日本学生氷上競技選手権(インカレ)優勝のためには、この二人の活躍が欠かせない。正確なスケーティングとパス出しが持ち味のDF堰合芳貴(社2=青森・八戸工大一)と、卓越したシュートセンスで積極的にゴールを狙うFW寺井敏博(国教2=チョートローズマリーホール高)。勝負のカギを握るお二人に、私生活のことから競技のことまで幅広くお話を伺った。
※この取材は12月10日に行われたものです。
「2年生はみんな個性が強い」(堰合)
取材に応じる堰合(左)と寺井
――普段から仲が良いというお二人ですが、いつ頃知り合いましたか
寺井 初めて会ったのは、寮に入ったきょねんの4月ですね。全体のミーティングで1年生が集合したときに初めて知り合いました。
――寮での過ごし方を教えてください
堰合 僕はアイスホッケー部門の人だけが居る2階に住んでいるのですが、他の人の部屋に行ったりするのが多いです。自分の部屋のテレビに録画機能が付いてないので、録画機能が付いている人の部屋に行って、録画してある番組を部屋で見たりすることが多いです。
寺井 僕は3階なのですが、スピードスケートの人も多く、アメフトの人もいて、にぎやかです。自分の部屋にテレビがあるのですが、日本のテレビが見られなくてDVDやゲームしかできないので、飾りっぽくなっています(笑)。2階のいろいろな部屋に行って遊んだり、会議室で勉強したりしています。
――寮に限らず、プライベートはどのようにお過ごしですか
堰合 僕は教職を取っていたりして、学校が少し忙しかったり、夜はバイトに行ったり。寮に帰ってきたら、ほぼ寝るだけという感じですね。
寺井 オフの日は、ほぼ寝てるかバイトしてるか、あとはクラブとかに行ったりします。
――お二人のお互いの印象を教えてください
寺井 最初に会ったときはなんて大人しくて、すごく良い子なんだろうって思っていたんですが、寮に入って1カ月くらいしてみんな仲良くなってきた途端、こいつ本当は変な奴なんだってなって(笑)。学年の中でも仲良い方だと思うのですが、他の人が知らない彼を知っていると思います。
堰合 トシ(寺井)はアメリカから来ているということで、日本語通じるのかなって(笑)。僕は英語できないので、もしそれでコミュニケーション取れなかったらどうしようかなと思っていました。アメリカはアイスホッケーがとても盛んな国なので、どんなプレーするのかなとか、すごくうまいプレーヤーなんだろうなっていう感じでした。いまは普通に一緒に遊びに行ったりして、結構仲良いですし、一緒にふざけ合ったり、他の人をいじったりしています。
――お互いのプレーの印象は
堰合 トシはアメリカでずっと育ってきたので、日本人っぽくないプレーをしますね。日本人はハードなチェックがあまり好きではなく、きれいにホッケーをやろうとするのですが、トシはハードにチェックしたり、ゴール前ではかなり厳しくいったりと、とても良い選手だと思います。
寺井 芳貴の印象はやっぱりスケーティングですね。チームで1番うまいと思います。判断も良く、パス出しも上手です。ガンガンいくタイプではないのですが、コミュニケーションが取りやすく、そういったところが他の選手とは違う持ち味だと思います。
スケーティングや冷静なパスが魅力の堰合
――2年生になって気持ちの面での変化はありましたか
堰合 後輩ができたことが大きいと思っています。後輩に見られているので、下手なプレーはできないです。また後輩はトレーニング中の姿勢などを特に見ていると思うので、逆にこちらのトレーニングの励みにもなりましたね。
寺井 高校でも後輩はいたのですが、日本の文化だと上下関係があるので、そういった意味で初めての後輩みたいなものでかわいかったですね。逆にこちらが刺激を受けたりもしました。2年生になってだいぶ寮生活に慣れてきましたし、日本での生活にも馴染んできました。それと、同期や先輩から日本語がうまくなったと言われるので、そこら辺も成長したかなと思います(笑)。
――お二人の考えるいまの2年生の魅力とは
