自身の仕事を全うし、チームのために全力を尽くす。アイスホッケー部を支えている、陰のプレーヤーがいる。マネージャーの伊藤千歌沙(スポ4=東京・錦城)、小川美紀(スポ4=奈良・郡山)とトレーナーの板橋孝介(修士2=千葉・成田)だ。アイスホッケーとのかかわり、きっかけ、ともに歩み支え続けてきたからこそ分かる選手の様子、全日本氷上学生選手権(インカレ)で集大成を迎えるチームへの思いを語っていただいた。
※この取材は12月21日に行われたものです。
選手をサポートする役目
――卒業論文は提出なさいましたか
小川 はい!私はアイスホッケーのスティックハンドについて、ライトとレフトで可動域に差があるかを研究したのですが、あまり有意性はありませんでした(笑)。
伊藤 私はアイスホッケーのシュート動作と注視行為についての研究です。私もホッケーをやっているのですが、プレッシャーに弱いので、それを回避する方法を考えていました。心理学のゼミに所属していて、心理と注視行動に密接な関係があると聞いて、それを研究してプレッシャー下でのパフォーマンスをどう維持するかの研究をしました。
板橋 修士論文提出はまだなのですが、テーマはスケーティングが足部形態に及ぼす影響についてです。陸上で走る場合とスケーティングをする場合では負荷が違うので、そのかかり方をテーマに研究しています。
板橋
――ではさっそくですが、マネージャー・トレーナー業について教えてください
小川 たくさんあるのですが、まずは早慶戦の運営ですね。OBの方に協力していただきつつ、選手たちがどうやったら楽しめるかを考えながら、パンフレットやチラシの作成まで行っています。あとはSNSを使った集客活動です。早慶戦だけではなく、ツイッター、Facebook、ブログをみんなで更新して、アイスホッケーを知ってくれる人が増えればなと思っています。また試合中のサポートですね。水を汲んだりビデオを撮ったり、選手たちが練習以外のことを何も気にしなくて済むようにしています。
伊藤 試合中のスコアの管理など、選手があとあとミーティングをできるように資料をそろえます。他にも地域のお祭りに参加して、スケートを知ってもらうために小さい子供とビンゴ大会などをして交流を深める企画をしています。
板橋 選手のコンディショニング管理です。具体的に言うと練習メニューをすべて考えたり、メディカル面では選手のケガの管理や予防のために管理をしたりしています。
――なぜアイスホッケー部を選ばれたのですか
小川 私は実家が奈良県で、大学生になってから東京に出てきました。小中高とずっとバドミントンをしていたのですが、飽きてしまって(笑)。バドミントンのキャプテンをしていた時、公立高校だったので良い指導者がいるわけでもなく、キャプテンがメニューを考えたりチームを支えたりすることが多かったんです。そこでチームを支えることに楽しさを感じていた時期があって、大学に入ったらマネージャーをやろうと決めていました。せっかく東京に出てきてワセダに入学したのだから、全く知らないスポーツをやろうと思って、そのときにアイスホッケーを知りました。リンクの雰囲気、パックの音、スケーティングの音にすごく鳥肌がたって、これはかっこいい!と思って。先輩方がアイスホッケーの普及にも力を入れていると言っていて、選手のサポート以外でも充実して過ごせると思ってアイスホッケーを選びました。
伊藤 私はずっとホッケーをやってきて、大好きなワセダのエンジが背負いたいという思いがありました。ずっとワセダに憧れていて、本当だったら自分がエンジのユニフォームを着て試合がしたかったのですが、女子部がなかったので、マネージャーという形でもいいのでチームに関わらせてくださいとお願いしたのがきっかけです。
板橋 小学校から高校まで野球のプレーヤーをしていて、大学に入学して4年間は準硬式野球部のトレーナーをしていました。大学院に入ってからは野球とは違うコンタクトスポーツのトレーナーをしてみたいという思いがあったのと、大学3年生の時に見た早慶戦で「こんなに面白いスポーツがあるのか」と思っていたこともあって、縁があってアイスホッケー部のトレーナーを始めました。
――伊藤さんがアイスホッケーを始められたきっかけを教えてください
伊藤 家がリンクに近かったこともあって、家族で東伏見にスケートに来たときに、たまたま次の枠でアイスホッケーをやっていて、自分で面白いなあと思ったのと、両親がアイスホッケーの競技人口が少ないのでもしかしたら上を目指せるかなあって(笑)。
小川 そうなんや、全然知らんかった!(笑)
