【連載】早慶サッカー定期戦特集 第4回市村一貴×山内寛史

ア式蹴球男子

 スタメンとして試合開始からピッチに立つことができるのはわずか11人。ポジション争いの激しいア式蹴球部では、先発の座を懸け皆がしのぎを削り合っている。そんな中、今季スタメンを脅かす存在として台頭しているのがFW市村一貴(文3=神奈川・桐蔭学園)とFW山内寛史(商2=東京・国学院久我山)の二人だ。ワセダの飛躍には欠かせない、スーパーサブの二人にプレーのことからプライベートについてまで余すところなくお話を伺った。

※この取材は6月25日に行われたものです。

苦境に立たされた春

前期を振り返った市村

――3位で折り返すこととなった関東大学リーグ戦(リーグ戦)を振り返って

市村 3位という結果にはもちろん満足していないですし、チームとしてリーグ戦優勝を目標に掲げている中で1位で折り返せなかったというのは良くなかったことだと思います。加えて内容もワセダらしさを存分に出せた試合というのがほとんどなかったので、そういった面でチームとして不安が残る結果になりました。個人としてもなかなか出場機会が増えず、得点やアシストもほとんどできずに終わってしまったので、悔しい春季だったなと思います。

山内 最終戦(専大戦)に勝てば首位で終われるという可能性があった中での3位だったので、優勝を目指しているチームの結果としては満足できていないです。個人としても開幕はスタメンだったのに、だんだん落ちてしまって出場時間も減っていくという感じになってしまったので 、結果も出せていないですし後期は自分自身の調子もチームの調子も上げられるようにしていきたいです。

――アミノバイタルカップ(アミノバイタルカップ)は7位で夏の総理大臣杯出場を逃し、続く天皇杯東京都予選でも初戦敗退となってしまいました。二つともトーナメント形式の試合ということでやりづらさはありましたか

市村 そうですね。リーグ戦でもトーナメントでもやるべきことは変わらないと思うのですが、やはり負けたら終わりというプレッシャーがある点でトーナメントの方が難しいのかなと感じました。

山内 トーナメントということで連戦になった中で 、選手層が薄いという自分たちの課題が明らかになりました。連戦でもスタメンが変わらないばかりか、延長に入るまで誰も選手が交代しないという状態が続いたということは、サブとスタメンの信頼度の差が大きいということですし、チーム全体のレベルも低いということだと思います。監督(古賀聡、平4教卒=東京・早実)に言われたのは、主軸となる選手以外は一人として戦えていないという課題だったので、そういった課題がトーナメントになって明らかになったのかなと思いました。

――古賀監督からはどのような方針でやっていくというお話がありましたか

市村 試合の中では速さを出してゴールに強く早く向かっていくと言うことと、能動的にボールを奪ってそこから攻撃につなげていくということを言われました。具体的な速さの出し方であったりボールの奪い方というのは示されていなくて、 学生主体で任されているところであって、自分たちで話し合ったりして取り組んでいるところです。

――山内選手は印象に残っている古賀監督の言葉はありますか

山内 古賀監督は言うことがブレないので、それを自分たちがそれぞれどのように理解してやっていくかに懸っていると思っています。アミノバイタルカップ後には「4人以外はコマでしかない」と言われて、自分たちのような出ていない選手は戦力になれていないという現実を突き付けられたので、それがすごく印象に残っています。

――古賀監督はどのような監督ですか

市村 古賀監督は本当にブレがなくて、アミノバイタルカップなどの結果を受けてチームがブレやすいときにもブレずに引っ張ってくれる姿は本当に尊敬しています。本当は選手がその役割を果たせなければいけないと思うんですけど、まだまだ古賀監督に頼ってしまっているので、古賀監督の存在の大きさを日々感じています。

山内 やはり自分の言っていることを自分が一番やっているというところが一番尊敬できる点です。あの年齢であそこまで動けるのは本当にすごいなと感じます(笑)。

――古賀監督ご自身が実際に動いて指示なさるのですか

市村 そうですね。実際に行動で示してくれて、刺激を与えて下さるので、人としても尊敬しています。

――前期全体を振り返って、ご自身にとってのベストゲームを教えてください

市村 自分の中で本当に納得できた試合というのはないんですけど、しいてあげるなら、リーグ戦の国士舘大戦(○3-1)では自分が起点になって得点を挙げたシーンがあったのでそこが思い浮かびます。

