対日体大といえば、昨季の関東大学リーグ戦と今季の関東大学選手権での連敗という苦い思い出が蘇る。結果は、「夏合宿でやってきたワセダのホッケーをやりたい」(工藤哲也監督、昭63社卒=青森・八戸)という思いが実りチームは勝利をもぎ取った。しかしこの勝利への流れは決して順調なものではなく、最後のどんでん返しが手に汗握るスリル満点の試合であった。
過去2試合敗北している相手とあって注目度が高い今試合。開始5分から数的不利のキルプレーが続き日体大が先制。不穏なスタートを切る。そこからFW矢島雄吾(スポ3=北海道・駒大苫小牧)らが次々に得点を試みるがかなわず。第1ピリオド(P)前半は悔しい場面が続いた。その後も苦しい場面が続いたが、GK谷口嘉鷹(社2=東京・早実)を中心とする守備陣が力をみせ第1Pは0−1で終了。続く第2Pもワセダのペナルティから始まるが、きのうの大東大戦から勢いのあるFW生江太樹(スポ1=北海道・釧路江南)がきょうも得点を上げ同点に。 しかしここから第2P後半両チーム譲らず、試合は均衡状態を保ったまま第3Pへと進む。
何度もゴールに食らいつき勝利に貢献した矢島
またしてもワセダのキルプレーから始まった最終ピリオド。43分18秒、惜しくも得点を許し日体大のリード。その後の数的有利のパワープレーでは慎重にゴールを狙うがチャンスを生かすことができず、1−3まで追い詰められてしまう。ここからワセダの攻めに焦りが見え始め怒涛(どとう)のシュート責め。FW澤出仁(スポ1=北海道・武修館)がパックを押し込み、得点。2−3。なんとしてももう1点決めたいところだったが日体大の守備の壁は厚く、あっという間に最終ピリオド残り2分。厳しい状況であった。しかしここで追い上げるのがワセダのホッケー。試合はまさかの展開をみせる。残り時間1分5秒、DFハリデー慈英(スポ3=埼玉栄)が根性のシュート。ついに同点まで追いつくことができた。しかしここでタイムアップ。勝利の行方はゲームウィニングショット(GWS)に持ち越された。
劇的な同点弾を放ったハリデー
会場全体が静かに見守るなか、ワセダの先攻で運命のGWSがスタート。1本目、 鋭く的確なシュートを決めたFW鈴木ロイ(教3=北海道・苫小牧東)はさすがと言える。その後緊迫した空気のなか谷口が光るテクニックで3シュートを守り抜き、試合終了。観客の安堵(あんど)と歓喜が入り混じるなか選手たちはゴールキーパーの元へ駆け寄り、勝利の感触を確かめ合った。
GWSの3本目を阻止する谷口
誰もが予測不能な展開を見せた今試合。「このままじゃ絶対負けられない」(ハリデー)、「自分がやるしかない」(谷口)と最後まで決して諦めない粘り強いプレーで2年連続のベスト4進出。優勝へまた一歩駒を進めることができた。2日後に控える準決勝へもしっかりと準備し、さらなる勝利を期待したい。
(記事 見延可菜、写真 冨田千瑛)
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結果 | ||
---|---|---|
早大 | ピリオド | 日体大 |
0(16) | 1st | 1(8) |
1(10) | 2nd | 0(7) |
2(17) | 3rd | 2(8) |
1(1) | GWS | 0(0) |
4(44) | 計 | 3(23) | ※( )内はシュート数 |
得点経過 | |||||
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チーム | 時間 | ゴール | アシスト1 | アシスト2 | PK/PP |
日体大 | 5:30 | 沢崎 | 相澤 | 大塚 | PK |
早大 | 25:42 | 生江 | 矢島 | - | PP |
日体大 | 43:18 | 小向 | 金子 | 吉田 | PK |
日体大 | 50:24 | 小笠原 | 小山田 | 阿部 | - |
早大 | 51:34 | 澤出 | ハリデー | 生江 | - | 早大 | 58:55 | ハリデー | 矢島 | 生江 | - | 早大 | GWS | 鈴木 | - | - | - | ※PKはキルプレー、PPはパワープレー、PSはペナルティショットを指す なお、PK/PPの表記は早大にとってPKに当たるかPPに当たるかを表記するものとする |
