連載2回目はノルディック複合競技の山元一馬(スポ2=富山・雄山)と傳田英郁(スポ1=長野・飯山)の二人が登場。スキーにまつわることから近況についてなど、興味深い話をうかがった。インカレ(全日本学生選手権)前にノルディック複合部門を引っ張る二人の素顔を要チェックだ。
※この取材は10月18日に行われたものです。
「いい準備ができていると思う」(傳田)
初のインカレに向け印象を語る傳田
――今はどのような練習をしていますか
山元 シーズンが近づいてるので、レースに近いスピードで練習しています。これまでは時間が長くて強度が低かったんですけど、今は時間を短くして強度を高めにしてやっています。
――調子はいかがですか
傳田 夏から練習をやってきて、冬に向けていい準備ができてると思います。
山元 ことしは走力を強化することをテーマにやってきて、測定結果も良く最近も走れている感覚はあるので、やってきたことが実になってきたかなと思います。
――昨年のインカレを振り返って
山元 チームとしては男女アベック優勝を目指してたんで、男子が負けてしまったのはショックでしたね。去年のメンバーだったら勝てると思ってたので、悔しかったです。個人的には結果は最低限残せたかなと思うんですけど、内容はダメだったのでことしはもっとやらなきゃなと。
――傳田選手は初めてのインカレですが、どのような印象を持っていますか
傳田 高校のときに競えなかった人たちもインカレには大学四年生として出場しているし、人数も多くレベルも高いと思うので自分のベストを出していかないと勝てないかなという印象です。
――昨年度に卒業されたお兄さん(傳田翁玖、16スポ卒・現岐阜日野自動車スポーツクラブ)とは、普段は話しますか
傳田 普段はあまり話さないですね。兄はクロカンが僕より速くて上手なので、ときどき教えてもらったりしますね。
――傳田選手のワセダへの入学理由を教えてください
傳田 都内の学校とは違って所沢だと練習環境が整っているのと、ワセダの卒業生で自分の高校でコーチをやってる人が多かったので、コーチからいろいろ話を聞いていたりしていて。兄も入学して環境が良いと聞いていたので、高校に入学したあたりからワセダに行きたいと思っていましたね。
――山元選手から見た傳田選手の印象は
山元 小学校の頃から知ってるんで、そのままですね。昔はすごいちっちゃかったんですけど、今ではこんなになってしまって(笑)。
――実際にワセダに来てみていかがですか
傳田 高校の同期の話を聞いても、自分は練習できているほうだなと思いますね。高校のときは顧問の先生がいてメニューを全部決めてくれていたので練習内容は充実していたんですけど、大学に入って自分で考えなければならなくなって、やらなかったら落ちるしやれば上がるしというように自分次第なので、気持ちの面はしっかりするようになりましたね。
――スキー部内の最近のエピソードはありますか
山元 『君の名は。』が流行ってますね(笑)。僕は昨日やっと見てきたんですけど。8月の初め頃からフィンランドに行ってたんですけど、そのときから『君の名は。』見たいなって言ってて、帰りの飛行機にあるかなって期待してたんですけどなくて、帰ったら見ようと思ってそっからずっと見てなかったんですけど、昨日ようやく(笑)。
傳田 僕は我慢できずにすぐ見ちゃいましたね(笑)。四回見ました。
――四回もですか!
傳田 昨日先輩と鍋やったんですけど、そのときにも見ましたね(笑)。
――ご感想は
傳田 良かったです。
山元 いや、良かったんですけど、周りの同期から結構、一回見ただけじゃわかんないからって言われてたんで、結構身構えてどんな感じなんだろうって、どんだけ難しいんかなって見に行ったんですけど。なんか全然普通で(笑)。あー、これどこがもう一回見る必要あんのかなみたいな。まあ、一回でいいですね(笑)。
――傳田選手は、四回見た感想はいかがですか
傳田 まあ、もうだいたいわかっちゃってるんで(笑)。
――好きなシーンは
傳田 同じ新海誠監督の『秒速5センチメートル』は、あれは最後すれ違って終わりじゃないですか。今回のはすれ違わないで終わるのでスッキリしますね(笑)。
山元 僕は電車で三葉にリボンを渡すシーンですかね。運命的だなと。でも実際そんなことあったらキモくない?