堰合 個性が豊かなところでしょうか。みんなそれぞれ個性が強いんですけど、特に13番の佐藤秋都(教2=北海道・駒大苫小牧)が物知りで、歩くウィキペディアって感じです。あと松本逸輝(商2=滋賀・光泉)は関西から来ていて口調が関西弁で、めっちゃいじられています(笑)。
寺井 たぶん人数が多いということもあるんですけど、部活の中では2年生が一番寮とかでふざけたりしています。
堰合 部活ってやっぱり厳しいというイメージじゃないですか。けど、僕らの学年ってそのイメージを弾き飛ばすくらいの、それぞれの個性の豊かさがあって。それを上の学年も「ちゃんとやれよ」みたいに言わないというか、それをいいことに僕たちが騒ぎまくっているという…(笑)。
寺井 みんなホッケーに対しては熱いですし、大好きなんですけど。
堰合 絶対4年生とか3年生からしたら僕らは厄介だなと(笑)。
――部内の上下関係はどのような感じなのですか
堰合 他の部から聞いた話などから比べると、上下関係に関しては緩い方みたいです。部員全員で同じ寮に入ることができるのが大きいと感じますね。絶対にコミュニケーションは取りやすいし、必然的に仲が良くなるのだと思います。
寺井 他の部と比べるとルーズなのですが、やっぱり人それぞれですかね。横の部屋に格地くん(DF格地龍太郎、スポ1=埼玉栄)が居るんですけど、初めの頃は朝起きておはようございます、お手洗いに行く前におはようございます、帰ってきておはようございますとすごかったですね(笑)。いまは大丈夫ですけど(笑)。僕はあまり敬語を気にしていなくて、仲の良い後輩からは『T・T』などと呼ばれています。
「自分が得点を積み重ねていかなければ勝てない」(寺井)
昨年との立場の違いを感じているという寺井
――今季の関東大学リーグ戦(リーグ戦)を振り返っていかがですか
堰合 僕たちのチームって他の大学のメンバー表と比べたら、有名人というか、日本のホッケー界での有名な選手とかって結構少ない方で。でもリーグ戦を一巡して、結果を見てみると1位で、「なんか意外といけるじゃん」という感じになって、それがたぶん変な自信につながってしまって…。最後かなり失速してしまい、良い流れをそのままキープすることができなかったというのが、リーグ戦の大きな反省です。
寺井 夏の合宿とかサマーカップ(大学交流戦)で結構内容が悪くて、「ことしのワセダは大丈夫か」という声もあったと思うんですけど、秋リーグは良いスタートで、1次リーグ首位という立場でした。けど、そこでちょっとみんな「俺たち全然強いじゃん」という安心感というか、「大丈夫じゃないか」という気持ちがあったのも事実で、そういう甘さもあって2次リーグが始まると法大に引き分けて、それから最後の3試合を落としてしまいました。内容もピークからだんだん下がってきていたので、チームのモチベーション的にもあまり良くなかったです。やっぱり結果が全てなので、いくら1次リーグで首位でも、最終的に優勝争いに絡むこともできなかったので、リーグ戦に関してはすごく悪い内容だったと思いますね。
――リーグ戦で見えた収穫や課題などはありますか
堰合 コミュニケーションを氷上で取らなきゃいけないはずなのに全然取れなかったこととか、試合に向けてのモチベーションを、僕を含めて維持することができなかったというのが大きな課題だと思います。リーグ戦を通して一度も勝てなかったチームは中大だけで、他のチームには一応勝っているので、このチームでもちゃんと準備をして戦えば勝てないチームはないのかなという自信は良い収穫だったなと思います。
寺井 ワセダの持ち味はチームワークなので、1次リーグは期待が薄いところからだんだん勝ちを積み重ねて、モチベーションも上がっていきましたし、チームも結構一つになったと思います。けど、個人個人のメンタルとか試合への意気込み、ゲームの前の準備やコミュニケーション不足という小さいことが積み重なったりして、2次リーグは内容がどんどん悪くなっていって、チームがバラバラになってしまいました。きょねんの1次リーグは内容が悪くて4位だったと思うんですけど、そこからミーティングとかして組み直して、だんだん上がっていって結果的に2位で終えて、全日本選手権に行けた上に、インカレで優勝できました。ことしは、1回勝ったから終わりではなくて、反省点だとか良かったところを話し合うという積み重ねが足りなかったと思います。
