【連載】新体制特集『Braves』第2回 青木優之介×寺井敏博

アイスホッケー

 相手の守備を打ち破り、ゴールへパックをたたき込む――。果敢な攻めで得点に直結する役割を担うのがFWだ。今回はワセダの主軸となる2人のFW、青木優之介(スポ3=埼玉栄)と寺井敏博(国教3=米国・チョートローズマリーホール高)に、春の振り返りや今後への意気込みなどを語っていただいた。

※この取材は5月13日に行われたものです。

「一生懸命やれば勝てるチャンスもある」(青木)

青木

――春の関東学生選手権(選手権)を振り返ってみていかがですか

青木 ワセダとしてはもちろん優勝目指してやってきているので、結果として準決勝と3位決定戦での敗北は、チームとしても個人としても納得のいかない結果だったと思っています。

寺井 彼が言ったように優勝目標でずっとやってきたのですが、準決勝で負けてしまって。3位決定戦もすごく悪い内容の試合だったので、選手権の結果だけ見たらよくない内容でした。きょねんと何も変わっていないという感じであまり納得いかなかったです。

――全部で4試合でしたが、特に印象に残った試合はありますか

青木 法大戦ですね。両校とも勝ちたいという気持ちは一緒だったのですが、その気持ちの中、最後ゲームウィニングショットで勝ち切れたというのはチームとしてもかなり影響は大きかったと思います。

寺井 明大戦で延長の末負けたのも個人的にはショックだったのですが、法大戦が多分4試合の中で一番内容が悪い試合だったと思うので、それでぎりぎり勝ちという感じだったのがとても印象深いです。

――この大会で新たに見えてきた課題はありますか

青木 決勝まで行った明大ともあそこまでいい試合ができたし、強豪の法大にも勝ち切れたというのは、みんなが一生懸命やれば勝てるチャンスもあるし、その一方で東洋大戦のように少しでも集中力が切れたり、少しでもみんながサボってしまったりしたら、ああやって大差になってしまうチームだなというのは改めて思いました。

寺井 レフェリーの判定で両チーム反則になることが多いので、ジャッジにかからず、逆に足を動かしてペナルティーを稼ぐような感じで、できるだけアドバンテージのある形で試合に臨んでいければいいなと思いました。

――新チームの雰囲気はいかがですか

青木 きょねんは絶対的なエース、(池田)一騎さん(平27スポ卒=現日本製紙クレインズ)がいたのですが、それに比べてことしは「こいつがエースだ」という人がいないので、みんな一生懸命で、きょねんに比べても自分がどうにかしなきゃという気持ちは強くなりました。

寺井 雰囲気はすごくいいと思います。みんなかみ合っていて、なじんできている部分もあるのですが、春大会はきょねんと同じ結果だったので、結果が残せなかったことだけは少し悔しいです。

――セットごとの役割は意識していますか

寺井 基本的にことしはどのセットにも主力の選手がいて、それで回せるのでチームはすごくいいと思います。

――昨シーズンは立ち上がりが課題だと皆さんおっしゃっていましたが、今シーズンに入ってからはいかがですか

青木 スタートは良くなっているのですが、少しの集中力の切れから失点が多かったり、反則が多かったりというのはあります。

寺井 立ち上がりはすごく良かったと思いますし、試合の前のアップなどに集中しようという話もあって、フィジカル的にもメンタル的にも準備を整えた感じだったので、きょねんよりはよくなったかなと思います。

――3年生になって、気持ちの変化はありますか

青木 きょねんは2年生だったので、先輩についていけばいいという感じだったのですが、ことしはFWには1人しか4年生がいないですし、自分たち3年生がチームを引っ張っていくような気持ちでやっていこうと思っています。

寺井 上級生になったので、誰かがリーダーシップをとって引っ張っていくという気持ちでやっています。

――4年生の印象は

青木 明るいです(笑)。オンとオフがしっかりしていますね。普段こうして寮で生活しているときはふざける人もたくさんいますが、やはり試合や練習のときは切り替えて真剣に取り組んでいるのがすごいなと思います。

――選手から見て、石川貴大主将(スポ4=埼玉栄)はどんなキャプテンですか

青木 自分は高校から一緒だったので、なじみやすいというか、4年生の中でも一番話しやすいですし、キャプテンとしても頼れる存在だと思っています。

寺井 彼はすごくボーカルなリーダーなので、チームを引っ張っていく力がありますし、キャプテンとしてのリーダーシップをすごくとっていると思います。あとはプレーの面でも、DFをちゃんと支えて引っ張っているという印象があります。

