【連載】新体制特集『Braves』第3回 遠藤秀至×堰合芳貴×新井遥平

アイスホッケー

 『氷上の格闘技』とも称されるアイスホッケー。スピーディーかつ力強い攻撃がリンク上で繰り広げられているが、早大にはその勢いを食い止める頼もしい守備陣がいる。その中心的存在を担っているのが遠藤秀至(社3=東京・早実)、堰合芳貴(社3=青森・八戸工大一)、そして新井遥平(スポ2=北海道・駒大苫小牧)だ。新体制を迎えたいま、三人の心境をうかがった。

※この取材は5月15日に行われたものです。

「新しいトレーニングの成果を感じられた」(堰合)

新井

――新体制となったチームの雰囲気はいかがですか

堰合 ことしはきょねんよりも上級生と下級生が仲良く、コミュニケーションが日頃からうまく取れるようになっていてとてもいい雰囲気になっていると思います。

――学年が上がって環境や心境の変化などはありましたか

新井 後輩もできたことで、1年生のお手本になるようなプレーをするという意識が芽生えたり、きょねんとは違って自分のことばかりではなくチームのことを考えたプレーをしていこうと考えています。

遠藤 個人的なことでは、今年度から主務になり部の運営の仕事に携わるようになりました。ホッケーだけではなく部のお金の管理や早慶戦の運営などの仕事も増えてきたので、いままでより大変になってきました。

堰合 2年生までは気持ち的にフワフワした状態だったのですが、コーチと話したり、ミーティングでみんなと話し合ったりすることで多少3年生としての責任を感じられるようになってきたと思います。

――新一年生の印象は

新井 プレーではすでに戦力となっている選手も多いですし、私生活では元気で素直ないい後輩が入ってきたと思います。

――期待している選手は

堰合 ハリデー(慈英、スポ1=埼玉栄)と矢島(雄吾、スポ1=北海道・駒大苫小牧)は期待されて当然だと思っています。自分的に期待しているのは高橋(寛伎、国教1=東京インターハイスクール)かなと。彼がアメリカから学んできたホッケーは日本のホッケーとは違い、チェックにしろシュートにしろすごく気持ちが入っているので、日本のホッケーに慣れたらさらにいい成績が残せるのではないかなと思います。

――日本とアメリカではプレースタイルの違いは

堰合 アメリカはタフな選手が多いので、高橋は技術というよりはがむしゃらにプレーしていたと思うのですが、日本に来て体つきも対等な選手がいる中、今までがむしゃらにしていた部分をもっとテクニックやスキルに費やせば多分もっといい選手になるし、今後活躍していくと思います。

――石川貴大主将(スポ4=埼玉栄)の印象は

新井 リーダーシップを執るのがうまく、試合中でも色々な選手のプレーを見て駄目な部分はすぐに指摘してくれます。自分は同じセットで組ませていただいているのですが、調子が上がらないときは声をかけてくれて具体的にどうしたらいいのかを教えてくれてとても助かっています。

――春の関東大学選手権(選手権)を振り返ってみていかがですか

遠藤 自分が試合に出たのは準々決勝と準決勝だけだったのですが、個人としてはそこまで悪くない結果だったと思います。準決勝は、ワセダがかなり多くシュート数を打たれていたのに対して、60分間引き分けでいられたことは良かったです。結果としては負けてしまったので、そこは最後の最後まで気を引き締めてできたら良かったなと思います。あとは、ほとんどの試合でシュート数が負けていたので、うまくコミュニケーションを取っていたらもっと上手にディフェンスができたのかなと思います。

新井 自分は第1セットでプレーしていたのですが、チームの看板セットであるにも関わらず失点をしてしまう場面が多くあって。本来自分たちは最低でもプラスで終わらなければいけないのに、多く失点をしてそれが敗因となってしまいチームに迷惑をかけてしまったので、反省が多く残る大会となりました。

堰合 ことしは新しいトレーナーが入ってきたことで、いままでずっとやってきたメニューがガラッと変わりました。その中でも春の大会を通して自分は結構新しいトレーニングの成果を感じられたので、夏も継続してやれば秋の関東大学リーグ戦(リーグ戦)にもつながるのではないかなと思える大会でした。

――試合によって失点数にムラがある印象でしたが

堰合 どの試合でも最初は同じ気持ちで臨んでいると思うのですが、点差が広がってしまうとどうしても攻めを意識してしまう選手が増えてしまうので、その分得点できるチャンスも増えるのですが、結局守りも薄くなってしまうのでそこで失点したりするとシーソーゲームになって、点差広がってしまうのだと思います。ロースコアで終わるときは、選手がそこまで攻め過ぎず、守りの意識を持っているため失点していないと思うので、ワセダはそういったプレーを目指していく必要があると思います。

――大会ではペナルティーの数が他のチームより少し多い印象でしたが、DFとしてキルプレーの対応はどのようにしていますか

新井 仕方のない反則もありますし、4人対5人という数的不利な状況なのでどうしてもシュートを打たれてしまうのですが、そこでGKと声を掛け合って、毎シフト毎シフト集中して絶対に守るという気持ちを持って試合に臨んでいました。

