリーダーシップがまだまだ取れていないというのが現状としてありました。そこに関しては、どういった選手がいるいないに関わらず、いるメンバーの中で試合をしていかないといけないと思いますし、主軸の選手だけではなくそれ以外の選手もリーダーシップを発揮できる選手にならないとチームとしてもレベルアップしないと思いますし、インカレでの優勝もまだまだ遠いものがあるんじゃないかなと感じました。そこに関してはもっともっとこの期間を通じて成長していかないといけないところじゃないかなと思います。

――それではリーグ戦の後期について伺いたいと思います。最終的にリーグ4位で終えましたが、まず終わったいまどのようなことを思っているのでしょうか

田中進 まず後期4位に終わったひとつの要因として、最後の5戦を勝てなかったというのがありますね。あともう1つの要因として、後期全体を通じて前期よりもセットプレーからの失点が増えたということがあって、失点数はそこまで大きく伸びてないと思うんですが、やっぱりセットプレーで相手にやられてしまったというのが大きな要因だったかなと思います。インカレに向けて、一戦一戦負けたら終わりの状況の中で、セットプレーはひとつのキーポイントとなると思うので、もう一度そこを反省してチームとしてそこをやっていければと思っています。

金澤 いましんのくん(田中進之介)が言ったように、最終の5戦勝てなかったこともそうですし、失点のこともそうなんですが、もうひとつは得点が取れなかったというのが周知の通りで。それをチームとして課題に挙げていたんですが、やっぱり前線の選手だけじゃなくて守備の中でもいい攻撃につながるためのボールの奪い方だったり、後ろの選手の攻撃へのスイッチの質だったり、そういった面では後期はあまり向上できなかった部分かなと自分は思っています。いい攻撃につなげるための守備、高い位置で奪うための守備が、どうしてもゴールを守るための守備というかゴールに近いところで守る守備になってしまっていたので、自分たちが掲げているところで、より高い位置でボールを奪って速くゴールに迫るというのをやる上では、もっともっと守備の向上をするところからチームの課題はクリアできるのかなと感じています。

新井 まあ、ほとんど言われちゃったんですが、自分が思うに残り5戦勝てなかったのは本当に同じことで、でもその5戦を見てみると相手はレベルの高いチームがほとんどで、相手のプレッシャーが速くなった時に、いままでの自分たちが勝てていた試合は自分たちのやりたいことが90分間の中で多く出せていたと思うんですが、そういった残り5戦のような相手になった時に、自分たちがどうしても後ろ向きのプレーをしてしまうというか、前に行けなくなってしまうというか。そういったところでまだまだ技術の面でもメンタルの面でも、もっともっと自分たちが成長をしていかないと、これからインカレを戦うでも上に行けばいくほど強いチームと当たっていく中で、自分たちの強みを90分間出し切れないと勝てない相手が多くなってくると思います。トレーニングの中からも90分間をどれだけ自分たちの強みを出せるかが重要になってくるんじゃないかと、後期を終えて感じました。

――前期の失点数が9で後期は11ということですが、守備面に関してはいかがですか

田中進 セットプレーが多かったというところと、前期もそうなんですが専大と明大相手に、専大は2試合とも3失点していますし、明大にも2失点していて、やはり優勝争いしている強いチームの攻撃をストップできているかと言ったらそうではないのが現状だと思います。インカレには先制点だったり大量失点しないことがゲームをつくる上で非常に重要になってくると思うので、そういったレベルの高い攻撃に対してどれだけ自分たちが少ない失点でゲームを終えられるかが重要になってくるのかなと思います。

金澤 あまり前期の方に出られていなかったので実感の部分では分からないんですけど、やはり毎年思うのは、どちらかというと他のチームが後期になるとそれぞれのチームの強みが洗練されていく中で、それに対する自分たちの柔軟性というか、前期の基準でやっていて、それを上回るだけの相手の質に対して自分たちの成長が追いついていないのかなと思っていて。やっぱり自分たちは長年同じテーマで同じ強みを重ねてきているので、前期での完成度が成績につながっていて、ただそれが他のチームの完成度が上がってきた時に、そこでどうやって自分たちの上積みができるか、相手の変化に対してどれだけ対応できるだけの力、自分たちも変化をつけられるかというのは必要なところだと思うので、そういった意味では明確になっている部分がチームとしてあるので、残り2週間切っていますけど、しっかりその中で力に変えていかないとインカレでは勝てないなと思うので、そういうところに重きを置きたいなと思います。

新井 個人として前期と比べた時に、サイドから崩されてしまうシーンが多くなったんじゃないかなと思っていて、セットプレーに関しての失点もそうですけど、後期は特にサイドが崩された時の中のマークの見方や、サイドの選手に簡単にクロスを上げられてしまうシーンが前期よりどうしても多くなってしまったなというのは感じています。それは後期だからという問題ではないんですが、専大だったらディフェンスの前の選手との関わりでうまくサイドが対応できなくて、クロスを上げられて失点してしまって。そういう面でまだまだ個人として改善できる面が多かったと思うので、後期はそうしたサイドからの失点のシーンを強く感じているんじゃないかと思います。

――先ほども挙がった、後期最後に上位と当たった5連戦ですが、あの5試合で勝てなかったのが後期は大きく響いたと思います。いかがでしょうか

田中 1試合1試合、その試合に向けて少しずつやり方が変わっていて、総括するのは難しいんですけど…。

金澤 難しいっすよね。試合直後に振り返ってもいま振り返っても、きっと勝てない試合じゃなかったなとみんな思うと思うんですけど、本当にぎりぎりのところで取られて取れなくてという試合が続いて。それがもうあれだけ5試合続くと、多分そこにはきっと何かしらの差があるのかなと思いますけど、それがまだ自分自身分からなくて。多分すごく近いようで近くない何かが上位のチームとの差にはあるのかなとは思うんですけど、それが自分自身明確に分からなくて。チームとしても明確になっていなくて、ただ自分たちの中で基準を上げていこうとか、もう一回厳しい関係をつくっていこうとしているんですが、多分そこが自分たちの環境でつくり上げられなければ、負けた上位との差は埋められないのかなと思うので。そこに関しては自分も振り返ってもなかなかこれだな、というのは出てこないんですけど、そこをやっぱり見つけられるかどうかというのが自分たちの真価にかかってくるのかなとは思います。

