連載最終回に登場していただくのは山元豪主将(スポ4=富山・雄山)。主将として、悲願のアベック総合優勝に対して誰よりも強い思いを抱いている。ことし最後となる全日本学生選手権(インカレ)に向け、今何を思うのか―。胸の内に迫った。
※この取材は10月18日に行われたものです。
一人一人にチャンスがある
言葉を選びながら丁寧に応じる山元
――夏はどのようなトレーニングをされましたか
基本的には1つの種目じゃないので、3つのセクションに分かれてトレーニングをするんですけど、アベック優勝に向けてそれぞれの部門で足りないところを補うようにやってます。スキー部としては全体練習っていうのがあって、前期は1週間に1回全体練習っていうのを設けて、そこで部全体での陸上トレーニングがあります。前期が終われば各部門バラバラに合宿は行うっていう感じで動いてます。
――全体練習は何を行いますか
基本的に球技なんですけど、トレーニングの目的としては部全体で楽しく、みんなでまとまってコミュニケーションしながら団結力を高めていこうっていうものです。みんなたぶんサッカーが好きです(笑)。
――個人としてはどのような練習をなさいましたか
ローラースキーとかランニング、あとはスキージャンプとか、クロスカントリーとジャンプ両方の種目をやらなきゃいけないので、基本的に大学にいるときは大学のキャンパス近辺でランニングを行ったり、スキー履いてストック持ってっていうのを地面の上でできるローラースキーっていうのをしています。スキージャンプに関しては、長野県の白馬村にスキージャンプの競技場があるんですけど、そこに毎週末行ってトレーニングをしています。
――合宿はどこか行かれましたか
最近の合宿だと先週までヨーロッパの方に一ヶ月行ってました。
――海外と日本の違いはありますか
基本的にはないです。ただ気候が日本に比べたら、夏場とか涼しいのでトレーニングがしやすいっていうのと、トレーニング施設が整っているっていうことですかね。日本も整ってるんですけど、ヨーロッパの方が数が多いんですよ。クロスカントリーのコースってなかなかないんですけど、ヨーロッパだったらたくさんあって、2時間とか一回の練習でするので日本にいたらすぐ飽きちゃうんですけど、むこうだったらいろんなコースがあるので飽きないっていうメリットはあります。
――練習のメニューはどなたが考えているんですか
基本的には各部門のチーフが考えています。全体練習もだいたいチーフの話し合いで決めています。
――主将に選出された経緯を教えてください
わかりません(笑)。
――指名されたんですか
そうですね、きょねんの四年生みんなで話し合って決めたらしいんですけど。
――その時の心境はいかがでしたか
ええー!?って感じでしたね(笑)。別にキャプテンシーがあるわけでもないし、人前で喋るのとかも得意じゃないので、不安が一番大きかったです。
――今、主将として心がけていることはありますか
みんなのことをまとめて、チームのモチベーションあげてくっていうのが主将の役目じゃないですか。でも、僕の場合だったら自分の背中を見て後輩が刺激を受けてくれて、モチベーションがあがってくれればいいなっていう風に思ってます。だからとにかくトレーニングを妥協しないことですかね。それでその姿を後輩に見せるっていう。
――チームをまとめる苦労はなにかありますか
人前で話すこととか慣れてなかったので、月曜日以外は毎日朝七時に朝集合っていうのが終わった後に僕が一言しゃべるんですけど、それに慣れるのがすごく大変でした。喋り方もぼそぼそしているので、端っこの方の人とか聞こえなくて、最初の方は聞こえないですとか言われたりして(笑)。大きい声で喋るように心がけたりしました。でもそのおかげで結構人前で喋るのが慣れたりしたので、そうゆう経験ができてよかった点もあるかなと思います。
――監督が代わりましたが、一戸新監督はどのような方ですか
すごい気さく(笑)。一戸監督はオリンピアンっていうこともあって一番選手の目線になっていろいろ接してくれるので、監督って言ったらビシッと堅いイメージがあると思うんですけど、そうゆう感じではなくて、選手目線になってくれる喋りやすい人です。すごくやりやすい、意見も言いやすい監督だと思います。監督になる前から監督の種目がジャンプなので、高校とか中学の時からよくしてもらっていて、大学決まってOBでもあるので、元々すごく仲良くしてもらっていました。
――新しいチームの雰囲気を教えて下さい
基本的に僕合宿であんまり寮にいなくて、実はあまり部のイベントに参加していないのでわかんないんですけど(笑)。監督から受けた報告では、全体での合宿は活気があって盛り上がったって言っていたので、モチベーションも高くていい部なんじゃないかなと思います。