――GKとしてはいかがですか

遠藤 法大戦はあまり覚えていないのですが、明大戦はコーチから試合前の練習の時にシュートを打つ時の明大のパターンをだいたい教えてもらっていたので、そこを意識してしっかり守ることができたと思います。不意を突かれたパスを出され慌ててしまうということがあまりなく、危ないところにパスを出されても、予測できていたのでそこに対してしっかりスケーティングをして止められたのかなと思います。

――印象に残っている試合は

堰合 法大戦かな。1点失点をして、流れを相手に持っていかれそうなところを僕と慈英(ハリデー)が前に突っ込んでいき、なぜかDFだけで得点できてそこから流れが持ってこられたというのが、印象深かったかなと思います。

新井 自分は明大戦です。途中まで同点、最後に失点してしまい勝ち切れず、もったいない試合でした。あそこで勝っていれば決勝まで行けて、最低でも2位もしくは優勝でき、とても悔しい思いをしたので明大戦が一番印象に残っています。

遠藤 法大戦ですかね。法大戦は個人的にあまり調子が良くなく、5失点してしまったし、試合内容もあまり良くなかったのですが、味方が点を稼いで最後ゲームウィニングショットまで持ち込んでくれて、しっかり勝ち切れたというのがチームとしても大きい勝利だったし印象にも残っています。

堰合

――4位という結果についてはどのように受け止めていますか

堰合 明大にあそこで勝っていたら最低2位だったので、悔しいというか惜しかったなという感じです。3位決定戦はボロボロで負けてしまいこれに関しては実力だと思うので、今後4位という結果を受け止めてリーグ戦と日本学生氷上競技選手権(インカレ)ではさらに順位を上げられるよう頑張っていきたいです。

――選手権を通して、秋のリーグ戦に向け見えた課題があったら教えてください

遠藤 春の試合は、基本的にはワセダがシュート数で負けていて、しかも20本くらい差をつけられていました。それだけ差をつけられると守備の時間が長くなり、攻めに出る前にどうしても守りで体力を使ってしまうため厳しい試合になってくるし、逆にその差が無くなってくればもっとシュート数が増え相手キーパーにプレッシャーもかけられるし、得点にもつながるので。こういうところをもう少しリーグ戦までに改善していく必要があると思います。

――逆に良かった点は

堰合 毎年言われていることなのですが、ワセダは他大学より個人のメンバーのスキルがかなり劣っているので、そこをどのように対処するかが課題に上がっているのですが、今回明大のような個々のスキルが高い相手に対してロースコアで勝負することができ、そういうプレーをすれば上位の大学にも通用することが分かったので、そこいい自信になったかなと思います。

遠藤 春の大会は毎年そんなにいい結果を出せず、準決勝では大差で負け、その反省を生かして3位決定戦に臨む感じだったのですが、そのなかでもことしは準決勝でいい試合ができたので、そういう点では例年よりはシーズンのいいスタートを切れたかなと思います。

新井 ことしはフォアチェックが素早かったりするなど、全体的にプレーがアグレッシブで良かったと思います。

――夏の間に強化していきたいところは

堰合 僕は瞬発力が弱いので、瞬発力を上げるトレーニングを頑張っていきたいと思います。

新井 自分はそんなに筋力がないので、トレーニングをして体重を増やして他の大学の選手に負けないような強い体を作っていきたいです。

遠藤 夏に限らない話なのですが、GKにとって動体視力はとても重要なので、もう少し動体視力を上げられるよう努力していきたいです。それと体幹系統の強化をことしから重点的にやっているのですが、自分はそんなに強くなくてまだまだなので、頑張って強化していきたいと思います。

――動体視力はどのようにしたら向上するのでしょうか

遠藤 目が速く動けば、速く動いているものに目がついていくので目を速く動かすようなトレーニングとかをしています。右と左を交互に見るのですが、それをやっているとだんだん速くなっていきますね。上下とかもやります。

新井 とても速いですよ(笑)。

――見せていただくことは…

遠藤 きょうは無理です(笑)。

新井 ある程度遅くてもいいので、やってみましょう(笑)。

遠藤 (人差し指を立て、目を動かす動作をする)

新井・堰合 やっぱり、すごい(笑)。

遠藤 これは遅い方なのですが、試合前になると目がぶれるくらいになります(笑)。

――チーム内で流行っていることは

堰合 志村(慎次朗、社3=東京・早実)が実家の青梅市から持ってくる生卵をみんなで食べることですかね(笑)。でも、その卵は(寮の)三階に住んでいる人には回ってこなくて。二階の人たちはみんな卵を持って食堂に来るのに。だから志村はちょっとダメですね。三階に配慮が足りていないです(笑)。

――寮の部屋割りはどうなっているのですか

堰合 好きな人となる感じです。

新井 三人一緒の部屋でしたっけ?

