次代を担う新星たちが顔をそろえた。入学して日が浅い中、関東大学選手権(選手権)にスターティングメンバーとして出場した鈴木ロイ(教1=北海道・苫小牧東)、ハリデー慈英(スポ1=埼玉栄)、矢島雄吾(スポ1=北海道・駒大苫小牧)。ルーキーながらも高校時代に鍛えあげたスキルでチームに大きく貢献し、今後のさらなる活躍を期待させる。選手権の振り返りと共に、これからの意気込みをうかがった。
※この取材は5月13日に行われたものです。
「いつでもハングリー精神を」(ハリデー)
鈴木
――1年生としてメンバーに選ばれたときのお気持ちは
ハリデー 上に3学年いながらメンバーに入ることができるのはうれしいことです。また、1部のリーグで選ばれて試合に出られるというのは自分にとって非常にいい経験だったなと思います。結果4位で残念でしたがこの経験を次に生かして来年、再来年もっといい結果を出せるように頑張っていきたいです。
矢島 僕のプレースタイルは周りがどうとかではなく自分がやるべきことをやるというスタイルで、今回出場させていただいた3セット目はチームに勢いをつけるというようなセットでした。なので、自分のやることとセットのやることがちょうど合っていて、やりやすいなと思っていました。試合でもセットの息は合っていたので、結果こそ残念でしたがこの大会でつかめたものはありました。
鈴木 自分は1セット目で出させていただいたのですが、ワセダの1セット目に出るという自覚と責任を持って、1年生だからという甘えた気持ちは出さず上級者と同じような気持ちでやろうと選ばれたときに決めました。
――みなさんにとって初めての大学での大会でしたが、高校との違いなどはありましたか
ハリデー まず大きな違いはバイザーです。高校までは顔全体を覆うような形をしているのですが、大学ではハーフというプラスチックの板1枚で完全に顔の下半分と首の部分が空いてしまうので、そこが怖いなという印象はありました。徐々に慣れていったのですが、それとは別に、大学の選手はみんな身体が強くてスピードとかテクニックがすごいな、ということも実感しましたね。自分もレベルアップしてついていかなければいけないと感じました。
矢島 (ハリデー)慈英がバイザーに関することを言っていたのですが、僕は大学に入る少し前の合宿で前歯を折ってしまって。それがトラウマで僕だけ最初の法大戦などは高校生の使っている網をつけていたんです。網を付けていてもスティックが顔に入ってきて怖かった印象だったのですが、東洋大戦でバイザーに変えました。確かに怖かったのですが、それが大学なので適応していかなければいけないなと感じましたね。また、プレー面では意外と通用する印象がありました。高校のときと自分のやっていることは変えていないつもりなので、自分のやらなければいけないことをやれば意外といけるものなのかなと感じました。
鈴木 高校から大学に上がるときに、他の人に大学のレベルはどんな感じかという話を聞いていたのですが、やはり大学はフィジカルが強いから気をつけて、という話をされていました。実際やってみて、僕自身フィジカルの面では通用するなと思いました。でもその分大学生は状況判断が早くて。特に上位チームの選手たちは早い判断の中でプレーしていたので、自分もそういうところを学んで身につけていかなければいけないなと感じました。
――バイザーが変わり、ハリデー選手と鈴木選手は恐怖心がありませんでしたか
ハリデー この二人はFWなのですが、僕はDFでゴール前とか立っていると相手のシュートが飛んでくるので、最初本当に怖かったですね。でもその分見やすくなって視野が広がるので、状況判断をする際にはいいのかなと思います。
鈴木 僕はそんなに怖いと思ったことはないですね(笑)。
――パックのスピードはすごく速いと思いますが
鈴木 そうですね。パックが顔の方に飛んでくるときは怖いですが、あまりパックが当たることはないので。1回練習で顎を切ったのですが、そんなに怖いなとは思わなかったです。
矢島 なんか僕は人よりスティックが当たる回数多いんですよね(笑)。
ハリデー それは姿勢のせいじゃないかな。
矢島 そうだろうね。僕、プレーをするときの姿勢が低いので。速く走るために色々研究した結果として姿勢を低くしているので、そのせいかやたら入りますね(笑)。
――選手権は結果として4位でしたが、成績を振り返っていかがですか
ハリデー 大学に入って最初の大会で色々分からないことも多く、チームにも完全に打ち解けていない中でワセダのプレースタイルなどあまり知らなかったので、アジャストするのが大変でした。でも4位という結果はそんなに悪くはないと個人的には捉えています。ここで優勝して少し調子に乗ってしまうよりかは4位という位置でまだまだ上はいるんだという感じで、いつでもハングリー精神を保てたらいいなと感じました。