――青木選手は高校時代と比べて、石川主将との関わり方は変わりましたか

青木 高校の方がもっと上下関係が厳しかったので、大学ではそれに比べて緩くなってもっと関わりやすくなったのかなと思います。

――1年生の印象は

青木 慣れるのが早いです。先輩との関わりも、入ってきて1、2週間後ぐらいにはタメ口で話すような選手もいますし(笑)、明るくてノリがいい選手が多いですね。

寺井 いい意味でなじみが早くて、結構みんな仲良くなっています。僕の隣の部屋が三人部屋で、格地(龍太郎、スポ2=埼玉栄)、矢島(雄吾、スポ1=北海道・駒大苫小牧)、ハリデー(慈英、スポ1=埼玉栄)っていう、1年生が二人いる部屋なのですが、仲良くなって、ハリデーとかもう(自分のことを)「トシ君」とか呼びにくるので(笑)。そういう結構いい馴れ合いになっているかなと思います。

――期待の新星を挙げるなら

青木 個人的にはハリデーですね。高校も彼と一緒なのですが、当時からうまいなと思っていました。DFとしても頼れる存在だと思います。

寺井 ことしは1年生で試合に出ている選手も多くて、本当にチームに貢献して助けていると思います。期待の新星はやっぱり羽場健太(政経1=東京・早実)ですかね。試合には出ていないのですが、隠れている力があると思うので、ちょっと気になっています。

――具体的にはどんな力ですか

寺井 ポテンシャルがあるかなあと(笑)。ホッケーの面でも私生活の面でも、「こいつやばいんじゃないか」みたいな(笑)。静かなのですが、まだちょっと隠し持っているものがあると思うので、期待ですね。

――チーム全体のムードメーカーは誰ですか

青木 一番うるさいのは寺井です。本当にうるさいです(笑)。でも彼も本当に切り替えがすごいので。寮内だと部屋に勝手に入ってきて騒いで、散らかすだけ散らかして帰っていくような人なのですが、勝ちたいという気持ちは誰よりも強いので、そこは見習っていきたいなと思っています。

寺井 ムードメーカー…そうですね、僕も自分だと思います(笑)。

一同 (笑)。

寺井 寮内や私生活でチームメイトとふざけるのが好きなので、そういう場面では明るいムードを作れているかなと思いますし、プレー面に関してはホッケーが大好きでパッションを持っているので切り替えます。でも日常生活は結構ライトな感じです(笑)。

寺井

――ゴールデンウィーク中のオフは何をしていましたか

青木 インラインホッケーという、アイスホッケーの陸上でやるやつに6人ぐらいで一緒に行って、大会に出ていました。

――やはり陸上と氷上では違いますか

青木 全然違いますね。プレースタイルも違いますし。

寺井 彼は一応、インラインの日本代表だったので。

青木 だったんですけど…もう違います(笑)。

寺井 僕は、5月4日って英語でメイ・フォースじゃないですか。それと『スター・ウォーズ』のメイド・フォースを掛けたイベントがその日六本木ヒルズであったので、それに行きました。そのついでに、ビールフェスティバルみたいなのにも行き、昼間ずっとそこでビールを飲んでいました(笑)。

――お二人は同じ学年でポジションも同じですが、普段一緒に食事に行くことなどはありますか

寺井 1年生のときは同期と結構行っていたと思うのですが、大学では学部も違いますし。僕はきょねんだったら本キャンにいる部活メンバーとはご飯に行ったりしましたが、(青木選手とは)食堂でたまに会うぐらいですね。部屋にはよく遊びに行きますが。

――寮ではどんなことをしていらっしゃるのですか

青木 (寺井選手が)人のベッドに入って、もう寝ようとしているのにどかなかったりします(笑)。

――マイブームは何ですか

青木 たまっているドラマの録画を見ることです(笑)。

寺井 ずっとやろうと思ってまだやっていないのですが、ビールのシールを何枚か集めるとビールサーバーがもらえるっていうのがあるじゃないですか。それをちょっと集めようかなと思って。あ、これじゃマイブームにならないですね(笑)。それから昔は全然やらなかったのですが、僕は日本語の読み書きがあまり強くないので、逆に日本の本を結構読んでいます。