山内 自分としてはあまりそういう試合はないんですけど、チームとしてはリーグ戦の筑波大戦(○1-0)で勝ったことで最後首位争いに持ち込めましたし、厳しい戦いの中でしっかり1点とってワセダらしい勝ち方ができたのは大きかったかなと思います。

――逆に、課題が多く見つかった試合はありますか

市村 ヒロ(山内)から筑波大戦の話があったんですけど、自分自身は途中で入ってチームの苦しい状況を改善できず、結果的には勝てたのでよかったんですけど一つ誤れば負けていたかもしれないので、そういったことを考えた時に自分自身の力のなさというのを感じました。

山内 リーグ戦の明大戦(●1-2)です。この次あたりからスタメンを外れたんですけど、チームとして前にボールが運べない中でFWの役割を果たすこともできず、ボールも奪えなくて、ただただ時間だけが過ぎていくという感じになってしまいました。結果としても負けましたし、あの試合が一番駄目だったかなと思います。

――途中出場が続いていますが、どのようなことを意識してプレーしていますか

市村 試合の状況にもよりますが、自分としてはアシストだったり得点だったり結果にこだわって途中から入っていくんですけど、春を振り返ってみた時にその結果というものが全然出せていなかったので、やっぱり悔しいですね。

山内 やっぱりFWとしては点を取るというのが一番なんですけど、途中出場は試合状況が悪くても追うしかないというところがあるので、キツイものだと覚悟して入っています。

――開催中のW杯では途中出場の選手が活躍していますが、やはり刺激は受けますか

市村 そうですね。日本と戦ったコートジボワールだったらドログバ選手とかが会場の雰囲気までガラッと変えて、日本にとって嫌だなと思われていた選手だと思うので、そういう意味では自分も途中出場として出るときにはそういった選手になれることが目標です。もちろんスタメンになるのが一番の目標なんですけどね。

山内 自分は途中出場してゴールチャンスとかがないと焦って失敗することが多いんですけど、W杯を見ていると途中出場で結果を残す選手なんかはやっぱりすごく落ち着いているので、技術だけでなくメンタル面も大事だなと感じます。自分はメンタル面も課題なので、そういった点では刺激を受けています。

――今季のワセダが強みにしている点はどこですか

市村 昨年はポジションごとにすごい選手がいたので、昨年に比べると個の能力というのは落ちると思うんですけど、そういった選手がいない中で個の能力を高めていくだけではなくて、チームとしての団結力も高まっているので、昨年よりはそうした点も強みになっているのかなと思います。

――春は苦しい結果となりましたが、それを受けていまのチーム状況はいかがですか

山内 決して良いとは言えないんですけど、これから試合がない中でオフシーズン整えていって、一からやり直そうと切り替えていこうとしています。ここから厳しい練習が続く中で勝ち抜いた人が今季のスタメンになると思うので、早慶戦のスタメンもそうですし、ここからが勝負だなということでみんなモチベーション高くやっていけていると思います。

――先ほど「強みは団結力」というお話がありましたが、そういった意味でワセダらしさが一番出せた試合はありましたか

市村 団結力が強みというわけではないんですけど、ワセダの強みと言うのは戦う姿勢であったり運動量であったり気持ちの面であったりだと思うので、そういった部分が出せたと感じるのはリーグ戦の慶大戦(○2-0)ですかね。自分は最後ちょっとしか出られなかったんですけど、外から見ていてもみんな戦えていて球際も強くいっていましたし、同期のMF川井健吾(創理3=東京都市大付)が集中応援の企画の中心となってたくさん観客を集めてくれたので、観客の後押しもあってワセダの強みを出せたかなと思います。

山内 自分もリーグ戦の慶大戦で、自分自身先発出場した中で人が多くて自然と力が出たというか、それまでの試合でワセダの力を出して戦えた試合はないと古賀監督にも言われていた中での早慶戦だったので、外部からの影響も受けて初めてワセダらしさを90分間出し続けて戦うことができたなと感じます。

