連載第4回目は早大スキー部のジャンプコンビが登場。小林諭果(スポ3=岩手・盛岡中央)は好調だった昨季、ユニバーシアードで個人、団体で銀メダルを獲得。そしてインカレでもノーマルヒル種目で1位に輝き、女子部のインカレ4連覇に貢献した早大不動のトップジャンパーだ。さらに山田優梨菜(スポ1=長野・白馬)はソチ五輪を経験した超大物ルーキー。共に高めあうジャンパーたちは、インカレへ向けて何を思うのか。
※この取材は11月9日に行われたものです。
「モチベーションの上がる環境」(山田)
丁寧な受け答えが印象的だった山田
――小林選手にお伺いします。きょねんの全日本インカレで女子は4連覇を達成されましたが、結果についてどのように捉えていらっしゃいますか
小林 女子は先輩方や後輩の皆と一丸になって、個々の力も強いので、まあ当然の結果なのかなと思います。
――小林選手は個人でも優勝されていましたが
小林 インカレ2年目初優勝でしたが、勝たなければいけない試合だったので良かったと思います。
――ユニバーシアードの結果を振り返っていかがですか
小林 いまでも信じられないです。1年目はユニバーシアードに出たくても選考に漏れてしまって、悔しい気持ちもあったので、昨年のユニバーシアードは本当に、思ってもみなかった成績が出たので嬉しかったです。
――思ってもみなかったと仰いましたが、好調の原因は何だったのでしょうか
小林 何だろうな。本当に試合前日まで練習でも良いジャンプができていなくて、逆に開き直って。近くに兄弟がいたというのも一番の心の支えだったかなと思います。
――お兄様である小林潤志郎選手(雪印メグミルク)と一緒に練習はなさるのですか
小林 兄が大学になってから一緒に練習することはなくなったんですけど、北海道とか、合宿に行った際に同じ場でトレーニングすることはあります。近くで見ている分、頑張っているなあと思って、兄の活躍は自分のことのように嬉しいです。
――小林選手は昨季ユニバーシアード、インカレと好成績を残されましたが
小林 まず1年目が何も分からない状態の1年間だったので、2年目になって分かったところがありました。あと免許も取って、自分で移動できるようになって心の余裕もできましたね。特に練習はいままで通りで、1年目でダメだったことは2年目で変えてみたりはしました。
――次に山田選手へ質問させていただきます。1年生ということで、なぜワセダのスキー部に進学されたのですか
山田 ワセダは、渡部暁斗(平23年スポ卒=現北野建設)さんとか、自分が憧れとしている先輩方がたくさん出られて、その環境で自分もスキーをしてみたいと思い進学しました。また、ワセダで学びたいことがあったので。
――ワセダで学びたいことというのか何ですか
山田 ビジネス関係で、将来国際スポーツの運営に携わりたいと思っています。それでスポーツビジネスや組織について学びたいです。1年生なのでまだスポーツビジネスに関する講義はあまり受講できないのですが、いまは知識を広げて、勉強して自分の引き出しを増やしているところです。
――早大スキー部の印象は
山田 皆さん個々の目標がしっかりしているので、その中で練習できるということはモチベーションが上がる、そんな環境だと思います。
――寮生活にはもう慣れましたか
山田 そうですね、徐々に。自分は一人っ子なので寮生活をしたことがなかったんです。合宿とかでは共同生活がありましたが、一年を通して他の方と生活するのは、プラスの面もマイナスの面もあります。そこをどうコントロールしていくかだなというのがことしの課題でもあるので、できるだけ早く慣れられるように頑張ります。
――少しさかのぼって、山田選手がジャンプを始められたきっかけは何でしょうか
山田 自分の家の近くに小学校があって、そこに小さいジャンプ台があったんです。それを跳ぶ授業が小学校1年生からあって、それを跳んでみたらすごく楽しかったので、自分もやってみたいと思いました。
――小学1年生の授業でジャンプですか
小林 すごいですよね。
山田 2、30メートルでしたね。スキージャンプが盛んな地域というのもありますし、多種多様な競技と出会うことを教育課程として置いているので、そこの地域独特の授業だと思うのですが、そのおかげで私はジャンプに出会えました。
小林 私のところには授業はなかったです。私はやはり兄の影響で始めました。小学校にジャンプ台なんてないです、普通は(笑)。
――他にはないジャンプ競技の魅力とは何でしょうか
山田 空中に出てどんどん速くなっていく、他にはない楽しさですね。
――その中でご自分の強みというのは
山田 踏みきりの時にパワーをマックスの状態にすることができて、力強い踏切みきりだってよく言われます。
――日頃、食事や生活面で何か気を付けている部分は何かありますか
山田 食事面で言うと、ジャンプは減量が付き物なので、けっこう苦労しています。
小林 特に優梨菜はめっちゃ食事気にしているよね(笑)。
――具体的にどういったことをされているのですか
山田 けっこう無茶なことをしています(笑)。
小林 見ていても不安になるくらいね。
――ご飯を食べないなどそういったことでしょうか
山田 そういう感じですね。
小林 私はウエイトを全然気にせずにいままでやってきたので、ビックリしました。アスリートはここまでやるんだなと思って(笑)。見習います。
山田 諭果さんはすごくスリムな体型ですけど、自分はけっこう太りやすくて筋肉質なので日頃から気を付けていないと(体重が)増えてしまうので。健康には悪いとは思っていますけど、競技を優先してしまいますね。
――アスリートの皆さんの減量はどういったものなのでしょうか
山田 一般的なものから始まり、サウナスーツとかを着込んで走りこんだりします。
小林 練習のときもずっとサウナスーツで、夏暑い時に私たちは暑くて半袖、短パンなのにずっと着ているので、「大丈夫?」って心配になるくらい(笑)。頑張って汗を出しています。
――食べるもので意識されている部分はありますか
山田 できるだけ低カロリーなものを。けっこう偏食な部分があるので。諭果さんはちなみに?