――ひとつ例を挙げるなら、前期の専大戦(第11節、●0―3)と後期の専大戦(第22節、●2―3)ではスコアとしては近づいたと思うのですが

新井 前期の0―3の試合に比べては、自分も終わってから勝てたんじゃないかという気持ちは明らかに後期の方が大きいというのは確かで。でも拓真くん(金澤拓真)も言いましたけど、そういう試合が5試合続いていたというのには理由は確かにあると思いますし、そこに関してどの試合にも言えることは、自分が思うにはやっぱり勝負強さというか決め切る力というところが明らかに相手の方が上だったのかなと思っていて。決め切る力というのに加えて、守り切る力というのも相手の方が上回っていたからそういった結果になっちゃったのかなと思っています。分かりやすいのが、順大戦だったら、自分が1対1でキーパーに止められたシーンだとか、そういったところは他の上位のチームだったら絶対に決め切ってきたところだと感じましたし、そういったところでまだまだ決め切る勝負強さが自分自身には足りないんじゃないかなと思います。

――悔しさというと、リーグ最終節の早慶戦(第23節、●0―1)で敗戦したことも挙げなくてはいけないと思います。いま改めて早慶戦を振り返って

田中進 早慶戦を振り返って一番自分が思ったことは、慶大の方がやることを徹底していたなと思っています。慶大はまず5バックにして守備を固めて、失点をしないということで前半をやってきて。後半に入ってアンラッキーなかたちで自分たちが失点してしまって、相手のやりたかったゲームプランでそのまま試合を進められてしまったのかなって思っています。自分たちはその相手に対して、以前ならばゴールに速く迫るというかたちでロングボールで相手の陣形を崩すということをやっていたと思うんですけど、その時期に「いいボール状況をつくってそこからアクションを起こそう」ということも同時に取り組んでいて、その二つのことがチームの中で少し統一しきれなかった分、慶大に勝利をたぐり寄せられたのかなと思います。

金澤 サッカー的なことでいうとしんのくんに近いんですけど、自分自身の印象として早慶戦はどっちがうまいかということよりも、本当に気持ちの強い方が勝ったかなと思っていて。いままではワセダの方がそういった面で慶大より少し上回って得点につながったりとかして勝利につながっていたのかなと思っていたんですけど、振り返ってみるといままでの慶大以上に相手選手の必死さがありましたし、一度抜かれても必死にスライディングしてきたりとか、そういう面を含めて慶大の勝利する思いの強さがプレーに表れていたのかなと。逆に自分たちはそういったことを強みにしていましたけど、それを表現しきれなかったというか、自分たちが当たり前にできると思っていることをやりきれなかった部分があったと思います。そういったことがあの敗戦につながったかなと思います。やっぱり一番心に残る試合だったかなと思いますし、特に4年生が泣き崩れる姿が自分としては印象に残っています。本当にあの試合を悪いターニングポイントにしたくないなと思っていますし、チームにとしてすごく大きな意味のある試合でしたし、それを落としてしまったというのはチームにとって大きなマイナスになるかもしれないですけど、それをどうやってプラスに持っていってインカレにつなげられるかが自分たちに試されていると思うので、そういった意味であそこがあったから自分たちはインカレにつながったと言えるくらいに、残りの時間を過ごすべきかなと思います。

新井 あの試合は自分も同じように、相手の迫力というか何が何でも勝ちたいという気持ちをピッチの中で感じていて、1つ自分たちのチャンスを相手が防ぐと、全員が声を上げていたのも印象的でした。そういった1つのプレーに対するこだわりというのが慶大の方が上回っていたんじゃないかなと思います。試合をやっている中で危ないシーンをそんなに無かったというのを感じるんですが、あの失点のシーンを振り返ると、ちょっとした隙を完全に突かれてしまったんじゃないかなと思っていて。あの隙を決め切る慶大の選手も気持ちで決め切ってきたというのも感じましたし、そういったところで自分たちが慶大に対してもっとプライドを見せなければいけなかった試合だと思います。そこに対しては絶対に負けちゃいけないと思うので、終わってしまったので仕方ないのですが、さっき拓真くんも言っていたけれども、あの経験をいい方向に持っていけるように、インカレでは絶対に勝ちたいと思います。

――後期のリーグ戦を戦った中でいろいろな選手とマッチアップしたと思いますが、印象に残った選手は

田中進 自分は明大のFW和泉竜司が一番印象に残っていて、自分がマッチアップした選手の中で一番ギラギラしたというか、勝利に飢えていた選手でした。ひとつひとつのプレーに自分の気持ちを表わしていて、気持ちが強いのもそうですがゴールへ向かう迫力だったり技術だったり、このレベルを止めないとワセダは日本一になれないんだな、と感じさせられた選手で一番印象に残っています。

金澤 リーグだったら順大のFW佐野翼選手が結構印象に残っていて。0―0で終わった試合(第19節、△0―0)ですけど、あの選手の懐の深さというか、ボールを収めるときの力強さ、そこから反転してシュートに行く力強さなど、本当に力強さが印象に残っています。あれだけ自分が有利な状況でも無理に前向いて体を入れながらシュートにいくエネルギーはすごいものをかんじましたし、FWらしいFWだなと感じました。あれだけゴールに迎える選手に対してどれだけエネルギーを押さえられるかというのを課題として感じる部分があったので、自分自身強い刺激を受けた選手かなと思います。