――同期の四年生の方の存在はいかがですか
友達っていうよりも、戦友っていう感じ。一緒に目標に向かって戦っていこうぜってなった時に、今回主将っていう僕がチームの上に立って引っ張っていかなきゃっていう立場なんですけど、どちらかというと同期に支えられながらチームを引っ張ってこれてます。同期がいないとチームをまとめられなかっただろうし、僕一人だったらパンクしていたと思うので、必要不可欠な存在だと今改めて振り返ると思います。
――後輩の印象はいかがですか
毎年強い選手が入ってきて、W杯に出るような選手も入ってくるので、すごく勢いがあると思います。やっぱり下からの勢いっていうのは、自分のモチベーションにもつながるし、危機感を持たされるっていうか後輩に負けてられないって思うので、自分の中の競争心を煽ってくれる存在ですね。
――先ほどの対談では、同じ部門の山元一馬選手と傳田英郁選手のお二人ともインカレ優勝するとおっしゃっていましたがいかがですか
きょねんのインカレでは、山元一馬が3位に入って、僕が12番だったんですけど(笑)。大学入ってからすごく伸びてるし、傳田に関しては元々世界ジュニアとか国際大会もまわっていた実力のある選手なので、インカレ優勝は全然あり得ることだと思います。
――「総活躍」というスローガンに込められた意味を教えてください
自分の経験からつけた言葉でもあるんですけど、大学1年生の時のインカレで、早稲田大学のスキー部が強いっていうのは知っていたので、先輩方がいるから勝てるだろうっていう気持ちがあって正直やっていたんです。自分が1年生の頃から優勝してやろうみたいな、ハングリー精神が薄かったかなって今振り返ると思うんですけど、やっぱりインカレは1年生から4年生までみんながポイントとらなきゃ勝てないものっていうのを、ここ数年ずっと男子は総合優勝逃しているので、4年目にして痛感して。だからもっと、一人一人にチャンスあるよとか可能性を秘めてるよっていうのをみんなに伝えたくて、総活躍っていうスローガンで今年はいこうって決めました。
――スキーをはじめたきっかけを教えてください
小学校に小さなジャンプ台があって、そこで遊びながらスキーのジャンプ練習をしているうちに、いつの間にか競技やっていたって感じですね。まわりがそうゆう環境だったので。
――みなさんにお聞きしていますが、出身地富山のふるさと自慢を教えてください
時の流れが遅いです(笑)。ゆっくり流れてるみたいな、田舎の良い所があります。便利さでいったら東京ですけど、住みやすさで言ったら富山ですね。富山帰った時は落ち着きます。
――オフの日は何をしていますか
寝るか、買い物いくかとかですね。でも基本的に寝ています。
――スキー部の人と遊びに行ったりはしますか
ご飯いったり、映画見に行ったり、ボウリングしたり。同期の中だと一番仲がいいのは主務の佐藤太一(スポ4=秋田北鷹)が同じ部屋なので、ずっとなんか一緒にいますね。
――日頃食事や生活面で何か気を付けていることはありますか
バランスの良い食事をするようにやっぱり日頃から気を付けていますね。体重を調整するときも基本的に食べ物の量を制限すれば、僕ら練習でめちゃめちゃ動くので、すぐ体重も落ちますね。
努力とセンス
さくねんは悔いの残るインカレとなった
――ノルディック複合競技の魅力を教えてください
一目で順位がわかることじゃないですかね。最後の最後まで結果がわからないってもどかしくないですか(笑)。一番に返ってきた人が一番強いっていうのが、見てて一目でわかるし、面白いかなっていう風に思います。選手としては、ジャンプはやっぱり気持ちいいですね。爽快感があります。
――怖さは
もう慣れました。怖さはほとんどないですね。クロカンはもうただただきついです(笑)。
――ジャンプではなくノルディック複合を選んだ理由はなんですか
選んだっていうかやらされてたって感じですね(笑)。勝手にそうゆう風な流れになってました。日本のスキージャンプの選手の育て方がだいたい、小学生のうちは体力つけるために、クロスカントリーも冬場は一緒にやらせるんですね。それで、そこでスキージャンプで芽がでた選手は中学校くらいからスキージャンプに専念していって、芽がでなかったら複合で、クロスカントリーで順位を上げてって感じですね。僕の場合はスキージャンプがそんなにうまくなくて、クロスカントリーの方が得意だったので、コンバインド選手になっていました。
――自分の強みと弱みを教えてください