――春季苦しい状況の中で成長したと感じる点はありましたか

市村 自分としては昨年は1試合も出場できなかったので、そこに比べると今季は途中出場として試合に出ることができたという点でとても良い経験になっていますし、自信がついたというのがあります。

山内 自分は昨年も途中出場はあったんですけど、その時からもっと出場時間が長ければ結果を残せると思ってやっていて、でも結局全然力を出せなかったので、いまの自分の実力を知ることができたという点では良かったです。

――ご自身が求められている役割はなんだと考えていますか

市村 自分自身で考えている強みとして攻撃においてのアクションというところがあるんですけど、恐らくそこをチームでも求められているというか、自分がそうした強みでチームに刺激を与えていくというのが大切なのかなと思っています。

山内 自分自身は調子のいい時は積極的な仕掛けとかが出せていると思うので、そういう点がチームの勢いにもなると思いますし、自分の強みだと思うのでそれが求められていることだと思います。

――ポジション争いが激しい中でアピールしていきたいのはそういった強みの部分なのでしょうか

市村 そうですね。もちろんチームとして求められている強みという部分が最低限必要であって、その上で自身の強みを出していくことがポジション争いを勝ち抜く上では必要なのかなと思います。

山内 自分自身の強みを出す前にまずはチームとして点を取ったりポジションとしてやるべきことをやらないと評価につながらないと思うので、まずはそこからだと思います。

性格は似たもの同士

同学年の中で最初にAチーム入りを果たした山内

――サッカーを始めたきっかけは

市村 自分は幼稚園の年中からサッカーを始めたのですが、父の話では物心ついたときからボールを蹴っていたらしいです。父がサッカー好きで、かなり本格的にやっていて、父の影響で始めたという感じです。

山内 自分も最初は父親と一緒にずっとボールを蹴っていました。チームには小学校のときに入りましたね。父親がサッカーが好きだったので、単純にやっていてそのまま続けてきたという感じです。

――お二人とも高校サッカー出身ということで、ユースとの違いはありますか

市村 やっぱり規律面であったり、気持ちの部分だったりが違いますね。イメージですけど、高校サッカーって結構走るイメージが強いと思います。そういうところはユースと比べて高校サッカーの方が多いと思います。

山内 自分の高校は高校サッカーの中でもタイプが違ったので、どちらかというとユースに似ていたのかなと感じますが、高校サッカーは勉強などの成績が直接、顧問の先生の方に行くので、そこはちょっと違うのかなと思っています。

――やはり部活動と勉強の両立は大変だったのですか

市村・山内 そうですね。

――高校を卒業して、なぜワセダのア式蹴球部(ア式)でサッカーをやろうと思ったのですか

市村 正直、入学する前まではワセダのア式がどういった組織かというのを明確に知っていたわけではなくて、ワセダはサッカーが強いからという理由で入りました。また、学業面でも私立ではトップレベルにあると思うので、そういった意味で率直に入りたい、ワセダでサッカーをしたいと思いました。

山内 自分は高校卒業後もサッカーをやると決めていました。あとは自分の大学への行き方として受験という選択肢がなかったので、行ける大学の中で一番良い大学に行ければと思っていました。その中で、ワセダが一番良かったのでワセダにしました。サッカーは続けたかったので、何も知らずにそのまま受けにきました(笑)。

――本キャン生と文キャン生ということで部活との両立は大変ですか

市村 そうですね。自分は文キャン生で、周りに部活生というのはほとんどいません。サークルだとか、サークルもやっていなくてバイトだけという人もたくさんいる中で、まず部活と言うと驚かれますし、結構部活という概念がない感じですね。大変な部分もありますが、そこも目指して自分自身ワセダに入りたいと思っていたので、大丈夫でした。

山内 学業については高校のときにある程度厳しくやっていましたし、大学生は時間もあるので、そんなに大変ではありません。でも一緒にいるのは体育会系でやっている人たちとかなので、そういった友達の面では他の人との違いを感じます。

――学部ではどのような勉強を専門にしていますか

市村 自分は心理学コースというところに所属していて、実験やレポートなど、どちらかというと文系というより理系っぽいことをやっています。ことしはだいぶ楽になったのですが、きょねんの1年間は本当に大変で苦労しました。

