最終日を迎えた全日本学生選手権(インカレ)。前日までの結果を受け、得点差により女子の総合優勝が確定した一方で、惜しくも男子は総合優勝の可能性が潰えた。明暗分かれる結果となったが、選手たちは最後まで熱い戦いを見せる。インカレ最終種目となった女子3×5キロリレーと男子4×10キロリレー。圧倒的な強さを見せた女子は、トップを守りきり見事優勝。男子も粘りの走りで戦い抜き、3位でレースを終えた。
歓喜のゴールとなった
スプリント1.2キロクラシカルで優勝した半藤成実(スポ3=長野・飯山)、10キロフリーで頂点に輝いた大平麻生(スポ2=新潟・十日町)を擁する早大は、3×5キロリレーで圧巻のレースを展開した。1走の半藤が序盤で一気にトップへ躍り出ると、そのまま後続との差を広げ滝沢こずえ(スポ1=長野・飯山)へリレー。既に2位に30秒以上のリードがあったが、滝沢は攻めの姿勢を緩めることなくさらに他大を引き離す。区間1位の快走で走り切り、アンカーの大平を最終周へと送り出した。コース脇から送られる応援を力に大平は積極的にレースを進める。ついに一度も首位を譲ることなく最後の直線に入ると、大平の顔には笑みが。大歓声に迎えられる中1位でゴールを駆け抜けた。
走りでチームを引っ張った佐藤友副将
時折強く雪が降る中行われた男子4×10キロリレーでは、白熱した戦いが繰り広げられた。4人が1周5キロのコースを各2周するこの種目で、1走を務めたのは佐藤太一(スポ2=秋田北鷹)。序盤は混戦となるが、2周目に入ると一時トップに立つ。その後順位を落とし、5位で宇田彬人(スポ1=福井・勝山)へリレー。順位変動がありながらも、表彰台を目指し懸命な走りで宇田は前を追った。3走の佐藤友樹副将(スポ3=新潟・十日町)は4位でスタートすると、一気に3位に追いつきそのまま前へと躍り出る。その後も攻めの走りでレースを展開。圧倒的なスピードを披露し単独2位で田中聖土(スポ1=秋田・花輪)の待つリレーゾーンへ。アンカーの田中は意地の走りを見せるが、後ろを走っていた東海大にとらえられ3位でフィニッシュ。悔しさが残ったものの、表彰台に輝きインカレ最終戦を終えた。
悲願の男女アベック総合優勝は今大会も逃すかたちとなってしまった。しかし、昨年30点近くあった東海大との得点差は今回15.25点。決してアベック優勝が遠い夢ではないことを証明した。また、今回1年生の活躍が多く見られたことも収穫と言えるだろう。次こそ男女ともに頂点へ──。チーム一丸となって戦うインカレが幕を閉じ、己に『勝つ』ための日々が再び始まった。
(記事 副島美沙子、写真 副島美沙子、吉田麻柚)
全日程を終え笑顔を見せる選手たち
結果
▽女子総合順位
優勝 早大 92.25点
2位 東海大 76点
3位 日体大 43.5点
▽クロスカントリー女子3×5キロリレー
優勝 早大 44分3秒5
1走(クラシカル) 半藤 15分12秒8
2走(フリー) 滝沢 14分11秒1
3走(フリー) 大平 14分39秒5
▽男子総合順位
1位 東海大 101.5点
2位 早大 86.25点
3位 日大 70.75位
▽クロスカントリー男子4×10キロリレー
3位 早大 1時間51分31秒1
1走(クラシカル) 佐藤太 28分52秒7
2走(クラシカル) 宇田 28分39秒46
3走(フリー) 佐藤友 26分36秒8
4走(フリー) 田中 27分21秒8
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コメント
倉田秀道監督(昭59社卒=東京・早実)
――女子総合優勝、男子総合準優勝という結果を受けて、感想をお願いします
女子は順当、男子は取りこぼしたという感じです。インカレに向けてワセダとライバル各校の戦力分析を入念に行ってきましたが、女子の総合優勝はかなり濃厚と踏んでいました。結果的にケアレスミスはあったものの、どの種目もそつのないレースができました。
男子はここ数年間で最も総合優勝に近いと考えていましたが、クロスカントリーでの取りこぼしが響き自ら総合優勝を逃したと思っています。
――女子総合4連覇という結果に関してはどのように捉えていますか
4連覇を意識せず、「今大会に勝つ」という気持ちでいましたので、足元の戦いに集中した結果、4連覇がついてきたという感じです。とはいえ、早稲田大学スキー部95年の歴史の中で過去最高の連覇は4連覇ですので、それに並んだことになります。おそらく、前回の4連覇は50年ほど前のことだと思うので、偉業と言ってもいいくらいです。4年生から「監督、4年間勝てて幸せです」と言われ、なにか感慨深いものがありました。