傳田 そこ考えたらつまんないじゃないですか(笑)。
「ちょっともうクロカン負けるかな(笑)」(山元)
丁寧な受け答えが印象的だった山元
――お二人の昔と今の互いの印象を教えてください
山元 ひで(傳田)は昔はクロカンめちゃめちゃ遅かったんですよ。ジャンプは上手いんですけど。でも去年くらいにクロカンも早くなってきたなという印象ですね。
――何かターニングポイントはあったんですか
傳田 高校の先生がスパルタすぎて、強くなってました(笑)。10キロメートルくらい走るのにだいたい30分かからないくらいですね。中3のときから高1のときにかけて1分半くらい早くなりました。一馬さんの印象は、やっぱりすごいクロカン早いっていう。一馬さんの弟が僕と同い年で、彼もすごく早くて。でもだんだん僕も追いついてきました(笑)。
山元 うん。ちょっともうクロカン負けるかな(笑)。逆に俺はジャンプ追いついてきてるよ。でもどっちかが上手くいくとどっちかが落ちるんですよ。持久系と瞬発系なんで、どっちか鍛えるとどっちか落ちるからバランスが難しくて。どちらかと言うならクロカンが伸び悩んでます。
傳田 僕、8月の終わりから9月の始めくらいにかけて海外の試合に行ってきたんですけど、選手たちみんな身体が大きくてクロカンが速くて、もう勝てないんですよね。僕が170cmなんですけど、僕くらいの人はいなくてみんな180cm越えなんですよね。そこでどんどん差が出てきちゃって。そうなるとジャンプで少しでも差を縮めて、今の状況だと落とさないというのが必要なんです。日本の試合だとジャンプ飛べちゃえばだいたいは負けないし、入賞は確実だと思います。クロカンで速いよりはジャンプが上手いほうが今は勝てるんじゃないかなと。
――ジャンプは身体の大きさなどは影響するのですか
傳田 ジャンプは身長と体重で板の長さが決まってしまうので、そこは平等ですね。クロカンだと身長の違いで筋肉の量も違ってくるんで、その分高い人のほうがパワーがあるんじゃないかなと。
――フィンランド合宿ではどういう練習をしましたか
傳田 僕らはクロカンの練習だけをしていて。往復で2.5kmのトンネルがあるんですけどそこで練習したり。ソチで金メダル獲った選手とかもいたりして。クロカンの選手とコンバインドの選手だと速さもレベルも違うなと思いましたね。
――競技面以外で何か日本と違うなという点はありましたか
傳田 言語面では、ドイツ語話せればなんとかなるような気はしましたね 。
山元 でも英語でもなんとかならない?フィンランドはもうフィンランド語なんで、全然何言ってるかわかんないですよ。
傳田 食べ物はパンしか出ませんでしたね(笑)。超パサパサ。肉もパサパサだし。米もすごい芯が残ってて、日本みたいに炭水化物でごはんを主食でとるみたいなやつじゃないので、まずいなって感じがしましたね。でも日本みたいに便利になりすぎた添加物とかも入ってないんで、逆にあっちの食生活のほうが選手にとってはいいのかなと。
――気温はいかがでしたか
山元 8月で朝練の6時にマイナス4度みたいな。二つ隣の街でオーロラも見えて。それから日がカンカンに照ってきて明るくなって。そのときは17度とかで涼しかったです。夜の7時とか8時とかでも明るくて。逆に朝の6時とかはまだ薄暗いですね。
――フィンランドから日本の話に移ります。お二人の地元のエピソードや自慢などはありますか
傳田 えーと、ギネスに載ってますね、グラウンド数で(笑)。菅平なので、ラグビーとかのグラウンドがたくさんあって。
――すごいですね。山元選手はどうですか