新井 えー、いや。いない…。

金澤 すごいね。

田中進 大物だな。

金澤 やっぱ世界を経験してるからな。

新井 いや、違いますよ(笑)。FW前澤(甲気、専大)かな。

金澤 置きにいった(笑)。

新井 あの選手はさっきも言いましたけど、自分が一番やられたなと感じた選手ですし、ボール状況によってポジショニングを取るのがうまいと思っていて。臨機応変に、いま自分がどこにいればゴールに速く迫れるのかとかを一番考えて、一番広い視野でやっている選手なんじゃないかなと思ったので、印象に残ったというか、自分がやられたので悔しい選手です。

――それでは少しことしのチームについて伺っていきます。ことしのチームはどんなチームでしょうか

金澤 難しいな。

田中進 難しいね。

――主将(MF近藤洋史、スポ4=名古屋グランパスU-18)のカラーが出ているのでしょうか

金澤 カラーが出るのは4年生かなと強く感じていて。学生主体を掲げてやっていると思うんですが、上に立つのが4年生ですし、ワセダはその年の4年生の色がそのまま出るものなのかなとは感じています。そういった観点で見るなら真面目というか、良くも悪くも真面目なのかなと思います。きょねんだったら割とにぎやかというか、破天荒な人がいましたし。

一同 (笑)。

金澤 良く言えばエネルギーがありましたし、それがうまくまとまっている部分もありましたし。そういう意味ではことしは生真面目って感じかな。

新井 確かに。どちらかと言えば静かって感じじゃない?きょねんに比べたら。

金澤 (きょねんは)エネルギッシュでしたね、いろいろと(笑)。個性豊かで。

――ではそのカラーを出している4年生としてはどうでしょうか

田中進 えー、きょねんの4年生と比べたら静かですし…。うーん(笑)。

金澤 仲良いっすけどね。

新井 4年生超仲良くないっすか?

金澤 学年の中でまとまってるよね。

田中進 あ、そうです。一人一人が独立しているというよりかは、学年で1つって感じです。

――戦術的なことを言うと、ディフェンスラインはきょねんのメンバーが多く残っていますが、やはりやりやすいのでしょうか

金澤 そうですね。特にやりづらさとかは無いですね。チームとして掲げているコンセプトは一緒なので、そういう意味ではある程度はその選手と組んでも同じようにできるのかなと思いますし。あとはまぁ、個々人の個性があるので、しんのくんだったら対人に強いですし、政幸(MF奥山政幸、スポ3=名古屋グランパスU―18)だったらバランス見ながらカバーリングするのが強みですし。そういうのを含めて、それぞれがそれぞれの強みを出しやすいように気を使える人柄もありますし、そういうのもあって特別この人だからやりやすいというのは自分自身感じないですね。どうっすか?

田中進 ワセダの選手はみんな賢いし気を使えるので、それぞれがそれぞれの良さを出せるように何をしなきゃいないっていうのを考えていますし、逆にここを助けてあげたら良さが生きるということや、そういったことを考えているな、というのを非常に感じますね。

――新井選手に伺いたいのですが、今シーズンは全試合フルスタメンということで飛躍の一年だったのかなと思うのですが

新井 いや。全然そんなことないっす(笑)。確かにきょねんは1試合ベンチに入っただけでそれ以外は絡めなかったので、それと比べたら自分が(試合に出たいという)思いを日々のトレーニングで出せてきているんじゃないかなとは感じますけど。関東リーグを戦っている中で、自分自身できないなというのはそんなに感じていなくて、その中でも自分の強みというところで、シーズン始めの誓いでも「自分の持ち味のオーバーラップからクロスで点に結びつけてチームの勝利に貢献する」というところを誓ったんですが、そこに対してそれができたのがあまりなくて。その誓いは大事なところで達成できなければ意味が無いと思っていて、上のレベルのチームに対してできてこそ意味があると思っているので、それがことし1年を通してできていないというところには全然満足していないですし、まだまだ足りないところなんじゃないかなと思います。

――新井選手は攻撃面でオーバーラップを意識されていたということですが、お二人は何か意識していた部分はありますか

田中進 ひとつはセットプレーで、自分が上がったときに得点に絡めればと思っていました。前期の国士舘大戦(第9節、○3―1)しか得点できなかったんですけど、2年前だったら畑尾大翔さん(平25スポ卒=現J1・ヴァンフォーレ甲府)が得点を取っていたりしてチームが楽になっていたので、そういった意味でセットプレーで後期やられて、セットプレーで点が取れなかったのは自分の攻撃力の無さが1つの要因だったと思います。セットプレー以外のところでは先ほど拓真が言っていたのですけど、自分たちが奪って攻撃につなげる力というのがまだまだ足りなくて。そこを意識してはいたんですけど、まだまだ関東を制覇するレベルにはなかったと思います。

金澤 まぁ、しんのくんとすごく一緒で。セットプレー含めて前に行ったときは本気で得点狙っていますし、それ以外の部分で言ったらフィードの部分や持ち運ぶ部分で、しっかり攻撃のスイッチにならなければいけないなという意識はありました。特に政幸なんか、きょねん一緒にやっている時なんて特にそうですけど、そういう面ですごく強みを発揮していて、実際に得点に結びつくシーンも何個もありました。そういうのを見て本当に刺激を受けて、自分もああいうプレーをできなきゃいけないなと思ってやっていましたけど。特に最終戦の慶大戦で、あれだけ相手が引いて、スペースはありましたけどその中で効果的にボールを押し上げることができなくて。それが本当にあの無得点につながってしまったなと思っています。そうやって意識して取り組んでいましたけど、それがチームに勢いを与えるものにはなっていなかったと最終節を通じて思ったので、その意識だけじゃなくて、それを掘り下げて自分のスキル的な部分も含めて自分の中で改善しなくてはいけないです。それあってのワセダの攻撃になると思うので、それに関しては自分自身大きな課題だなと思っているので、その課題に対して向き合うことをこの2週間でやっていきたいなと思っています。