早大メンバー | |||||
---|---|---|---|---|---|
セット | FW | FW | FW | DF | DF |
1 | 飛田 | 鈴木 | 青木 | 羽場 | 新井 |
2 | 矢島 | 生江 | 澤出 | 篠田 | ハリデー |
3 | 田中 | 高橋 | 小澤田 | 吉野 | 大崎 |
4 | 瀨戸 | 前田 | 伊東 | 田村 | 野村 | GK谷口 |
工藤哲也監督(昭63社卒=青森・八戸)
――劇的な勝利でしたが、試合を振り返って
最後まで諦めないでやれたということだと思います。きょうは最後まで脚を使ったうちのやりたいホッケーができていたので、結果勝ててよかったです。
――ゲームウィニングショット(GWS)の場面はどんな心境でご覧になっていましたか
GWSになると運というところがあるのですが、勢いや流れはうちにあったので、勝てるとは思っていました。
――日体大には最近2試合敗れていましたが、特別な思いはありましたか
リベンジうんぬんというよりは、夏合宿でやってきたワセダのホッケーをやりたいという思いでした。結果としては勝てたのですが、力の差はそんなにないので、次やる時も負けないようにやりたいです。
――ここ最近の練習試合では勝てていなかったということですが
試しながら戦っていたのでなかなか結果は出なかったのですが、その中でもロースコアの展開に持っていったり、守りや攻めの意識を持ってやっていました。勝ち負けはあまり意識していませんでした。
――現在のFW陣、DF陣の出来はいかがですか
非常に力はついてきていると感じました。細かいところはまだまだなのですが、体力面はきょうの試合で自信がついたのかなと思います。
――ベスト4を決めましたが、そのことについてはいかがですか
次は中大だと思うのですが、そこでどういったホッケーができるかということを自分としても見てみたいですし、今できることを100%やれればと思います。
DFハリデー慈英(スポ3=埼玉栄)
――きょうの試合全体を振り返っていかがでしたか
まだ僕は試合に出ていなかったのですが、春に一度負けている相手で、絶対リベンジしたいと思って臨みました。序盤立ち上がりに点を入れられて、得点返したとこまではよかったんですれども、3P(ピリオド)でまた入れられて、このままじゃ絶対負けられないという気持ちで最後2点取り返したので、よかったかなと思います。
――3点目、得点されましたが今のお気持ちを
6人攻撃を仕掛けて、最後のワンチャンスだったので、僕DFなので守ることが一番の仕事なんですけれども、あそこは攻めに参加して、うまく3-2のかたちを取れて、僕がゴール前でパックを触れたので、気持ちで入れた1点というか、本当にうれしい1点になりました。
――今回の試合でのDF陣の動きに対して、思ったことはありましたか
少しパック落ちが多すぎるのかなというのが1つと、Dゾーンでもっとパックを持ってない選手に付いたりしたほうがいいかなと。マークを外したりしないことで防げる点はあったのかなと思います。
――次戦へ向けていきごみをお聞かせください
明大、中大は今の二強と言われているので、そこに一矢報いるような気持ちで頑張りたいと思います。
GK谷口嘉鷹(社2=東京・早実)
――最後のゲームウィニングショットを3回守ったことはどのように振り返りますか
あの場面まで追いつかせて点数を取ってくれたのは他のプレーヤーのおかげなので、その分の恩返しは自分がやるしかないという気持ちで挑みました。
――この大会に向けて特に強化したところはありますか
夏の練習試合を通して一度も勝てなかったんですけど、うちのチームが目指すロースコアのホッケーに近づけることはでき、1点差とかに抑えることができていたのでそこには自信がありました。
――これからの試合への意気込みを教えてください
きょう勝つことができたのはまだチームの目標の一部なので、また優勝へ向かって一歩一歩進めればいいと思います。