小林 食べたいものを食べています(笑)。
――誘惑などもあったりしますよね
山田 すごくストレスが溜まります(笑)。
小林 「食べたい食べたい」って言いながら一生懸命我慢しています(笑)。その隣で食べているからすごく申し訳なくなってしまって。
――気を抜くことなく続けられているのですか
山田 気を抜くと一瞬で増えるので…。
小林 ごめんなさい(笑)。
「チームメイトが増えたことは心強い」(小林)
笑顔を交えながら明るい表情で話す小林
――日頃はどういった練習をされているのですか
山田 サマーシーズンで言えば平日は学校内で練習をして、土日は長野県に飛びに行ったりしていますね。
――学校内でのトレーニングはどのような内容なのですか
山田 個々でメニューは違うとは思いますけど、自分はウエイトとかバランス系を主にやっています。
小林 同じようなことをしているんですけど、自転車こいだりとか、走ったりとか様々なことをやりますね。
――何か変わったことをされたりしますか
小林 とにかく跳ねているよね。スラックラインとか。
――スラックラインとは何でしょうか
山田 綱渡りですね。ゴム紐の上を歩いたりします。
――どういった効果があるのでしょうか
小林 バランス感覚や集中力を鍛えるためですね。
――試合前に行っていることなどは何かありますか
山田 うーん、そうですね…。できるだけいつも通り何も考えずにしようとはしています。
小林 寝る前に入念にストレッチをして寝ます(笑)。
――ジャンプを飛んでいる時の気持ちはどういったものなのでしょうか
小林 一瞬だからなあ…(笑)。
山田 トランポリンを跳んでいて上にあがった時の一瞬、ほわんとなる感じがあるじゃないですか。あのような感じがだんだん大きくなっていくというか続いていく感じがします。分からないですけど、鳥になったような気分です。
小林 鳥になりますね(笑)。
――レース中のどこで出来を感じますか
山田 自分は助走の時から感じます。ダメだなというのもわかります。
小林 すごい!(笑)普通はそうですね。アプローチでダメだなと思う時もありますし、空中に出てから「あっ」って思う時はあります。
――飛んでしまうと微調整はできないのですか
山田 いや、できます。パワーの伝え方はできないですけど、バランスの取り方はできるので、アプローチのミスをそこでどれだけ修正できるかですね。
――海外遠征も多いかと思いますが、遠征時に持っていくものはありますか
山田 洗濯バックを持っていきます。自分で毎回手洗いしないといけないので、バックを持っていきますね。
小林 いつも物をいっぱい持っていってしまって、使うことのない不必要な物まで。この前はジンジャーのお茶を持っていきました(笑)。体が温まるので。
――海外で好きなところはありますか
山田 ノルウェーが好きですね。自然豊かで、比較的日本人に温かいですね。
小林 日本が一番いいです…(笑)。
――日本の中ではどこが一番好きですか
小林 札幌が好きです。ご飯もおいしいし、寒いですけど景色もいいので。いいところです(笑)。
――ソチ五輪での経験はいまにどのようにつながっていますか
山田 五輪に出て、色々と感じるものとか考えることも変わってきたので、すごく大きなものを得たなと思っていますし、これからの自分の成長の糧となる部分では非常に大きかったと思います。
――ほかの国際試合とは違う部分もありますか
山田 普段ワールドカップを回らせていただいて、五輪も実際オフィシャルトレーニングといって、前日まではワールドカップとあまり変わらないですけど、試合となると一人一人目つきや態度が変わってきて、メディアの態度も変わってきて。人生が変わるという試合なので、それは大きかったなと思いました。
――ジャンプを怖いと思ったことはありますか
小林 いつも怖いと思っています(笑)。
山田 同じくです(笑)。
――先ほどの対談(※)でブランク明けが怖いというお話を伺いましたが、やはりそのようなときなのでしょうか
※山元豪、山元一馬選手での対談です。
山田 よくわからないジャンプ台に行ったときの1本目が一番怖いですね。
――後輩が入ったということで心強い部分はありますか
小林 いま受け答えを聞いていても、優梨菜は本当に真面目なので、心配になるところもいっぱいありますけど、チームメイトが増えたことで心強いですね。
――お互い学び合う部分はありますか
小林 やはりオリンピック選手なので、(私は)一応先輩ですけど、人生の先輩だなと思って(笑)。練習もストイックで自分も見習わないといけない部分がいっぱいあって、自分はまだまだだなと感じます。
山田 諭果さんはユニバーシアードでメダルを取ってトップ選手でいて色々と経験されていると思うので、自分もワセダのスキー部に入って色々と吸収させてもらっています。
――時間をともにすることも多いのでしょうか
小林 寮の部屋は別々で、授業の時間帯もかぶることもなくて練習もバラバラに行うこともありますが、土日の練習や合宿では一緒にいることが多いので、私はできるだけ優梨菜ちゃんを見て吸収しようと思っています。
――いつ頃初めて出会ったのですか
小林 小学校のころだったかな?