――板橋さんは、準硬式野球部とアイスホッケー部での業務を比べてみていかがですか
伊藤 準硬式野球部見てるよ~!(笑)
板橋 難しいな(笑)。どちらの部も業務を任せてくれるという面があって、周りの人が信じてくれるということは共通していると思います。準硬式野球部では、学部生で先輩もいたので気をつかいながらやっていて大変な部分もあり、4年生になってからは同期と協力してやっていたのでやりやすい部分もあり、という感じでした。アイスホッケー部では、自分が最年長で自分が言ったことにはみんな従ってくれるので、その部分ではやりやすいです。でも逆に下から何も言ってこないので、下から言えるような雰囲気をつくるということが少し大変です。トータルでいうと、どっちもすばらしい部活です!(笑)
伊藤
――アイスホッケーの魅力はなんでしょうか
小川 速くて、全てが素人ではできない所です。アイスホッケーはまず滑れるかどうかから始まって、パックを操れるかなど複雑な部分が多いです。最近すごく思うのは、他のスポーツより点が入る確率が良い。30秒で逆転したりされたり、残り5秒で負けることもあるし、4-1でも諦めるような点差じゃない。他のスポーツよりも絶妙な確率で、諦める場面が本当に少ないと思います。
伊藤 ホッケーは他のスポーツよりキーパーのセーブ率がすごく高いスポーツなのですが、それでも逆転できるのはシュート数がすごく多いからで、そこは魅力だと思います。あとは攻守の切り替えが速くて、どんどんプレーヤーが入れ替わる所も他のスポーツにはないと思います。ホッケーはゴール裏もフェンスも使えるので、頭を使うスポーツです。
板橋 速さと激しさと緻密さですかね。スケーティングができなくちゃいけないのに、体をばんばんあてて、あんなに小さいパックを小さな隙間にいれるという。自分ができるか考えたとき、なにか異次元なもののように感じます。
「私たちがミスをしてはいけない立場」
――アイスホッケー部の練習はすごく朝が早いですが、それについてはいかがですか
小川 3時に起きて、練習に向かいます。1、2年の時は早起きがすごくつらかったですが、3年生からはもう慣れてきて、起きたら部活!というリズムができあがりました。でももう引退まで3回ほどしか3時起きがなくて、それはそれでさみしいですね(笑)。
――仕事でやりがいを感じるときはどのような時ですか
小川 試合に勝った、優勝した、早慶戦に人がたくさん入った、そういう大きなことにもやりがいを感じますが、それよりも日々の積み重ねにすごくやりがいを感じます。マネージャーは見せる仕事ではなくて、選手にあれをやっているこれをやっていると感じられてしまうのもよくないと思っていて。選手がやらなければいけないことを自分が気付かれないようにやって、それでチームが上手くいったときにすごくやりがいを感じますね。
伊藤 私もほとんど小川と一緒なのですが、何か小さな所で、これをやったら選手が上手くいくんだなあと考えて、本当にささいなことができた時の喜びは大きいのかなと思います。
板橋 トレーニングの計画を練って、遂行して、それで試合を迎えたときに、選手が相手よりも良い動きをしたり、チームが試合に勝ったときですね。リーグ戦は毎週末結果が見えますが、トーナメントは1ヶ月でプランを練るため成果がすぐ分からないので不安も感じながらですが、それで成果が出たときにやりがいを感じます。メディカル面で言えば、ケガをしていた選手が試合に出るだけで嬉しいですし、ゴールを決めたりしっかり守ったりすると嬉しいですね。
――お仕事で失敗してしまったことはありますか
小川 部費忘れた事件(笑)。
伊藤 (笑)。
板橋 いつ?(笑)
小川 2年生の終わりの全日本選手権で八戸に行って。
伊藤 先輩がいなくなって、はじめて2人がマネージャーの核となって行った遠征で、余裕がなく色々2人で仕事をしていたら、リンクに部費を忘れてしまって(笑)。
小川 ホテルの人に車で送ってもらって取りに行きました(笑)。でも他の人は知らない(笑)。何か起きたときは2人で解決して、他に支障が出ないようにしています。
伊藤 お互いにお互いをフォローしてるというのもあります。私たちの中ではミスだけど、結果的にはフォローしあってミスにしないようにする。あうんの呼吸で仕事をやっているんです。
――トレーナー業務でミスした経験はありますか
板橋 これといったものはないのですが、最近あったのは測定ミス。陸上のフィールドテストで音源を間違えて選手に多く走らせてしまったくらいで、あまり影響はありませんでした(笑)。他にあるかな?
