4年生としてラストシーズンを過ごすFW三浦亮(教4=青森・八戸商)とFW横町翔太(スポ4=青森・八戸工大一)。常にチームのことを考え、プレー面だけでなく精神面でもチームを支える役割を果たしている。最後の日本学生氷上競技選手権(インカレ)を前に、ワセダへの秘めた思いを語っていただいた。
※この取材は12月10日に行われたものです。
青森からワセダへ
取材に応じる横町(左)と三浦
――同じ青森県出身のお二人ですが、お互いのことを知ったのはいつからですか
三浦 翔太(横町)がホワイトベアーというチームの出身で、そこの小学5、6年生で構成されているAチームに4年生で上がったすごい奴がいるというのを聞きました。それが横町で、同い年ですごい人がいるんだなということで知りました。でも、小学生の時はあまり接点もなく、ただ知っているだけの関係でした。
横町 彼(三浦)がいた三沢というチームも結構強くて、その中で同じ学年でうまい人がいるなという感じで三浦のことを知りました。でも、そうですね、特別なエピソードはないですね。
――当時のお互いの印象はいかがでしたか
横町 やっぱりうまいなと思っていました。昔からすごくストイックにやっていたというのは噂では聞いていたので。
三浦 小学校時代は野球のチームでもアイスホッケーのチームでもキャプテンをやっていたということぐらいで、あまり接点がなかったので、大学に入って一緒にやるということが当時は不思議な感じでした。
――大学に入って一緒にプレーしていく中で印象が変わったことはありましたか
横町 高校まではアイスホッケーでしか接したことがなかったので、プレーも含めて真面目一辺倒の人なのかなと思っていたんですけど、1年生の時から先輩にいじられていたりユニークな一面もあって、大学に入ってからイメージは変わりましたね。
三浦 あまり知らなかったので何とも言えないですが、笑いのキャラだったり、いろいろな趣味があったり、あと意外と共通項があったりして、一緒にいる時間が長かったですね。
――意外な共通項とは具体的には
横町 三浦はミスターチルドレンが好きで、その影響を受けて一緒にライブに行ったりしました。
三浦 まち(横町)が好きなのはゆずで、一緒にミスチルのライブに行って、その1週間後にゆずのライブにも行きました。
――ずばり青森の良さとは何ですか
横町 うーん、人が温かくて住みやすいということですかね。
三浦 僕は八戸なんですが、地元にはたくさん友達もいますし、食べ物もおいしいです。
――有名な食材も多い青森ですが、実家から食材が送られてきたりすることは
三浦 最近も祖母からリンゴが送られてきました。自分1人では食べきれないので、寮の廊下に置いておいてチームメイトが勝手に持っていくかたちですね。横町のところからもミカンが何箱も届くのですが、それが1日、2日で即なくなります。
横町 やっぱり食べるのが楽なんですよね、ミカンは。むきやすいですから。
もっと本音で
チームのことを真剣に考えている横町
――秋の関東大学リーグ戦(リーグ戦)4位という結果について、いまはどう思われていますか
横町 結果として4位というのは、最初は受け入れられなかったです。前半戦は首位で折り返して、後半戦の連敗で失速してこの結果になったという流れでした。自分たちよりメンバーがそろっている他大学に対して、自分たちが何をすれば勝てるかという気持ちや戦術が後半になるにつれて希薄になっていったのかなといまは思います。これからインカレに向けて何かを変えなければいけないんですけど、ことし積み上げてきたものを勝つ方向に持っていくというのがこれからの作業だと思います。
三浦 前半戦は首位でしたが、最後4位というのはなるべくしてなった結果だなと思います。個々のスキルで負けているということもありますし、ホッケー以外の行動でおのおのがやりたいようにバラバラで動いていました。それはチームをまとめるように4年生が動けなかったというのが一番(の要因)だったと思います。全員が本音で話さないということが、このチームには多かったです。だからチーム全員が本音で話せるようにしないと、いままでのワセダのように良いチームにはなれないのかなと感じています。