山内 自分は商学部なので、経済などを学んでいます。色々コースがあるのですが、3年生に上がったときに決めるので、まだコースはありません。いまは必修というかたちで、会計などをやっています。先輩もいるので、必修もテストもきちんとやっていればそんなに苦労はしないです。

――お二人は練習以外でもよくお話されるのですか

市村 そうですね(笑)。寮で隣の部屋なんですよ。というのもあって会う機会は多いです。でもお互いそんなによく喋るタイプではないと思うので、割と大人しいというか…(笑)。

山内 部屋からそんなに出ないです(笑)。

市村 結構二人とも部屋から出ないタイプなんですよ(笑)。

――お部屋ではいつも何をされているのですか

市村・山内テレビ(笑)。

――好きなテレビ番組などはありますか

山内 『しゃべくり007』とかですね。

市村 あと、『プロフェッショナル―仕事の流儀』とかドキュメント番組は撮りためてます。

――W杯もご覧になっていますか

市村 日本戦は全て見ています。でも、夜遅くまで起きていたり、朝早く起きたりするのはつらいので、面白そうな試合は録画して見ています。

山内 開幕からはちょっと見ていたのですが、だんだん起きるのがつらくなってきて、録画ばっかりしています。日本戦は2つ見たのですが、あまり面白くなくて(笑)。コロンビア戦は見ていないです。

――お互いの第一印象を教えてください

市村 最初出会ったときっていつだっけ?

山内 あれだ、波崎合宿。

市村 あ、そうだね。自分が2年でヒロが1年として入ってきたときに、波崎合宿で同じ部屋になって、そこでかなり仲良くなりました。そのときまだヒロは1年だったのですが、すごく貪欲に上を目指しているなというか、すごく志が高いなと思いました。

山内 市くん(市村)はとにかく優しかったですね(笑)。波崎は朝走るんですよ。それで毎朝2人でお風呂に入っていました。みんなはあんまり入らないんですけどね。期間も長かったし、知らない人ばっかりで、自分は結構人見知りなので、最初はすごくつらい合宿だったのですが、市くんには本当に助けられたという部分があります。

市村 最初入ってきたばっかりだと本当にきついよね。

山内 結構つらい(笑)。

――どういったことが大変なのですか

山内 仕事とかはまだやらないのですが、入部が決まっていないので、アピールというか、積極的に仕事とかやらないといけませんでした。でも、やること分からないしどこに立っていればいいのかをずっと考えなければいけないし、4年生とか3年生は会ったばかりで怖いし、みたいな感じでした(笑)。

――いまはどのような印象をお持ちですか。プレー面、生活面の両方でお聞かせください

市村  まずはプレー面からなのですが、ヒロは攻撃センスに優れていて結構熱を内に秘めているタイプだなと思います。その点では自分と結構似ているんですよね。でもチームに対してもどんどん働きかけしていますし、ヒロは後輩ですが信頼できる選手です。生活面はあんまり分からないかな(笑)。でも良い人だと思います(笑)。

山内  市くんは動き出しがうまくて、自分としては一緒にやっていて非常にやりやすい選手です。感覚でやるところが多いと思うので、そういうところが攻撃のときにやりやすいです。またFWだけじゃなくて、サイドハーフやるときは守備も本当に献身的にできます。自分は波があるのですが、そういうところをいつもしっかりやっていてすごいなと思います。生活面は、部屋がとてもきれいです(笑)。

市村 それはヒロもきれいだよ。

山内 僕らは寮の中では結構きれい好きだと思います。

――他の選手のお部屋は汚いということもあるのですか

山内 結構汚い部屋もあります。

市村 ありますね(笑)。

山内 ごちゃごちゃしている部屋が多いです。

市村 名前を挙げるとちょっとかわいそうなので挙げないですが(笑)。

――ちなみに血液型をお伺いしてもよろしいですか

市村・山内 A型です(笑)。

市村 そういうのって関係あるんですかね(笑)。

――お互いのすごいところや見習いたいところはどこですか

市村 1年生のときの第一印象でも話したのですが、ヒロは志が高いというか常に上を目指していて、そこは自分に足りないところでもあると思っているので、後輩ではありますが、そういうところは本当に見習わなければならないなと思います。

