早大スキー部史上初、そして唯一のスノーボード選手である神野慎之介(スポ2=山梨・韮崎)。スノーボードの競技は行われないため、インカレ出場はできないが、チームの一員として戦っている。そんな神野の心境を伺った。
※この取材は10月8日に行ったものです。
雪面との近さが魅力
――普段はどのような練習をされているのですか
現在はオフトレーニングの期間なのでウエートトレーニングで力をつけて、それから走ったりして、シーズン中に使える体づくりを目的としたトレーニングをしています。
――練習はどなたとされているのですか
大学がある間はスキー部の、特にアルペン部門の人と一緒にやったりして、夏休みなどはスノーボードの人たちと一緒にやったりもしています。
――スキー部の合宿などには参加されるのですか
ことしの夏休みのアルペン合宿と全体合宿に参加しました。
――合宿中に辛いことなどはありましたか
ことしは夏休みにうまく体調管理ができていなくて、合宿のときが一番きつかったので、うまく自分の力が出せなかったというか、それが苦しかったです。
――スノーボードを始めたきっかけは
小学校に入る前まではスキーをやっていたのですが、父がスノーボードをやっていて、やってみたいということを父に伝えて始めました。最初は遊びでシーズンに1回とかそれくらいだったのですが、徐々に回数が増えていって、小学校3年生くらいから本格的に始めました。
――最初にスキーをされていたのは遊びでですか
遊びですね。競技をやろうと思っていたわけではないです。
――スノーボードのなかでもアルペン競技を選ばれた理由は
自分の家の近くにそういう環境があったからですかね。仮に自分の家の近くにハーフパイプがあったとしたら、もしかしたらハーフパイプをやっていたかもしれないですけど。野辺山っていうスキー場があって、そこでいまのチームのコーチと出会って、そこから始めて、いまは菅平で練習しているんですけど、そこでやらせてもらったのがきっかけですね。
――スキーと比べてスノーボード独自の魅力は何かありますか
板が一枚なので、スキーはエッジが2つあるのに対してスノーボードは1つなので、その分だけ板を倒さないとスキーと同じくらい曲がらないんです。要するに曲がるには板を立てなきゃいけないので、板を立てると自分が雪面に近づくということがあるので、スキーよりもかなり雪面に近い中でかつハイスピードなので、そういうスリルがやっぱり楽しいです。スピード感と雪面との近さはかなりスキーとは違ったところだと思います。
――スノーボードを始めてからはスキーはあまりされていないのですか
そうですね。小学校のスキー教室くらいですね。
丁寧に取材に応じる神野
「少しずつ追いついていると思います」
――大学に入るにあたって何故早大を選んだのですか
僕が早大を選んだきっかけは、スノーボードクロスをやっている選手がいて、その人が早大を受けるというのを聞いて、その時に僕にも入るチャンスがあるということを知りました。それで家に帰ってから調べてみて、トップアスリート入試っていうものを知って、挑戦してみようかなということで受けました。友達から教えてもらって色々と調べていく中で、早大の魅力などを知って、入りたいと自然と思いました。
――早大の魅力はどこに一番感じましたか
やっぱり勉強もしっかりしているし、スポーツに関してもしっかり力を入れているということですね。僕の高校が韮崎高校という学校で、しっかり勉強もしてかつ、文武両道というのが学校の目標だったので、それをこれまでも自分で意識してやってきました。その中で早大がすごく重なる部分があって、選びました。
――単位もバッチリですか(笑)
いまのところは(笑)。ことしの冬に2つ落としてしまったのですが、出席の関係だったりで取れなかったので、まあ仕方ないです。それ以外ではちゃんと取れているので、がんばってます(笑)。
――勉強との両立は大変ではないですか
やっぱり後期はあまり出席できないので、それで単位をもらおうなんていう甘いことを言っているので、先生とのコミュニケーションが大切かなと思っています。行く前にはしっかり先生に挨拶して、『こういう理由で出席できません。出席できない代わりに課題をだしていただけませんか。』ということを言って、出してもらったり、出してくれない先生もいるんですけど、そういう風にやってもらってギリギリ単位も取れています。
――どのようなことを中心に勉強されているのですか