――前半戦を首位で折り返したときのチームの雰囲気はどうでしたか
横町 前半戦は首位でしたが、全てがうまくいっていたということはなく、多々改善しなければいけないミスがあったと思います。しかし、結果として勝っていたのでそういったミスがあまり浮き彫りにはならずに終わり、そのようなミスが全て出たのが後半戦だったのかなと思います。いま思うと、前半戦は浮足立っていた部分も少なからずあったと思います。
三浦 前半戦も自分たちのやりたいことができたわけではなく、相手のミスに助けられたりして勝ったという所もありました。後半戦のよりシビアな戦いの中で勝てなかったというのが自分たちワセダの本当の実力だと思います。
――4年生が4人と圧倒的に少ない中で、チーム運営で工夫した点などはありますか
横町 池田(一騎主将、スポ4=北海道・駒大苫小牧) からも「4年生の中で気付いたことは(後輩に)言っていこう」と言われていたので、積極的に後輩とコミュニケーションを取っていこうと4年生の中で決めていました。なので試合中や、試合後にご飯を食べに後輩を連れて行くときに、その日のプレーのことや、これからのチームのことについて下からも吸い上げられるように意識していました。
三浦 僕は個人的に氷上での調子が悪くて、それをため込んでしまいました。ほか(の4年生)はみんないろいろと話してくれたのですが、僕は「自分が悪いからうまくいっていない」と考えてしまったところがあって、それをいまは後悔しています。もっと(チームに対して)何か言っていれば変わったのかなと思うこともありました。それによってチームメイトとぶつかることもあると思いますが、それでも思ったことを言うことはチームを一つにしていく上では価値があると思うので、これからはしっかり言いたいことは話したいなと思います。
――ここまではチーム内でお互いの考えを言い合う場面が少なかったのでしょうか
横町 言い合うことがないわけではないですが、それがチームに浸透していなかったと思います。言うメンバーも限られていますし、全員が思ったことを発信できるような雰囲気ではなかったと思います。インカレまでには、言いたいことはあったけどこれまで言えずにため込んでいた選手たちに対して、「どういうことを考えているのか」、「どういうプレーがしたいのか」ということを引き出せるようにしたいです。たぶんそれがチームのためにもなると思います。
リーグ戦では熱のこもったプレーを見せていた横町
――ご自身が考える、リーグ戦でカギとなった試合は何ですか
横町 僕は引き分けた1次リーグの日体大戦です。夏も日体大とあたって負けましたが、どこかで「次は勝てるだろう」という甘い気持ちもありました。でも秋に対戦して引き分けて、チーム全体も僕自身もまずいなと思いました。マイナスの見方をすれば、勝たなければいけない試合を落とした、それと反対にプラスの見方をすれば、何とか最後に1点を取って引き分けに持ち込み勝ち点を取れたという試合だったと思います。だからこの試合は、良い意味でも悪い意味でも大きな一戦だったなと思います。
三浦 分岐点というか、中大とやった2試合はほとんど何もできずに負けました。しっかり守って少ないチャンスをものにすれば勝てるんじゃないかという自分たちの理想像が力でねじ伏せられたというのを前半戦最後の中大戦で感じたのが印象的でした。
――理想像を力でねじ伏せられたというお話しがありましたが、それでも早大の特徴である、チームワークを発揮し少ないチャンスをものにして勝つホッケーというスタイルは変わりませんか
三浦 それはいまも全く変わっていません。それでやるしかないので。チーム力しかないと思います。
横町 チーム力でやるのは変わりません。ただプレーの精度をあと1カ月でどれだけ上げられるかが課題になると思います。根本の部分は変わらずに、精度を上げていくだけですね。
――具体的にどのようなプレー練習に重点を置く予定ですか