――金澤選手は前期なかなかスタメンに定着できないこともありましたが、いま振り返ってみてどうでしょうか

金澤 そうですね。本当にいままでであれだけもやもやした、うまくいかない時期というのも無くて。自分の中ではどうにかしなきゃだとか、本当に出たいという気持ちは持っていたんですけど、やっぱりそれがうまく練習だったりJrリーグだったりでなかなか表現できていないところがあったので。もし自分が監督だったら自分を使うかといったら、自信を持って言えないくらい自分のパフォーマンスが良くなくて。そういう意味での空回りというか、そういうのもありましたし、その中で同期だったり親だったりが話してくれたり気を使ってくれた中で、少しづつ吹っ切れた部分もありました。たまたまきっかけとしてアミノバイタル(アミノバイタルカップ2014)で出場停止が重なって出れた部分もありますけど、そういうのはもがいたからこそのものがあったのかなと思いますし、本当にあの時の自分の気持ちやあの時考えたことっていうのは、今後忘れちゃいけないなというのは思うので。あの経験をどうするかは自分次第だと思いますし、そこをしっかり忘れずにやっていきたいなと思います。

――少し話はそれますが、昨年在籍していた三竿雄斗選手(平26スポ卒=現J2・湘南ベルマーレ)がJ2アシスト王に輝きましたが、そういった活躍はやはり刺激になりますか

田中進・金澤・新井 はい(笑)。

――BMWスタジアムでの桐蔭横浜大戦(第17節、○3―1)を三竿選手が観戦に来ていましたが、何か話されたりしましたか

金澤 自分はちょうどケガで欠場してスタンドにいたので、ハーフタイムとかでちょこっと話はしましたけど、フランクな話しかしてないので。特別ベルマーレでどうとかいう話はしていないですけど。ああやって来てくれるのはうれしいよね。

新井 はい(笑)。

――同じく池西希さん(平26スポ卒=浦和レッズユース)もよく試合に訪れて、試合後に一人一人へ声を掛けているなという印象ですが

金澤 純平(新井純平)泣かされたっしょ。

新井 まぁ、そうっすね(笑)。でも本当にそうやって言ってくれる人はなかなかいないですし、ノゾくん(池西希)は自分の小さい頃からの先輩でもありますし、そういったところで信頼関係は築けていると思います。泣かされたって言いましたけど(笑)、本当にノゾくんの言葉っていうのは自分を成長させてくれるような言葉だと強く感じているので。ノゾくんの言っていることは、それは違うっていうことが本当に無くて、あの時は試合終わった直後で悔しさもあったので、悔しさが強まっちゃったんですけど。でも後で考えてみると、言っていることが自分の成長につながるなと感じるので、本当に大きな存在だと思います。

金澤 そうですね。ノゾくんは在籍していたときから個人に対していろいろアドバイスをくれるような人で。ア式に対する思いというのも人一倍強いと思うので。その思いの強さが引退したいまでも試合に来てくれますし、普段の練習や練習試合のときでもたまに東伏見のグランドに来てくださいますし、自分たちを本気で応援してくれている人の1人だなと感じるので。具体的に純平が言っていたようなアドバイスも自分もしてもらいますし、自分の成長につなげるというのもそうですし、そういう人のためにも頑張らなければいけないなというのは思うので。こないだも畑尾君が東伏見に来て一緒にボールを蹴ってくれたのですが、そういう思いを伝えてくれましたし。そういう思いの強さというか、離れても応援してくれる人がいるというのはア式の良さだと思いますので。そういった人たちのことを常々考えてやっていかないといけないかなと思います。

田中 これだけア式のことを思ってくれる人がたくさんいるというのはありがたい存在だなと思っています。池西さんは一人一人に対して話してくださいますし、意見というのがその人の為を思って言ってくれているのが伝わってきて。厳しい言葉も掛けてくれるのですが、そういった言葉は自分たちを成長させてくれるための言葉だなと思えるような人物なので。試合を観に来て下さって感謝しています。

「相手がゴール決めて喜んでいるのが腹立つ」(田中進)

独特の世界観を持つ田中進

――お互いの長所と短所を聞いてみたいと思います。まずは田中選手についてお二人の印象はどうでしょう

金澤 サッカーでのすごく熱い面というのは皆さん見ていると思うのですが、プライベートだと結構フワッとしていて。キビキビというよりはまったりまったりしているっていうタイプで。そういう面ではオンとオフがはっきりしていて、関わりやすいと思うのですが、もうちょっといじった方がいいとかも言われていたりして…。なかなかつかみきれないですね。もうちょっといじった方がいいぞとノゾくんとかにもずっと言われていたんですけど(笑)。

新井 いや…(笑)。あんまり話さないですよね。

一同 (笑)。

新井 でもなんか、挨拶の返事が一番気持ちいい人かなって思います。寮とかで。

一同 (笑)。

――今回の特集にあたって田中選手に誰と組みたいですかと聞いたときに、「純平がいい」というのをおっしゃっていたそうなのですが

田中進 何で純平かっていうのはポジションが隣りだったからで。深い意味はないです。

一同 (笑)。

――金澤選手の印象は

田中進 まず、熱い男で真面目な男っていうのは思っていて。それを誰にでもできるのが彼の長所だと思います。学年でミーティングしているときも自分の意見をはっきり言いますし、意見は的確で非常に賢い人だなと思います。

