【連載】『結晶』第1回 松本達希×宇田彬人

スキー

ついに早大スキー部が本格始動する冬がやってきた。インカレで目指すのは創部史上初のアベック優勝。そのためには上級生だけでなく若い力の活躍が不可欠だ。今回は共に2年生の松本達希(スポ2=北海道・札幌第一)と宇田彬人(スポ2=福井・勝山)のお二人にご登場いただく。2回目となるインカレへ向けて、どのような思いを語るのか。

※この取材は9月26日に行われたものです。

「一回勝てばまた違うものが見えてくる」(松本)

昨季を振り返った松本

——昨季についての振り返りをお願いします

宇田 昨シーズンは、大学1年生になって環境も変わりました。自分の目標としては世界ジュニアという大会が最後の学年だったので、それで入賞するのが一番の目標だったのですが、入賞できませんでした。ですが、シーズン後半の全日本スキー選手権大会では日本のワールドカップとかに出ている人もみんな出て、その中で入賞できたのでまずまずのシーズンだったかなと思います。

松本 僕は、今までのスキー人生では一番良いシーズンだったと思います。インカレではGS(大回転)でも2番に入れて、それは正直自分としても(2番に)なれると思っていませんでした。僕の得意種目は回転(SL)種目なので、回転で表彰台に乗りたいなと思っていて、GSで結果が出たのでこの流れでいけるかなと思ったら回転で結果が出なかったのは悔しい点でした。ですが、まあ最低限の結果残せたかなと思います。

——ご自身のスキー人生で一番と仰いましたが、手応えなどは感じましたか

松本 僕が2位になったときの優勝者が成田秀将(東海大)さんという日本でトップクラスの選手で。正直それまでは雲の上の選手というか、勝てる存在ではなかったんです。ですが、インカレのときはトップと100分の8秒差くらいで。だから雲の上の存在だった人に、ちょっとは近づけたかなという手応えはありました。

——ことしは抜いてやるという目標はありますか

松本 目標はそこですけど。最終的には抜きたいとは思いますけど、正直まだいろいろなものが劣っているし、一度も勝ったことがないんです。まずはことしどうにか1回でも勝って、1回勝てばまた違うものが見えてくると思うので、とりあえずことしは1回は勝ちたいと思います。

——宇田選手はきょねんのインカレを振り返っていかがですか

宇田 インカレは最低限の入賞で終わったという感じでした。もう少しチームに貢献したかったんですけど、リレーとかも、全然チームに貢献できず、もっとたくさん入賞してチームのためになれたらいいなと思いました。

——そのような厳しい練習をなさる中で、体調管理などはどのようにされていたのですか

宇田 おいしいものを食べて、よく寝て、毎日ストレッチしていました。

松本 夏の埼玉は暑いので、練習すると食欲がなくなるんです。その中でどれだけ食べれるか(笑)。もともと小食なので、体重を増やすという面もありますし。食事の量に多少は気を使っていますけど。

——夏の練習はどこでなさっているのですか

宇田 夏休みになると解散して、部門ごとで練習します。クロスカントリーだったら菅平やフィンランドです。

——夏合宿はいかがでしたか

宇田 クロスカントリーは、8月の頭から3週間くらいフィンランドに行かせてもらいました。きょねんも行ったのですが、スキーに乗ったり、気候もよくて集中して良い練習ができたと思います。

松本 僕は7月の後半にアルペン部門も所沢で合宿をしたのですが、そこで捻挫をしまして。それで1か月くらい思うように練習できませんでした。9月に全体の練習があるのですが、僕はtotoというスポーツくじが助成金を出している遠征があって、それに参加しました。そのケガの影響もなく、思うように雪上でのトレーニングができたと思います。

——その遠征はどちらに行かれたのですか

松本 スイスです。ジュニアということで、20歳以下で、今回は男女合わせて8人くらい、全員アルペンでした。昨シーズンにも行かせていただいて。7月、9月、11月、1月というスケジュールで行われています。

——オフシーズンのモチベーションはどのように保たれているのですか

宇田 僕は、確かに夏の練習はきついので楽しいことを考えています。ですがそんなに嫌になることはないです。逆に僕の場合は、海外に行ったときの方がモチベーションが下がるというか、日本に帰りたくなります(笑)。海外は食事がひたすらパスタパスタパスタとかなので、日本食が恋しくなって気持ちが下がることもあります(笑)。そんなときは日本で楽しいことを想像しています。

——ちなみに寒いのはお得意ですか

松本 苦手です(笑)。

一同 (笑)。

宇田 暑いよりは寒いほうがいいですね。

松本 僕はもう確実に苦手です(笑)。ですが、スキーはレースのときにワンピースという、あのピチピチの服を着ているので、そんなに着込めないんですよ。だから雪山ではとにかく動いています(笑)。

お二人のオフの過ごし方

和やかな雰囲気で対談は進んだ

——オフの日は何をされていますか

松本 夏はオフというオフはないんです。練習がない日はありますけど。僕の場合は、月曜日をオフにしているんですけど、そこに結構授業を入れているので、特に遊ぶことはないです。体を休めることに集中してます。とりあえず寝ています(笑)。