横町 ことしは一年間、ロースコアの試合を制することを一貫して目標にしてきました。スペシャルプレーやパワープレーで点数を取って、普段のプレーではしっかり守るというプレーですね。そのためには(相手の)反則を取れるようなプレーヤーが必要です。そういうことを意識してそれぞれの役割を持つ必要があると思います。最小失点で勝つというのが僕たちに残された最後の手段だと思うので、そういう練習をしたいです。
三浦 チームとしてはパスやレシーブの精度を上げることと、守りでも攻めでもパックを持っていない選手がどう動くかを確認したいです。誰かが欠けるとやりたいことが破綻してしまうので、一人一人が責任を持ってチームやセットで共有したことを実行できるかが大事になっていくと思います。
――秋のリーグ戦で自信になった部分はありますか
横町 春にあまり活躍できていなかったメンバーが、夏の合宿や陸トレの期間で成長しているなという面も見られました。らいねん以降にチームの核となるプレーをしてくれそうだなという選手が増えてきたと思います。
――特に成長した選手はいますか
三浦 僕は、立樹(金子立樹、スポ2=北海道・駒大苫小牧)。落ち着いてプレーできるようになっていますし、いまは1セット目に入って、自分が持ったパックを安定して次につなぐことができているので。立樹が頑張ってくれているので、チームとして良い攻めができていると思います。あと中川(悠輔、教3=東京・早実)です。あまり試合への出場機会は多くないですが、練習もしっかりやっていますし、試合中もチームが落ち込みそうなときに一番声を出していました。3年生になってチームのことを考えるようになりましたし、チームにとってもありがたいことです。
横町 僕は松本(逸輝、商2=滋賀・光泉)です。あまり自分のプレーに自信が持てていないように見えていましたが、秋に長い時間試合に出て、いままでよりも自信を持ってプレーしていると思います。ミスしたりすると落ち込んでしまったりはあるんですけど、声も出して非常に良くやってくれて、FWとしても助かりました。
「ワセダの誇りを取り戻すための戦い」(三浦)
ワセダは三浦にとって『憧れの場』だという
――インカレにはどのような思いで臨みますか
横町 きょねんのインカレで優勝していて、その前の年はインカレでは優勝できなかったですが秋リーグ優勝できたので、とにかくタイトルが欲しいなと思っています。もちろん僕たちの最後の大会で優勝したいというのも一つなんですけれど、後輩たちに何かかたちとして残してやれたらと思うので、そういった意味でもインカレは落とせないタイトルだと思います。インカレ2連覇するというのはなかなかないことで、逆にチャンスだと思うので、それに向けてしっかり戦っていきたいと思います。
三浦 いままでお世話になってきた先輩や、支えてくださった方々がいっぱいいると思いますし、その人たちにしっかり恩返しをするという気持ちを持って僕らはしっかりプレーしたいと思います。小さい頃からワセダというのは憧れの場で、すごくうまい人たちが集まってホッケーをやっているという、そういう憧れの場だったワセダが、いまチームとしてもまとまりがないだとか、個人が弱いとか秋リーグああいう結果でとか思われていて。選手にとって、インカレは誇りを取り戻すための戦いだと思っています。これからワセダに入って来ようという人たちにとってワセダは憧れの場でなきゃいけないと思うので、それを汚してしまった秋リーグの分をしっかり取り戻せるようなインカレにしたいです。
――小さい頃から続けてきたホッケーの最後の大きな大会ということで、個人的にも特別な思いはありますか
横町 こうやって練習を重ねて一つの大きな目標に向かって真剣にスポーツをするというのはおそらく今後ないと思うので、悔いのないように残り一カ月、アイスホッケーに真摯(しんし)に向き合ってやっていきたいと思いますね。
三浦 長いことつらい思いもうれしい思いもしながらやってきて、アイスホッケーに本気で打ち込めるのは最後かもしれないので、そこはしっかり自分の中で納得して終われるようなプレーをして、納得して終われるようなチームになっていければいいと思います。自分の競技生活に納得できるように、最後過ごしたいです。