矢島 僕は準決勝の明大戦で負けたのがすごく悔しくて。ああいった試合で勝たないと今後のリーグ戦(関東大学リーグ戦)だったり、インカレ(日本学生氷上競技選手権)であったり、そういうものでも勝ち上がっていけないと思うので、優勝はできないにせよ、あの試合は勝ちたかった思いがありますね。
鈴木 今大会を通してワセダは波が激しいなと感じました。法大戦は楽に勝たなければならない相手だったのですが、てこずってしまって。明大戦は相手が格上と言われる中、ワセダが食らいついてオーバータイムまで行ったり、逆に次の東洋大戦はボロ負けしてしまったりと、波が激しいなと思いました。ワセダは上位の東洋大、明大、中大と比較してスキル的に足りていないなとは思うのですが、チーム力などを加味すれば優勝してもおかしくないポジションにいると思うので、4位という結果はふがいないというか、もう少しできたのではないかなと感じています。
――今大会の個人の成績を振り返っていかがでしたか
ハリデー 自分はそこまで成績を残せていませんが、それでも1年生としてできるだけのことはできたと思います。また、これからたくさん成績を残していきたいと思います。
矢島 あまり得点とかは気にしていなかったのですが、点を入れるところで入れることができたのは良かったと思います。これからも得点源としてやっていけたらなと思います。
鈴木 得点を何点か決めることができたのはうれしいのですが、もっとチームが苦しい時間帯とかに得点したかったです。例えば、チームを勢いづけるゴールやチームを救う逆転ゴールなど、そういう場面でもっと決めたかったなと個人的に思います。
――初めての早慶定期戦(早慶戦)も先日行われましたが、振り返っていかがですか
ハリデー あのような雰囲気の中で試合をできるというのはすごい経験でしたし、僕にとってたくさんの観客や応援の中でプレーするのが初めてだったのでちょっと緊張しました。
矢島 いままでアイスホッケーの早慶戦を見たことがなくて、見るのも出るのも初めてだったので、あの雰囲気はなかなかやりづらいものがあるなと感じました(笑)。結構太鼓の音や応援の声が大きいので(笑)。でもありがたいですね。OBの皆さまが応援してくれる中でやるのはなかなかないことなので、とても面白かったです。
鈴木 自分自身、ワセダというブランドに憧れて入学しました。なので、もちろん早慶戦は観ていましたし、得点を決めた後の『紺碧の空』だったりチアとかの応援だったり、ああいった場で試合できるというのはほかの大学の選手たちは経験できないことなのでいい経験になったと思います。
ハリデー
――互いの活躍を見て影響は受けましたか
ハリデー 二人とも1年生なのに結構点を取っていたりして、僕自身の感想としては来年、再来年になったときにすごく楽しみだなと思いました。
矢島 慈英はシュートが速いなというのと、(鈴木)ロイは身体が強いなという印象ですね。ロイは点を決めるべきときに決めるスキルがあるし、慈英はすごく落ち着いているし、自分には無いものを持っている人はいいなと思ってしまいますね。
鈴木 慈英のプレーを見ていて思うのは堂々としていていい意味で1年生らしくないなということです。また、シュートの速さはチームで一番速くて、パワープレーのときは取りあえず慈英にシュートを打たせとけばいいというような感じがあります(笑)。一緒にパワープレーのセットを組んでいるのですが、慈英のシュートから結構得点が生まれたりしているので、そういうところで慈英はすごいなと思います。(矢島)雄吾は3セット目にいて、雄吾一人で持っていって決めたり、得意の足の速さで相手をかき乱してチャンスをつくったり、一人でもチャンスメイクできるので足速いっていいなと思います(笑)。
――入部してみて気づいたワセダの魅力はありますか
ハリデー 他の大学に比べていい意味で先輩後輩同士が仲いいというか、そういった上下関係のようなものが少ないなと感じています。自分は高校のときから厳しいのが苦手だったので(笑)。チーム力で戦うのならワセダは一番強いのではないかなと思います。
矢島 被ってしまうのですが、ワセダの特色はチームプレーだと思います。他の大学が夜に練習するときに全員集まらないのに対して、ワセダは朝練やウエイトとか全部をみんなでやるというポリシーがあります。そういうところからチームプレーを極めていっているという印象がありますね。
鈴木 自分がワセダに入って活動していくなかで1番いいなと感じたのは、練習中とかにお互いに意見を言い合えたり指摘し合えたりするところです。練習でだらけている人がいたらしっかりやろうぜ、みたいな。それが例えば試合出ている、出ていない関係なしに言い合える環境があるというのが素晴らしいなと感じました。