――大学スポーツという選手の入れ替わりが激しい中で、強さを保つのは難しいと思いますが、勝利の要因はどのようなところにあるとお考えでしょうか。
大きな要因としてはいくつかありますが、この7~8年間に選手の意識改革やトレーニングの最適化、体系化を推し進め、定着してきたことと、それにより好循環サイクルに入ってきたことだと考えています。特徴的なポイントとしては、 選手たちの意識の高さが向上してきたこと(考えることのできる選手に育ってきたこと)、 トレーニング量を増加し、その中から質の向上を得られたこと、 フィンランドを拠点とするトレーニングなど強化策が体系的に確立してきたこと、あらゆるトレーニングを模索し、最適化が図られてきたこと。これらをまとめて簡単に言えば、ワセダで強化し、成長させる環境が整備されたということ、になるのでしょう。
――男女アベック総合優勝を逃すかたちとなりましたが、今後強化していきたい部分、勝利のために足りなかった部分はどのようなところだったと思われますか
男子が総合優勝を逃した最も大きな要因は、「気持ちで負けた」ということと認識しています。インカレには絶対勝つ、俺は負けないといった強い気持ち、信念が他校の選手よりも劣っていたように思いました。私の強化方針もあって、ここ数年クロスカントリーがワセダのお家芸と言われてきましたが、そのクロスカントリーで取りこぼしたのは情けないです。まず、クロスカントリーの再強化、最教育を行います。インカレ期間中の選手を見ていても、熱い気持ちが伝わってこなかったし、レース中でも線の細さを感じざるを
得ませんでした。危機感も不足していたかもしれません。
――今大会では男子は終盤まで優勝も見えていて、粘りのレースを展開されていたかと思いますが、その点についてはどのように評価されていますか
選手には、夏場の練習から、「粘り強いレースをした者が勝つ。強い者が勝つのではなく勝った者が強いのだ」と伝えてきました。粘り強さに加えて、「インカレでは得点を取る滑りが必要だ」とも伝えてきました。アルペン、コンバインド、ジャンプは粘り強く、ワセダらしいレースをしてくれたと思っています。かなりプレッシャーもかけましたが、よくやってくれました。とりわけ、1年生がしっかり入賞し、箸にも棒にもかからなかった選手が粘りに粘って入賞したりと、気持ちがしっかり入っていました。このことは、強化策が正しかった証左であるとも言えます。唯一、クロスカントリーは佐藤友樹副将(スポ3=新潟・十日町)のみが粘っていましたが、一人で背負ってしまった点が残念でした。
――今大会のMVPをあげるとすればどなたでしょうか。理由もおうかがいしたいです
男女それぞれでMVPを選ばせてください。男子は2名挙げたいです。アルペンの安藤(佑太朗、スポ3=北海道・北照)、コンバインドの神島(実孟、スポ2=青森・五所川原農林)です。安藤は3種目とも3位表彰台と、安定した滑り、それもフォア・ザ・チームの滑りをして結果を残し、チームに勢いを与え盛り上げてくれました。神島は最も不安な選手のひとりで、1年前まではインカレ入賞はほど遠い選手でした。それがここまで伸びてきて入賞したことは最も大きなトピックスと言ってよいと思います。女子も2名挙げたいです。ジャンプの小林(諭果、スポ2=岩手・盛岡中央)とクロスカントリーの4年生。小林については、女子ジャンプはインカレではアルペンやクロスカントリーの陰に隠れがちですが、初めてのジャンプ台で2本目に逆転してインカレのタイトルを獲ったことで、ユニバーシアード・全日本・インカレと国内外のビッグタイトルを総なめにしたことになります。クロスカントリーの4年生は、それぞれ1種目しか出場できませんでしたが、1点の重みをしっかり後輩に伝えて自らも粘り強いレースをしてくれました。また、必死になって後輩選手のサポートを行いワセダへの想い、勝利への想いを肌で感じさせてくれました。
――今大会の収穫を教えてください
1つめの収穫は、5種目で優勝したこと。個人競技ですからアタマを獲ることは大事なことです。2つめの収穫は、多くの1年生が入賞を果たしたこと。来シーズンにつながる大きな成果です。3つめの収穫は、競技力が劣っていた選手が初入賞したこと。ワセダで強化し伸びてきたことを実感できましたし、本人も自信につながると思います。
◇アルペン男子
尾形峻主将(スポ4=群馬・嬬恋)
