「心のどこかで油断というか、浮ついた気持ちがあった」(FW鈴木ロイ主将、教4=北海道・苫小牧東)。6年ぶりの優勝に王手がかかった中で臨んだ順位決定リーグ2戦目の東洋大戦。試合後に鈴木が振り返ったように、気持ちの面でのわずかな気の緩みがプレーにも現れてしまう。やはり優勝はそうやすやすと手に入るものではない。本来の早大のホッケーは影を潜め、「きょうは全てで負けていました」(内藤正樹監督、平3二文卒=北海道・釧路湖陵)と、2-6での完敗となった。
優勝のかかった一戦に、いつもより多く詰めかけた観客の中、戦いの火ぶたは切られた。プレッシャーゆえか、序盤は少し硬さも見られた選手たち。いつものように思い切りよくフォアチェック、バックチェックにいくことができず、重い試合展開となる。フィジカルを強みとする東洋大の厳しいチェックに、思うようなプレーをさせてもらえない。すると守りの綻びから、4分35秒にあっけなく先制点を献上。足が動かず、アタッキングゾーンでのプレータイムを獲得できないまま第1Pが終了する。「点差は意識せずに、ワンプレーワンプレーで今までやってきたことを発揮するということだけを集中してやろう」(鈴木)と気持ちを切り替え、第2Pに挑んだ。だが、やっと本来の姿を取り戻した矢先に、再び東洋大の得点を許してしまう。スコアは0-2。もうゴールを割らせたくなかった早大だが29分02秒、PK(※2)の時間に東洋大のDF渡邉亮秀(4年)がスラップショットでネットを揺らす。悪い流れを払拭できないまま0-3となった。
一時反撃を予感させる得点を挙げた
ここまでの幾度とないPP(※1)のチャンスを得点に結びつけることができず、無得点で迎えた最終ピリオド。このまま黙っているわけにはいかない早大。まずはFW飛田烈(商4=東京・早実)がパックを押し込み、反撃ののろしを上げる。しかし、一気に畳み掛けたい局面で東洋大がすぐさまタイムアウトを要求。流れを断ち切られてしまう。相次ぐペナルティにより続く数的不利な状況で体を張り続けたGK谷口嘉鷹(社3=東京・早実)だったが、ついに力尽き4点目を奪われる。残り時間が5分を切る中で、FW矢島雄吾副将(スポ4=北海道・駒大苫小牧)がゴール前で奮闘し、鈴木が流し込む。再び2点差とし望みをつないだが、この日は逆転劇は起こらず、試合終了間際にずるずると5、6得点目を献上。春の姿が頭によぎるような、嫌な幕切れとなった。
チーム全体で運動量が足りず、リーグ戦最多の6失点を喫した
この後に行われた試合で、明大が中大にゲームウィニングショット(GWS)の末に敗れ、早大との勝ち点差は2となった。その結果を受けリーグ最終戦の次節、早大は明大に60分間で負けない限り優勝が決まる。予選リーグでは2勝している相手とはいえ、「リーグ戦の最初の時の気持ちに戻れなければ、多分また負けてしまう」と内藤監督は試合後に語った。もう一度初心に戻り、フェイスオフの瞬間から持てる力を全て出し切ることが、賜杯を手にするための必須条件だ。3か月にわたったリーグ戦を戦い抜き、ついに迎える大一番。明大との最終決戦を制し、最後に笑うのは早大だ。
※1 ペナルティーによる退場で相手チームより人数が多く、数的有利な状態をパワープレーと呼ぶ。
※2 ペナルティーによる退場で相手チームより人数が少なく、数的不利な状態をキルプレーと呼ぶ。
(記事 小林理沙子、写真 糸賀日向子、林果歩)
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結果 | ||
---|---|---|
早大 | ピリオド | 東洋大 |
0(10) | 1st | 1(13) |
0(8) | 2st | 2(7) |
2(12) | 3st | 3(17) |
2(30) | 計 | 6(37) |
得点経過 | |||||
---|---|---|---|---|---|
チーム | 時間 | ゴール | アシスト1 | アシスト2 | PK/PP |
東洋大 | 04:35 | 24石橋 | 13出口 | 12福田 | - |
東洋大 | 26:30 | 18阿部 | 48清水 | 23佐藤 | - |
東洋大 | 29:02 | 46渡邉 | 14久米 | 13出口 | PP |
早大 | 44:07 | 12飛田 | 9生江 | ー | ー |
東洋大 | 51:20 | 11所 | 16武部 | 19柴田 | PP |
早大 | 56:37 | 16鈴木 | 21矢島 | - | - |
東洋大 | 58:47 | 14久米 | 24石橋 | - | - |
東洋大 | 59:39 | 21古川誠 | 48清水 | 23佐藤 | - | ※PKはキルプレー、PPはパワープレー、PSはペナルティショットを指す なお、PK/PPの表記は早大にとってPKに当たるかPPに当たるかを表記するものとする |
早大メンバー | |||||
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セット | FW | FW | FW | DF | DF |