伊藤 多分ないと思います。私たちがミスをしてはいけない立場だから、あるとしても本当に忘れ物くらいです。
板橋 細かい所で言えば、ケガをした選手が復帰できるかできないかの判断ですね。いけると思った選手を次の日練習にのせたら、やっぱり痛くて無理ですとなったときに、判断ミスしたなと自分の中では思います。
――伊藤さんはマネージャーであると同時にプレイヤーでもありますが、選手としてプレーしているときとマネージャーとしてチームをサポートしているときとの違いはなんですか
伊藤 全然違うんですけど、大学入るまでは全然マネージャーをやったことがなかったので。やっぱりいざ裏に回ってみると、こんなにもいろんな人が支えてくれてるんだなというのをすごく実感しましたし、自分がマネージャーの立場でサポートし始めてからは、人のことをすごく考えるようにもなりました。選手、スタッフ、監督、コーチ、みんなが一緒になって戦っているんだなと言う風に思い始めて、人のことを考えてホッケーができるようになったなとすごく思います。
――お三方にお聞きします。日本のアイスホッケー界を盛り上げるために必要なことはなんだと思いますか
小川 それはこの間みんなで大討論会をしました。私はアイスホッケー界じゃないところから飛び込んできたので、アイスホッケー界の特色をすごく感じるんですよ。客観視して自分の肌で感じた時に、閉鎖的すぎると思います。やっていることもそうですし、リーグ戦などもそんなに大々的に観客を集める感じでもないです。選手たち自身のコミュニティーも、北海道で小中高一緒にやって、東京来て組み合わせが変わったというような感じなので。すごく仲がいいのはわかるし、昔から一緒に頑張ってきた仲間なので特別なのもわかるんですけど、そこでおさまっちゃうんですよね(笑)。外に出て行こうとしなくて、アイスホッケー界の中で友達を作りすぎてしまって、周りとのコミュニケーションが取れず、知ってもらう機会が少ないなと思います。とりあえず、コミュニティーが狭すぎるんですよね、本当に(笑)。多分自分たちがプレーできる環境があって、仲間たちがいて、楽しく厳しくやっていればそれはもう最高っていう人たちなので、それを見てほしい気持ちがあまりないんだと思います。
伊藤 見る機会を増やしていくべきだと思います。欲を言えば、リンクが少ないなどの事情はありますが、ホッケー界を盛り上げるきっかけとして早慶戦などは良い機会だと思うので、1回も見たことない人にいかに見てもらうかです。でも1回見た人は、絶対にリピーターになるんですよ。リピーター率がすごく高いので。いかに初見の人を増やすかは、大学のホッケー界に限らず、アジアリーグやちびっことか(の課題で)もあると思うので。ホッケーって面白いんだよというきっかけを作るのが、大学生や早慶戦の役割なのかなと思います。
板橋 ちかちゃんと一緒なんですけど、見る機会を作ることがすごく大事だと思います。そのために全日本選手権とか、今では多分アイスホッケーでは早慶戦が集客率が一番高いイベントになっていると思うので、日程と場所を固定した方がいいと思います。例えば、12月初めの日曜日は早明戦ラグビー、秋は早慶戦野球だなとみんなパッとわかるじゃないですか。アイスホッケーは…ってなりますよね?どこ?みたいな(笑)。場所を例えば代々木に固定して、何月何日の代々木は、アイスホッケー全日本選手権、何月何日の東伏見は早慶戦というようにすれば、集客率はすごく増えるかと思います。あともう1個はやっぱり、オリンピックに出ることじゃないですか。野球に関わっていて、日本だと野球は人気なので、オリンピックのすごさはあまり感じたことがありませんでしたが、アイスホッケー女子がオリンピックに出て、こんなに注目度が変わるんだと感じたので。男子がやっぱり頑張って、オリンピックに出て、なおかつ優勝くらいまでしなきゃいけないのかなっていうのは感じます。
熱い思いを持つチーム
――いままでと比較して、今季のチームの雰囲気はいかがですか