堰合 違います(笑)。自分は佐藤(秋都、教3=北海道・駒大苫小牧)とですね。

新井 自分は高校の頃からの先輩である金子立樹さん(スポ3=北海道・駒大苫小牧)と同じです。

遠藤 自分は後輩の田中(創一朗、政経2=東京・早実)なのですが、そこはもう主務と副務の部屋と決まっています。

――アイスホッケーあるあるなどがあれば、教えてください

遠藤 冬のスポーツってだいたいそうだと思いますが、寒いところ出身だと人見知りで口数が少ない人が多いですよね(笑)。

堰合 そんなに何かを求めてないよね(笑)。

遠藤 他のチームの人たちもかなり人見知りじゃないかな(笑)。内輪では仲がいいし、ホッケーをやっている間はすごく陽気そうなのですが、外に出るとなぜか内気になります。こいつ(新井)はそうでもないですけど。関西から来ている松本(逸輝、商3=滋賀・光泉)なんかはすごいアグレッシブですね。

堰合 あとは、頭おかしい人が多い(笑)。人とぶつかり合ったりするので、ちょっとクレイジーさがないと怖くなっちゃうのでやっていけないかなと。頭おかしいくらいがちょうどいいですね。

――ぶつかる際に痛くないのでしょうか

新井 とても痛いです。なんなら今でも怖いです(笑)。自分、鼻を切ったことがあって。スケートの刃が当たって、バッと血が出て…。本当に怖いスポーツです(笑)。

――GKはもっと怖いのでは

遠藤 普通にシュート打たれている分にはそんなに恐くないです。

「接戦でも競り勝つチームに」(新井)

遠藤

――皆さんが思うアイスホッケーの魅力を教えてください

堰合 みんなもよく言っていますが、ここまでのスピード感やハードなチェックが他のスポーツにはないので、そこが魅力かなと思います。

新井 サッカーなどとは違い攻守の切り替えが早いので、常に得点チャンスというか10秒あったら敵チームのところにシュート打てたり、逆に攻められてしまったりして、試合の展開が目まぐるしく変わるのが見ていてとても面白いと思います。

遠藤 二人とだいたい一緒なのですが、氷上なので陸で走っているより断然速いし、止まっているということがなくみんな動いていて、何かしら起きているので見ていて飽きないと思います。

――では、早大スケート部ホッケー部門の魅力を教えてください

堰合 個性が豊かで、他の大学に実力は劣りながらもしっかり結果を残して戦っていけるというところが魅力だと思います。

――秋のリーグ戦までにどのようなチームを目指していきたいですか

堰合 今から中央大や明大の実力に追いつくことは難しく、何かでカバーしなければいけないと思うので、それを早い段階で見つけて成長させていきたいと思います。

新井 芳貴さん(堰合)も言っていた通り、急に実力伸ばしてどうこうするというよりはワセダのチーム力を上げて接戦でも競り勝つチームにしていきたいなと思います。

遠藤 コミュニケーションを良くとり、全員が同じ目標に向けてプレーしていくチームが出来れば他の大学にも負けないようなチームになっていくと思うので、いつものワセダの売りであるチーム力をさらに強化していきたいと思います。

――リーグ戦に向けて一言お願いします

堰合 リーグ戦では優勝することが目標なのですが、自分は春に全然結果を残せなかったので、役割を果たしつつしっかり結果を残していけるよう頑張りたいです。

新井 自分も、優勝することがチームの目標だと思っています。個人の目標としては、自分が出ているセットで失点を少なくして、少しでもチームに貢献できるように頑張っていきたいと思います。

遠藤 リーグ戦では春以上に失点を減らし、技術も向上させていきたいと思っています。あとは、試合の期間が長いので、全体を通して調子の波が出来ないようにすることを目標にして頑張ります。

――ありがとうございました!

(取材・編集 進藤翔太、中村ちひろ)

こだわりの一枚です!

◆遠藤秀至(えんどう・しゅうじ)(※写真上)

1994(平6)年4月23日生まれ。168センチ、69キロ。東京・早実高出身。社会科学部3年。今年度から主務になった遠藤選手は、早慶戦の準備などでずっと仕事に追われていたそうです。対談中も、部のことを誰よりも考えていることが伝わってきました。大盛況に終わった早慶戦の裏には遠藤選手の努力が隠れていたのですね!

◆堰合芳貴(せきあい・よしき)(※写真左下)

1994(平6)年5月31日生まれ。177センチ、72キロ。青森・八戸工大一高出身。社会科学部3年。高田馬場のカフェテリアでアルバイトをしているという堰合選手。所属ゼミでは、情報が社会に与える影響について研究しているそうです。部活、学業、アルバイトをしっかり両立させている、まさに早大生の鑑ですね!

◆新井遥平(あらい・ようへい)(※写真右下)

1995(平7)年4月11日生まれ。173センチ、72キロ。北海道・駒大苫小牧高出身。スポーツ科学部2年。マイブームはボーリングだという新井選手。多いときは20ゲームもプレーするそうです。対談では、小ボケを挟んできて先輩たちに度々つっこまれる場面も(笑)。愛されキャラである新井選手の今後の活躍に期待です!