【連載】『Go for the win』第2回 小林諭果

スキー

 早大スキー部唯一の女子ジャンパーとして入部1年目から活躍をしてき

た小林諭果(スポ2=岩手・盛岡中央)。2度目の全日本学生選手権(インカレ)を迎え

るにあたり、昨シーズンの振り返りとインカレへの意気込みを語っていただいた。

※この取材は6月17日に行われたものです。

個人としては悔いの残ったインカレ

 笑顔でインタビューに応じる小林

――昨シーズン、ワセダを背負い初めて挑んだインカレで2位

という結果になりましたが振り返っていかがですか

初めてのインカレで本当にこういう空気なんだというのが出場して初めて分かって。

結果が思うように残らなかったりしたので、難しいのだなと感じました。

――やはりインカレは他の大会とは違う雰囲気なのですか

そうですね。大学ごとで戦うというのがインカレだけなので、プレッシャーとかもあ

ったと思うのですが、そこできちんと結果が残せなくて先輩方には迷惑をかけてしまった

なというのはあります。

――インカレは小林選手の地元の岩手県で行われましたが、その

ジャンプ台は飛んだことはありましたか

いえ、あまり飛んだことはなかったです。きょねん1回も飛ばずにことし久しぶりに

飛びました。あまり好きではない、苦手な台でした。そんなことは言っていられないので

すが(笑)。

――台が違うと飛びづらさは変わってくるのですか

得意不得意があります。この台得意だなというのがあっても、違う台だったら飛べな

かったという感じで。

――インカレ個人2位という結果についてのお気持ちは

出場人数が少ない上にワールドカップの選手が出ていない中での結果だったので、悔

しいという気持ちが大きいです。

――インカレでは部としての目標であった総合優勝は果たしま

したが、それに関してはいかがですか

同期の大平麻生(スポ2=新潟・十日町)の活躍がすごく刺激になりました。個人の

スケーティングとクラシカルでどちらも優勝して、応援に行ったリレーでも女子が優勝し

たので本当にうれしかったです。自分の2位という結果はそんなに優勝に貢献すること

はできなかったのですが、初めてのインカレで先輩方のかっこいい姿や同期の姿も見れて

、優勝という形で終われてうれしかったです。

――同期の活躍というのは刺激になりましたか

そうですね、負けていられないなと思ってまた頑張ろうと思うことができました

――昨シーズンは全日本選手権(全日本)で初優勝に輝きまし

たが振り返っていかがですか

ワールドカップの選手がいない中での試合だったのですが、自分自身やっと調子が合

ってきて全日本に臨めました。試合は本当はジャンプが2本行われるのですが、風の影響

で1本で終わってしまって。たまたま優勝できたという感じなのですが初めての優勝でう

れしかったです。

――シーズン中盤から調子が上がっていたようですが

全日本の優勝とその後に行われた大倉山での試合での優勝がありました。ジャンプが

自分のイメージしていたものにだんだん近づいてきて、結果をきちんと残すことができた

のかなと思います。

――イメージしていたジャンプとはどのようなものでしたか

前半の方は楽しく飛べていなくて。周りと比べてしまったりしていたのですが、後半

は自分のジャンプをしようと思って、楽しく飛ぼうという気持ちでやりました。

――インカレが終わって見えた課題はありましたか

メンタル面での弱さが明確になってしまったことと競技に対してまだまだ練習不足か

なというのも感じました。調子の合わせ方も大学1年生なのに合わせられなかったり、選

手としてまだまだ成長できるのかなと思いました。

――以前の対談ではご自身の弱点はメンタル、脚力の弱さ、練

習嫌いだとお話していましたが、この1年で変化はありましたか

練習嫌いは直っていないのですが、目標ができたらそれに向かってやりたいことがき

ちんと出てくるようになりました。やらなければいけないこととかも自分で考えるように

なったので、充実した練習はできていると思います。メンタルはまだまだ弱いのですが、

きょねんと比較すると少し成長できたのかなと感じています。2年生になってみて1年生

のころは手探りで練習とかもしていたのですが、先ほども言った通り、いまはやらなけれ

ばならないことが見えてきたので、あまり悩まずにやることはやれるようになったのかな

と思います。でも脚力の方はまだまだです(笑)。

――脚力を鍛えるために何かしていることはありますか

ことしの春から今までの方とは別のウエイトの先生についていただいているので、

自分に合ったメニューとかで体の改造から始めています。

――その先生は専属でついてくださるのですか

大学の先生なのですが、週に1回ついていただいています。脚力はまだ全然です。捻

挫をしてしまってあまり練習ができなかったので。

――いつケガをされたのですか

春ですね。

――練習のときにですか

そうですね。今シーズンはまだ始まっていないので。

――いまはオフシーズンですが、どんな練習をなされているの

ですか

バイクを漕いだり、走ったりですね。あとは基礎のトレーニングである体幹や筋肉ト

レーニングとか軽いウエイトから始めています。ジャンプ部門は飛ぶことができるので白

馬に飛びに行ったりしています。

――そのような練習メニューはご自身で考えるのですか

そうですね。土日はやることが決まっているので平日は大体自分で考えてやっていま

す。

――きょうも練習はあるのですか

はい。きょうはウエイトの日なのでこのあとにやります。

――1日に何時間くらい練習するのですか

私は全然少ないです(笑)。言えないくらい少ないので恥ずかしいです(笑)。

――他の方は基本的にどのくらいやっているのですか

多分競技性なのですが、クロスカントリーの選手は1日に私の倍以上練習していると

思います。

――走ったりしているのですか

そうですね。多分基礎が走ることなので、私の2~3倍くらい走っていたりとかしま

すね。練習し過ぎでしょと思うくらい(笑)。

――練習は競技ごとにするのですか

個人でやります。部門練習というのがあってまとまって練習したりとかもしているの

ですが、違う競技でやることはめったにないです。

――現在は平日は陸上で練習されているということですね

はい。陸上でできることをやっています。

――以前の対談の際に強みは身長を生かしたジャンプとお話し

ていたのですが、いまもその強みは健在ですか

できるだけ発揮できるように頑張っているのですが、やはり高梨沙羅ちゃん(クラレ)

は身長が小さくても飛べているので、大きいのに飛べないというのは重いのかなと思って

。減量します!(笑)