――ご自身のプレーを振り返って
堰合 きょねんは山田虎太朗さん(平26社卒=現王子イーグルス)とDFを組ませてもらって、僕のミスもカバーできる選手だったので、僕は本当に自由にプレーさせてもらっていたんですけど、ことしは逆に僕がカバーしていく役割を任されていたと自分では思っています。そういう中で、自分のDFの相方をサポートしてあげられなかったのかなと思います。それで試合で負けてしまったこともありますし、自分のミスで失点してしまったときもありました。でも、逆に良いプレーができたこともあって、そのプレーをもう1回ビデオで確認したりもしていました。たぶんまた新しいセットで新しいメンバーになると思うので、しっかり自分の役割というのを確認して、インカレに向けて頑張っていきたいと思います。
寺井 きょねんは4年生の松浦晃さん(平26人卒=北海道・釧路工)と組ませてもらったんですけど、僕も結構好き勝手にやらせてもらって、晃さんがカバーしてくれて。でもことしはきょねんよりも自分が得点を積み重ねていかなければチームは勝てないなというのがあって、個人的にそれが優勝や勝ちにつながらなかったので、自分の悪いところもあってチームが勝てなかったことをすごく反省しています。
寺井は今季のリーグ戦のキーマンとなった
――一番印象に残っている試合は何ですか
寺井 いろんな意味で最後の中大戦…。
堰合 中大戦は5点差以上で勝てば2位までに入れるという感じになっていて、逆に7点差つけられてしまいました。僕が印象に残っているのは1次リーグの法大戦です。僕はケガをして出てなくて、上で見ていたんですけど。これ、実際勝てないんじゃないか、勝ったとしても僅差じゃないかなって思っていたんですが、試合序盤からワセダがぽんぽん点数を入れて、終わってみれば7-2で、なんかワセダ強いじゃんみたいな。僕の居場所ないんじゃないかっていう感じになって。逆にそこで焦って、ホッケー頑張ってちゃんとポジションを奪っていこうと思えました。いままではセットの3つ目までには入れるだろうと思っていたんですけど、その試合で改めて自分の置かれている状況に気付かされて、しっかりやんなきゃいけないんだなって思えたので、とても印象に残っています。
寺井 1次リーグの、日体大と引き分けになった試合も印象に残っています。日体大は下(ディビジョンIグループB)から上がってきたチームなので、たぶんみんな何があっても勝てるだろうという気持ちがあって。そうしたら第2ピリオド(P)が終わって2-4で、ここで負けたら終わりだって思ったのを覚えています。結果的に追い付いて引き分けになったんですけど、内容的に本当にやばいなと思いました。逆に良い印象だったのは、(1次リーグの)東洋大戦。相手GKも調子良かったですし、アグレッシブで良い選手がそろっていて苦戦するかと思ったんですけど、最初から2点重ねて、良い内容で勝てました。スタートが遅いという課題がことしはあったのですが、その東洋大戦は第1Pから第3Pまできれいにずっと勝てていました。
――リーグ戦のMVPは誰だと思いますか
堰合 僕は2人名前を挙げちゃいますけど、トシと松本ですね。トシは2年生ながら、前半戦を折り返した段階でリーグの得点王となっていて、ワセダの勝利を導いてくれました。松本はきょねん試合に出られていなかったのですが、ことしはDF陣が手薄ということもあり、いきなり試合に出場したという感じでした。そんな中で、1次リーグの中大戦ではビハインド時に初ゴールを決めて、それが彼にとっても大きなこととなりましたし、中大のGKはかなりうまいので、すごいと思いました。
寺井 僕も2人挙げます。まずは芳貴ですね。ことしDFのラインが手薄な中でしっかりとリーダーシップを発揮できていましたし、セットが変わる際にたぶん僕と芳貴が一番色々なところに飛ばされたと思うんですが、そういったときでも芳貴はしっかりとアジャストしていました。2人目は4年生の横町さん(FW横町翔太、スポ4=青森・八戸工大一)です。寮ではふざけキャラなのですが、氷上では僕がきょねん見たときよりもプレーに対する熱意やチームに対する思いがあふれていました。キャプテンマークなどは付けていませんでしたが、そういった姿勢で下を引っ張ってくれました。