小川 きょねんは私たちの学年が3年生として盛り上げていたように感じましたが、ことしは本当の上級生である4年生として盛り上げていると思います。でも、もともと私たちの学年は、プレー面でこうした方がいいとか、言いたいことを言っていたので、私はあまりきょねんとの違いというのは感じないですね。選手は入部した時からアイスホッケーに対してすごく熱い思いを持っていたと思いますし、4年生ミーティングなどでも、「この人たちどれだけアイスホッケー好きなんだ」というのをすごく感じます。下級生たちにもその思いが伝わっていたらいいと思います。
伊藤 きょねんと変わらない所は、チームワークの良さです。それに加えて、ことし本当に強いなと思うのは、4年生のほとんどが日本のホッケー界を代表する選手で、5人ともプレーでも生活面でも引っ張っていけるということです。これはきょねんに追加した強みだなと感じます。
板橋 ことしは良い意味でも悪い意味でも真面目。指示する立場にいるからそう感じるのかもしれないですが、きょねんは良い意味で、適当な部分は適当で、真面目な部分は真面目。自分で応用を利かせたり、自分を管理しながらやっているという印象だったのでした。ことしは1、2年生の若い選手が多いというのもあって、指示したことをやってくれるというのが良い意味での真面目さです。でも、指示したこと以外は自主的に応用してやらない、やれない、という意味で、悪い意味で真面目すぎだというのがことしのチームの印象です。そういう所に気を遣いながら、どう指示をしたらいいか考えています。
――チームのムードメーカーは誰ですか
小川 (山田)虎太郎(社4=北海道・駒大苫小牧)かなと思います。ふざけるし、ものまねが大好きで、携帯電話に虎太郎がふざけてるムービーがいっぱいあるし。そういうのを後輩の前でもやるので、後輩も一緒に笑っています。常に明るくて、それがチームにとってあだとなってしまうこともあるかなと思ったこともありますが(笑)、でも彼が一番ムードを盛り上げていると思います。
――他にはいらっしゃいますか
伊藤 これというムードメーカーはいないんですけど、4年生がすごく後輩と関わっていて、2年生の中川(悠輔、教2=東京・早実)や、3年生の三浦(亮、教3=青森・八戸商)は、4年生が引き出してくれているからムードメーカーになりつつあるのかなと思います。
板橋 二人は日常生活を含めてだったので、自分は試合面について。(森田)哲朗(教3=東京・早実)かなと思います。きょねんからずっと、負けているときも勝っているときも常に声を出しています。ことし3年生になって、さらにそういう意識が強く芽生えて、すごく良いリーダーシップを発揮していると思います。
小川
――羽刕銘主将(スポ4=北海道・駒大苫小牧)の印象はいかがですか
小川 本当に賢いです。数学は苦手ですけど(笑)、頭の回転の速さは人一倍あるなと思います。例えば、板橋さんが偶数で練習メニューを計画していたのに、奇数になってしまった時に、板橋さんはどうすればうまく回るかなと考えるんですけど。
板橋 どうしようって考えてたら、銘が「こっち何人で分けてこうすればいいんじゃないですか」って言ってくれて、「ああじゃあそれでいこう」って言ったら結構合うんですよね。
小川 ぴったりになったりとか。
板橋 ディフェンスを6人で回していたのが、ケガなどで1人いなくなって5人回しにしないといけないときに、どういう組み合わせで回せばいいかというのをパーッと書き始めて、シフトを途切れることなく回すので、すごく頭の回転が速いなと思います。
小川 先を読んでいる感じというか、前を見据えてる感じがありますよね。
板橋 自分でプレーしているのにあれだけ回転するのはすごいなと思います。自分のプレーのことも考えないといけないのに、チーム全体の采配が絡んでいることもやるので。
小川 後輩にも声かけたりしています。それに加えて思うのが、人をすごくよく見ている。だから今みたいなことを、日常生活でもすぐにできると思います。
――やはり羽刕主将の与える影響は大きいですか
小川 大きいですね。
板橋 いまの話だけだと真面目みたいになってますけど、おちゃらける部分も持っているので(笑)。
小川 結構べた褒め感ありましたもんね、ちょっと悔しい(笑)。
板橋 どっちも兼ね備えてるんですよ。
小川 上に立つ人としての素材をすごく持っているなと思います。 1年生のときから、先輩のことも同期のことも分析するし、言うし、ホッケーの話をしたら止まらないですよ。まあ部員みんなそうですけど、とりあえず部員みんなホッケー好きですよね。