山内 常に自分のやりたいこととは別にやらなければいけないことがチームにある中で、自分はそこを疎かにすることがあるのですが、市くんはその自分のやりたいことと違ったとこも受け入れてやっていると思います。あとはやっぱり準備のところなどでしっかりアップとかもしていると思うので、自分はそういうところも見習わなければいけないなと思います。

――お二人はサッカーをする上で尊敬するプレーヤーなどはいますか

市村 自分自身一番大きな課題だと考えているのがメンタル面なんです。そういった意味で本田圭佑選手(ACミラン)は、本当に強い心を持っているなと率直に思うので、尊敬しています。

山内 尊敬している選手ですか…そんなにいないんですよね。でも最近はハメス・ロドリゲス(コロンビア)がすごいなって。そんなに年も違わないのに、それでもう国を背負って、あれだけのプレーをするのはすごいと思います。

――選手個人に注目して試合を見ることはあまりないのですか

山内 小さいころからあまり選手の名前とか覚えないというか、みんなが話していたりする選手が分からなかったりすることが多いです。プレーは見ますけど名前とかその人の生い立ちとかまでは全然知らないです。

――試合前はいつもどのようなことをしていますか

市村 電車やバスで行くことが多いのですが、その間に自分でモチベーション上げるために音楽を聴いたりだとか、海外で活躍するうまいプレーヤーのプレーを見たりだとかしています。

山内 前期は第2試合がほとんどで、朝に時間があるので同期の中山(FW中山雄希、スポ2=大宮アルディージャユース)と新井(DF新井純平、スポ2=浦和レッズユース)と武蔵関公園を散歩して、そのまま松屋に行って朝ごはんを食べるというのを習慣としてやってました。そのくらいです(笑)。

全ての選手の思いを背負い、早慶戦に挑む

ジョーカーの投入は試合の流れを変えられるか

――今季はすでに2回慶大と戦っていますが、ことしの慶大の印象はいかがですか

市村 昨年までとは少し違って、しっかりブロックを作って、守ってそこから奪ってカウンターというようなイメージがあります。昨年は降格争いをしていたので、逆に割り切ってそういうサッカーをしているのかなというイメージを持っています。

山内 昨年の降格争いから割り切って、引いてからカウンターというのをやっていると思うのですが、多分前期の早慶戦ではそれがまだ統一されていないのか、中途半端にやっているイメージがありました。アミノバイタルでやったときも、そこまでやっているものが身についていないというか、全員ができている訳ではないのかなと思いました。

――慶大に注目選手はいますか

市村 FWに宮地元貴選手がいるのですが、彼とは中学時代に桐蔭学園中で一緒にサッカーをやっていました。一個下なのですが、そのとき一緒に全国優勝を経験したメンバーなので、負けたくないという意味で注目している選手です。

山内 自分と同じ国学院久我山高の出身者が非常に多いのですが、しいて言うならば、同じFWの山本哲平という選手です。きょねん、彼も公式戦に出ていたのですが、得点はなくて。ことし自分が最初に点を取って、お互いに連絡も取り合っていたので勝ったねという感じで話していました。いま彼が公式戦で2点取っていて、自分は負けているので、そういうところも意識して早慶戦で勝ちに持っていけたらいいなと思います。

――早慶戦に挑むうえで他の試合との気持ちの違いはありますか

市村 早慶戦は多くの方々が来てくれるというのもありますし、長い時間をかけてきたという部分もあるのでそういった面で特別な思いがあります。すべての部員にとって早慶戦は一番出たい試合の1つだと思うので、気持ち的には違うと思います。

山内 自分自身きょねん最後にちょっと出させてもらっただけだったのですが、いままでの人生のサッカーの中で一番興奮し、エネルギーの出しやすい試合でした。ワセダか慶大に入る以外にあのピッチに立つことのできない試合なので、ワセダ生として本当に重い試合ですし、一人一人の試合への思いは自然に高まっているのかなと思います。

――お話にあった昨年の早慶戦ですが、山内選手は出場シーンを振り返ってみていかがですか

山内 試合の中では特に何もしていないのですが、終わりの笛が鳴ったときに自分がピッチにいれたというのはすごくうれしかったです。きょねんは、みさくん(DF三竿雄斗、平26スポ卒=現・湘南ベルマーレ)とか貴司くん(MF近藤、教4=三菱養和SCユース)もいろいろあってスタメンで出られない中で、最後に出ることができました。自分自身出場して勝てて、そこから喜んで騒ぐということを経験できたのは、一番良かったかなと思います。