競技でいえばなんだろう、弱みしかないな(笑)。弱みは、一番最近課題にしているのが、本番力っていうか本番で実力を発揮するメンタルですね。メンタルが自分のなかで克服しなきゃいけないなって。スキージャンプでどうしても気持ちが入っちゃってここ最近3、4年ぐらいうまく飛べていなくて、本番になって意気込んで失敗するっていうのが続いていたので、まずはそこを改善しようっていう風には取り組んできています。強みは、昔から運動神経はいいので、もっと自分のポテンシャルを磨いてきたいなって思っています。
――メンタル面での対処方法とかはありますか
ひたすら自信がつくまで練習をやり続けるってことですかね。結構動きがシンプルで、シンプルがゆえの力みとかって飛距離に大きく差がでるので、スキージャンプの正確さを磨いて、ジャンプの動きの反復練習をひたすら体に染み込むまでやるっていう感じです。それしかないと思います。
――本番は緊張されるタイプですか
しますね。
――なにかほぐす方法とかは
シーズンによって違うんですけど、本場前に深呼吸をして、それもただの深呼吸じゃなくて大地のマイナスイオンとかを体の中に全部取り込んで、悪いイメージとか体の中の悪い物を全部はきだすっていう風にイメージすると、すごく頭がすっきりするので今度やってみてください(笑)。他にもいろんなやり方があって、その時にあったやり方をやっています。
――世界で活躍するうえで必要だと感じることはありますか
努力とセンス。スキージャンプはほぼセンスで決まると思います僕は。さっきも言ったんですけど、スキージャンプは結構シンプルな動きなんですけど、時速が100キロぐらい出てる中で、踏み切りは0.2秒ぐらいでやるので、はやさの中で正確に動かなきゃいけない。それで、空中姿勢に入った時には100キロがどんどん130キロぐらいまで加速していくので、加速する中で自分がどうゆう姿勢で飛んでいるのかを感覚的に、なんとなくで把握するので、感覚が優れていなきゃまずダメだと思います。いくらスクワット何キロ上げたとかしても、イコール飛距離ではないので、努力すれば飛距離が伸びるって競技ではなくて、絶対的なセンスが必要だと思います。それで、センスがある中で、本場力を発揮するためにその動きをどれだけ体が覚えているかっていうのが強い選手の条件だと僕は思っています。世界でトップを狙うためにはセンスと努力が必要なんじゃないかなとスキージャンプに関しては思います。クロスカントリーは逆にほぼ努力で、やればやっただけ伸びると思います。
――これから強化していきたい部分を教えてください
スキージャンプでいえば、本番で力を発揮するためのメンタルを強化していきたいです。クロスカントリーでは基礎的な体力が、きょねんW杯出て思ったんですけど、全然レベルが違ったので、体力の底上げをすることと、スピードもめちゃくちゃ速くてついていけなかったので、スピードを出すための、上半身の強化が必要だなっていう風に感じていて、ことしから上半身のパワーの強化を中心に取り組んできています。
――W杯の雰囲気はどうゆうものでしたか
やっぱりお客さんがいるので、すごい盛り上がりますね。歓声だったり、アナウンスだったり、音楽だったり、毎回お祭りみたいになるので、テンションあがります。
――昨シーズンをふりかえっていかがでしたか
W杯に初めて出た年で、日本チームはポイントを取るっていうのを目標にやってきていて、30番以内だとポイントが取れるんですけど、僕は取れなかったので、すごい精神的に落ち込んだんですけど、トップ選手との差がはっきりわかったのですごく収穫のあるシーズンだったなと思います。インカレに関しては、言い訳になっちゃいますけど風邪をこじらせていて、インカレでもポイントをとれなかったので、チームに貢献できなくて悔いの残るシーズンでした。4年生にすごく申し訳なかったと思っています。
――今シーズンの目標を教えてください
まずはインカレアベック優勝。男女総合優勝するっていうのが早稲田スキー部としての目標で、僕個人としては世界選手権に出場するっていうのが一番の目標です。
――アベック優勝に向けてプレッシャーはありますか
ここ4年間男子準優勝で、OBからもすごい言われているので、プレッシャーはありますね。
――最後のインカレとなりますが意気込みをお願いします
アベック優勝!自分の出る種目は優勝して、チームに貢献したいなと思っています。
――ありがとうございました!
(取材・編集 松富リサ)
「自分の納得のいくまで」という言葉から妥協しない姿勢が伝わります
◆山元 豪(やまもと・ごう)
1995(平7)年1月27日生まれ。175センチ。富山・雄山高出身。スポーツ科学部4年。ノルディック複合競技。全日本ナショナルチームメンバー。世界大会にも出場し、経験を積んできた山元選手。主将として、チームをアベック優勝に導く活躍に期待です!