【フィギュアスケート】力を尽くした東日本 悔しさを糧にシーズン後半へ

フィギュアスケート

東日本選手権 10月24日~26日 茨城・山新スイミングアリーナ

 全日本選手権への切符をかけた東日本選手権が開幕した。早大からは男女シングルに各1名が出場。両名とも怪我を抱え本調子ではない中で、持てる力を精一杯発揮した。今回は全日本選手権進出は叶わなかったが、今大会を糧に、来年の全日本選手権出場を目指す。

★女子SP

『24のカプリース』を演じる穂積

 シニア女子の競技には穂積乃愛(人通2=東京・駒場学園)が出場。『24のカプリース』の音楽がかかると弾けるように滑り出した。最初の3回転ループは転倒。6分間練習でもミスが出ていたジャンプだが、本番でも立て直しきれなかった。その後もジャンプのミスが続き、表情も徐々に固くなる。それでも最後のステップシークエンスになると笑顔を見せ、持ち味のスピード感あふれる滑りで最後まで演じきった。得点は36・61点で18位。演技後は「ぼんやりしたまま終わってしまった」と動揺を隠しきれなかった。足の怪我の影響以上に、「今日は気持ちの持っていき方とイメージ不足が原因」といい、課題を見つけた演技になった。

★男子SP

『戦場のメリークリスマス』を演じる山田

 山田琉伸(人通3=埼玉栄)は、シニア男子最終滑走で登場。全日本の出場がかかる大舞台、得意とする曲調で臨もうとプログラムを昨年度のショートプログラム『戦場のメリークリスマス』に戻す決断をした。冒頭の2回転アクセルは余裕を持って成功するも、続く3回転フリップは着氷が乱れる。後半のコンビネーションジャンプでもミスが出るなど本来の実力は発揮できなかったが、滑らかなスケーティングは昨年度からの進化も見えた。得点は47・44点で14位につける。「(応援してくれる人の)声援や手拍子に応えられる演技ではなかった」とうつむき、インタビューでは涙をにじませた。

★女子FS

『the legend of 1900』を演じる穂積

 岡島コーチから「大丈夫」と一言声をかけられ、スタート位置へ向かった穂積。海を思わせる深い青色の衣装で演じるのは『the legend of 1900』。曲がかかるとふと天を見上げて両手を差し伸べ、世界観にぐっと引き込んでいった。冒頭の3回転+2回転を成功させると、その後も順調に着氷させ、笑顔を見せる。後半の3回転サルコウの回転が抜け2回転となってしまったが、その後再び同じジャンプに挑戦。結果は転倒となったものの、なかなか全日本に進めず1つの「トラウマみたいなもの」でもあるという東日本選手権で、大きな挑戦を見せた。得点はフリー75・39点、合計112・00点で17位。「最後まで強い気持ちをもって滑れた」と笑顔で演技を終えた。

★男子FS

『ピアノコンツェルト2番1楽章』を演じる山田

 失意のショートから中1日、山田は第2グループでフリーに臨む。精神的なショックから立て直し、しっかりと良い状態に持ってこられたといい、落ち着いた様子でリンクに上がった。冒頭の3回転ループは鮮やかに成功。次の3連続のコンビネーションも決め、順調な出だしを見せる。しかしその後は着氷の乱れや回転の抜けなどミスが続いた。それでもスピードは落ちることなく、最後のステップシークエンスは力を振り絞るように全身を大きく使い、情熱的に魅せた。得点はフリー97・74点、合計145・18点で12位。怪我で滑り込みが足りなかったことを原因に上げ、「100パーセント満足のいく出来ではない」としつつも、「今できるマックスだった。その点は後悔はない」と振り返った。

(記事 荘司紗奈、写真 荘司紗奈、塚本輝)

結果

▽シニア女子


穂積乃愛

 

SP 18位 36・61点

FS 16位 75・39点

総合 17位 112・00点


▽シニア男子


山田琉伸

 