自分の競技につながるようなことを勉強したいと思っているので、主に解剖学だったりとか、筋肉の名前や障害後発部位とかそういうことをきちんと勉強しておくことで、仮に自分がそれに近い状態になったときに、ケアもしっかりできるし、何がどういう風になっているかというのを頭で理解できているかできていないかで、やっぱり違うと思うんですよね。自分やチームメートに起きた時にすぐに処置ができるかできないかで変わってくると思うので。そういうところを、スポーツ科学部なのでしっかり学びたいと思っています。
――スキー部でスノーボード競技は一人ということで何か苦労はありますか
入学した時に他の選手はやっぱり同じ種目の人が先輩なり同期なりにいて、入った時点で友達や知り合いが必ずいるので少し溶け込みやすい環境だと思うのですが、僕の場合は本当に誰も知らなかったので、それが少し緊張しました。でも、先輩方も同期も優しいのですぐに打ち解けられて、特に苦労したっていう部分はないですね。あえて言うなら練習ですね。僕は高校までずっと部活でバスケットボールをやっていたんですが、夏はバスケ冬はスノーボードって感じでやっていて、ちゃんとしたトレーニングっていうのをこれまでやってこなかったんですよね。ウエートトレーニングとかはやらずに走ってバスケしてって感じで。サッカーとかバスケは跳ぶし走るし、走るのにも強弱があるのでそれがすごくオフトレーニングに良いっていうのをコーチから聞いていたのでやっていたのですが、大学に入って皆の体つきとかを見たら、自分はどうしたらいいんだって思って(笑)。それで初めてウエイトトレーニングというものを始めて、最初は全然できなくて、やばいなと思っていたんですけど、やっていくうちに少しずつ体が変わっていくのがわかってきて、楽しみも自分の中でできてきたので。初めはそういう皆との違いに苦労したんですけど、今は何とか少しずつ追いついてきているかなと思います。
――スノーボードのトレーニングとしてバスケットボールをやっていたということですか
僕が好きだったからっていうのが大きいですかね。今もサークルに参加してます。バスケはやっておきたいなというのがあるので。練習の一環として週1回だけですけど参加させてもらっています。なかなか体育会の選手としては珍しいことだとは思うのですが、スキー部の練習はチーム単位でやらないので、個人で考えてしっかりやるという。その中でもワセダは他の大学よりもしっかりやれていると思うので、そのおかげで自分の時間ができてバスケをするという練習方法がとれていて、すごく良い刺激になっています。
――他の種目の選手から刺激を受けたり、アドバイスをもらったりすることはありますか
同じ雪上種目で、アルペンなんかはスノーボードとほとんど道具の違いだけって考えてもいいので、何が必要かっていうのもここに来て初めて分かったというか。どういう練習を
していけば良いのかアルペンの選手を見て学ばせてもらったので、そういったところが大きいです。あとは先輩方に僕が1年生の時4年生に強い選手がいて、いまの4年生にも強い選手がいてっていう。ゆっくりお話しさせてもらう機会っていうのが、寮生活をしている中で結構あるのですが、その中で先輩の考え方とか、先輩が取り組む姿勢とか、オフの時間をどのように過ごしているのかとか、オンオフの部分であったりそういった世界を経験している人たちの活動の仕方っていうのを学ばせてもらっています。
チームに良い知らせを
――10月末からアメリカに行かれるとうかがいましたが
アメリカに行って、まずは練習ですね。やっぱり先シーズンが4月に終わってからかなり期間があいているのでまず勘を取り戻して、その後すぐに試合なので4戦あるのですが、その4戦でしっかり成績を出したいです。あと今シーズンはオリンピックイヤーなので、僕が出る大会にも強い選手が出てくるのですが、その中でしっかり自分の力を出すことと、その後にユニバーシアードがあるので、それに向けてしっかり練習を積んでいきたいと思っています。
――海外に行かれることも多いのですか
海外に練習として行くようになったのは大学に入ってからですね。世界ジュニア選手権とかで代表として行くことはこれまでに何度かあったのですが、練習をしに行くということはいままであまりなかったです。それもやっぱりスキー部に入って、アルペンの人たちの様子を見て、アメリカやヨーロッパで練習していると聞いて、そういうのも必要なのだなと思ったので。正直に言って金銭的にかなり辛い面はあるのですが、必要なことだと思うので。
