早大スキー部のお家芸・ノルディック複合(複合)。この競技ではこ
れまで多くの日本代表を輩出してきた。それに続くべく、躍進を続けるのは、山元豪(ス
ポ2=富山・雄山)。昨季の国際大会を経験や、現在、そして今後の目標まで、さまざま
なことを語っていただいた。
※この取材は6月17日に行ったものです。
「自分で追い込むということを意識してやっている
」
落ち着いた様子で取材に応じる山元
――オフシーズンですが、何かマイブームなどはありますか
いまちょうどワールドカップがやっているので、みんなでサッカーを見て盛り上がっ
ています。きょうも朝の1時からドイツ対ポルトガル戦を見ていました。
――サッカーはお好きなのですか
そんなに詳しくはないのですが、見るのは好きです。
――サッカーなどの他のスポーツから刺激などを受けることはあ
りますか
そうですね。見ていて面白いです。
――2年生になって、学業面で変わったことはありますか
1年生の時は勉強の仕方とかもいまいち分からなくて、いろいろ要領も悪くて単位も
落としてしまったのですが、ことしは先輩に聞いたりもして大分つかんできて、勉強の方
も充実しています。
――特に好きな科目などあったりしますか
授業名で言ったら『コンディショニングデザイン論』っていう授業です。トレーニン
グのプランニングだとか、どういうトレーニングが競技にどういう風に生きてくるのかと
いった、競技にダイレクトに関係してくる内容なので、聞いていて面白いです。
――今後のゼミや専攻は
ゼミはトレーナー系のゼミで、トレーナー志望というわけではないのですが、体の仕
組みなどを知ることで競技につなげられるかなと思い決めました。
――後期はあまり学校に来られない時もあると思いますが
後期も前半は授業に出られるので、前半のうちにしっかり先生とやり取りして、レポ
ートとかを出してもらえるのであればお願いするといった感じですね。
――競技と学業の両立で一番大変なことは
スポーツ科学部は基本的にスポーツのことに関する勉強が多いので、中高の勉強とは
ちがってすごく興味もわくので、難しい分野もありますが楽しく受けられるので、内容も
入ってきやすいので、そこまで両立が難しいというわけではないですね。
――雪のない時期の練習はどのようにされていますか
クロスカントリーの方ではランニングだったり、雪の上とは少し違いますがローラー
スキーを使って実践的な練習を取り入れるようにしています。スキージャンプの方では、
毎週末長野の白馬ジャンプ競技場の方に行っているので、それもまた冬とは少し違うので
すが、飛ばないよりは全然良いので、そういった施設を使わせてもらって練習をしていま
す。
――他の部門の方と一緒に練習されたりもしますか
僕は基本的にずっと一人でやっています。授業などもあって時間が合わないというこ
ともあるのですが、スキーは個人競技なので卒業してからも一人で練習していかないとい
けないということがあるので、今の段階から極力自分でメニューを考えて、自分で追い込
むということを意識してやっているので、他の部門との練習というのはたまにはあるんで
すけどほとんどしないです。
――メニューを組み立てていくうえで特に意識していることや
強化したい部分はありますか
昨年、ジャンプはそこそこ良かったのですがクロスカントリーで順位を落としてしま
うことが多かったので、クロスカントリーの方を重点的に強化しています。この時期はベ
ースからつくって、長い時間をゆっくりのペースで走るということを確保することを意識
しています。
――後輩が入ってきましたが何か変わった部分はありますか
1年生の時と違って、自分が指導する立場になったので、寮生活の中で回りを見て行
動しないといけないなと思うし、競技でも部自体をリードしていかないといけないという
か部を盛り上げていかないといけない立場になりました。そのあたりが1年生の時の受け
身の立場から変わったと思います。
――複合部門にも近田隼人選手(スポ1=北海道・下川商)が入
ってきましたが、いかがですか
練習とかも結構ストイックにやっているので、まだ粗削りなところはありますけど、
そういうところも指導したりして、切磋琢磨(せっさたくま)していきたいです。
――チームで流行っていることはありますか
