連載ラストを飾るのは、前回のインカレで期待されながらも力を発揮しきれずに終わったクロスカントリー湯本啓太(スポ4=長野・中野立志舘)。ことしは自身の大学ラストレース、そして早稲田大学スキー部主将として臨む大会となる。個人として、チームとして目指している場所はどこなのか、意気込みを伺った。
※この取材は2017年10月5日に行われたものです。
部としての完成度はすごく高い
部を思う気持ちを語る
――真面目な方という印象を持ちました
そんなことないですよ(笑)。
――そこに主将に任命された理由があると思ったのですが
いや、全然わからないですね(笑)。
――ではどのように主将に決まったのでしょうか
4年生が卒業するときに、次の代の役職どうしようかっていう風に監督などが話して決めているので、どうやって決まったかというのは知らないですね。
――それまでは全く知らなかったのですか
そうですね、発表されたときに初めて知る感じです。
――主将に決まった時はどんな気持ちでしたか
プレッシャーはありました。あと反対にやってやろうという気持ちがありました。でも集団の上に立つというのは、昔からそういった立場を任されることが多かったのでなれているという面もありました。
――スキーはいつから始めましたか
一応、小学校1年の時からやっています。
――始めたきっかけは
小学校の時の担任の先生がスキークラブの顧問の先生で、そこで勧められて。兄が2人いるんですけど2人とも小学校の時にスキーをやっていたというのも大きかったかもしれないですね。
――ではご自身の中ではやろうかなという風に考えていたのですか
そうですね、小1なんで覚えてないですけど(笑)。気づいたら、という感じでした。
――他に何かスポーツはやっていましたか
他には水泳と野球もやっていました。運動は昔から好きだったのでスキー競技のため、というわけでは無くやっていました。
――いつからスキー1本に絞ったのですか
やっぱり小学校から中学校に上がるときに部活動を選ばないといけなかったので、スキーは練習が辛くてすごく大嫌いだったので、野球部かバスケ部に入ろうと悩んでいました。でもスキー部の体験入部に行ってみると缶蹴りみたいな楽しい練習をしていて、それで結局スキー部に入っちゃいました。でもいざ本格的に部活が始まったらめちゃくちゃ辛かったですけど(笑)。
――スキーはどのような練習をされるのですか
夏場は陸上部と同じような練習で走ったり、基礎体力をつけたりする練習をしています
――好きな練習であったり、逆にあまり好きではない練習は
ランニングで追い込んだり、辛い事する練習は嫌いでした。今でも所キャンや狭山湖でローラーしたりランニングしたりという練習はよくしています。
――みなさん仲が良いという印象を受けたのですが
そうですね、寮に住んでいるので仲が良くないとやってられないですよね(笑)雰囲気もすごく良いと思います。なのでことしは部としての完成度はすごく高いのではないかなと思っています。
――後輩についてはいかがですか
後輩とも仲良くて、学年間の距離はあまり無く、お互いにいじって笑って、みたいな感じでやっています。種目も関係なくスキー部全体として仲が良いですね。
――種目ごとにカラーが違ったり、ということはないですか
強いて言うのであれば、クロスカントリーの選手はアルペンの選手に比べてより真面目な印象の選手が多いように思います。逆にアルペンの選手は柔らかくて賑やかな選手が多い気がします。でもそれぞれの個性というか種目に関係なくストイックな選手はストイックですし、アルペンでも真面目な選手は真面目です。
――クロスカントリーという種目の魅力はなんですか
すごく体力を使う競技で、よく雪の上のマラソンという風に言われるのですが、実はマラソンとは全然違って道具をたくさん使うので、ただただ体力がある人が勝つという競技ではなく、道具の準備段階の優劣で結果が変わってくることもある競技です。ワックスの選択であったりというところも大きく関わってきます。
――そういったところも選手ご自身が決められるのですか
インカレ(全日本学生選手権)などの大きな大会になると、チームごとに決めるので、その選択によっては大学単位で明暗が分かれることもあります。でもそこがまたスキーの面白いところでもあると思います。
――では身体を動かすこと以外の面も結果に関わってくるということですね
そうですね、頭脳戦もありますし、自然の中で戦うので5、6日前から現地に入って、雪温や気温を測って当日はどういったコンディションになるのかなども調べたりもしています。そういった面は今ではコーチの方にやっていただいているので選手は自分の身体に集中して試合に合わせています。
今年こそはアベック優勝を達成したい
よく笑う方でした!