金澤 ありがとうございます。

新井 同じく。

一同 (笑)。

新井 いや、ホントに拓真くんの発言って頭がいいのもあると思うのですけれどすべて合っているというか。ノゾくんと同じ感じになっちゃうんですけど、「ああ、そうだな」っていつも思っていて。それを誰にでもそういうかたちで自分の意見を言えるというのは本当にすごいことだと思っています。そこに対しては本当に尊敬してますし、それ以外でもサッカーに対しては熱いものを持っているなと思っていて。ケガをしたときも夜中も寝ずにアイシングをして治すぐらい、サッカーや一回のトレーニングに対して熱いものを持っているというのは感じていて。そこに関しては尊敬できる人だなと思います。

――では逆に金澤選手の欠点やここ、どうなの?と思うところは

田中進 まぁ彼女が大好きすぎるところはちょっと…。

金澤 いいじゃん別に(笑)。しんのくんもちょいちょいあるじゃん。ホッと一息とか言ってスタバで一緒にいるとこツイートしてるよね。あ、純平も一回しててしなくなったよね、そういうの。

新井 いや俺は、いじられるのが嫌で。1回、ツイートみたいなのをしたんですよ。そしたらバカお気に入り来て。嫌だなぁと思って。

田中進 周りに流されちゃだめだよ。

新井 あと、自分のツイッターやたらフォロワー多いじゃないですか。

金澤 ジャパンね。ジャパン。

新井 ジャパンとか関係ないけど。なのであんまり変なことは言わないようにしてます。

――金澤選手はコーチングの声がいつもグランドに響いていますね

田中進 うらやましいです。声が通るので、聞こえやすいんだろうなって。

金澤 マツくん(GK松澤香輝副将、スポ4=千葉・流通経大柏)にも言われます。「ホントいいよなぁ」。って言われました。ビデオで振り返る時とかまぁ恥ずかしいけどね。めっちゃ声するもん。

――新井選手の印象は

金澤 良くも悪くもバカだよね。真っ直ぐで熱いっていう面の良さと、人の話を全部いいと思っちゃうところね。ちょっとね、弱いとこあるんだよね。でも変わったよね少しね、1年生で来たときに「ヤバい」って思ったもん。

一同 (笑)。

金澤 1個下の代がというか、寮生とか特にヤバいと思ったもん。冷静に周りを見れるようなタイプがいなかったもんね。

新井 はっちゃけちゃうんですよね。(他には)FW小林大地(スポ2=千葉・流通経大柏)とか、MF佐藤飛天(スポ2=清水エスパルスユース)とか。平澤(DF平澤俊輔、スポ2=JFAアカデミー福島)もバカですもんね。

金澤 初期メンバーは全員ちょっと足りなかったよね(笑)。平澤もちょっとね、真面目そうじゃないですか。でもちょっとダメなんですよね。バカはしないけど。

新井 ちょっとね、抜けているんだよね。

金澤 いつから変わったんだろう。

新井 ちょっとね。自覚が出てきたんだと思います(笑)。

田中進 真っ直ぐというのもありますし負けず嫌いなところもあって、自分に負けるのもそうですし、試合に負けるのも嫌がっているというか。勝ちたいっていう思いが伝わってくる選手だなと思います。アミノバイタルの国士舘大戦(3回戦、●0―2)のハーフタイムで純平が「こんなんでいいのかよ!」って言っているときがあって、2年生でそういうことを言えるのは松澤(松澤香輝)と純平しか見たことないので。すげー奴だなと思います。

新井 あの時はホントに悔しかったのでそれを表現しただけなのですけれど。それ以外でも自分で溜めちゃうところというのがまだあるのではないかなと思うので。それをもっと周りに知らせるというか。「こんなんでいいのかよ」って言うことが周りにとっていいことなのか悪いことなのかはわからないですけれど、それでチームが引き締まったりするのであれば学年関係なくやることはプラスだと思っているので。そこに関してはもっともっと自分を表現できたらなと思います。

――3人だけが知っているここだけの秘密があったら教えて下さい

金澤 しんのくんの洋楽への熱。

一同 (笑)。

新井 DJしんの。

金澤  洋楽聞きたかったらしんのくんに聞けば教えてくれるみたいな。そのぐらい洋楽に対する熱いものがあるみたいで。

新井 俺、聞いた。

――もともと洋楽が好きだったのですか

田中進 そうですね。なのでJ―POPが全然わからなくて。ダメです。なので自分の世界観で生きています。

金澤そんな中ね、ミヤ(FW宮本拓弥、スポ3=千葉・流通経大柏)はクラシック聞いていたよね。ロッカールームで聞いていて、「ミヤ何聴いてんの?」って聞いたら「モーツァルト」って。嘘でしょみたいな。クラシック聴いたら頭がよくなるみたいな噂あるじゃないですか、その噂の一つでクラシック聴いたらサッカーうまくなるみたいなのを信じたらしくて。聞いていたんですけど。

新井どうだったんだろうね。

――田中進選手の世界観にハマった後輩とかはいましたか

田中進たぶん一番影響を受けたのは岸波(GK岸波卓志、社2=東京・早実)です。

新井何かとタブレットで曲とか流しているよね。あいつ有名なアーティストの新曲が出たら僕に毎回ラインしてくるんですよ。

一同(笑)。

金澤アミノバイタルで岸波と同部屋だったんですけど、空き時間できたらすぐタブレットで洋楽の曲流して、「これがイイんすよ」って(笑)。

――試合前は音楽を聴いている選手が多いですか

金澤 多いよね。自分はあんまり聴かないけど。しんのくんはやっぱり?