それこそサッカーのW杯ですね(笑)。寮の食堂に大きなテレビがあるのですが、み
んなで試合を集まって見るというのがいますごく熱いです。
「頭を使うようになってから失敗することが少なくなった
」
――昨シーズンはどのようなシーズンでしたか
もちろん目標にははるか及ばなかったシーズンでしたね。自分の持てる力というのは
試合で100パーセントに近いものは出せたと思うのですが、大事な時とかに、雪の条件
だったり駆け引きだったりという自分の力以外の部分がうまくいかなかったので、そうい
ったチャンスを物にできなかったシーズンでもあるかなと思います。
――昨季一番印象に残った試合は
山形でやった国体ですね。兄が昨年まで現役で複合をやっていたのですが、国体で引
退してしまって。小さい時から兄からいろいろ教わりながら一緒に競いながら競技をして
きたので、その存在がいなくなるというのはすごく大きなものを失ったのと同時に兄が五
輪に行けなかった分僕が五輪に行かないと、と強く感じた試合でもありました。僕の結果
自体は5位で兄が3位で、結局最後まで勝てなくて。でも兄が勝ってくれて良かったなと
いうか、いままでリードしてきてくれていた人なので、勝って任せろよという風にはでき
なかったんですけど、そういう思いを強く持った試合でした。
――お兄さんから何か声はかけられましたか
試合が終わった後に「がんばれよ」と一言言ってもらいました。お互い口には出さな
いですけど兄も僕に託しているものがありますし、その気持ちに応えないといけないとい
う部分はあります。いろいろと競技のことであったり、道具の面だったりサポートしてく
れているなという実感もあります。
――昨季の収穫と反省は
まず反省点としては、後半のクロスカントリーで勝負どころでチャンスをものにでき
なかったという点で、コースの形状だったりそういう斜度ではどういう練習をしたのかと
いうことをもっともっと深く追求していく必要があると感じました。ただ昨シーズンは仕
方がなかった部分もあって、昨年は五輪のシーズンだったので上のチームの方に予算が全
ていってしまって、五輪の選考をする試合にすら派遣をしてもらえませんでした。なので
五輪に出られない中でも、国内の試合でモチベーションを上げてやらないといけなかった
のですが、そこでしっかり結果を出せなかったというのが自分の中での反省点です。収穫
はその前のシーズンと比べてジャンプの調子が良かったことです。どうしてかと考えたら
、大学に入ってから頭を使ってやるようになったからかなと思います。高校までは感覚だ
けで飛んでいたのですが、頭を使うようになってから失敗することが少なくなりました。
どういう風にしたら失敗するのかというのをしっかり頭の中でまとめることができて、こ
れまではシーズン中に波がある方だったのですが、昨年はその振れ幅が少なく抑えられて
、安定したジャンプがずっとできたと思います。
――考えるようになったきっかけは
授業で知識を得られたというのもあるのですが、昨年卒業された渡部善斗(平26ス
ポ卒=現北野建設)さんが頭を使いながらジャンプをするというスタイルでやっていて、
そこを見習って吸収して、やってみようということで僕もそういうスタイルに切り替えま
した。
――昨シーズンはユニバーシアードや世界ジュニア選手権にも
出場されていましたが、海外の試合の印象は
ユニバーシアードでは調子自体はそんなに悪くはありませんでした。良い状態に仕上
がって試合に挑めたとは思うのですが、海外の選手はレース経験が豊富で、駆け引きがす
ごくうまいんです。日本人はそういう部分に対応ができなくて、対応できないまま試合に
なってしまって結果もあまり振るわず、課題の残る試合でもありました。その後の世界ジ
ュニアでは会場もユニバーシアードと同じで、しっかりと良い成績を収めないとだめだな
という思いはあったのですが、そこでジャンプの調子を少し落としてしまって、さらにユ
ニバーシアードの時とは雪の状態も違って、そういう状況に対応できませんでした。雪質
に対応した滑りができなかったということがすごく印象に残った試合でした。
――ソチ五輪で複合への注目度も上がったと思いますが、何か
感じる部分はありましたか
今のところそこまで環境が変わったりサポートが変わったりという実感はないのです