――小説ですか

寺井 小説ではなくて、今興味のある業界がやっているM&Aのこととか、そういう興味のあることを日本語で勉強できたらいいなと思って読んでいます。漢字、難しいです(笑)。

――やはり漢字はまだなじめないですか

寺井 小さい頃から漢字の覚え方が漫画とかだったので、振り仮名のない難しい本になってくると、だいたいわかるのですが、たまに文章のアイディアはわかっても徹底的な読み方がわからないことがあります。時間があったら調べたり、電車の中とかだったらアイディアだけでさらっと読んだりしています。

――どんな漫画を読んでいるのですか

寺井 『ワンピース』は読んでいました。僕のお父さんが漫画好きだったので、家にあったのは『ワンピース』とか、『プレイボール』っていう昔の野球漫画とか。あと僕はゴルフが大好きなので、『風の大地』というゴルフの漫画も持っています。それから6年ほど前の夏に日本に来たときに、『スラムダンク』にはまって全巻持って帰りました。

――青木選手は漫画はお好きですか

青木 『暗殺教室』とかは読んでいます。『暗殺教室』は部屋にたくさん置いてあるのですが、気付いたら(他の選手に)持って行かれていて、読みたいときに読めないんです(笑)。

寺井 この前怒っていましたね(笑)。

青木 全体の連絡ツールで「大至急返してください」って言いました(笑)。

「勝たないと楽しくない」(寺井)

――夏休み中のトレーニングや合宿ではどんなことをするのですか

青木 普段は基本的に練習1日1回と陸トレ1回なのですが、夏合宿は、きょねんでしたら練習2回と陸トレ2回だったので、もう後半は死にそうになりました。

寺井 氷上はないのですが、逆に夏ずっと氷上をやっているとモチベーションが保てないので、ホッケーから離れるということは大事だと思っています。夏は走ったり、アジリティやインターバル系をやったり、あとは主にウエイトをやるのですが、夏のウエイトは個人のレベルアップにもなりますし、シーズンに入ると重いウエイトはそんなにしょっちゅうできないので、そこでパワーアップして。ウエイトをやって力をつけたら、(試合に)出られるか出られないかというボーダーの選手もたくさんいるので、この夏で個人的にもチーム的にも差をつけられるかなと思います。

――ことしは新しいトレーナーが入って練習がきつくなったとうかがったのですが

寺井 確かにきつくなったのですが、僕のやりたかったメニューも増えました。それと前はランがインターバルだけだったのですが、走って戻ってを繰り返しているとうつ病みたいになるので(笑)。それに対して今はアジリティとか、走って戻ったりするバリエーションが増えました。きついメニューなのですが、メンタル的にもいいですし、チームのモチベーションも上がって良かったと思います。

――新体制になって、陸トレ以外に変わった点はありますか

寺井 練習が15分長くなったぐらいですかね。朝の15分はかなり大きいですよ。3時起きと3時15分起きとはかなり違いますから(笑)。しょうがないですけどね。長く感じるよね、練習。

青木 長く感じる。眠いし。

 結構僕、最後のほうはバテています。

――個人的に今季成長していきたい点は

青木 きょねんは一騎さんという大きな存在がありましたし、他の4年生はFWとして引っ張っていける人も何人もいたのですが、ことしは「この人だ」といった選手がいないので、それに自分がなれたらいいなと思っています。

寺井 僕は春夏でちょっと太ってしまうので、氷上でもやはり重いなという感じがするんですね。だから夏は、筋肉アップで体重が増えるのはいいのですが、脂肪をカットして、重くない体で動けるようにというのが個人的には目標です。

――少し太っただけでも氷上での感覚は変わるものですか

寺井 僕は1年生で入ってきたときは74キロだったのですが、今81キロぐらいあるんですよね。きょねんの夏の陸トレ期間は84キロぐらいあって。実家に帰ったら母に「誰?」と言われました(笑)。だからそういう面でももう少しカットできたらいいなと思っています。