――インカレでは自分のどんなプレーに注目してほしいですか
横町 うーん、何かあります?ここ見てくれみたいな。
三浦 すごく平均的な選手だからなあ(笑)。
――横町 特にここというのはないかもしれませんが、僕自身体格に恵まれた選手ではないですけれど、もう最後なので、とにかく一生懸命走って当たって頑張りたいです。
三浦 何となく自分の良さみたいなものはあるのかもしれないですが、結局は負けたくないという気持ちでここまでやってきたと思います。誰にも負けないんだという気持ちで氷上に立つということがどんなに上のレベルに行っても大事だと思うので、最後までそのつもりでやりたいと思います。
強い気持ちで戦ってきた三浦
――いまのチームで過ごす期間も残りわずかですが、チームのためにどんな役割を果たしたいですか
横町 きょねんまでの先輩方を見ていて、やはりインカレという最後の大会に向けてラストスパートをかけるときの4年生というのはすさまじいものがあったなと。それを今度は僕たちが後輩に見せることが一つの仕事だと思っています。残りの期間妥協せずにしっかりと取り組むということが結果にもつながりますし、らいねん以降の後輩たちのプレーの仕方やアイスホッケーに対する取り組み方にも関わってくると思うので、そういう妥協しない部分を見せて行けたらいいなと思います。また、優勝したときに、試合に出ていなかったりするメンバーも全員が結果に対してどこかで携われたなという気持ちになれるように、後ろから押していくという役割も果たしていきたいです。
三浦 僕はホッケーとは関係ないのかもしれないですが、普段からいろんなやつの部屋に遊びに行ったり飲みに行ったり、後輩を誘ってトレーニングに行ったりとか、そういうことをもっとやっていきたいなと思っています。そういう風に先輩が自分のことを気に掛けてくれているなと後輩が思ってくれれば、真面目なことを話したときに伝わるものが違うと思います。ホッケーに関しては自分はもう秋リーグは散々な結果だったので、しっかり妥協せずにやって、最後全員でインカレに向かっていけるように頑張りたいと思います。
――最後に、今季を通して自分が成長したと思う部分を教えてください
横町 特にプレーの面でここが伸びたというよりは、ことしは常に強い気持ちで試合に向かっていけたと思います。僕はきょねんまであまり試合に出場していなかったようなプレーヤーなのですが、ことし初めて一年間を通して試合に出ることができて、春も秋も強い気持ちで氷上に乗って試合に向かうということが前よりもできるようになったのかなと思います。
三浦 いま一生懸命考えてたんですけど、ないです。あの秋の結果がそれを表していると思います。でも、前よりプラス思考になりました。昔だったら、秋リーグみたいなプレーをしていたら俺なんてもう駄目だと心が折れてしまっていたと思いますが、それがなくなったかなと。いまは、ここがまだ全力を尽くせてなかったとか、もっとこうしていけばいいんじゃないかという風に思えるようになりました。
――ありがとうございました!
(取材・編集 末永響子、杉田陵也)
お二人の独特の雰囲気が出ている一枚です。
◆三浦亮(みうら・りょう)
1992年(平4)8月27日生まれ。身長167センチ、体重64キロ。青森・八戸商業高出身。教育学部4年。帰省の際には必ず家族で地元・八戸の八色センターにある寿司屋に行くそうです。東京では中々食べられない新鮮なネタが安く手に入る、三浦選手おすすめのスポット。今度ぜひ行ってみますね!
◆横町翔太(よこまち・しょうた)
1992(平4)年7月22日生まれ。177センチ、68キロ。青森・八戸工大一高出身。スポーツ科学部4年。いま一押しの歌手を尋ねたところ、ロックバンド『フリッパーズ・ギター』とのこと。他にもアニメを多く見たりするそうです。インタビューではチームについて熱く語った横町選手ですが、意外な一面が垣間見られた場面でした!