が、早大OBの渡部暁斗(平23スポ卒=現北野建設)がメダルを取って、複合が表に出
てみんなに知ってもらえて、何かが変わったわけではないですが、興味を持ってもらえた
というのは感じることもあります。今度合宿があるのですが、これまではジュニアの育成
の枠が5人くらいだったのが、ことしは10人以上とすごく増えていて、詳しいことはわ
からないのですが強化費が増えたのかなと思っています。
――ソチ五輪には早大の選手も出ていましたが
残念ながらまだ2人にお会いできていないので、次に会うときに五輪の裏話などを聞
けたら良いなと思っています。
――初めてのインカレ出場はどう感じましたか
僕自身実際に試合に出るまでは、そんなに大したことはないだろうと思っていたので
すが、いざ試合会場に入ってみると、選手だけじゃなくて応援部やOBなど、すごく周り
からの声援があって、雰囲気が普通の試合とは違いました。そういう部分でやっぱり大学
を背負って競技をしているのだなと実感しましたし、総合優勝というものがあるので、個
人競技なのですがチーム競技でもあるというのを初めて意識したので、早大スキー部の温
かみを感じました。
――ナショナルチームなどで特に影響を受けた選手はいらっし
ゃいますか
ナショナルチームには五輪に出た選手がたくさんいるので、練習だったりその他のこ
とだったりといろいろなところを細かく観察できればと思います。
――今季合わせていきたい試合は
W杯の下のコンチネンタルカップ(コンチ)が12月から始まるのですが、その出場枠
が4人で、僕を含めて8人いるBチームから選ばれます。その選考になるのが合宿での調子
などを見ながら決めるらしいので、コンチに出ることは大前提で今から勝負は始まってい
るのでオフシーズン中も気を抜かず準備をしていきたいなと思います。
「五輪に出場したい」
強化指定選手にも選出され、活躍に注目が集まる
――今季は国内でもW杯が行われますが
国内出場枠も5枠くらいあるみたいで、チャンスも全然あると思うのですが、W杯に出
るにはコンチでW杯ポイントを取ることが条件になるので、コンチに出て、国内のW杯に
も絶対に出たいと思います。
――今季もユニバーシアードがありますが
ユニバーシアードには出ないように頑張りたいです。W杯と日程が被っているのでそっ
ちに出られるようにしたいです。
――今季チームはどのように変わりましたか
昨年の4年生はすごく強かったのでチームとして活気づいていたのですが、そういっ
た選手がいなくなってリードしてくれる大きな存在というのはなくなったのですが、競技
においても私生活においても、受け身じゃなくて自分からどんどんいろいろなことを意識
するようになって、自分たちで盛り上げるようになったという良い面もあります。
――具体的に心がけていることはなにかありますか
一つは知識を身に付けるということで、トレーニングの方法やいろいろな授業など、
内面的なところから変わっていって、そういう知識を後輩にも教えていこうと思っていま
す。もう一つは寮生活において、自分を客観的に見るという能力が上級生になると求めら
れるので今からそういう訓練というか準備をしていこうと考えています。
――今季と今後の目標は
今季は、W杯に出るということが目標で、W杯などで経験を積む年にしたいと思ってい
ます。W杯に出ないと次のステップに進めないので、しっかりそれを目指していきたいと
思います。大きな目標としては、4年後の平昌五輪が大学を卒業して1年て五輪に出場し
たい目になるので、卒業した時点で全日本に入れていなければ五輪に出られないのと同じ
ようなものなので、4年間の目標としてはAチームに定着することです。
――ありがとうございました!
(取材・編集 辻玲乃、戸田郁美)
色紙には名前にちなんだ『GO』と書いていただきました
◆山元豪(やまもと・ごう)
1995年(平7)1月27日生まれ。ノルディック複合競技。富山・雄山高出身。
スポーツ科学部2年。全日本ナショナルチームランクC。スキー部の同期と一緒に富士急
ハイランドに遊びに行ったという山元選手。競技性からか絶叫マシーンは大好きとのこと
。しかし一方でジャンプの際は、「めちゃくちゃ怖い」と意外な一面をのぞかせていまし
た。