1 | 21矢島 | 17高橋 | 16鈴木 | 33坂本 | 25篠田 |
2 | 19杉本 | 8青木 | 1澤出 | 29ハリデー | 13吉野 |
3 | 12飛田 | 9生江 | 14小澤田 | 31大崎 | 18羽場 |
4 | 15伊東 | 2北村 | 11加賀美 | 27前田 | 10住友 | GK34谷口 B-GK39村上 |
コメント
内藤正樹監督(平3二文卒=北海道・釧路湖陵) ※囲み取材から抜粋
――試合前に固さがありましたか
固さというか、頭のどこかで余計なことを考えていたんでしょう。きょう勝ったら優勝だとか、そんなことを考えている暇はないんだけれど。楽に勝てる相手じゃないし、東洋さんだって目の前で優勝されるのは嫌じゃないですか。元々力のあるチームなんだから、2次リーグの最後の試合のように自分たちからガンガン行かないとダメです。この間は全てで勝ってましたけど、きょうは全てで負けていました。スコアもぴったりひっくり返りましたね。
――フォアチェックを受けてなかなかアタッキングゾーンでプレーすることができませんでしたね
まず足が動いていないですよね。足が止まっています。腰も高いし、反応も遅いし、誰かがやってくれるだろうと思っているうちは絶対にパックは転がってこないですよ。今までは、一生懸命に相手より早くと動いていたところにパックが転がってきていたんです。そんな簡単に都合がいいところにパックは飛んできませんよ。
――相手に出足で上回られる時間が多かった原因はなんでしょう
それも彼らの頭の中に余計なものが入っていたからでしょう。プレッシャーとか緊張感は人から与えられるものでなく、自分の頭の中でつくりだすものです。やるべきことをどれだけ遂行するか、そこに集中できなかった結果がきょうです。
――第2Pの頭はそれが解消されたように感じました
(第2Pの前に)一応ハッパはかけたんですけどね。(第3Pで)点数を取って勢いが出るかなと思ったら、そこは東洋大がすぐにタイムアウトをとって、それを注意したのではないかなと思います。こっちも元気が出かかっていたのでね。
――タイムアウトは嫌な感じがしましたか
向こうの強い気持ちを感じましたね。これ以上流れを渡さないという。ワセダを一回乗せたら危ないと思っていたのではないでしょうか。私はそう受け止めました。
――第1Pでパワープレーが取れなくて、流れをつかめませんでした
惜しいシュートもあったんですけどもね。1、2点入ってもよかったと思うんですけど、そこは足が動いていないから最後にブレードにパックがこないですね。全ての面で東洋大の方が動きが良かったし、気持ちが入っていましたよね。気持ちが入ってる方にパックは飛んできますよ。
――終わり方も良くなかったですね
そうですね。気持ちが切れているというか。いつもだったらあそこまでは行かないんだけれど、また春の大会に戻っちゃったかな。気持ちを切らしてはいけないし、反則も我慢するところをしないと。せっかく点数をとってこれからという時に、気持ちが波に乗っていかないですよね。サイドブレーキ引きながら、一生懸命エンジンふかしている様な感じでしたね。
――プレーが一歩ずつ遅かったですね
技術が特別にあるわけではないので、足を動かしてパックを守って、5人でつないで相手のゴール前まで行くことができなければ、多分次もこんな感じになるかなと思います。明大戦まで1日時間があるので、それを彼らがどう考えるかというところを試されているんだろうなと思います。
――明後日は大一番になるというところで気持ちをつくっていくと思いますが、プレッシャーのある中でスタッフはどうアプローチしていきますか
特に何もいうことはないんですけれども、余計なことを考えるなと。なんで自分たちがここまで来たのかを振り返りなさいということですね。なんでここで負けるのか、なんでここまで来られたのか、何がどう違うのかよく考えろということですね。リーグ戦の最初の時の気持ちに戻れなければ、多分また明大に負けてしまうだろうし。今までやってきたことが頭の中で整理できていれば、いい試合ができるのかなと思います。
FW鈴木ロイ主将(教4=北海道・苫小牧東)
――きょうの試合を振り返っていかがでしたか
きょうの試合は入りからあまり良くなくて、気持ちの部分がよくなかったと思います。皆もっと楽に優勝できるものだと思っていたので、試合に対する意気込みから負けていたと思います。
――優勝を意識してチーム内に緊張はありましたか
もちろん皆この試合に勝てば優勝というのは分かっていました。本当にきょうの試合だけに集中して東洋大に必ず60分で勝つということだけを意識してはいたんですけど、やっぱり心のどこかで油断じゃないですけどちょっと浮ついた気持ちがあったのかなとは思いますね。
――早大はPPのチャンスを生かしきれず、相手はPPのチャンスを生かしていました。その点についてはいかがですか