――最も勝ちたい相手を一校挙げるならどこですか

青木 個人的には中大ですね。自分が入ってから公式戦で中央に勝ったことがまだ一度もないので、ことしこそは勝ちたいなと思っています。

寺井 僕は東洋大ですね。1年生のときはずっと勝っていたのですが、きょねんのインカレとことしの3位決定戦で結構点差をつけられたので、勝ちたいと思います。

――中大は具体的にどの部分が強いのですか

青木 個が強いです。もう個から全然違いますね。

寺井 中大はきれいなホッケーをするんですよね。パス回しとか。きょねんはすごくうまいGKがいたので崩しにくかったのですが、ことしはそんなキーパーもいないと思うので、崩していけば勝てるチームだと思います。

――そういったシステム的な面では早大はどうですか

青木 他の大学は全員スポーツ推薦でみんなうまい中、ワセダはスポーツ推薦が数人だったり、頭で入ってきた人もいたりするので、どうやったら勝てるかというのをみんなで考えます。そういうチームワークが他の大学と比べてワセダは強いのかなと思います。

――チームワークの強さには、やはり比較的上下関係が緩い環境も一役買っているのですか

青木 先輩後輩関係なく関わりやすいので、後輩から先輩にこうしてくださいと言うこともできますし、その辺はみんな言いやすい環境だとは思っています。

真剣に対談に臨む二人

――素人目で見ると東洋大は当たりが強い印象でしたが、プレーヤーから見ていかがですか

寺井 東洋大は身体の当たりが強く、それに対してワセダはいつもそういうスタイルではやらないので、結構当たり負けする場合が多いです。だからこそ勝ちたい気持ちもあります。汚いという声もあるかもしれませんが(笑)。でもそれがホッケーなので。ワセダは全体的にあまり当たる人がいないので、そこの意識は徹底的に変えた方がいいかなと思います。

――アメリカのホッケーはやはり東洋大以上に激しいのですか

寺井 リンクサイズももっと小さいですし、当たりが多くてすぐけがしますし、パックを持っている時間も本当に少ないです。1秒長く持っていたら本当にやられます。オリンピックサイズのリンクですし、日本にはヨーロッパ的なパススタイルなどがあるので少し違うのですが、東洋大の監督も日本代表の選手だったと思うのですごくいいスタイルで。僕個人的には好きなスタイルです。

――秋から東伏見のリンクサイズが変わるそうですが

青木 ブルーラインとブルーラインの間が狭くなるので、攻撃できる範囲が広くなります。

――その点はワセダにとってメリットとなりますか

青木 ワセダは一応コンパクトに守っていたので、アタッキングゾーンが大きくなることによって相手にリンクを広く使われてしまうと、守りにくくはなると思います。

寺井 デメリットもメリットも対戦するチームによると思うのですが、東洋大のようにフィジカルが強いチームだったらもう少しスペースがあって動けますし、逆に中大のようにパス回しがすごくうまいチームだったら、ゾーンにいる時間が長くなる可能性が高いので不利になってしまうかなという面もあります。でもそんなに変わらないと思うので、気持ちちょっと狭くなったなというぐらいです。あまり気にしていないですね。

――最後に改めて今後への意気込みをお願いします

青木 春は悔しい思いをしたので、夏、秋、インカレ(日本学生氷上競技選手権)と優勝できるようにチーム一丸となって、個人としてもチームとしても優勝を目指して頑張っていきたいと思っています。

寺井 やはり勝たないと楽しくないので、陸トレ期間やサマーカップ、その前の合宿などを通じて秋のリーグ戦で優勝して、そこのいい内容から最終的にインカレ優勝したいです。いつも目標にしているのですが、勝ちたいという気持ちが強いです。

――ありがとうございました!

(取材・編集 落合修平、又坂美紀子)

お二人のユーモアさが伝わってくる一枚です!

◆青木優之介(あおき・ゆうのすけ)(※写真下)

1994年(平6)8月13日生まれ。168センチ、74キロ。埼玉栄高出身。スポーツ科学部3年。取材では終始穏やかな表情だった青木選手ですが、リンクに上がれば一転。スピードと高い技術を武器に敵陣へ攻め込みます。「チームを引っ張っていける選手になりたい」との言葉もあり、今後の活躍に期待が懸かります。

◆寺井敏博(てらい・としひろ)(※写真上)

1993(平5)年2月19日生まれ。174センチ、75キロ。米国・チョートローズマリーホール高出身。国際教養学部3年。自他共に認めるチームのムードメーカーである寺井選手。対談中もユーモア溢れる発言で場を和ませてくれました。しかし試合に勝ちたいという気持ちは人一倍強く、アイスホッケーへの情熱が垣間見えます。