――ことしはスタジアムがいままでの国立競技場(国立)から等々力競技場に変わりますがいかがですか

市村 正直に言うと国立ではサッカーをしたことがなかったので国立でやりたいという思いはあったのですが、場所が変わったからといっても早慶戦は早慶戦であって何も変わらないと思うので、素直に楽しみにしています。

山内 場所として少し慶大寄りなので、観客には慶大の人が多いのかなと思うのですが、その中でも応援してくださる人はたくさんいるだろうし、それで勝って自分たちが喜ぶとともに慶大側の人が負けて悔しがっているという光景はそれはそれで悪くないかなと思います(笑)。

――いまワセダはケガをしている選手も多いようですがチーム状況はいかがですか

市村 ケガ人は確かに多いのですが、ケガをした選手も自分ができることを考えて取り組んでくれています。ケガをしている中でもピッチ外でいろいろ働いてくれていたりするので、ケガをしていない選手がそういう人たちの思いも背負って戦えるというのはチーム状況としては非常に良いと思います。

山内 いまケガという話がありましたが、前期戦っていた堀田くん(MF堀田稜、商3=浦和レッズユース)がここにきてケガをしてしまって早慶戦出場は厳しい状況になってしまったのですが、それでも堀田くんはチームに貢献するためにいろいろやってくれていますし、ケガをした選手でもそういったことを考えてやるというのはワセダのいいところの一つだと思います。なので、そういった人の分も頑張るということでエネルギーも出ると思うし、ケガなどによるマイナス的な要素はないかなと思います。

――個人としての早慶戦の目標などはありますか

市村 やっぱりゴールを決めたいというのが一番の目標です。その中で、まだメンバーだったり、スタメンだったりが決まっていないというところでまずはスタメンを目指してやっていく必要があるのかなと思います。

山内 まだ早慶戦は何回もあると思うのですが、卒業するまでに1回はMVPを取りたいなと思っています。上くん(FW上形洋介、スポ4=東京・早実)が2年生で取っているのを考えると、自分自身も今回で取りたいなと思います。どんな出場時間でも試合を決める点が取れればMVPに近づくので、そういった面でFWは取りやすいと思っています。だからそのためにも点は取りたいです。

――やはり目指すはMVPなのですね

市村 多分FWに聞いたらみんな自分が取るって言いますね(笑)。

山内 決勝点を取ったら、なれますよね。

――最後に早慶戦への意気込みをお願いします

市村 自分自身1年生の最初の早慶戦のときに国立で外から仕事をしていて、そのときに感じた熱気にすごく感動して、そのときからずっと早慶戦に出たい、活躍したいと思うようになりました。だから、点を決めてチームを勝たせられるように頑張っていきたいです。

山内 自分自身、勝利などの歓喜の瞬間の中心にいたことがないので、早慶戦で自分が点を取って、みんながよろこぶ勝利の瞬間に自分がいれたらいいなと思っています。4年生にとっては最後の早慶戦で、ワセダとして早慶戦の連勝が続いている中で、ここで勝たなければ何の意味もないですし、自分が卒業するまでに1回も早慶戦で負けたくないので、そういった意味でも個人として結果を残して、チームでも勝てれば最高だなと思っています。 

――ありがとうございました!

(取材・編集 大口穂菜美、松本理沙)

共に『躍』という文字を使って書いていただきました

◆市村一貴(いちむら・かずき)(※写真左)

1993(平5)年6月24日生まれ。174センチ、65キロ。神奈川・桐蔭学園高出身。文学部3年。取材前日が誕生日だった市村選手。なんとアルゼンチン代表のメッシ選手と同じ誕生日とのこと。早慶戦でも、ブラジルW杯でのメッシ選手のような活躍を期待したいです!

◆山内寛史(やまうち・ひろふみ)

1995年(平7)2月9日生まれ。182センチ、73キロ。東京・国学院久我山高出身。商学部2年。実は最初に志望していたのは慶大だったというまさかのエピソードを披露して下さった山内選手。高校生のときに考えていたのとは逆の立場から早慶戦を盛り上げます!