山田 とても優しくて頼りがいのある先輩です。
小林 なんて謙遜のできる後輩なんだろう(笑)。本当に礼儀正しくて、合宿とかでも仕事もてきぱき行ってくれて感謝しています。
――非常に真面目な性格という山田選手ですが、何かリフレッシュをする方法をお持ちですか
山田 できるだけ一人になる時間を設けています。一人になると悩みとかも自分の中で燃焼されるので、それがストレス発散だと思います。
――寮生活の中だとなかなか難しい印象を受けてしまいますがそのあたりはどのようにされていますか
小林 難しいよね…(笑)。
山田 慣れない部分もありますけど、けっこう勉強になる部分も多いので楽しみながら毎日過ごしています。
――ことしのスキー部の4年生の印象はいかがですか
山田 主将の友樹さん(佐藤、スポ4=新潟・十日町)をはじめ、高学年の方々は非常に見習う部分が多くて、特に4年生は自分たちに色々と教えてくれる部分もあって、もう少しさようならというか(笑)、共同生活できるのもあと少しなので、いる間にたくさんのことを学べたらなと思います。
小林 やはり1年生の時に感じていた4年生の像といまの4年生は少し違うんですけど、頼りがいのある4年生だなと感じています。本当にいっぱい助けられていて、ジャンプ・コンバインド部門の4年生は一人しかいませんが、傳田さん(翁久、スポ4=長野・飯山北)はしっかりしていて、感謝しています。
――いまの調子はいかがですか
山田 五輪が3年後にあるということで、ことしは色々と試す年でもあるんですけど、それがまだうまく絡み合ってなくて、思い通りに結果がついてきていない状況です。少しずつつかめている部分もあるので、もう少しでシーズンインですが、楽しみです。
小林 サマーシーズンは例年うまくいかないことも多いんですけど、ことしは中盤から徐々に自分のイメージとジャンプがつながってきたので、いまは少しケガをしているのでシーズンインに間に合うか不安ですけど、(シーズンに向けて)また調整し直してシーズンを頑張りたいと思います。
――小林選手は昨年のチャンピオンとして迎えるインカレになりますがプレッシャーはありますか
小林 いや、特にないです。ワセダ一丸となって、ことしは優梨菜もいるので、心強いインカレになりそうです。
――山田選手は初めてのインカレとなりますが、気持ちの部分ではいかがですか
山田 ワセダとしてインカレに出ることが非常に楽しみですし、自分も総合優勝に向けて少しでも力になれればいいなと思っています。
――最後にインカレでの目標をそれぞれ教えてください
小林 2連覇!(笑)
山田 自分も優勝できるように頑張ります!
――ありがとうございました!
小林の記した言葉はYOLO(you only love once/だから全力で)
◆小林 諭果(こばやし・ゆか)(※写真右)
1994年(平6)5月16日生まれ。身長169センチ。岩手・盛岡中央高出身。スポーツ科学部3年。ジャンプ競技。全日本ナショナルチームメンバー。小林選手の競技人生には兄小林潤志郎選手の存在が。ご兄妹で応援しあい高めあう姿は素敵ですね!
◆山田 優梨菜(やまだ・ゆりな)(※写真左)
1996年(平8)7月12日生まれ。身長159センチ。長野・白馬高出身。スポーツ科学部1年。ジャンプ競技。全日本ナショナルチームメンバー。将来は国際スポーツの運営に携わりたく勉強していると語ってくださった山田選手。スキーだけでなく文武両道ですね!