SP 14位 47・44点

FS 11位 97・74点

総合 12位 145・18点


コメント

山田琉伸(人通3=埼玉栄)

――今日の演技振り返っていかがですか

今までにほとんどないくらいミスが続いて、東日本選手権でこの演技になってしまったのがショックです。

――東日本選手権独特の難しさがあったのでしょうか

東日本選手権だから失敗したというよりは、ジャンプミスを減らす今までの練習が足りなかったのかなと思います。東日本だからうまくいかなかった部分もありましたが、練習不足だと思います。

――演技後半には手拍子もありました。手拍子や声援はどう感じていますか

声援はありがたいなといつも思っていますが、声援や手拍子に応えられる演技ではなかったかなと思います。

――今日の演技に『戦場のメリークリスマス』を選んだ理由は

今年の『四季 夏』の滑り込みが足りていなくて、東日本で滑るのに不安が残って、去年使っていた曲に戻したのですが、ちょっと上手くいかなかったですね。この曲を選んだのは僕自身の滑りによく合っているからです。自分の滑りとマッチして、美しい演技ができたら良いなと思いました。

――表現の仕方に違いはありますか

『四季 夏』は激しめの曲で、振り付けも素早く、『戦場のメリークリスマス』きれいにゆっくり強弱をつける感じでやっています。『四季 夏』は自分の中では挑戦で、速い曲で点数を稼げるように慣れた方が良いなと思って選びました。

――東インカレのときは怪我や練習の調子は良くなってきているとのことでしたが、今回はどうでしたか

怪我はもうかなり良くなっていて、東インカレからも良い練習ができていたのですが、その中でこの演技だったのは、夏からの積み重ねが少ない分なのかなと思っています。

――フリーに向けて

点数的には、10点以上まくらないといけないですし、全日本選手権は絶望的かなという状況ではあるのですが、自分のMAXを出したいです。ショートボロボロで、フリー諦めて、ということになって後悔しないように、なんとかしたいです。

FS後

――今日の演技を振り返って

ショートがボロボロで、結構精神的にもしんどいところもある中で、中1日があったんですけど、その中で精神的にいい状態に持っていって、試合前のコンディションとしては、身体も一番いいと言っても過言ではないくらいいい状態に仕上がっていていた中で、この演技なので、まあ今の実力がこれぐらいなのかなというふうに思います。

――具体的にどのように気持ちを落ち着かせたのでしょうか

いったん一晩寝込んで、次の日の公式練習の数時間前くらいからトレーナーやコーチといろいろお話しして、体のケアとか色々やって仕上げていったという感じです。100パーセント納得行くスケートはできなかったかな、というのの半面、今できるマックスを、ショートみたいに緊張で出せないというのはなかったかなと思うので、そこに関しては後悔はないんですけど、まあこれまでの練習を振り返りと、もっとできたことはあったかなという気持ちです。

――100パーセント納得行くところまで持っていくには、今一番どのようなトレーニングが必ですか

今シーズンは怪我などもあって、例年のシーズンに比べて、夏の追い込みや単純にジャンプの試行回数が少なかったのかなというのがまず1個目にあり、そしてあまり練習が積めていない状態なので当然プログラムの滑り込みもできておらず、体力面にも結構影響はあったかなという気はします。

――ケガというのはいつごろどのあたりをケガされたのですか

夏の合宿の時に右足首を怪我して、それを今まだ引きずっているという感じです。痛みはもうほぼなくて、この2週間は完璧な調整ができたと自分では思っています。怪我のせいにするのはあまり好きではないんですけど。夏の怪我の後追い込みきれなかったのは、自分の身体の管理不足もありますし。怪我をしたのも自分の責任なので、まあ、たくさん練習積めなかったのが原因ですかね。

――このプログラムも少し激しい部分のあるクラシックでしたが、滑り込んでいく中でどんなことを意識していますか

有名な日本を代表するようなスケーターの方々が大きな舞台で滑っていい演技をしてきた曲なので、僕も、そこまでの演技ができなくとも感動的な演技を届けられるようにしたいなと考えています。

