残り34秒。勝利目前で、まさかの同点劇は起きた。関東大学リーグ戦(リーグ戦)自力優勝の可能性が消滅した日大戦から1週間。気持ちを切り替え臨んだ明大戦は、終始相手の猛攻に圧倒されてしまう。それでも少ないチャンスをものにすると、自慢の守備陣も機能し接戦に持ち込む。終盤までリードを保つも、最後の最後で守り続けた1点を奪われ、2-2の引き分けで死闘に終止符が打たれた。
第1ピリオド(P)序盤は両校共に攻め込むが、好守が光り互いに得点を許さない。13分51秒、数的有利のパワープレーでFW高橋寛伎(国教1=東京インターハイスクール)が魅せる。「シュートを打たないと何も始まらない」と果敢にゴールを狙い、左前からの華麗な一打で先制点をもぎ取った。第2Pでは開始早々、前方に攻めてきていたDF石川貴大主将(スポ4=埼玉栄)がゴール正面から振り抜きネットを揺らす。このまま早大が主導権を握るかと思われたが、明大も黙ってはいられない。第2Pのシュート数は早大の7本に対し明大が19本。後半は数的不利のキルプレーを招く場面も多く、我慢の時間帯が続いた。そんな中GK遠藤秀至(社3=東京・早実)を中心とした守備陣の奮闘で最小失点に留め、1点のリードは保たれた。
先制点を決めた高橋
第3P序盤、流れを変えたい早大はFW青木優之介(スポ3=埼玉栄)らが抜け出し追加点を狙う。一方、明大は第3Pでもそれを大きく上回る22本のシュートを放ち攻撃の手を緩めない。絶対的守護神・遠藤が好セーブを連発し幾度となく危機を救うも、限界は刻一刻と近づいてきていた。残り1分35秒で痛恨のぺナルティを取られると、さらに明大はGKを下げ6人で早大ゴールに襲いかかる。激しい攻防の末、パックは無情にもゴールに吸い込まれ同点に。早大はすかさずタイムアウトを要求し反撃に転じたが、時すでに遅し。「勝ち切れなかったことが本当に悔しい」(石川主将)。頂へ歩みを進めることはできず、二戦連続のドローを告げるブザーが鳴った。
幾度も好守を披露した遠藤
つかみかけた白星には届かなかったが、わずかながら優勝の可能性は残っている。DF松本逸輝(商3=滋賀・光泉)の言う「『チームで守る』というワセダの持ち味」を残りの2試合でも発揮できれば、それは現実になり得るだろう。次戦は2日後の中大戦。今季いまだ無敗の強敵との一戦を前に、工藤哲也監督(昭63社卒=青森・八戸)は「うちが破るという強い気持ちで戦いたい」と闘志を燃やす。『奇跡』を信じて、ラストスパートの時が来た。
(記事 川浪康太郎、写真 中村ちひろ、後藤あやめ)
関東大学リーグ戦 | ||
---|---|---|
早大 | ピリオド | 明大 |
1(16) | 1st | 0(19) |
1(7) | 2nd | 1(19) |
0(9) | 3rd | 1(22) |
2(32) | 計 | 2(60) |
得点経過 | |||||
---|---|---|---|---|---|
チーム | 時間 | ゴール | アシスト1 | アシスト2 | PK/PP |
早大 | 13:51 | 高橋 | 寺井 | PP | |
早大 | 22:19 | 石川 | 新井 | - | PP |
明大 | 25:49 | 大津 | 相馬 | - | PK |
明大 | 59:26 | 松本 | 大津 | - | PP | ※PKはキルプレー、PPはパワープレー、PSはペナルティショットを指す なお、PK/PPの表記は早大にとってPKに当たるかPPに当たるかを表記するものとする |
早大メンバー | |||||
---|---|---|---|---|---|
セット | FW | FW | FW | DF | DF |
1 | 青木 | 金子立 | 寺井 | 新井 | 石川 |
2 | 田中 | 高橋 | 鈴木 | ハリデー | 松本 |
3 | 矢島 | 坂本龍 | 金子聖 | 坂本之 | 堰合 |
4 | 加賀美 | 瀬戸 | 佐藤 | 斜森 | 飛田 | GK遠藤 |
関東大学リーグ戦ディビジョンIグループA順位表(11月22日時点) | |||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
順位 | 校名 | 勝点 | 試合数 | 勝 | 分 | 負 | |||
1 | 中大 | 32 | 12 | 10 | 2 | 0 | |||
2 | 明大 | 29 | 12 | 9 | 2 | 1 | |||