山元 富山県は、マイホーム保持率ナンバーワンですね。真面目なんですよね、富山県民は(笑)。マイカーも所持率高くて、ほんと車社会なんで車持ってて当たり前みたいな。
――ことしは地元に帰りましたか
山元 帰りましたね。フィンランド合宿が終わって帰りました。
傳田 僕もフィンランドが終わって、一週間くらい帰省しましたね。
――地元の友達とは会ったりしましたか
山元 僕は結構アクティブな遊びするんで、山登ったり、あとは友達集めて10人くらいでバスケやったりサッカーやったり野球やったり。グラウンドとかもその辺にあるの使えるんですよ。東京とかだとよく空いてないですけど、こっちは空いてます。
傳田 うち農業やってるんで、僕はずっと朝から昼まで家のレタスの出荷の手伝いして、午後は練習してみたいな。手伝いも早起きと筋トレ兼ねてみたいな(笑)。レタス意外と重いんで。あと花火は見に行きましたね。
試合前の気持ちのタイプがバラバラな二人
――インカレに向けて
山元 大鰐のジャンプ台ってめちゃめちゃ最悪なところにあって。風が強くて。向かい風きたらめちゃめちゃ飛ぶんですけど、向かい風が吹かなかったら普通のジャンプ台の追い風並みに飛ばなくて。風の差が大きくて当たり外れがあるから、要するに運ゲーって感じで(笑)。風を祈るしかないですね。
傳田 僕はインターハイが大鰐であって。見事そのジャンプ台にやられて順位落としたんで。
山元 ほんと、ジャンプでほとんど順位決まりますね。結構理不尽だから天に祈るしかないかなと(笑)。やっぱり天候に左右される競技なので。
――試合の前に体重は落としますか
傳田 僕は冬に入ったら今よりもマイナス2くらい落としますね。
――今でも結構痩せていると思いますけど・・・
山元 うん、ガリガリ。
傳田 これでもちょっと重くて。板って身長と体重で決まるって言ったじゃないですか。今、2メートル45の板履いてるんですけど、身長が171センチなので体重が60.4あれば履けて。靴とスーツを着て体重を計るんですけど、そうすると今はヌードで60キロくらいあるんでもうちょっと落とさないといけないんですよ。板が最大限に生かせないので。
――山元さんは体重管理について気をつけていることはありますか
山元 僕は筋肉が付きやすい体質で。こういうガリガリタイプじゃないんですよ。体脂肪率が6とかで体重が61あって。去年とかは59、60ぐらいだったんで、あと1、2キロは減らしたいなと。
傳田 僕、去年の世界ジュニアのとき4キロ落としましたよ。
山元 マジ?今って筋肉落ちにくい時期じゃん。
傳田 蓄える時期だから、重くてしょうがないんですよね。
――微差でも感じるものなんですか
傳田 空中は全然浮かないなって感じますね。持ち上がる感覚ってあるんですけど、重いとないですね。
――やっぱりそれは食べ物のカロリーを減らすしかないんですか
傳田 そうですね、できるだけ減らしますね。朝はしっかり食べて夜は炭水化物とらなかったりするだけでもだいぶ違ってきますね。
――夜にお腹空いたりしないんですか
傳田 そうなんですけどお腹空いてるのに慣れちゃって。結構空いたままでも寝れちゃうんですよ。夏とかは一日二食くらいしかとってなくて、そのまま食べずに夜寝るとかあって。食べたらたぶん練習すればその分減るんで。
山元 クロカン消費量多いから一気に体重落ちるもんね。
傳田 そう。ランニングとかだと主に動かすの脚だけじゃないですか。クロカンだと腕も使うんで。消費カロリーすごい多いと思いますよ。