宇田 僕も寮でごろごろしてます。本当に時間があったら入間のアウトレットに行ってぶらぶらしたりとか。自分はウィンドウショッピングが好きなので。入学して最初はアウトレットが近くにあるって嬉しかったんですけど、最近ありがたみを感じなくなって(笑)。

——松本選手はMONKEY MAJICが好きと伺いましたが、試合前に行っているルーティンはありますか

松本 僕のMONKEY MAJICブームは終わってしまいました(笑)。

——今ブームの曲はありますか

松本 最近はアーティストにこだわるのではなく懐メロにはまっています。1980年代などから2000年代など僕が小さかったころお母さんが聞いていた曲などを聞いています。なぜか耳に残っているというか、どこか懐かしくて聞いています。ですがこれは試合前のルーティンではないです(笑)。僕はあまり気にしていないです。その日やりたいことをやるスタイルです。

宇田 僕もないかもしれないです。変に決めるのも好きではないので。

——今スキー部で流行っていることはありますか

松本 全体ではないのですが一部で野球が流行っています(笑)。スキーは冬の競技なので夏の間野球をしたりしていた選手が多く、スキー以外の競技もみんな好きなので、今度試合もすることになりました。初めての企画なのですがみんな盛り上がり練習しています(笑)。

——ちなみに9人揃っていますか

松本 はい(笑)。

——松本選手は出場されますか

松本 一応センターをやる予定です(笑)。

——試合はどこの相手となさるのですか

松本 いや、スキー部同士でやります(笑)。助っ人とかもいるのですが集めました。野球以外にもサッカーなど色々やります。いろいろな動きが求められるスポーツなので器用に何でもこなせる能力がアルペンには必要だと思うので練習の一環としてやることもあります。

——宇田選手は参加されないのですか

宇田 僕はその試合は選手としてではなく主審として参加します(笑)。

——今何か他にやっているスポーツはありますか

宇田 僕は中学校までバトミントンをやっていてたまに授業に潜ってバトミントンをしています。たまにやりたくなります(笑)。

——ちなみに野球やサッカーが一番うまい選手は誰ですか

松本 みんな基本的にうまいですが、サッカーは僕かも知れないです(笑)。小学校のとき少しかじる程度でサッカーをしていたので(笑)。野球だと高校までやっていた人が多いのでかなり本格的な人が多く、レベルの高い試合ができます。

——主審の目からはいかがですか(笑)

宇田 僕はあまり野球に興味がないので(笑)。

——サッカーはやられないのですか

宇田 アルペンはサッカーがうまい人が多いのですがクロカンの選手はあまり得意ではないので僕はあまり好きではないです(笑)。

——バトミントンは行わないのですか

宇田 道具がないのでやらないですね。場所も体育館が必要ですし。

松本 サッカーはボール1つあればできますし外なのでよくやりますね。

——サッカーや野球の話題などみんなでわいわいやれるのが寮生活のいいところだと思いますが、他に寮生活のいいところはありますか

宇田 マンガを読みたいときに持っている先輩に借りて読むことです。このマンガはこの先輩、このマンガはこの部屋だったりと色々なマンガが読めることですかね(笑)。

——流行っているマンガはありますか

宇田 僕の中では今アニメでもやってるプリズンスクールがはまっています。

松本 僕は練習後などにみんなで部屋に集まってゲームしたりスッと集まれることですかね。寮生活でなかったら他の競技の選手たちとそんなに交流がないと思うので。高校まではアルペンの人としか交流がなかったですが、寮生活では違った競技の人達と交流ができるので最初は新鮮でした。

——逆に寮生活の大変なところはありますか

宇田 解散したあとに自炊しなければならないことです。練習後に自炊する気持ちにはならないです。練習して帰ってご飯作り食べて片付けなどをしていると8時とかになって疲れますからね。

「勝てるようになってから、スキーを楽しいと思った」(宇田)

インカレに向けて熱い思いを語った宇田

——スキーを始められたきっかけは何ですか

宇田 僕はお父さんがスキーをやっていて、三兄弟の兄二人もやっていて、だから気が付いたらもうやっていました。小学校や中学校くらいのときは流れでやらされている感もありましたし、練習も嫌々行っていました。勝てるようになってから、スキーを楽しいと思いましたね。負けず嫌いなので、勝てるようになってからのめり込んでいきました。

松本 僕も両親がスキーをやっていて、近くにスキー場もあったので小さい頃から遊びとしてやっていました。小学校のときにスキー部があって始めました。

—-今までで一番印象に残っているレースはありますか

松本 僕は中学3年生のときの県の全中予選です。それまで僕は全国大会に出たことがなかったんです。地元に2人のライバルがいて、小4くら今ではずっと勝っていたんですけど、小5でその2人のライバルに急に勝てなくなって。2人は中2までで全国で活躍するような選手になっていて、僕は全国大会にも出られなくて。それが悔しくて、ですが、中3の全中予選のときに、なぜか、急に覚醒したのか分からないんですけど、2人に勝って優勝したんです。2人に勝ったのが数年ぶりだったので、今までで一番嬉しかったです。そこから僕のスキー人生が上り調子になっていったんです。