――女子総合優勝、男子総合準優勝という結果になりましたが、最後のインカレを振り返って感想をお願いします
女子はさすがといったところで、年々選手の層も厚くなって、とにかく何においても強いです。男子は悲願の男女アベック優勝がかかっていただけに悔しい結果に終わってしまいました。女子に比べると人数も少ないので、戦力不足かなと思われますが、少数でも一人一人がダイヤの原石なので爆発的な力、トップ選手になれる力を秘めています。今回は例年通りの結果に終わってしまいましたが、四年間で一番アベック優勝に近いところまでいけたインカレだったと思うので、このメンバーの、このチームの主将として共に戦えたことを、心の底から楽しめました。
――主将としての1年を振り返って、大変だったこと、主将をやっていて良かったことをおうかがいしたいです
選手の個が強すぎるが故に、チームとして一つにまとめることが一番苦戦しました。力で強引にまとめようとすれば、個を潰してしまいますし、逆にゆるすぎたら個が強くなりすぎてチームとして成り立たなくなってしまいます。主将としてオンとオフの切り替えを徹底しました。練習、私生活の全ての場面において、問題が起きた場合や規律が乱れてきた場合などには、真剣に物事を伝えるオンの自分。また、迷惑がっていた後輩もいるかどうかはわかりませんが、人と話すことが好きなので普段から積極的に部員の部屋などに行ってはくだらない話や人生論などをしたり、男女部員関係なくオフの日に誘って色々なところに出掛けたりしました。そんなオフの自分。二種類の自分を上手く使い分けることで、チームの雰囲気を高いレベルでまとめることが出来たと思っています。
――インカレを終えて、チーム、監督、そして同期にはそれぞれどのような思いがありますか
インカレ期間中の全体ミーティングでも話はしたんですが、僕自身、同期や後輩たちと比べても成績もなく今回メンバーにすら選ばれていないので、主将でありながら『一番弱い主将』なんです。一番弱いからこそ見える世界があり、誰よりも周りのことが見え、気にかけられたと思います。そして、一年間皆からは色々なことで助けてもらっていたと思います。同期にはチームをまとめるにあたって、常に意見交換をしたり、助言をくれたりと助けられました。また、強い後輩達がいると練習など感化されました。最高のチームでスキー人生にピリオドが打てたと思います。そして、早稲田大学に入学しスキーを続けることが出来たのも、倉田監督のおかげであって、監督には感謝してもしきれません。高校二年時に『とにかく早稲田に入りたい』と志願してから、色々とサポートしていただいて、早稲田に入学することができました。本当に有り難うございました。>
――チームを引っ張っていく上で大切にしていたことは何ですか
前主将や数多くの歴代主将の皆さんは成績優秀で、背中で語る、引っ張っていくタイプでしたが、僕には合わないというか、性格もがつがつしていないのでまったく違うタイプの主将でした。スポーツ選手なのに平和主義なんです。僕が大事にしていたのはチームの雰囲気を良くすることです。部員一人一人を常に気にかけ、声かけをよくしたり、ご飯に誘ったり、遊びに誘ったり、練習にも誘ったりと、部員たちとのつながりを大切にしました。誰一人として欠けないように下から支えるイメージでした。タイプでいうなら、縁の下の力持ちタイプですね。
――早大スキー部での4年間を振り返っていかがですか
楽しい一時ってあっという間に過ぎますよね。そんな感覚です。今まで生きてきた中でも一番短く感じた四年間でした。生きてきたといっても人生の半分もいってはいないんですが。とにかく色々なことあって最高の人たちと出会い、最高の時を過ごせたと思います。普通の大学生では味わえないような感覚だと思います。楽しいことも辛いことも尋常じゃないレベルでありますからね。
――後輩にはどのようなスキー部をつくっていってほしいですか
つくるというか、試行錯誤していけばいつのまにかに最高のチームが出来ている。という感覚だと思います。後輩たちには、「自分らしく、今という時を楽しめ!」と耳にたこができるくらい、伝えたいです。
◇クロスカントリー男子
佐藤友樹副将(スポ3=新潟・十日町)
――男子総合準優勝という結果を受けていかがですか
正直なところ狙えるチャンスが大きかっただけに悔しい思いも強いです。アルペン、コンバ部門がしっかりと良い滑りをしてくれたのにクロカン部門がそれにこたえることができなかったことが大きな原因だと考えています。