田中進えー俺あんまり試合前は聴かない。

一同(笑)。

田中進 逆に試合前は普通に過ごしたいよね。

金澤 普通に過ごしたいですよね。人としゃべったりしてる方が。あんまり自分の世界に入っちゃうと。

――そんな中で宮本(拓弥)選手は

金澤 モーツァルトを。

一同(笑)。

――DF特有の「DFあるある」があったら教えて下さい

金澤 あきくん(FW秋岡活哉、政経4=FC東京U-18)か誰かが言っていたのですけど、守備キャラの人は彼女関連でも一途だって言ってました。

田中進 それはあるあるかもね。

金澤 松澤くんとか奥山(政幸)とかなんですけど。彼女できたらあんまり活発じゃない、というか。

田中進 ギラギラしてないです。

新井  いやっ、でも。何その目は(笑)。

田中進

 コイツ攻撃的だから。右サイドバックはちょっとわかんない。守備に生きがいというよりは攻撃もしたがるから。

――新井選手は積極的にオーバーラップを仕掛けていきたいタイプですか

金澤 彼女を追い越して。

新井 それはやばいでしょ(笑)。それはダメなやつだよ。

金澤 いや、別にないならないでいいんだよ。

新井 ないね。ない。

――逆に攻撃陣はどうですか

金澤 いや、もうギラギラしていますよ。名前は言えないですけど(笑)。

――他にはありますか

田中進 練習あるあるなんですけど、DFの方がちょっと強度が高いんじゃないかっていうのがあって。DFの選手たちは「やっぱDFの方がキツイなー」みたいな。

新井・金澤 わかる(笑)。

――3人とも学年が違いますがプライベートで一緒になる機会とかはあるのですか

田中進 4年生が学年をあまり超えないっていうのがあって。4年生だけで完結しちゃうことが結構多いので。自分もそうなので、学年を超えてはあまり遊ばないですね。

新井 あんまないね、確かに。俺らもないもんね。

金澤 寮でたまに会えば飯食うとかね。そのぐらいだよね。

――FW会を開いているという話を聞いたのですがDF会はないのですか

金澤 DF会はちょっとね。

田中進 集まりが悪いよねたぶん。

新井 ギラギラしてないから。

金澤 守備的な話になっちゃうよね。

――FW会は定期的にやっているのですね

田中進 最近はやってないよね。きょねんいっぱいやっていましたね。

金澤 あとは前にGK会もやっていましたね。あそこは逆に人が少なすぎてつながりが強いみたいな。

――DFとしてDFのいいところ、やりがいはありますか

金澤 どうだろうね。守備に生きがいは感じてるけどな。けど、純平どうなの?

新井 俺たぶん一番最高のポジションだと思いますよ。

金澤 どっちかというとアシストに魅力感じてるじゃん?

新井 ああ、まぁ確かに。

金澤 俺は同じ勝ったなら点決めるよりも無失点で終わる方がうれしいもん。自分が得点して勝ったけど失点したのと、自分は得点してないけど無失点で勝ったなら無失点で勝った方がうれしい。

新井 無失点がもちろん一番ですけど、俺はそれだったら失点しいけどアシストして勝った方がうれしいかな。失点の仕方にもよりますけど。

――田中進選手もやはり無失点の方が

田中進 そうですね。相手がゴール決めて喜んでいるのが腹立つ。

一同 (笑)。

田中進 あとはゴール決めるよりもピンチを抑えて失点をなくしたという方が喜ぶのかなと思いますね。

金澤性格なんですかね。

田中進 たぶん性格だよね。

――新井選手はすこし攻撃寄りの性格というか

新井 いやでも俺、無失点が一番うれしいな実際。

一同 (笑)。

田中進 ブレるなー。

――リーグ戦でのアシスト数も6アシストということですがそこは満足いっている部分ですか

新井 いや、でも1位じゃないんで。結果。やっぱ結果です。1位以外はいらないっす

金澤・田中進 パチパチパチパチ(拍手の音)

金澤 素晴らしい。

新井 『WASEDA THE 1st』です。

金澤 2位と最下位は一緒ってことね。

新井一緒です。

――FW陣へここを変えてほしいみたいな要求はありますか

金澤 どうだろう、めっちゃ守備頑張ってくれるからね。その負担をどうやって減らすかしか考えてないですね。

田中進 そうだよね。

新井 助かってます。

金澤 むしろ変えてあげたいという方が大きいですね。毎年守備できるのが前提のFWの評価なので。攻撃できても守備できなかったら絶対このチームでは使ってもらえないので。ヒロ(FW山内寛史、商2=東京・国学院久我山)とかも去年とかはそんな守備とかしてなったもんね。

新井 相当変わりましたよ。

金澤 ことしの夏開けぐらいから変わったよね。雄希(FW中山雄希、スポ2=大宮アルディージャユース)もそうだけど。

金澤 向き合わざるを得ないけど、しっかり向き合ったら。あんな感じになっちゃった。もうちょい楽にさせてあげたいかな。

――DFとして尊敬しているDFはいますか

金澤 俺はプジョル(カルレス・プジョル、元スペイン代表)だね。

新井 俺ダニエウ・アウべス(ブラジル代表)。

田中進 マテラッツィ(マルコ・マテラッツィ、元イタリア代表)です。

一同 (笑)。

新井 そのままだね(笑)。

金澤 それぞれ(笑)。

――その理由を一言ずつ教えて下さい

金澤 プジョルはあんまり上背もないですけれど、あれだけ世界の第一線で活躍していて。あの熱さというか体を張ったプレーとかがすごく自分が見ていて単純に好きだったので。自分もそういう選手にってのはありますけれど、そういった意味ではああいう感じになりたいなというのがあったので。まぁちょっと、引退してしまって寂しいですけど。