宇田 初めて全国大会で良い成績とったときです。中3の全中で、入賞はできるかなと思っていたのですが、優勝しちゃって。あ、優勝しちゃったみたいな。それが一番優勝に残っています。

——ワセダのスキー部に進学されたきっかけは

宇田 すごい先輩がいたというのが一番大きいですね。同じところに行きたいと高校時代から思っていたので。

松本 最初は早稲田大学かっこいいんじゃないかという気持ちで迷っていたんです。ですが、高校3年のときにワセダの方から入らないかみたいな誘いがあって、考えるようになりました。それで調べて、スポーツ科学部があることを知りました。それでスポーツやるならスポーツの勉強した方がいいなと思って、決めました。

——スポーツ科学部で勉強されていることがスキーに生かされたりしますか

松本 スキーに直接というよりは、トレーニング方法や身体の仕組みですね。けがの要因とか勉強して、(けがを)防ぐための参考にもなります。ですが、ここまで基礎的な勉強が多かったので、直接スキーに生きているかといったらよく分かりません。これからもっと専門的な勉強をすれば生かされると思います。

——ワセダに来て良かったと思うことは

宇田 スキー部としては、オリンピックに出ているようなすごい先輩がいて、その人達と一緒に練習する機会もあるし。高校時代にあまり部員がいなくて切磋琢磨(せっさたくま)する環境ではなかったんですけど、今はみんなで一緒に練習して、学校生活でも他に陸上や水泳などですごい人たちがいます。そういう人たちと友達になって話したりとか。一緒にトレーニングとかはないんですけど。

松本 ワセダはみんなすごくストイックに練習しています。僕はあまり練習が好きな方ではないので、一人でやってるとだらけてしまうかもしれません。ですが、周りがやってるから流れに乗っていれば、励まされたり、自分もやらないといけないなという気持ちになるので、それは良い環境だなと思います。

——先輩方の印象はいかがですか

松本 基本的には優しいです。普通に生活しているときもご飯行ったり。チームをまとめる立場としてはしっかりしていてリーダーシップもある。しっかりするところはしっかりしていて、遊ぶところは遊ぶという感じで、尊敬しています。

宇田 先輩たちは一緒に暮らしていてすごく楽しいです。しっかり真面目なときは真面目で、尊敬します。

——今のチームの雰囲気はいかがですか

松本 まだ先なので、今はインカレへ向けてどうこうと言うわけではないのですが、今はそれぞれができることを着々とやっていて非常に良い雰囲気だと思います。

宇田 みんなで切磋琢磨(せっさたくま)してとても良い感じだと思います。

——ことしのインカレ会場は鹿角ですが、今まで滑られたことはありますか

松本 僕はあります。

宇田 僕もあります。

松本 アルペンの会場は比較的難しいコースです。アルペンは途中でコースアウトしてしまうことも多いですし、難しいコースになるほどコースアウトの確率は高まるので、あまり安心できません。

宇田 クロスカントリーはコースアウトというのはそこまでないのですが、きょねん経験しました。下りが急すぎてコース外に出ちゃって。ストックが折れてもうタイムもロスしたので棄権しました。初めて棄権しましたね。

——それぞれことしの目標を教えてください

松本 インカレの目標は優勝で、きょねん2番になったのできょねんと同じ結果では満足できないし優勝しかないです。 後は、僕はことしまで世界ジュニアという大会に出ているので、まずは出て、最低限入賞を目標に頑張ろうと思います。

宇田 インカレでは優勝を狙います。一つでも多く入賞して、総合優勝に貢献したいです。

——今シーズン、そしてインカレへ向けての意気込みをお願いします

松本 まあ、頑張るぞ!

宇田 短いな(笑)。やはりこの1年生から4年生までのメンバーで戦えるインカレはことしだけで、今の4年生も大好きな先輩たちなので、その先輩たちと一緒に総合優勝という形の結果を残すことが一番良い思い出になるというか、恩返しになると思うので、そこを目指してがむしゃらにシーズン戦いたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 高橋弘樹、丸山美帆)

お二人の仲の良さを伺える一枚だ

◆松本 達希(まつもと・たつき)(※写真左)

1996年(平8)1月12日生まれ。身長173センチ。北海道・札幌第一高出身。スポーツ科学部2年。アルペン競技。全日本ナショナルチームメンバー。サッカーの実力は部内でトップだと語った松本選手。持ち前の運動センスをマルチに発揮されているのですね!

◆宇田 彬人(うだ・あきひと)(※写真右)

1995年(平7)7月25日生まれ。身長180センチ。福井・勝山高出身。スポーツ科学部2年。クロスカントリー競技。気分転換にウインドウショッピングをするという宇田選手。意外な一面を明かしてくれました!