――重さはジャンプに関係するのですか

体重によって板の長さが変わって、もらえる風の大きさが変わってくると思うのです

が、私はオーバーをしているので痩せます(笑)。私は規定より短い板を履いているので

、もうちょっと体重を軽くできるんです(笑)。

――高梨選手の話も出ましたが、ソチオリンピックではジャン

プの選手の活躍も目立ちましたが、それに関してはいかがですか

普段一緒に合宿に行ったり、大会に出たりしている同世代や下の世代の子たちがオリ

ンピックで活躍していて自分はまだあの場には立てないなというのも実感したし、すごい

なと思いました。自分も4年後のオリンピックを目指したいなと思いました。

――日本のジャンプに対する注目度も上がったと思いますが

男子の葛西紀明選手(土屋ホーム)の金メダルや団体のメダルは本当に格好よかった

し、もっとジャンプのことを多くの人に知っていただけたらいいなと感じました。

――ワセダのOBからもメダリストが出ましたね

もうすごかったです。テレビでやっていなかったので、ライブでパソコンの前にみん

なでかじりついて見ていました。インカレの後半のときですよね。ミーティングの前だっ

たのですがみんなで集まって応援して、本当にかっこよかったです。

――インカレでのやる気にもつながったのですか

そうですね。先輩方が頑張っているから自分たちも頑張ろうということと、そのとき

オリンピックに出ていてインカレに出られなかった渡部善斗さん(平26スポ卒=現北野

建設)と宮沢大志さん(平26スポ卒=現JR東日本スポーツスキー部)から部員全員にメ

ーリスが回ってきて「俺らはここで頑張っているから、お前らは岩手で頑張れ」みたいな

のが送られてきて、モチベーションは上がりました。

隠れ家のような寮

――普段オフはあるのですか

週に1回授業も練習もないオフの日を作っています。多分他の競技だったらできない

と思うのですが(笑)。そのオフの日にはやりたいことをやっています。ひたすら寝てい

たりだとか(笑)。「大丈夫?」と言われるくらい私は寝るので、それで身長も伸びたと

思います(笑)。

――スキー部は冬が忙しいので春に授業を詰め込むとお伺いしま

したが

前期に取れるだけ取ろうという感じですね。

――それは大変ではないのですか

冬に授業に出ていないのでむしろこれが普通なのかなと思っています(笑)。

――2年生ということでゼミの選考も始まっていると思いますが

何を選んだのですか

私はいまトレーナーコースなのですが、全然関係のないコーチングコースのゼミにし

ました(笑)。

――みなさん寮に住んでいるのですか

はい。いままで6人部屋だったのですが、ことし部屋が7人に増えてわちゃわちゃし

ています。

――部屋はどんな作りなのですか

2段ベッドが4つあって、最大で8人まで入ることができるのですが、ちょっと狭い

ですね(笑)。

――最初寮に入ったときはどのように感じましたか

絶対生活できないと思いました。洗濯物もジャングルみたいになっていたりして(笑

)。でも隠れ家みたいで面白いです(笑)。

――2年生になって寮生活には慣れてきたのですか

後輩はうるさくしないようにとかすごく気を遣ってしまっていると思うのですが、2

年生になって私は気が楽です(笑)。部屋は1、2年しかいないので。

――では3,4年生が同部屋ということですか

そういうことではなくて部屋ごとになのですが、私たちの部屋が一番大きな部屋なの

で1年生と2年生だけが入っています。

――ずっとその部屋なのですか

きょねんとことしはそうでした。来年はさすがに(笑)。あと、ことしは部屋の模様