――印象に残っている演技はありますか

みなさんご存知の浅田真央選手のソチオリンピックのフリーですかね。それを見て決めたというわけではなくて、曲自体が僕は好きで決めたんですけど、演技ももちろん見たんですけど、すごく感動する演技で。自分もそういう感動するような演技を全日本の舞台でできればなと思っています。

――スケート選手の中では身長が高い方(180センチ)ですが、苦労や逆に意識して対処しているところはありますか

海外にニコライ・メモラ(イタリア)選手、僕より身長が高い方がいらっしゃるじゃないですか。あの選手が4回転とかを普通に飛ぶので、身長を言い訳にしてられないなと思う反面、身長が大きいのは不利だとおっしゃる先生だったり意見だったりもありますね。言い訳にするつもりはないですけど、中学生で身長が伸びてる時にジャンプを毎日跳べなくなるくらいには大変でした。まあしんどいですけど、身長が高くて手足が長いのは、指が曲がってたら目立ちますが、伸びてたら良い意味で目立つので、まあプラスにもマイナスにもすごく働くと思うので、プラスの方に働かせられたらなと思っているんですけど、今は4割くらいしかできていない感じですね。

――メモラ選手のジャンプとかで参考にされているところはありますか

僕はジャンプは結構自分でここにこう伸びるとか考えて組み立てているタイプので、あまり他の選手を見たりとかはなかったですね。メモラ選手は僕より高いのに4回転を跳んでいて普通にすごいなと思ってます。

――来年は4年生になりますが、残りのスケート人生はどのように思い浮かべていますか

そうですね、全然今は読めないかなというところはありつつ、来シーズン全日本で納得行く演技ができたらまあ引退しても悔いはないかなと思いますけど、ちょっとまだ来シーズンいっぱいですと言い切ることはできないですね。

穂積乃愛(人通2=東京・駒場学園)

SP後

――今日の演技を振り返っていかがでしたか

先週は結構調子が良くて、東インカレが終わってから自信になるような練習がつめていたのですが、オーバーワークになってしまって、3日前から足の痛みがぶり返してしまいました。ですが今日の演技は、痛い痛くないは関係なく、私の気持ちの持っていき方とイメージ不足が原因だったかなと思います。

――イメージ不足というのは

こっちにきてからショートにジャンプが入ることがほとんどなくて。できる限りのことはやったつもりなのですが、自分が曲でジャンプを跳んでいるイメージが持てなさ過ぎて。それが焦りにつながってしまって、ぼんやりしたまま終わってしまったというのが正直なところです。

――演技後はどういう気持ちでしたか

そのときも正直まだぼんやりしていて、ちゃんと振り返ったのはキスクラのときでした。自分がイメージが湧かないまま試合になると崩壊してしまうのは分かっていたつもりなのですが、できていない時にできるイメージをする練習がまだまだ足りていない、空白の部分が多いのかなと思いました。

――フリーに向けて

フリーを滑らせていただけることにまずは感謝したいです。今回は3回転を4本入れて、今シーズンでは1番詰め込んだ構成にする予定なので、一つひとつ意識して、フリーに意識を切り替えて前向きな気持ちで頑張りたいです。

――アイスダンスも始められるという話を聞いたのですが、本当ですか

まだ検討段階なのですが、今トライアウトをしていて、その方とうまく話が進めばあるかなと思っています。

FS後

――今日の演技を振り返って

内容と点数を見ると、まだまだ自分が目指しているものには達していないんですけど、怪我もあったり少し体調を崩すことが多かったり、という今シーズンの中でみればしっかりと、サルコウ・ループ1本ずつですけど、決めることができて。後半のトリプルサルコウが1個ダブルになってしまったので、その後すぐにリカバリーで跳びに行く、という強い気持ちを最後まで持ち続けて滑れたのは成長だったかなと思います。