――ご自身のプレーの特徴や持ち味はどんなところだと思いますか
ハリデー シュート力ですね。あと、僕はDFなのでこれから先は早い状況判断力や、速いパス回しだとかそういったところも鍛えていきたいなと思います。
矢島 僕は足の速さですね。中学時代から足の速さ以外は捨ててきたというくらい足の速さに懸けてきたので。とにかくこれからホッケー人生を歩んでいく上で大学での目標は誰よりも速く走ることなので、僕は足の速さが特徴かなと感じています。
――先ほども足の速さの研究をしたとおっしゃっていましたが
矢島 足の速い人の滑り方を研究したり、父がアイスホッケーをやっていて足の速い選手だったので色々教えてもらったり、スピードスケートの選手に聞いたり色々やりました。
――では鈴木選手はいかがですか
鈴木 自分は身体の強さを生かしたプレーが特徴だと思っています。あとは、ゴールセンスとまではいかないですが、得点感覚というか、ここら辺にいたら得点できるという匂いがある程度分かることですかね。だから得点の感覚を生かすようなプレーをもっとしていきたいです。
――1年生で試合に出場する上で求められていることは何だと思いますか
ハリデー 大学の先輩に比べたら高校から入ってきた僕たちはフレッシュで体力も有り余っていますし、そういった面でチームを盛り上げることや、1年生として出場させるという期待とかもあると思います。1年生がゴールを決めたら先輩たちも「よくやった」と言ってくれてチームとしても盛り上がるので、そういう意味でも期待されているのかなと感じます。
矢島 1年生だからということではなくなると思いますが、僕は足の速さを生かしたプレーをすることを求められていると思います。以前「とにかく走れ」と言われた記憶があるので(笑)。走っていればいいのかなって(笑)。1年生らしくがつがつとしたプレー、例えば一番早くチェックに行くことや早く戻ってきて守りをするとか、そういう体力や足を生かしたプレーを求められているのかなと思います。
ハリデー そうだね。そういう細かいプレーとかだよね。先輩が疲れていけないようなところを俺らでやるっていう感じですね。
矢島 別に言われはしないけどやるよね。
ハリデー 体力残ってるんで(笑)。
――鈴木選手はどのようにお考えですか
鈴木 二人が言っていたのと被るのですが、1年生はフレッシュなので、期待されているのはがつがつ相手に当たりに行って、相手をかき乱していくようなプレーだと思います。この三人は試合にしっかり使ってもらっている以上、そういうプレーだけではダメなので、もっとプラスアルファのことを求められているのですが、1年生として求められていることというのはとりあえず走るプレーという感じですかね。
「スマートに頭を使って勝負する」(鈴木)
矢島
――選手権を終えて見えたチームの課題は何ですか
ハリデー チーム力ではどの大学よりも優れていると思うので、スキルなどの面において全体的な底上げを図ったほうがいいと思います。また、パワープレーなどの決定的なチャンスで決めたり、逆にキルプレーになって守らなければいけない場面でどのセットが出ても確実に守り切れるようにしたりするとか、そういった細かいことを鍛えていかなければならないなと感じました。
矢島 課題というか、ワセダは少し反則が多いと感じています。
――先ほどスキルの面などもおっしゃっていましたが、鈴木選手はいかがですか
鈴木 スキルが足りないなども言ったのですが、他の大学だったら強豪校から選手が取れるので、もともとスキルの高い選手でチームが成り立ちますよね。ですが、ワセダは早実上がりの選手や勉強して入学してきた選手もいるので、そんなにスキルの高い選手ばかりとれるわけではないようです。でもスキルはこれ以上どのように練習しても差を縮めることは難しいと思うので、ワセダが勝つためには先ほど二人が言っていたようにパワープレーの精度を磨いていったり、キルプレーの練習をしたり、反則をしないようにしたり、そういった頭を使う部分でレベルアップしていく必要があると思います。あと、選手権では試合の前に万全の状態に準備ができていなくて調子が出せなかった選手もいたので、もっとコンディションの管理などを一人一人が徹底した方がいいと思いました。スキルで勝負できない分、そういった他のところでスマートに頭を使って勝負して100%の力を出せれば、優勝を狙えるチームになると思います。
――試合前の準備というお話も出ましたが、皆さんの試合前のルーティーンはありますか
矢島 スケーティングボードをやって、スケーティングの確認をすることですね。
