関東大学リーグ戦で2位に入り、5年ぶりの出場権を得て臨んだ全日本アイスホッケー選手権。「自分たちのホッケーを全うすれば勝つことはできると信じていた」(DFハリデー慈英副将、スポ4=埼玉栄)。その言葉通り、早大の選手たちは強大な敵にも臆することなく、むしろいつも以上に試合を楽しむかのように立ち向かっていった。しかし、アジアリーグ首位の日本製紙クレインズ(クレインズ)の壁は、予想よりもはるかに高く険しいものであった。クレインズは第1ピリオド(P)から圧倒的なパック支配力を発揮してゴールを奪うと、その後も淡々と得点を重ねていく。早大も第3Pにおいて、DF坂本之麿(社学4=青森・八工大一)がゴールを決め一矢報いる攻撃を見せたが、スコアは1−4と実力差を見せつけられた。
試合の始まりの合図とともに果敢に相手のゴールに向かって攻め込む早大。しかし、それもつかの間の出来事であった。早大の一つのパスミスからパックを奪うと、タッチミスのない鮮やかで流れるような攻撃を見せるクレインズ。早大は相手の機械のように正確なパスさばきにほんろうされ、チェックに入ることすらままならない。そして開始から3分32秒、ディフェンスの隙を突かれ相手に先制点を許すと、7分8秒にも追加点を与えてしまう。パックを支配し、思うがままに操るクレインズはまさにリンク上の支配者であった。しかし、早大の選手たちの目は暗く沈むどころか、試合を純粋に楽しむ少年のようにキラキラと輝いていた。そして、徐々に相手の動きやスピードに対応し始めると、第1P終盤にはアタッキングゾーンでの展開も増え、反撃への兆しを見せ始めた。
鈴木は強烈なシュートで何度も相手ゴールに襲い掛かった
勝負を分けたのは守備力の差であった。早大は、第2P以降、足が動くようになるにつれ、徐々にパスが繋がり、連携も機能し始める。第2Pのシュート数では12とクレインズに並ぶなど、貪欲にゴールを狙う本来のアグレッシブな攻撃の形も生まれつつあった。だがお互いの集中力が研ぎ澄まされた状況下では、決定機を作ることができず、試合はこうちゃく状態が続いていく。刻々と時間だけが過ぎる中、この均衡は早大の守備のほころびから破られた。第3P序盤、ふとした隙から生まれたスペースをクレインズは見逃さず、冷静にゴールを決められスコアは0−3。早大は48分42秒と49分11秒にペナルティーを奪い、スペシャルプレーを敷くも、相手のGKの圧倒的な守備力に阻まれ決定機を逃す。その直後、ディフェンスの体勢を崩され強烈なシュートを浴びるとこれが決定打となる。55分45秒、相手GKのパックの処理ミスを突き坂本がパックをゴールに押し込むも、時すでに遅し。無情にも試合の終わりを告げる電子音がリンクに響いた。
持ち前のファイトで対格差のある相手にも果敢にバトルを仕掛けた生江
しかし「ウチとしては一生懸命運動して、シュートを打って。シュート数で負けていなかったのがよかったことかな。」(内藤正樹監督、平3二文卒=北海道・釧路湖綾)とこの結果を悲観してはいない。現状を把握し、いかに次に繋げるかが重要なのである。インカレでの5年ぶりの王座奪還に向け、もう準備は始まっている。
(記事 林果歩、写真 糸賀日向子、新藤綾佳)
結果 | |||||
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早大 | ピリオド | 日本製紙クレインズ | |||
0(10) | 1st | 2(12) | |||
0(12) | 2st | 0(12) | |||
1(13) | 3st | 2(8) | |||
1(35) | 計 | 4(32) |
得点経過 | |||||
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チーム | 時間 | ゴール | アシスト1 | アシスト2 | PK/PP |
CRANES | 03:32 | 18重野 | ― | ― | ― |
CRANES | 07:08 | 36高見 | 8入倉 | 18重野 | ― |
CRANES | 41:55 | 21鈴木 | 63ヴァチェスラフ | ― | ― |
CRANES | 50:59 | 9髙木 | 63ヴァチェスラフ | ― | PK |
早大 | 55:35 | 33坂本 | 29ハリデー | - | - | ※PKはキルプレー、PPはパワープレー、PSはペナルティショットを指す なお、PK/PPの表記は早大にとってPKに当たるかPPに当たるかを表記するものとする |
早大メンバー | |||||
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セット | FW | FW | FW | DF | DF |
1 | 21矢島 | 17高橋 | 16鈴木 | 33坂本 | 25篠田 |