替えもしました。人数が増えたので少しでも自分のスペースを確保しようと思って。

――部屋割りは同じ種目の人で分けられるのですか

全然関係なくて、先輩方が選ぶのですが、大体全部の種目が一緒になるようにとして

いるみたいです。でも私の部門は1人しかいないですし、ほかの部門は2つしかないので

(笑)。

「自分がやることをやるだけ」

 早大初の女子ジャンパ―としてことしも活躍が期待される

――いつからシーズンは始まりますか

7月に試合があるのでそこからですね。そこできちんと結果を残してメンバーに選ば

れるようなら、海外のサマーグランプリに出場できます。もしそのメンバーに落ちたら国

内の試合になります。

――海外と日本では台の違いはあるのですか

日本のジャンプ台は夏に飛ぶときに全部人工芝で水をまいてつまらないようにしてく

れているのですが、海外だと天然の芝なので滑ります。着地するところが草できょねんは

初めてだったのですが、ビビりながら飛びました。でも海外の台の方が気楽に飛べますね

。初めて飛ぶ台なので先入観などなしにやらなければいけないことができます。

――着地は衝撃が大きそうですよね

着地は意外と衝撃来ないんですよ。普通にトンと降りるくらいです(笑)。痛くはな

いですが、距離を長く飛ぶと着地がしづらくなるんですよ。でも私は上に落ちるので全然

です(笑)。

――海外へ行くのは精神的にも金銭面的にも大変だと思いますが

お金のことは親に感謝しなくてはいけないですね。いまは同年代や年下の子たちが活

躍していて、オリンピックに出た子たち以外にもどんどん強い子が出てきているので、負

けられないです。

――強化選手に選ばれるための意気込みはありますか

きょねんは何もかもが手探りだったのですが、今シーズンは大体何をやらなければな

らないとかが分かってきたので頑張ります。考えすぎずに上を目指したいと思います

――ことしから後輩もできたと思いますが、後輩との関係はいか

がですか

私はトップアスリート入試だったのですが、コンバの後輩と一緒に練習していく中で

私の方ができないことが多くて、後輩に「諭果さんってトップアスリートですよね?」と

聞かれて笑われてしまいました(笑)。後輩はみんななんでもできる人たちなので見習う

ことも多いです。逆に刺激を受けています。

――先輩となって意識していることはありますか

指導するということはあまり私からはできないのですが、後輩を見て自分も気を付け

なければいけないようなことが見えてきたり、逆に上に立って冷静に見てみて、「ここは

もっとやらなければ」と感じることも出てきました。

――女子ジャンプの種目の選手はことしも1人ということで期

待されることも多いと思いますが

そうですね。自分がやることをやるだけなので、部に迷惑をかけないように頑張りま

す(笑)。

――ことしはご自身にとってワセダに入って2回目のインカレ

となりますが、目標はありますか

ことしのインカレは場所が変わって長野県で行われるのですが飛んだことがない台な

ので不安ではあります。どの台に行ってもやることは同じだと思うし、そこまでに自分の

やらなければならないこととかを確立していってきちんと飛べるように頑張ります。

――ありがとうございました!

(取材・編集 戸田郁美、松本理沙)

 インカレに向けた意気込みを書いていただきました

◆小林諭果(こばやし・ゆか)

1994(平6)年5月16日生まれ。ジャンプ競技。岩手・盛岡中央高出身。スポ

ーツ科学部2年。全日本ナショナルチームランクC。時間に大きく余裕があるときは一日中

寝ているという小林選手。よく寝ることが競技で実力を発揮する秘訣(ひけつ)なのかも

しれません。