鈴木 スピードスケート選手みたいだ(笑)。
矢島 走ることしか考えてないからさ(笑)。でも、あれは結構やりますね。スケーティングは大事なので。
ハリデー 自分はそのときに飲みたいジュースを飲みます(笑)。あんまりこだわったことはしないです。
矢島 僕は試合のときに炭酸飲みます(笑)。
鈴木 普通は飲みませんよね(笑)。色んな人がいるんです。
鈴木 ルーティーンと呼べるか分かりませんが、高校のときまではアップが始まるぎりぎりまで寝ていました。でもワセダは試合の2時間前くらいからミーティングや軽運動など色々やることがあるので、いまは決まったルーティーンなどはありません。あるとしたらパスタを食べることくらいですね(笑)。でもパスタを食べてる選手は多いですよ(笑)。
矢島 そうだね。パスタとかうどんとか麺類はね。食べやすいし、消化がいいからね。
――今後はリーグ戦やインカレがありますが、そこに向けての個人、チームの目標は何でしょうか
ハリデー チームとしての目標はもちろん優勝だと思うので、それに貢献できるようにしたいです。個人としての目標は1年生としてレギュラーに定着したわけではないので、また始まるレギュラー争いで這い上がってきて試合に出られるようにしたいです。あとパワープレーとかでも起用されるようになりたいと思っています。また、個人的に下半身が弱いと言われていて、下半身のケガとかが多いので、そこを鍛えてリーグ戦までにはもっと強くしたいなと思います。
矢島 そうですね、チーム目標は優勝です。それを目指すうえで、先ほども言いましたが反則をしないというのは大切かなと思います。これは選手一人一人の気持ち次第でどうにかできると思うので。あとは、やはりキルプレーの練習であったり、システム面をもう少しやったりした方がいいかなと思いますね。チームワークはいいので、そういったもので土台を作るべきかな、とは感じています。個人の目標としては、もっと足が速くなれればいいかなと思います。足の速さだけ極めていきたいです。
鈴木 個人の目標として、秋のリーグ戦は14試合ほどあるので、コンスタントに毎試合点を取れるような選手になりたいです。また、自分は1セット目で出させてもらいながらも、まだチームから信頼を勝ち取れていないと思うのでもっと信頼されるようになりたいです。チームの目標としては、もちろん優勝しかないと思っているので、それに向けてこれから2ヶ月間、陸トレという氷上練習を一切せずにずっと陸上だけでのトレーニングをする期間に入るのですが、そこで一人一人が自分自身と戦って2ヶ月後にレベルアップできればいいと思います。
――今後のワセダを背負っていくみなさんだと思いますが、最終的にはどのような選手になりたいですか
ハリデー 僕はプロを目指しているので、この先U22日本代表やユニバーシアードとかに選ばれたいと思っています。ワセダから日本を背負っていけるDFになりたいと思っています。
矢島 僕はプロや大学も全て含めた中で一番足の速い選手になることが夢なので、こいつが持ったら誰も止められない、こいつにパックを追わせたら誰よりも速いと、誰からも言われるような選手になりたいです。
鈴木 この二人は代表経験があるのですが、自分はまだ代表経験ないので、とりあえず次のU20の日本代表に選ばれたいという気持ちが強いです。あと、ホッケーだけではなく、人間としてもしっかりとした人になりたいと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 落合修平、松本理沙)
次代を担う新星たちです!
◆鈴木ロイ(すずき・ろい)(※写真右)
1996年(平8)4月15日生まれ。174センチ、75キロ。北海道・苫小牧東高出身。教育学部1年。1年生ながら第1セットの座を勝ち取った鈴木選手。試合前はよくパスタを食べていると教えていただきました。その食事で当たり負けない肉体が作られているのかもしれませんね(笑)。
◆ハリデー慈英(はりでー・じえい)(※写真中央)
1996(平8)年8月29日生まれ。183センチ、82キロ。埼玉栄高出身。スポーツ科学部1年。力強いまなざしで熱い思いを語っていただいたハリデー選手。選手権ではリンク上で圧倒的な存在感を放っていました。バイト先では似ているという理由で『ウエンツ』と呼ばれているそうです(笑)。
◆矢島雄吾(やじま・ゆうご)(※写真左)
1996年(平8)8月17日生まれ。176センチ、66キロ。北海道・駒大苫小牧高出身。スポーツ科学部1年。取材の中で足の速さへの思いを披露していただいた矢島選手。高校時代のスキルコンテストでは、氷上を走る速さでナンバー1に輝いたこともあるそうです。矢島選手の高速スケーティングに目が離せません!