2 | 14小澤田 | 8青木 | 1澤出 | 29ハリデー | 18羽場 |
3 | 12飛田 | 9生江 | 24河田 | 31大崎 | 13吉野 |
4 | 15伊東 | 11加賀美 | 27前田 | 23草島 | 10住友 | GK34谷口 B-GK39村上 |
コメント
内藤正樹監督(平3二文卒=北海道・釧路江陵)
――格上相手の試合でしたが、どういうゲームプランで臨みましたか
相手は実業団チームで強いので、普段やっていることをどこまでできるかということでしたね。思い出作りにはならないように勝ちにいかないと、どれだけ差があるのかわからないので、いつも通り勝ちに行きなさいと話していました。運動は良くしていたと思います。
――攻撃の形をしっかりつくってゴールに迫るシーンもありましたね
相手が遠慮していたのかわかりませんけどチェックがあまり厳しくなかったので。ウチとしては一生懸命運動して、シュートを打って。シュート数で負けていなかったのがよかったことかな。ゴールに向かう姿勢がきょうもあったので、もう一点くらい入っていてもおかしくなかったかな。それは、もっと精度を高めなさいということなのでしょう。最後に一点取れたので良かったと思います。
――手の内を知らない強豪チームと試合をして、新たにみつかったことはありますか
特に失敗していることも上手くいっていることも変わりませんね。これからインカレに向かうにあたって、運動量をさらに上げていくことときょうも雑だったパスとレシーブ(の改善)、あとはもうちょっと声が出ていてもよかったのかなと思います。もうちょっと声が出ていれば、通ったパスもあったのかなと。もうちょっと氷の上で喋れるようにならないといけませんね。
――やはり体格差はありましたね
向こうの方が大きいんでね。いつもよりも一回り二回り小さく見えたかとは思うけど、それは仕方のないことなので、その中でもやらなければいけません。負けることも多かったけど、一生懸命バトルをしていたと思います。その姿勢は良く出ていたと思います。
――普段出場機会の少ない選手も、アピールする姿勢を見せていましたね
良いことだと思います。きょうは杉本(華唯、スポ1=北海道・駒大苫小牧)がU20日本代表で海外に行っていて、一つポジションが空きましたので、そこを一生懸命争っていたのではないでしょうか。毎日やってくれるといいんだけどね(笑)。
FW鈴木ロイ主将(教4=北海道・苫小牧東)
――現在アジアリーグ首位のチームと試合をしてみていかがでしたか
早大として秋リーグやってきたことが結構通用する部分もありましたし、しない部分もありました。
――きょうの試合に向けてどのような準備、ゲームプランを立ててきましたか
特にいつもと変わらず、プランとかもいつもと変わらずどんどんアグレッシブにやって。まず試合前に話していたのは第1Pがっつりチェッキング行って、しっかりフィニッシュチェックも当たって、相手に本気で勝ちに行ってるんだよという気持ちを見せようということです。試合までの練習では相手一人一人体も大きくて強い選手だと思うので、簡単にパックを取られないようにいつも以上にパックのキープだったりフェンス際、コーナーでのバトル、競り合いを負けないような準備をしてきました。
――アジアリーグのチームを相手にしても、攻めもできてたと思うのですが、その点はいかがですか
シュートまで行けてる時はすごく良いかたちでゴール前でリバウンド、混戦のチャンスとかもすごくありましたし、そこはすごく良かったと思います。でも、やっぱり一筋縄ではいかないというかシュートまで行くのもすごく大変ですし、コーナーでのバトルでも簡単に勝って上がっては来れないので、そこでバトル負けちゃったりアタッキングゾーンでのパスが雑でシュートまで行かなかったりというのがありました。パスレシーブの正確さがあればもうちょっとシュートまで行けたと思いますし、もうちょっと得点も取れたと思っています。
――最後にきょうの試合から、インカレに向けて得たことを教えてください
きょうの試合の反省としてはパスレシーブの正確性がなかったというのと、声が出てなかったと思うので、一人一人がもっと声を出して。やっぱり結構パックを持ってる選手だけが頑張りがちなので、そこを周りの選手がしっかりとスケートして空いてる所に走り込んでパスを声出して要求するだったり、誰かがバトルしてたら声を出して周りの状況を伝えてあげたりそういうことを練習でやるというのと、パスレシーブをもっと正確にやるということをしっかりやって。きょうの試合はすごく一人一人かなりハードに戦っていつもより何倍も疲れた試合だったので、それを練習からしっかりきょうの試合の運動量で練習できればかなりレベルアップ出来ると思うので、残り2週間死に物狂いで練習頑張って成長したいと思います。
DFハリデー慈英副将(スポ4=埼玉栄)
――きょうのゲームのために対策されてきたことはありますか