PPのチャンスも何回かあったんですけど生かしきれませんでした。やっぱり1Pに相手のキーパーに全然プレッシャーをかけられなかったというのが敗因の一つかなと思っています。やっぱり調子に乗らせちゃうとすごく怖いキーパーですし、普段勝っている時というのは1Pにどんどんシュートを打って相手のキーパーにかなりプレッシャーをかけてという感じでした。でも、きょうは1Pのシュート数で東洋大に負けていましたし、10本しか打てなくて相手のキーパーが嫌がるプレーというのができなかったので、そこがPPの攻撃が成功しないなどの結果につながったのではないかと思います。
――東洋大のチェックについてはいかがでしたか
東洋大は予選リーグの時よりも素早いフォアチェックをしてきていました。試合前から予想はしていたのですが、東洋大はすごくリラックスしてくるとは思っていたので、試合前にコーチなどと話していた嫌なイメージがそのまま試合に出てしまったかなと思います。
――体調はいかがですか
大丈夫です。先週結構熱出ちゃって今週は1回練習休んで水曜日の練習から復帰したんですけど、ちょっと体力落ちているかもしれないですけど体調面は問題ないと思います。
――ゴールシーンを振り返っていかがでしたか
ゴール前が混戦で雄吾(矢島副将、スポ4=北海道・駒大苫小牧)が戦っていて、僕に誰もマーク付いてなかったので、雄吾が良いパスをくれるんじゃないかなと思って呼んだら来たので、落ち着いて相手のゴールに流し込みました。でももうちょっと早い時間帯に点を取らないと意味なかったかなという感じです。
――ピリオド間にはどのような話をしましたか
スタッフ陣からあったのは、点差とか、例えば1Pでは1点差で負けていて2P終わった後は3点差で負けていたんですけど、点差とかを意識せずにワンプレーワンプレーで今までやってきたことを発揮するということだけを集中してやろうという話はしました。
――いつも相手より出足が上回っているというのが今年の早大の特徴だと思いますが、きょうは上回られていました。その原因はどこだと思いますか
本当に気持ちのところ、としか言えないという感じですね。1Pのフェイスオフ直後から100%で臨まないといけないと思うんですけど、きょうはそうではなくて1Pは完全にアップ状態になってしまっていたので気持ちの部分ですね。
――相手のシュートブロックにもあっていてゴールまで届かないシュートが多かったのかなと思うのですが
いつもはそれ以上に打てているのでいくつかシュートブロックで引っかかっても全然問題ないんですけど、きょうは打てるシュートも少なく、攻撃がすごく単発だった気がします。
――明大戦に向けてどのように気持ちを
相手うんぬんではなくて。きょう試合後に話したのは、皆どこかでもっと簡単に勝てると思っていたところがあったということです。今までだったら僕ら格下だったので明治倒してやるぞとか、東洋倒してやるぞとか、中央倒してやるぞとかそういう気持ちで意気込んでいたんですけど、きょうの試合は首位だからといってちょっと驕りもありました。東洋ぐらいいつも通りやれば勝てるでしょみたいな感じだったのでそういう気持ちの持ちようから全然ダメだったと思います。僕らは持ってる力を全て出し切ってやっと相手に勝てるくらいのチームだと思うので、力を出し切ることだけに集中してチャレンジャーの気持ちで最終戦挑みたいと思います。
ハリデー慈英副将(スポ4=埼玉栄)
――優勝のかかった試合ということでチームの雰囲気に固さなどはありましたか
口では「緊張するな」とか「いつも通りやろう」という風な声掛けはしたんですけれども、やはり心のどこかでは優勝のかかった試合ということがあったのでちょっと動きが固くなったかなという部分はあります。
――ワセダは数的優位の状況をうまく使えず、一方相手には数的不利の時にやられてしまうシーンが多かったのですが、どうお考えですか
いつものワセダじゃなかったというか、いつもだったら相手より先にパックを取ってパックを守って繋ぐことができるんですけど、今日は全部後手に回って相手のパックエリアをずっと見てしまったりして全体的に動きがよくなかったという風に思います。
――アタッキングゾーンになかなか行けなかった要因はどこにあると思いますか
相手のパックを持っているその人だけしか見られてなくて、周りの選手につくってことを忘れていたのでどんどんパスを繋がれて思うようにパックを奪えなかったことが、自分たちのゾーンで長くプレーした原因かなと思います。
――相手のフォアチェックにやられてしまうシーンも多かったのですがどうお考えですか
ディフェンスももちろん早い判断でパスがさばけなかったっていうのもありますし、フォワードが深く戻ってきてくれなくてディフェンスのオプションがなかったということもあって、全てにおいて噛み合ってなかったのかなと思います
――準備期間が短い中での次戦の明治戦への意気込みをお願いします
今日ももちろん優勝のかかった緊張した試合ということはありましたが、次はやるかやられるかの試合になるので、後がないというか、この試合がいい準備だったのかなという風に捉えて切り替えてやっていくしかないと思っています。