3 | 早大 | 26 | 12 | 8 | 2 | 2 | |||
4 | 東洋大 | 25 | 12 | 8 | 1 | 3 | |||
5 | 法大 | 10 | 12 | 3 | 1 | 8 | |||
5 | 日体大 | 10 | 12 | 3 | 1 | 8 | |||
7 | 慶大 | 4 | 12 | 1 | 1 | 10 | |||
8 | 日大 | 2 | 12 | 0 | 2 | 10 |
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コメント
工藤哲也監督(昭63社卒=青森・八戸)
――自力優勝は前回で消滅してしまいましたが、やはり勝ち点3が取りたかった試合でした
勝ち点3が取りにいけたゲームではあったのですが、結果疲れてしまった部分もあるでしょうね。
――守備陣の奮闘に関してどのようにお考えですか
相手はひとりひとりスキルが高いメンバーが多いので、足や体を使って守ろうと指示をしました。それに関してはよくやってくれたなと思っています。
――最後6対4になった場面で守り切ることができませんでした
そこは相手が勝ちたいという気持ちのほうが強かったとも言えるでしょうし、うちは一生懸命守り切ったという結果なので仕方がないと思います。
――厳しい状況になってしまいましたが、残り2試合どのように戦っていきたいですか
まず明後日の中大戦で勝ち点を取りに行くということで、相手次第ですけれどまだ優勝の可能性は残されているので、そこに向かっていきたいです。まだ(中大に)どこも勝っていないと思うので、うちが破るという強い気持ちで戦いたいと思います。
DF石川貴大主将(スポ4=埼玉栄)
――きょうの試合を振り返って
最後の30秒ちょっとまで常にリードしている状態でよかったのですが、勝ち切ることができませんでした。最後はゴール裏にパックが当たって空中で叩かれた得点で、それを不運というのかわからないですが、勝ち切れなかったことが本当に悔しいです。
――どのような対策で臨まれましたか
主にセットの変更とキルプレーでのチェッキングの精度の向上を行いました。キルプレーに関してはそれがすごく機能していてよかったです。セットの変更についても、短い時間の中で準備できたのはよかったのではないかと思います。
――一次リーグと比べて明大の印象に違いは
やはり攻撃の強いチームであることは頭にずっとあって、自分たちがいかにプレッシャーをかけられるか、いかに長く自分たちのアタッキングゾーンでプレーできるかということが鍵だと思っていました。あまり体に当たってくるとか、プレッシャーが速いといったイメージはなかったのですが、やはりいい攻撃をしてくるなという感じはありました。
――立ち上がりはいかがでしたか
まずまずの立ち上がりで先制点も取れて、主導権が握れたかどうかはわかりませんが、自分たちとしてはリーグ戦の中ではかなりいい方のスタートを切れたのではないかと思います。
――きょうの2回の得点シーンを振り返って
1点目はワンチャンス、フェースオフからのセットプレーのような感じだったのですが、それがしっかり機能したという点でよかったです。2点目は自分だったのですが、相手がクリアしきれていないところでチェンジしているのが見えたので、ここで攻め上がっていけば数的有利な状態で攻撃できるなと思って上がっていったら、幸運にも(パックが)バックボードからいい感じではじき返されてきてくれたので、そこは運がよかったのではないかと思います。
――激しいぶつかり合いが続きましたが、第3Pでは体力の消耗は感じましたか
そうですね、特に最後の2、3分は2つ回しにしたり、キルプレーが続いてしまったりとハードな試合だったのですが、それは言い訳にしかならないので、結果を残せなかったというのがすごく残念です。
――守備の面ではかなりよかったように見えました
そうですね、キルプレーも最後に相手が6人攻撃してきたところ以外は(守れていて)、2失点のうち1失点だけだったので。ダブルマイナーがあったりというのが回数的にも多かったのですが、1失点しかしなかったということは、すごくPKがよかったのではないかと思います。
――中大戦に向けて意気込みをお願いします
またタフな試合になると思いますし、優勝という面では他のチームの成績次第というところもありますけれども、まず自分たちが、どこにも負けていない中大にしっかり泥をつけて、自分たちの優勝の可能性を最終戦まで残すということに徹していきたいと思います。