――今シーズンの目標は
早稲田大学のスキー部が創設されてもう少しで100年になるのですがまだインカレで男女のアベック優勝が一度も無いので、毎年「今年こそは」というふうにやっているので、本当に今年こそはアベック優勝を達成したいと思っています。
――個人的な目標は何ですか
1年生など下級生が力をつけてきているので、4年生の意地というか4年生として下級生には負けられないなという想いはあります。そしてインカレという大きな大会で入賞してポイントをとってチームのアベック優勝に貢献できるように頑張っていきたいと思っています。
――夏の間はどのように過ごされていましたか
夏はフィンランドで合宿を行っていました。毎年、フィンランドで合宿しています。夏場はずっと昼のような感じですね。今回は2週間で、実家の長野にも3週間ほどいましたが、それ以外は長野や山形でも合宿を行っていました。
――オフの日は何をされていますか
僕は釣りが好きなので、釣りをよくしています。長野は海が無いので新潟の方まで行って船釣りもしたりもします。
――ご家族と仲が良いのですね
スキーという競技柄、冬の間ずっといないのでそれ以外の時は両親とはショッピングに行ったりすることもあるので仲が良いかもしれません。
――部の中で特に仲が良い人は
本当にみんなと仲が良いです。強いて言うのであれば夏の間はずっとクロスカントリー部門の選手たちと行動していたので絆じゃないですけどまとまりは強いですね。ただこうして寮などでみんながいるところではクロカンの人たちが固まったりすることは無く、部屋とかも違う部門で部屋分けされているので仲は良いと思います。
――部屋割りはどのように決められるのですか
初めに上級生から入っていって、それから下級生を決めていく感じですね。なので1年生とかはもう入ってきたら「ここね」というのが決まっていて。ひとつの楽しみではありますね(笑)。
――尊敬している人は誰ですか
それは孫悟空ですね。
――どうしてですか
やっぱり孫悟空ってストイックなので、それにストイック且つあの人は楽しんでいるので、そういうふうな人になりたいですね(笑)。ただストイックにやるだけじゃ自分自身が楽しくないので、その中でも楽しくやっていきたいです。
――他に尊敬する方はいますか
僕、結構漫画を読むので全部そのキャラクターになっちゃうんですけど、HUNTER×HUNTERという漫画に出てくるジンというキャラクターなんですけど。そのジンの言葉に「大切なものは欲しいものよりも先に来た」っていう名言があるんです。それは1つ目標を置くとその目標までの過程で苦労したり楽しいことがあったりする中で、その目標にたどり着くまでにその目標よりも大切なものが見つかるっていう意味が込められていて、それは自分自身にも言えることだと思ったので。僕もスキーを始めた時は「大きな大会で優勝する」など目標があったのですが、それを追い求めていく過程で、こうしてスキー部に出会い、スキー部のみんなとも出会えて、繋がりができて、そういったところが自分とも重なるように感じたので大切にしています。
――将来の進路は何か考えていらっしゃいますか
なかなかスキー部が無い学校とかもあるので将来は地元が長野県なので地元で体育の教師になって、部活の顧問をしてスキー部を育てたい、地元のスキーを活性化させたいという夢があるので、そこを目指しています。夏前には母校の高校に教育実習にも行かせてもらって、練習を見たり、授業に関わらせてもらったりできたのでとても楽しく
いい経験になりました。そこで具体的に自分のなりたい教師像も見えたので良かったと思います。
――昨年のインカレはいかがでしたか
もう個人的には最悪でしたね。シーズンを通してのピークがかなり前に持ってきてしまって。
――ことしはそれを踏まえての大会ということになるのでしょうか
シーズンは長いのでずっとピークというのは無理なのでどこにピークを持ってくるかということは重要だと思うのですが、とくにことしはインカレで引退してしまうので、やっぱり最後の最後で後悔はしたくない。インカレで100%、100%以上を出せるようにピークを持っていきたいなと思います。宇田(彬人、スポ4=福井・勝山)も田中(聖土、スポ4=秋田・花輪)もいて層は厚いのでプレッシャーを感じずに自分自身に集中してできればいいかなと思います。
――4年生ともずっと仲が良いのですか
大きなぶつかり合いとかは今まで無いですね。何かあってもみんなで話し合って、こうしていこうという方針を決めてきました。
――やはりそういう時には取りまとめる役になるのですか
部の時はみんなで話し合いますよ。一度問題が起きると、それを乗り越えてより強くなっていくと思っているので、そういった問題ごとも乗り越えることができるのであればネガティブには捉えていないです。逆にプラスになると思っています。
――スキーは個人競技が多いと思うのですが、チームとしてまとまるために意識していることはありますか
スキーのチームではあるんですけど、いざ試合になったら一人一人の競技であり、どこを鍛えたいかというのもそれぞれ違ってくるので、それぞれの意見を尊重してやっていくというのも大切だと思っています。
――では個人で練習するということもあるのでしょうか
基本的に自分の練習したい時間を決めて自分の課題を克服する練習をするというのが決まっているので、他の人が見ていないところでも努力しないといけませんね。だからこそ楽しみをみつけて練習をしていかないといけないと思います。
――ではご自身で練習メニューは組まれるのですか
一応クロスカントリーの部門はコーチが基本のメニューを作ってくださっているので、それを見てそのメニュー通りによるんですけど、それぞれが自分の身体の状態で判断して工夫して練習を行っています。ただ日曜日の午前はスキー部として集まって全体で練習するというのは決まっています。
――それはどういった意図があるのでしょうか
その日がある意味で体力向上とかよりも部としての団結力であったりチーム力を高めるための日なのかなと思います。その日は球技などを男女全員でしますね。もちろん基礎体力が高まったり、チームとして強くなっていると思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 藤田さくら、斉藤俊幸)
ユーモアたっぷりです
◆湯本啓太(ゆもと・けいた)
1995(平7)年10月18日生まれ。177センチ。長野・中野立志舘高出身。スポーツ科学部4年。実家に帰った時にはご両親やご兄弟と過ごすことも多い湯本主将。落ち着いた姿からは主将としての自覚と覚悟が感じられました。学生最後の大会で有終の美を飾ってほしいものです。