――いくらくらいかかるのですか
1か月行って60万円くらいですかね。正直ほんとに辛いです。でも親もそうやってチャンスを与えてくれているので、しっかり集中して取り組んでいきたいと思います。
――今シーズンの勝負どころは
ユニバーシアードですね。そこでしっかりメダルが取れれば、ソチ五輪につながることもあるので。昨季と昨々季とケガで悩んでいて、昨季は12月に骨折をしてほぼ1シーズン滑れなかったので、その中でユニバーシアードに選んでもらったので、それは自分への期待もあると思いますし、チャンスをもらえたということなので、そこはしっかり成績を出せばオリンピックへのイメージもJOCが強く持ってくれるので、ユニバーシアードで成績を出すことはすごく大切だと思います。
――自分の強みは何だと思いますか
僕は器用貧乏というか結構何でもできるんですよね。例えば50メートルがすごい速いとか長距離がすごく速いとかではないんですけど、ポテンシャル自体は低くても体をうまく駆使して使うっていう部分で自分に自信があります。アルペン種目はそういう何でもできる人が強かったりするので、その部分で他の人にできないような体の使い方っていうのが競技の中では強みになっているのかなと思います。
――逆に弱点はどこだと思いますか
今まで感じてきたのはフィジカルの弱さですかね。体重がまだまだ軽いっていうのは何度も言われてきているので、がんばって体重をつけようとしているのですが、そこがやっぱり弱いと思います。
――これまでで印象的だったレースは
初めて出たジュニアワールドカップですかね。その時は8位だったのですが、初めて出て世界と言うのがとういうところなのかわかっていない中で出場して、自分ですごく手ごたえがあったので、ジュニアとはいえ世界ってこんなもんなんだと思えたので、そこからやっと自分が世界いけるなと思えるようになりました。なのでそれがすごく印象的な大会ですね。
――これまでで一番辛かったことは
やっぱりきょねんのケガですね。きょねんヨーロッパに行って1か月練習してきて、帰ってきて練習2日目で転倒して左足を骨折してしまって、もう1シーズンだめだと思って、すぐリハビリに入ったのですが、その間滑れなかったというのが大きかったですね。やっぱりヨーロッパで練習を積んで、帰ってきて練習した時に手ごたえがあったので、自分が強くなったなと思えてきたときに骨折してしまったので。しかもオリンピックの前の年というのもあって、仮に昨季ちゃんとした成績を出せていれば、いまもっと良い状況にいられたのかなというのもあるので、そこが一番辛かった部分ですかね。その中でもケガをして自分を見つめなおす機会があったので、そこは少しプラスでもあるとは思います。
――最もうれしかったことは
最近で言ったらユニバーシアードに選んでもらえたことですね。ケガもあったので、今季はユニバーシアードダメだなと自分で思っていたので、その前までの成績を見てもらえて選んでもらえたのでそれがうれしかったです。
――今後スノーボードの選手に入ってきてほしいと思いますか
自分がこうやって入れて、スノーボード選手で入れたのは自分が初めてなので、僕のことを見て入ってきてもらえたらうれしいなという部分はありますね。
――今後スキー部のなかでどういった役割を果たしていきたいですか
やっぱり今では同じ生活をしているのですが、後期解散になってそれぞれがシーズンに入るとまったく別の活動になってしまうのですが、自分がどう役にたてるかと言われれば、成績を出してそれを皆に伝えることだと思います。そうすれば、僕もがんばっているという部分でチーム単位でモチベーションを上げられると思うので、昨季はそれができなくて悔しかったし、先輩からも言われたりしたので、今季はやってやろうという気持ちです。
――今季の目標は
今季の目標はせっかく選んでもらえたユニバーシアードでメダルを獲得することと、アメリカでもしっかり成績を出して、ソチ五輪につながればなと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 近藤万里奈、辻玲乃)
『自分を信じて!』
◆神野慎之介(かみの・しんのすけ)
1993(平5)年6月21日生まれ。スノーボードアルペン競技。山梨・韮崎高出身。スポーツ科学部2年。色紙には「自分を信じて!」と書いてくださった神野選手。チームへの良い知らせ、早スポ一同信じています!