インカレ2連覇へ
インカレへの意気込みを語る堰合
――今季のチームの強みは何だと思いますか
堰合 僕たち2年生がカギを握っていると思います。2年生はそれぞれ個人ごとに特色があり、ホッケーのスキルも良い物を持っていて、他の学年と比べても劣らないと感じています。なので、僕たちが一つのことに向かってしっかりと進んで行けば、チームも勝ちに近づくと思います。4年生とかには負けるのですが、僕たち2年生もチームをしっかりまとめていきたいですね。
寺井 リーグ戦が終わり、みんなショックでバラバラになっていた部分もありました。ですが、芳貴が言った通り2年生も氷上や寮などでリーダーシップを発揮していきたいですし、ホッケーはメンタルが影響してくる面も大きいので、気持ち良くプレーできる環境も整えられたらいいなと思います。
――インカレに向けた意気込みをお願いします
堰合 きょねん優勝していて2連覇が懸かっていて、ことしの4年生に勝たせてあげたいのもそうですし、僕個人としてももちろん勝ちたいので、優勝が目標です。
寺井 きょねんインカレを経験して、勝つのが本当に難しいと感じました。チームが一つになり、気持ちが入っていないとなかなか勝ち上がれないと思います。4年生は最後の大会であり、なんとか勝たせてあげたいので、気持ち負けせず、死に物狂いでやりたいです。
――インカレで見て欲しいプレーはありますか
堰合 僕の強みはパス出しやコーナーでの1対1なので、そういうところを見て欲しいですかね。ただ他の部分はあと一歩足りていないので、しっかり練習して、総合的にも良い選手だと思われるようにしたいです。
寺井 ハードチェックで流れを変えたり、ネットにドライブしてシュートをするのが僕の強みだと思うので、見て欲しいところはそこですかね。
――最後に、今季全体を振り返ってどのような部分が成長したと思いますか
寺井 1つはパックから離れたプレーです。ずっとパックを持っている選手に付いたりせずに、空いているスペースに行ったり、パスが通りやすい位置に行ったりと、パックを持っていないときの考え方は成長したと思います。2つ目はシュートに対する意識ですね。やっぱり点を取らないと勝てないので。
堰合 スキル面の話をすると、バックスケーティングは確実に速くなりましたね。1対1で速さを競う練習があるのですが、そこで速さを実感します。
寺井 速くなったのは単に痩せたからじゃないかな(笑)。
堰合 体重は1キロくらいしか減ってないです(笑)。
――これから成長していきたい部分はありますか
寺井 らいねん上級生になるので、氷上だけでなく、日常生活でも先輩後輩同期関係なく引っ張っていけるリーダーシップを発揮したいですね。チームスポーツなので、1つ1つの積み重ねが勝利に結びつくと思います。
堰合 僕はプレー中、「こうして欲しい」とか「こうした方がいい」といったことを言わないタイプなのですが、そこを言えるような選手になればチームもさらに良くなると思うので、これからは意識していきたいです。
――ありがとうございました!
(取材・編集 落合修平、後藤あやめ)
ハロウィンのときのコスプレを披露してくださいました!
◆寺井敏博(てらい・としひろ)※写真左
1993(平5)年2月19日生まれ。174センチ、75キロ。米国・チョートローズマリーホール高出身。国際教養学部2年。今季は前半戦で得点王に輝くなど、2年生ながらチームの攻撃の要として活躍。インカレでも華麗なショットをたくさん見たいですね!
◆堰合芳貴(せきあい・よしき)※写真右
1994年(平6)5月31日生まれ。177センチ、79キロ。青森・八戸工大一高出身。社会科学部2年。寺井選手から「スケーティングが1番上手」と言われた堰合選手。常に落ち着き払ったプレーで今季も幾度となくワセダのピンチを救ってきました。