GK遠藤秀至(社3=東京・早実)
――引き分けとなってしまいましたが、試合を振り返っていかがでしたか
第1Pで点を取れて、流れも結構よかったと思うんですけど、第2Pからウチの足が止まって向こうの流れになり始めて、シュート数も負けてきて。第3Pもその流れのまま入っちゃったんで、第3Pでもうちょっと修正できればよかったなと思います。
――きょうはかなり明大に攻められましたが
基本的にウチのチームは相手に攻められていることが多いので。シュートが多くなることは覚悟して、そこでシュート数多くなる中でも少ない失点に抑えて勝とう、というのが今年のウチのチームの方針だったので、しっかり抑えようと思って迎えました。
――遠藤選手自身は好セーブが目立ちましたが、自己評価は
1本目のシュートは止められたのですが、その後リバウンドあったり、相手のところに出してしまったりとかがあったので。(自己評価は)80…70点ぐらいだと思います。失点は、(ゴールにパックこそ)入らなかったですけど、セービングの仕方とかがもうちょっと良くなればなあ、と思います。
――最後の場面で同点を許してしまいました
残り時間少なかったので、本当はその前のプレーでパック出してほしかったんですけど、そこを出し切れずに、まあ人数も少なかったので。もうちょっと最後まで走りきれる体力があったらと思ったので、もうすこし練習厳しく追い込んでやっていけば、次はああいう場面になっても勝ち切れるんじゃないかなと思います。
――途中負傷したように見られましたが、何が起こったのでしょうか
ヘルメットの間からプレーヤーのスティックが入ってきて、ここ(右目じり下)が切れちゃって。そのとき血が出ていたので、交代しようって言われるかと思っていたんですけど。トレーナーの人が血を止めてくれていたので、その後プレーを続行することができました。
――今後どのようにチームは戦っていきますか
このあとも中大、東洋大と、両方ともたぶんウチよりも相手のシュート数が多くなっていたりと、ウチとしては苦しい場面が続くと思うんですけど、それでもしっかり少ない失点に抑えて、多くとは言わないですけど、点を取ってもらって、少ない点数の中で勝ち切りたいと思います。
DF松本逸輝(商3=滋賀・光泉)
――明大戦に臨むにあたってどのような練習をされてきましたか
一練習ではパワープレーでしっかりと得点できるように時間を割いていきました。
――きょうの試合を振り返って、いかがでしたか
攻撃力があって、ワセダの持ち味である「守って攻める」という形でしか勝てない中で、第1Pで1点をリードできたのは大きかったと思います。
――激しい攻防戦となったきょうの試合で、ワセダのディフェンス面での活躍が印象的でした
「チームで守る」というワセダの持ち味をキーパーを中心に守れていたかなと感じます。あとは、自分たちのプレースタイルでしっかり得点できなかったので、今後はそこを練習していきたいと思います。
――残り30秒で同点を決められてしまいましたが、その原因は
一第3Pでは、全体的に足が動いておらず、そこで守りの時間が増えていく中で相手のプレーを切るというプレーも出来ず、その流れをずるずる引きずっていったことが原因で失点してしまったという感じです。
――きょうの試合の中で見つけたディフェンスの一番の課題点とは
対面プレーである1対1と、センターとのコミュニケーション不足なので、今後はそこをしっかり練習していきたいと思います。
――最後に、次戦への抱負をお願いします。
一優勝という線がすごく薄くなってしまったのですが、少しでも順位を上げられるようにチーム一丸となって頑張っていきます。
FW高橋寛伎(国教1=東京インターハイスクール)
――貴重な先制点を挙げられました
明大という強い相手に対して得点できたので、最高の気分でしたね。
――あのような得点のかたちは狙っていたのでしょうか
シュートを打たないと何も始まらないので、とりあえず打って、あとはリバウンドなりにつなげていければいいなと思っていました。結果として得点できました。
――一年生ながらチームでも存在感を発揮されています
僕は海外でホッケーをやっていた経験があるので、そこから学んだことを有効に用い、チームでまだ無いようなプレー、僕にしかできないようなプレーをやってアピールしていきたいです。
――今後の意気込みをお願いします
まだリーグ戦は続くので、残りを全勝で終え、全日本選手権に行きたいですね。