――リレーは接戦だったかと思いますが、どのようなレースプランで走っていらっしゃいましたか
2走がどんな順位できても、自分の滑りをしようと考えていました。具体的には最初は落ち着いて滑り、2周目でしっかり前との差を縮めようと考えていました。しかし、レースではそれができず、2走で前との差が大きかったこともあり落ち着くことができず後半でばててしまいました。
――リレーでの3位という結果を受けていかがですか
妥当な結果だと思います。上位2チームと比べてワセダのメンバーはやや劣っていると考えていたので、勝つことは難しいかなと考えていました。そんな中で一人一人しっかり滑りなんとか表彰台へは乗ることができたので最低限の結果は残せたと思っています。
――今後どのような早大スキー部をつくっていきたいですか
まずは自分がチーフを務めるクロカン部門をもっと強くしたいと思います。クロカンはアルペン、コンバ、ジャンプのように天候や運によって左右されにくい種目であり実力差が明確に出る競技だと考えています。そこでしっかり点数を獲得できるように強化に力を入れていきたいです。チーム全体としては、各部門のチーフと連携を取りながらチーム全体が一つの目標に向かって練習に取り組んでいけるようにミーティングを様々な場面で行っていきたいと考えています。
◇クロスカントリー女子
半藤成実(スポ3=長野・飯山)
――第1走はどのような意気込みで挑みましたか
絶対トップで帰ってくると決めていました。トップで帰ってきて2位と10秒は離したいと思っていたので、その通りにできて良かったです。
――昨年も第1走でしたが、そのときは3位で第2走につなげていました
そうですね。1年間ずっとそれが悔しかったので、どの種目よりもこの種目に力を入れていました。
――結果的に2位と大きく差をつけての優勝となりましたが
それにはびっくりしていて、出来過ぎたなという感じがあります。
――今回はスプリントとリレーで優勝を獲得しましたがお気持ちは
きょねんとても悔しい思いをしたのですが、今回は優勝2個できたし、素直にうれしいですね。1年間の頑張った成果が出たなと思います。
大平麻生(スポ2=新潟・十日町)
――どのようなレースプランで試合に臨まれましたか
どんな順位でタッチされても絶対に一番でゴールしたいと考えていました。展開によって臨機応変に対応したかったので特にレースプランは考えていませんでした。
――2位に1分以上の差をつけての優勝となりましたが、結果を受けていかがですか
1、2走までで2位とはかなり差があったので私は落ち着いて滑ることができました。二人に感謝してます。
――女子総合優勝、4連覇となりましたが感想をお願いします。
の結果に少しでも貢献することができてうれしく思っています。ことしはきょねんよりもOBの応援、サポートが多く、早稲田大学のためにという意識が強かったです。多くの方が応援に来てくださり、早稲田大学スキー部の歴史の重さも感じました。来年も連覇がかかる大会になると思いますが早稲田大学一丸となってさらにレベルアップしていけたらと思います。応援ありがとうございました。
滝沢こずえ(スポ1=長野・飯山)
――最終種目のリレーにはどのような意気込みで臨まれましたか
ワセダのぶっちぎり優勝に貢献したいので、まずは自分の滑りをしようと思いました。他のチームと差をつけるのなら、私が任された2走だと思ったので、全力で滑りました。
――半藤選手がトップで帰ってきて、どのようにレースを展開しようと思われましたか
大差のトップだったので、気持ちはかなり楽になりましたが、もっと差をつけようと思い、全力で滑りました。
――リレーの優勝を受けて感想をお願いします
やっぱり早稲田は強いチームだと思いました。そのチームで滑れて優勝できたことはとてもうれしいです。
――初出場のインカレで女子総合優勝、4連覇となりましたが今大会を振り返っていかがですか
初インカレ、正直こんなにチームの為にみんなが挑んでくると思っていませんでした。インカレ以外にもレースを積んできて、大して変わらないと思っていましたが、周りのチームに対する思いの強さをものすごく感じました。みんなの必死で1点を取りにくる姿を目の当たりにし、私もようやくスイッチが入ったといった感じです。チームの為にどれだけ自分の1点が大切なのか理解した時の、自分でつかみ取った得点はすごくうれしかったです。チームに貢献できた喜びも大きかったです。1人じゃなし得ない総合優勝。ワセダみんなでつかみとった総合優勝の連覇をこの先も守っていきたいです。