新井 自分はダニエウ・アウベスで。

金澤 リプライ送ったもんね。ツイッターで。あの話すればいいじゃん。リプの話(笑)。

新井 自分が背番号22番をもらって。ダニエウ・アウベスも背番号22番なので、ちょっと英語で自分ができる範囲で「22番来たぜ!」みたいな感じのをやったら、無視されました。

一同 (笑)。

――その後もダニエウ・アウベスにリプライを送ったりしたのですか

金澤 あ、牛丼。

新井 牛丼1回送った。牛丼っていう言葉が流行っていて。何かよくわかんないんですけれど。それを適当にダニエウ・アウベスに送ったっていう。「牛丼!」で送ったんですけど。おかしい(笑)。

金澤 中身ない(笑)。

新井 それぐらい好きっていうことで。理由としてはプレー面で本当に尊敬する面が多くて、バルセロナのサッカー自体もそうだと思うのですけれど、右サイドバックとして相手の最終ラインぐらいの高い位置でボールを受けているというのが自分は魅力的に感じていて。クロスであったりの正確さもそうですし、彼はミドルシュートとかも持っていて点を取ったりなどもしていて。サイドバックとして、ディフェンスとして最低限やらないといけないところも、カバーリングのところとかも高い質を持っているからこそ失ったら一早く戻るとかができている中で攻撃的な部分も出せるというのが魅力的で。自分もサイドバックをやっている中でディフェンスをしながら攻撃もできるというのは本当に大きいと思っていて、それが一番できている選手がダニエウ・アウベスだと思うので。そこは尊敬しています。

田中進 何でマテラッツィかというと、自分に一番似ている選手かなと思っていて。ディフェンダーはいろいろあるんですけれどその中で人に強いというところでいまのセンターバックだと身体能力が必要で、特にスピードが必要だと思っていて。そういった点では自分はあんまりないのですが、強さやハートでカバーしているので。自分と似ているのが好きっていうのがあって。あと悪いんで。そこも魅力です。

新井 悪童。

金澤 そこはでも…似てない。しんのくんが頭突きするとこ見たくない?

一同 (笑)。

金澤 相手のFWに「ガンッ」てさ。たぶん俺それ見たら笑っちゃうんだけど。

――ちょっと悪童感も出していきたかったりするのですか

田中進 いや…駄目です。憧れなんですよ、悪さ出したいんですけれど。ワルに憧れはあるんですけれど。自分のそういうところからできないっていう。

――セレクションに来たときがすごかったという話を聞いたのですが

田中進 そうなんですよ。練習を見学しに来たんですよ。一般入試だったので、ほかの新入生はもう練習していて。自分はこの時期までランテスト受けられませんって主務の方に言われたので。見学に行って。古賀監督になる前まではワセダもそんなに厳しくなかったので。茶髪とかいるので。自分もその時は赤茶の坊主だったんですね。その格好で行ったら、「おかしい奴がいる」ってなったという話です。

「どれだけアグレッシブに戦えるか」(金澤)

金澤にとってインカレの舞台は2年目となる

――インカレまで残り期間も短くなってきましたが率直にいま何を思っていますか

田中進 いまのままでは絶対に勝てないなという危機感を一番感じていて。先週の取り組みを踏まえて、慶大戦のときと比べてもあまり進歩が見られないですし。ほかのチームが完成度を上げている中でもっともっと自分たちがやらなければいけないと思っています。ことしタイトルを何も獲れていないので、4年生として後輩たちにタイトルを獲る喜びで、タイトルを獲るまでの過程というのを伝えられたらと思って取り組んでいます。

金澤 本当にことしはまだ何も成し得てないというのと、部としては90周年ですし。その年にまだ不甲斐ない結果しか残せていないので。インカレを獲って、記念すべき年にしっかりとした結果を残したいなという気持ちではいます。ですが、それに対する危機感というのは持っていて。チームとしても、自分個人としても、競争が激しい中できょうとかも自分は上から2番目のチームだったので。そういった意味では危機感もあるので。競争を促されている環境の中で、厳しい競争を勝ち抜いてどうにかインカレのピッチに立って優勝に貢献したいなと思います。

新井 この期間でインカレに対して「優勝したい」とか「何が何でも勝ちたい」とかそういう思いが強まってしまうというのがあり得ることだと思うのですが、それよりも一日一日のトレーニングでどれだけ自分たちを厳しい環境に身を置けるかというか。個人でもですし、チーム全体でも厳しい環境をつくるというのがどれだけできるかというのが重要だと思っていて。それは1回のプレーに対する追及もそうですけれど、さっき競争という話もありましたけれどきょうは監督も政幸くんと洋史くん(近藤洋史)しか際立っている人がいなかったと言っていたので。自分もそれを聞いて悔しいという思いがありつつ、それを言われなかったというのはどこかに問題があるというのをもっと考えていかないといけないですし。1回のトレーニングで際立つ選手が増えていかない限り勝つことは厳しいと思うので。優勝をしたいという思いは全員そうだと思うのですが、それを考えるよりもこの2週間をオフシーズンと捉えている中でどれだけチームとしてもプレッシャーを個人個人にかけられるかということと厳しい環境をつくれるかというのが大事なことだと思うので。そういったところを意識してこれからやっていきたいと思います。

――トーナメントでは立ち上がりの20分、25分というのが重要になってくると思うのですが

田中進 ことしは先制されてしまうと、なかなか厳しい試合になっていて。逆に先制した試合では自分たちの理想とするような試合ができているので。インカレでは先制点を取らせないで逆にワセダが先制点を取るようなことが重要なのかなと思っています。優勝した時も白井選手(白井豪、平25スポ卒=現オーストラリア2部・シドニーオリンピック)が全試合で先制点を取っていたので。だからこそ立ち上がりの10分というのは重要だと思います。