「選手に負けないくらい戦いたい」
――今季の戦いぶりを振り返って
小川 もともとまとまっていなかったチームではないですが、1人1人の意識が強いんじゃないかと思います。後輩とはそんなにホッケーの話を熱くしたことがありませんが、やっぱり4年生が3月の段階でしていたミーティングと、この間の全日本(選手権)の途中でしたミーティングでは、言っている内容は一緒でも気持ちの強さが全然違います。4年生がどんどん気持ちを強く持っていくので、後輩も私生活を含めて先輩のことを見て、「この人たちについていこう」って思えたり。4年生も「その学年らしくしてもらえたら、俺らが責任とるから、ついてきてほしい」と言ったりして、4年生への信頼感がどんどん強まったので、チームがまとまったと思います。成長したなって上から目線になっちゃったんですけど(笑)、私たちからしたら「連れていってもらっている感」があって。自分自身成長しなきゃだめなんですけど、選手が先に成長していってそれに合わせてついていくという感じで、チームも成長するし、それを支えるスタッフとしても成長できたからよかったんじゃないかと思います。
伊藤 4年生に責任感や信頼感があるからこそ、下級生が伸び伸びとプレーできて、それが活力になるという良い循環をして、負けていても最後まで諦めないで勝つという試合が、今季リーグ戦が進むにつれて増えてきたと思います。私も4年生ですけど、4年生の選手に引っ張られる気持ちもすごくあり、もっと頑張ろうと思って、本当に良い循環になっているなと戦い続けて思いました。
板橋 4年生にはうまい人が多いので、「4年生がなんとかしてくれるだろう」で春は終わっちゃったと思うんですよ。自覚がないわけではないと思うんですけど、下級生がどこかもう1つ足りなかったという部分があって。4年生も4年生で、フレッシュな1年生が多かったので、当たり障りのない感じでつかみきれないまま春は終わった。陸トレ期間もそんな感じで終わったのかなというイメージです。夏もやっていって、同じ雰囲気で入って、サマーカップで惨敗して。そこで「4年生がなんとかしてくれる」ではなくてチーム全員でなんとかしなきゃいけないんだというのがわかったと思います。秋季リーグ戦初戦の東洋大戦で勝って、そこでまとまったかと思ったんですけど、なかなか前半戦は自分たちの戦い方をつかみきれないまま終わって。一番変わったなと思うのは、明大戦で引き分けて悔しい思いをして、後半戦の最初の専修大戦で10-0で勝ったと思うのですが、あそこでやっと自分たちがどういうスタイルでどういう勝ち方をすればいいのか見えたのかなと思います。強豪校と戦った試合ではなく、専修大戦がキーでした。弱い相手に対してきっちり自分たちのホッケーをやって10-0で勝った。あそこでつかめたから多分後半戦は無敗だったんですよね。最後は勝たなきゃいけない東洋大、明大にしっかり勝って。プレッシャーをみんなで与えながら、2位になろう、札幌行こうっていう中で勝って、完全に一つになって。アイスバックスに、その雰囲気のまま1試合して、すごく良い状態で秋は終わったなと思います。だからきょねん以上に「インカレはいける」という感触は自分の中ではあります。良い流れで終わったので。あ、個人的な見解なんで!(笑)
――今季のMVPは誰ですか
板橋 「全員いいです」っていうのはなしですね?(笑)
小川 (笑)全員なんですけど、あえて1人あげるならですね。
板橋 虎太郎かな。もちろんプレー面で4年生は全員チームを引っ張ろうという気持ちでやっていたし、3年生もすごく頑張っていたと思うんですけど、その中でも虎太郎が、試合中でも試合じゃない部分でも、締めるところはしっかり締めて、良い言葉をチームに投げかけてた。ここでこの言葉欲しいなっていう言葉をかけていたので。
伊藤 私は(松浦)晃(人4=北海道・釧路工)かなと思います。最後の明大戦で、ここで勝たないと2位に行けないという中で、ここぞという時に決めるのは彼なんじゃないかと思ったので。敵のキーパーがゴール裏にパックを取りに行った場面でも粘って、パックを取りに行って、流し込んだシーンとか…。泥臭くでも、決めるところは決めるし、チームに対する思いもみんな強いですが、それをバシッと結果に残しているところが、すごいなというかうらやましいなと思います。