向こうはプロのチームですし、パスの正確さ一つにしても自分たちより格上だということはわかっていました。だからと言って勝機がないというわけではなく自分たちのホッケーを全うすれば勝つことはできると信じていたので、最初から相手にビビることなくガツガツいこうということは話していました。
――想定していたゲームプランなどはありますか
今までやってきたホッケーを貫くということです。相手がクレインズ(日本製紙クレインズ)だから何かを変えるというわけではなく、今までやってきたことを120パーセント出してなんとかプロのチームから点を取っていこうと考えていました。
――実際に戦ってみてはいかがでしたでしょうか
やはり大学リーグとはまた違った独特のプレーというか、パスの正確性などは大学リーグとは別物でした。感じたのはワンミスで確実に点を入れてくるというのはすごいなと思いました。
――ハーフタイム話し合われたことなどはありますか
自分たちのホッケーが要所、要所でできているということは言っていたので、しっかり自信を持って最後までプレーして点を取って逆転しようということを話していました。
――最終ピリオドで1点奪いましたが、その時の心境を教えてください
ようやく1点取れたのですが、ちょっと遅かったかなというのは感じました。時間的にも4点差つけられてようやく取った1点だったので僕らとしてはチャンス決め切って次に繋げられたらなと思いました。
――今回の試合からインカレへ向けて得るものはありましたか
もちろんです。他の大学のチームより強いチームであるので。順当に行けば次はインカレで明大と対戦すると思うので、最後リーグ戦で大敗した相手なのでこの試合で学んだことを意識しながらリベンジしたいと思います。
――インカレへ向けて対策していきたい点などはありますでしょうか
これから話し合っていきたいです。まずは全日本というふうにやっていたのでこの試合が終わって次はインカレへ向かって準備をしないといけないと思います。またチームで話し合って、明大はもちろんのことインカレ優勝へ向けてしっかり研究しながら1つずつ勝ち、頑張っていきます。
――最後にインカレへの意気込みをお願いします
このチームはいろいろな人に応援されて成り立っていると思うので、恩返しできるような、応援してもらえるようなチームになれたらいいなと思います。一生懸命に精一杯のプレーをして勝って恩返ししたいなと思います。
GK谷口嘉鷹(社学3=早実)
――どのような準備をして今日の試合に臨みましたか
プロのチーム、それもアジアリーグのチームと試合ができるなんて今回が最後かもしれないので、そういう思いもあってまずは楽しみたいという思いでした。その上で結果がついてくればと思ったんですけど、やはりプロは強かったですね。
――プロのシュートを実際に受けて感じたことは何ですか
最初1Pはやはり相手のシュートスピードに対応できなくてあたふたしていた部分はあるんですけど、2P以降徐々にシュートに目が慣れてきて、反応できるようになっていったなという感じです。
――インカレに向けて収穫したことは何ですか
どこが相手であろうとやはり早稲田のホッケーをやれば、今回の試合は駄目でしたけれど早稲田のやりたいことがしっかりできるというのを学びましたね。そういうった意味でもすごくいい1試合になりましたね。
FW生江太樹(スポ2=北海道・釧路江南)
――どのような準備をしてこの日の試合に臨みましたか
相手は実業団ですけどそれは関係なしに、最初からチーム全員で勝ちにいくという目標を立てていたので、それを達成できなくて少し悔しいです。
――実際にプロとやってみてどうでしたか
全部が全部通用しないってわけではなくて、部分的には通用することもあったり、ある部分は劣っていたり、劣っている部分は改善して上についていけるように。勝負できている所は精度を高めてインカレに向けて準備していきたいと思います。
――収穫と課題を教えてください
収穫は上のチーム相手ともやっていける体力と、メンタル的にもきょうは最後までみんなが出し切れたと思います。課題としてはパスの精度と瞬時のスピードで、そこをやっぱりインカレでは恐らく明大とやると思いますけど、勝てるようにするにはこの課題を克服しなければいけないので、時間はないですが高めていければ良いと思います。
――ご自身のプレーを振り返っていかがでしょうか
自分はきょうの試合で必ず点を取るという目標でやってきたんですけど、4―1で決定力の無さを痛感したので、残りの練習でシュートの精度と自分の課題をもっと精度を上げていけるようにやっていきたいと思います。
――インカレに向けて練習は積めていますか
練習期間が本当に少ないので、4年生のできる試合もインカレで最後なので、まずは東京でやる1週間と4回のリンク練習を、みんなが気持ち入れて自分も自ら声を出して率先してやっていければ良いと思います。