金澤 どれだけアグレッシブに戦えるかというのが重要だと自分は思っていて。特にアミノバイタルカップもトーナメントだったのですけれど、国士舘大戦なんか立ち上がりの20分ぐらいがどちらかというと受け身の試合で。そこで自分たちの弱さが露呈した試合になって、ああいった結果になったのもそうですし。負ければ終わりとか、失点できないといった守りの心境をどれだけ前向きに自分たちのサッカーで能動的に試合を運べるか。それを前半の20分間でできるかというのが大事なのかなと。それがきっとしんのくんの言っていた先制点、自分たちが失点しないということにつながるのかなと思うので。どれだけ早い段階で自分たちの良さを表現できるかというところをチームとして共有してやるべきだと思います。

新井 裏を返せば、自分たちは最後の粘り強さ、1―0で勝っていれば最後の残りの10分を守る力というのはあると思っているので。前半の20分、25分とかの入りを徹底して。そこで自分たちのやるべきことをしっかりやって、圧倒することができれば絶対に負けることはないと思っているので。しんのくんからもありましたけれど前半の立ち上がりの重要性というのは本当に大きいものがあるのではないかなと思っています。

――優勝のためにDFに求められるものは何だと思われますか

全員 無失点。

新井 これやられるって時に守る。

金澤 ここぞでか。

新井 ここぞ(の場面)で守る。

――対戦したことのないチームも想定されますが対策などは

田中進 ワセダは相手がどうだからこうするというのはなくて。自分たちのサッカーをやっていこうということが毎回あげられているので。逆にワセダがやったことない相手とやるのは有利なのかなと思っています。

新井 確かに。

――準々決勝で対戦の可能性がある阪南大は関西リーグ(関西大学リーグ戦)22試合で85得点と抜群の攻撃力を誇りますが

金澤 関西リーグってそういうところありますよね。守備そっちのけで攻撃みたいな。こないだ堀田(MF堀田稜、商3=浦和レッズユース)が関西学院大と阪南の試合をスカウティングで観に行ったのを聞いたんですけれど、やっぱり4―4の試合で。守備は関東の方が上なんだけど攻撃の質が圧倒的に高いってことを言っていたので。自分たちが関東で感じている以上の質だったり、違った攻撃パターンを持っている可能性はあると思います。それでも自分たちがブレずに自分たちの強みを表現できるかというところだと思うので。2年前ですよね。総理大臣杯(総理大臣杯全日本大学トーナメント)で阪南に負けたときは質で圧倒的にやられたっていう話は聞いているので。そういった意味ではDFとしては個でどれだけ戦えるかっていうところは楽しみなので。それだけ個の質や攻撃力のある相手に対して戦えるかというのはやってみたいという気持ちの方が大きいですね。

――準々決勝では慶大と対戦する可能性もありますが

新井 やりたいっすよね。

金澤 やりたいねー。

新井 慶大、明大、専大。

金澤 その辺りを倒して優勝できたら一番うれしいですけれどね。慶大、明大、専大に勝って優勝できれば、理想ですけどね。

田中進 気持ちよく引退できるね。

一同 (笑)。

――4年生にとっては最後のインカレになります

金澤 そうですね。試合前のミーティングとかでも4年生が引退間近で何を後輩に残すかということを口にしているのを見て。逆に自分は4年生に何も残せていないなというのを感じるので。自分たちに残してくれるのもそうですけれど、自分たち後輩からしたら引退してしまう先輩に何を残せるかといったら優勝ってなってくると思うので。チームに対していい思い出がないまま卒業してしまうと思うので、有終の美というものを飾って優勝してほしいなと思っているので。そういった意味でも勝ちたいなと思っています。

新井 自分はリーグ戦の最終節の試合前のミーティングで「4年生のために死ぬ気で戦います」と言って戦った中で結果何にもできないで負けてしまったというのが心残りというか、悔しさとともにあったので。「4年生のために」と言った言葉を果たせるのはインカレだけしかないと思っているので。そこで後悔したら何も残らないまま4年生が引退してしまうというのは分かり切っていることなので。そこで必ず後悔しないように、全力で戦いたいと思います。

田中進 ことしチームが創部90周年の中で、このチームに何か残すといったらもうインカレしかないので。その過程から結果までを、残していきたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 市川祐樹、高柳龍太郎)

守備的なのか、色紙の文字もすこし小さ目でした(笑)

◆田中進之介(たなか・しんのすけ)

1992年(平4)5月25日生まれ。183センチ、79キロ。神奈川・希望ヶ丘高出身。前所属・湘南ベルマーレユース。スポーツ科学部4年。後輩からは、プライベートではふわっとしていると言われていた田中選手ですが、本人は「ジルーのようなモヒカンにしてみたい」という願望も口にしていました。田中選手のモヒカン姿…、気になります!

◆金澤拓真(かなざわ・たくま)

1993年(平5)5月3日生まれ。身長173センチ、体重72キロ。横浜F・マリノスユース出身、スポーツ科学部3年。金澤選手の魅力といえば、やはり試合中のコーチング。本人は「試合を見返すと恥ずかしい」と話していましたが、チームメイトからもうらやましがられているようです。インカレのピッチでもその声を響かせて欲しいですね!

◆新井純平(あらい・じゅんぺい)

1994(平6)年11月12日生まれ。身長173センチ体重62キロ。埼玉・大宮南高出身。前所属浦和レッズユース。スポーツ科学部2年。金澤選手に「良くも悪くもバカ」と評されていた新井選手。対談中も自身のコメントをいじられたりと、先輩の二人に愛されている姿が印象的でした。初のインカレで大暴れを期待です!