小川 たか(勝田貴之、国教4=米国・ライ高)は、きょねんと明らかに変わったと思います。後輩とそんなにしゃべったりしないですし、あまりチームに意見を言ったりしないし、プレーはクールですし。私や、後輩もそうだと思うんですが、熱い思いを持っているというのをずっと知らなくて。ただ4年生になったときに、打ち上げや振り返りでアイスホッケーの話をすると、すごく考えていて…。「今までC(主将)もA(副将)も背負っていないたかが裏でそんな熱いこと考えているって知ったら、チームは絶対変わるよ」という話を私と板橋さんでちょうどしていて、そうしたら集合の時に発言したりとか、後輩にも言うようになったので。その変化はうれしかったですし、葛藤しながらも頑張っているんだなとすごく感じます。
――最後に、もう少しでマネージャー業とトレーナー業が終わりますが、それに対するお気持ちは
小川 引退まであと23日で、インカレ(全日本学生氷上選手権)はあと16日後に始まります。まだ終わっていませんが、やり残した感じはあまりないです。ある意味、マネージャー業どうのこうのよりは、今はもうとにかく選手に勝ってほしくて。自分も今まで負けて悔しい時も勝ってうれしい時も一緒に味わわせてもらって、思いを共有させてもらいましたが、最後のインカレに関しては、とにかく選手たちに喜んでほしい、勝ってほしいです。そのためにマネージャーとしてできることを、残りはやっていきたいと思います。選手が喜んでいる姿を思い描いてやっているという感じですね。寂しさももちろんありますが、今はそれよりも目標感が強いです。
伊藤 私もマネージャー業に関しては、やり残したことはないです。あとは本当にチームへの思いなんですけど、もう4年前ですが、すごく印象に残っているのが、私が高校生の時にワセダが秋リーグ優勝、同じ年のインカレでも優勝して、リンクの真ん中で紺碧を歌っていたことなんです。なので最後はみんなで勝って、リンクの真ん中で紺碧を歌いたい思いが本当に強くて。特に4年生の選手が悔いなく、エンジにプライドを持って、戦い切ってほしいなという思いと、後輩も自分たちの活躍で4年生を勝たせてほしいなという思いです。もうエンジを背負える機会が少ないことは悲しいですが、最後まで誇りを持って、選手に負けないくらい戦いたいなと思います。
板橋 自分は引退がこれで2回目になります。選手、マネージャーを含めてチームを勝たせてあげたいというのがまず第一です。自分から見ればみんな後輩なので(笑)。あとそれだけではなくて、自分が絶対に勝つんだという気持ちを持って残りの生活を過ごすことが、チームの勝利につながってくると思います。その思いを忘れずに、残りあとちょっと頑張りたいと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 田中みずき、又坂美紀子)
仕事で愛用してきたバックと一緒にポーズをしていただきました!
◆伊藤千歌沙(いとう・ちかさ)(※写真左)
1991年(平3)4月23日生まれ。東京・錦城高出身。スポーツ科学部4年。自身もアイスホッケープレイヤーであり、ポジションはディフェンス。部員に喝をいれてもらうこともあり、特に羽刕選手や山田選手のことは「本当に尊敬している」そうです
◆小川美紀(おがわ・みき)(※写真右)
1992年(平4)1月23日生まれ。奈良・郡山高出身。スポーツ科学部4年。高校生までは『プライド』を少し見たことがある程度で、アイスホッケーと関わりがなかった小川さんですが、いまではすっかりそのとりこに。対談中、「選手はすごくホッケーが大好きなんです!」と何度もおっしゃっていましたが、小川さんからもアイスホッケー愛がとてもあふれていました
◆板橋孝介(いたはし・こうすけ)(※写真中央)
1988年(昭63)7月4日生まれ。千葉・成田高出身。スポーツ科学研究科修士2年。対談を見ている側だった板橋さんも、今回ついに登壇。度重なる質問に「就活みたい…(笑)」という言葉をもらしていて、少しタジタジになる場面も(笑)。それでも最後まで丁寧にお話してくださり、とても真面目な方でした