傳田 あと、全体合宿のときに食のセミナーみたいなのがあって。食品添加物について調べてる人が来てくれて、リン酸塩ってものが入ってる食べ物を試合の近くだけでも食べないようにしましょうっていうお話をしてくれたんですけど、いろいろな食べ物に入ってるらしいんですよ。ヨーグルトとかだったら乳化剤って名前で入ってるみたいでモノによってそのリン酸塩の名前は変わるみたいなんですけど、それが入ってるものを食べると試合でいいパフォーマンスを出せなくて、あと一歩届かなかったという原因になりかねないらしくて。おもしろい話だったんですけど、コンビニで売ってるものはほとんど入ってるらしいです。
傳田 だからインカレの食事はできれば和食のバイキングとかがいいですね。それは難しいかもだけど、コンビニは避けたいし。
――それでは、最後にインカレへの抱負をお願いします
山元 とりあえず勝ちたいですね。負け続けてるんで。中学校でも二番止まり、高校でも二番止まり、大学では去年三番だったんで。気持ち的にも、そろそろ結果が出ないと苦しいなと思って。自分のやってきたこと、やるべきことをちゃんとやれば結果もついてくるかなという感じです。
傳田 負けちゃいけないですね。僕、結構周りを気にしちゃうんで。僕も、自分のことをしっかり集中してできればいいかなと思います。まあでも集中しすぎると失敗するんで、テキトーくらいがちょうどいいのかなと。
山元 テキトーがちょうどいいの?
傳田 はい。僕、集中とか苦手なんですよ。集中すると、筋肉固まっちゃうんですよ(笑)。リラックスしてやります。
――リラックスするために、試合前に音楽とかは聴きますか
傳田 聞きますね。アゲアゲ系を結構聴くんですけど、その日の気分で。あー、今日はしんみりいきたいなと思ったらしんみりした曲とか。もう僕、カテゴリー作ってあるんですよ。あー、今日はこのプレイリストでいこうって。
山元 こいつだいぶ気分屋ですよ(笑)。僕は違って、決まったプレイリストで決まった順番でしか聴かないです。全部同じ時間で同じ回数聴くし、なんかそれを徹底しないと気持ち悪くて嫌なんですよね。あそこで一回多く聴いたからダメだったんだ、とかなっちゃって。
傳田 えー!それは細かいですよ。
山元 スキー板も必ず左からつけたりするし。
傳田 ・・・それ、飽きないんですか?
山元 うーん、たまに飽きる(笑)。
一同 (笑)。
傳田 僕は完全にその日の気分ですね。食べ物とかもその日に食べたいって思って体が欲してるものだし、練習メニューとかも練習始めてから考えるし。始めてから今日はスピード何分やろう、とか。その日に合わせて。
――たしかに、感覚タイプと頭で考えるタイプって感じで真逆ですね
山元 感覚ではできないですね。
傳田 考えすぎると空回りします。いやほんと、逆ですねー(笑)。
一同 あはははは(笑)。
――ありがとうございました!
(取材・編集 寺脇知佳)
タイプが真逆と言いつつも、似た言葉を書いていました
◆山元一馬(やまもと・かずま)(※写真右)
1996年(平8)5月21日生まれ。身長168センチ。富山・雄山高出身。スポーツ科学部2年。ノルディック複合競技。ことしこそは2位を脱却し、1位の座に輝きたい山元選手。色紙には大きな字で『一歩一歩辛いとき程前を向け』と書いてくれました。まるで、一歩一歩がパワーを要するクロスカントリーの情景が浮かんでくるようですね。その熱い意気で優勝をつかみとってほしいです!
◆傳田英郁(でんだ・ひでふみ)(※写真左)
1997(平9)年12月16日生まれ。身長171センチ。長野・飯山高出身。スポーツ科学部1年。ノルディック複合競技。考えてから行動するタイプの山元選手とは対照的に、感覚で行動するタイプの傳田選手。感覚がさえたプレーに注目です。色紙に書いてくれたのは、練習中にも念頭に置いているという『限界からもう一歩』。一歩がゴールに届いた瞬間を楽しみにしています!