――ショートは悔しい内容だったとのことですが、そこからここまでどのように自分を励まして持ち直してきましたか

もともとフリーの方がショートより少しは自信があったというのはあるかなと。もちろんショートもフリーもすごい自分のお気に入りの曲ですけど、特に(フリーは)、本当に自分がアップ中聞いているだけでも涙が出てくるような曲なので、今まで色々なことを思い出しながらとにかく感謝の気持ちを込めて最後まで攻める演技ができたんじゃないかと思います。

――どのようにこの曲を選ばれましたか

友人のすすめだったんです。本当に私が滑りたい曲は何曲かあるんですけど、引退の時に、と思う曲がすごく多くて、なかなか今シーズン、これという曲がなくて。相談したら、これどうかな、と勧めていただいたのがきっかけです。それこそ千葉百音選手(木下アカデミー/人通2=宮城・東北高校)が2シーズン前に使っていた曲でもあります。私と編曲は少し違うんですけど。

――指先の所作まで、うっとりしてしまうぐらい綺麗でした。どのようなイメージで滑られていましたか

やはり4分、すごく長くてしんどくて、体もけっこう限界が来ることが多いので、なかなか最後まで踊りの部分を意識するのが難しいのですが、素敵に振り付けていただいたからには私も最後まで応えられるような演技で恩返しできたらなと。振り付けてくれてありがとうじゃないですけど、そういう気持ちで滑れたことが、先生と観客の皆様にも、何かが伝わればいいなと思いながら滑っています。

――リンクに入られる前、岡島先生からどんな言葉をかけられましたか

今日は私のかけられたい言葉を先生にお願いしたんです(笑)。ジャンプを基本として見てくださる先生なので、(普段は)いろいろジャンプのアドバイスを最後まで伝えてくださるんですけど、今日は、大丈夫、とだけ伝えてください、というのを6分間(練習が)始まる前にお願いしていて、落ち着いて、大丈夫だよという言葉をかけていただきました。

――演技中は、その言葉がふっと浮かぶような場面などはありましたか

そうですね…あまり余裕がなかったのは事実ですが、正直東日本のフリーは、あまり言いたくないんですけど、トラウマみたいなもので、いつも目の前で(全日本への道が)切れてしまうということがジュニア時代から多かくて。自分の中でも東日本と聞くと構えてしまうところはあって。それを壊して全日本を目指していくためには、東日本と聞いただけで体が硬直してしまう状態だと、どんなに練習がうまくいったとしても気持ちの部分で崩れていってしまうと思っていました。あまり思いたくはなかったですが、正直今回は狙える位置にはいないのは、ショートの点数差を見るとどうしても取り返しのつかないものがあったので、もうこれが来年活きるようにようにしよう、と考えて、この「東日本のフリー」でどこまで力を出せるかのか、どこまで自分が攻められるのかというのを意識して今日はやりました。

――来年も全日本大会目指されると思いますが、そこに向けてメンタルセットや体のケアどのようにしていきますか

私はメンタルが弱いところも課題ですし、言い訳にしているわけではないですけど本当に怪我が多くて、なかなか自信になる練習が積めていないのが現状で。やはり女性は年齢が上がっていくとともに体のケアが本当に重要なんだなというのを身にしみるほど感じているので、練習以上にケアやトレーニングの時間を大事にして、土台が崩れないようにまずはしていくことと、ショートのように、仮に練習がうまくいかなかくてイメージが湧かなかったり自信がない中でも、どのようにしっかりと順位を狙えるような演技をするかだと思うので、何をしていけばいいのか、メンタルを強くする、という大雑把な課題になってしまいますが、そこを一個一個細かく噛み砕いて消化して。次こそは次こそはって、2年前くらいから言ってしまっていますが、しっかりと自分の夢を追いかけられるように、そして来年は達成できるようにイメージを持ってまずは練習に取り組みたいです。

――今後に向けて

今は正直なところ、直前までケアをしていたくらい足がすごく悪い状況なので、足を治すことにシフトチェンジして、インカレでは、ショートかフリーかはまだ分からないんですけど、ルッツやフリップを組み込んでいけるようなプログラムにしていきたいなと思っています。