苦しい中でも全力を尽くした東京選手権 2名が東日本へ

フィギュアスケート

東京選手権 9月19日~21日 東京辰巳アイスアリーナ

 全日本選手権への切符をかけたブロック大会が開幕。今年の東京選手権は、水泳の聖地として親しまれた東京辰巳国際水泳場を改修して新設された東京辰巳アイスアリーナで行われた。気持ちも新たに臨む舞台には、早大から4名が出場。怪我で苦しんだ選手も多かったものの、2名が東日本選手権への進出を決めた。

★女子SP

『24のカプリース』を演じる穂積

 早大勢で最初に登場したのは、2年生の穂積乃愛(人通2=東京・駒場学園)。鮮やかなワインレッドの衣装でリンクに上がると、『24のカプリース』に合わせて、華やかで優雅な演技を見せた。冒頭から細かく軽やかなステップを披露するが、3回転ループで転倒し、減点となってしまう。その後は、回転が抜けるミスも出たが最後まで笑顔で滑りきった。怪我を抱えながらも3回転に挑んだがミスが続き、「頭が真っ白のまま終わってしまった」というが、得点は37.23点で23位となり、無事翌日のフリーに進んだ。

『展覧会の絵』を演じる吉本

 続いて登場したのは吉本玲(国教3=兵庫・芦屋国際中教校)。昨年は留学のため出場できなかった東京選手権に、2年ぶりに帰ってきた。『展覧会の絵』の音楽に乗せ滑らかに滑り出したが、冒頭のジャンプは2回転に抜けてしまう。その後もやや精彩を欠き、動揺が出たのか得意のスピンでも転倒するなど思わぬミスも出た。それでも、会場からの拍手に後押しされ、最後までしっかりと演じきる。持ち味の優雅なスケーティングは健在だったが、「今までは(ジャンプでミスが出ても)滑りとスピンでまずは点を稼いでいたので悔しい」と、スピンのミスを悔やんだ。得点は26.10点で38位。フリー進出はならなかった。

『I Will Survive』を演じる中野

 女子ショート、3人目の登場となった中野真桜(政経1=東京・早実)は、緊張した面持ちでリンクに立った。大会直前に足を負傷し、十分な練習がつめていない中での試合だった。怪我を気にしながらということもあってかやや動きに固さがあり、ジャンプも回転不足を取られるなど細かいミスがいくつか出た。それでもリズムに乗せた力強い滑りや指差しポーズで見せ場を作り、『I Will Survive』の音楽を軽やかに演じる。得点は30.68点で37位。怪我の影響で精神的にも苦しんだが、「その中では自分のできることをやれたかな」と振り返った。

★女子FS

『The Legend of 1900』を演じる穂積

 全体23位だったショートの結果や2か所の疲労骨折の影響もあり、難易度を落とし、2回転を中心とした演技構成で臨んだ穂積のフリー。演技前には脚や腕を叩いて気合いを入れる。最初の3回転サルコウでミスが出たものの、その後は『The Legend of 1900』の世界観をしなやかで美しい演技で表現した。勢いに乗った後半、3連続ジャンプも鮮やかに決め、最後まで笑顔で滑り切った。得点は、フリー75・21点、総合112・44点で全体18位。東日本選手権への出場を決め、「ひとまずほっとしている」と安堵の表情を浮かべた。

★男子SP

「四季」より『夏』を演じる山田

 男子シングルの競技には山田琉伸(人通3=埼玉栄)が出場。怪我により、大会1週間前まで氷から完全に離れていたと言い、痛みを抱えながらの演技となった。3回転フリップは両足着氷、コンビネーションジャンプは転倒と前半から着氷が乱れてしまう。ステップでは長い手足を大きく動かしメリハリの効いた滑りを見せるが、スピンで体勢を崩すなどジャンプ以外でもミスが出た。得点は45・08点で14位。「想定より酷い内容だった」と納得のいく演技とはならなかったが、不安の中、「四季」より『夏』をしっかりと最後まで滑りきった。

★男子FS

『ピアノコンツェルト2番1楽章』を演じる山田

 山田のフリープログラムは、ラフマニノフ『ピアノコンツェルト2番1楽章』。情緒的な音色によく合った端正な滑りを見せた。冒頭の3回転トーループを着氷すると、続く3回転フリップからの3連続ジャンプも成功させ、勢いに乗る。ピアノの重厚な響きにも負けない力強い滑りで次々と要素をこなしていった。後半はステップでバランスを崩すなど疲れも見えたが、大きなミスなくまとめ上げ、演技後にはガッツポーズも。フリー98・48点、合計143・56点で全体10位。「今できる一番の演技ができたかな」と安心した様子で試合を終え、次の舞台である東日本選手権を見すえた。

(記事 荘司紗奈、大竹瞭、川田真央、齋藤汐李、田邉桃子、写真 荘司紗奈、鳥越隼人)

結果

▽女子シングル


穂積乃愛

 

SP 23位 37・23点

FS 18位 75・21点

総合 18位 112・44点


中野真桜

 

SP 37位 30・68点

総合 37位 30・68点


吉本玲

 

SP 38位 26・10点

総合 38位 26・10点


▽男子シングル


山田琉伸

 

SP 14位 45・08点

FS 10位 98・48点

総合 10位 143・56点


コメント

山田琉伸(人通3=埼玉栄)

――今日のFSの演技を振り返って

 今できる一番の演技ができたかなと思います。練習量の割にいい演技だったかなと思います。

――直前には怪我での欠場もありましたが、今は大丈夫ですか

 札幌カップから東京ブロックの1週間前まで、怪我の回復の為に氷に乗ることを完全に控えていました。スケート以外のトレーニング、リハビリ、トレーナーさんとのケアを行い、なんとか跳んでもいい状態まで回復しましたが、まだ痛みは続いている状態です。一時期の歩くだけで痛い状態からはかなり回復しています。

――FSの最後ガッツポーズもありましたが、演技後はどのような気持ちでしたか

 今できるMAXの演技をすることが出来たので、シンプルに嬉しかったなと思います。ただ、練習不足の部分が明確にわかったので、その点を改善していきたいと思います。

――SPの演技についても、振り返りっていただけますか

 東京ブロックまで、曲かけを通す練習が1度もできていなかったので、痛みもあり、とても不安な中のショートでした。緊張してしまい、想定より酷い内容でした。

――今回の東京選手権は新しいリンクでしたが、滑ってみてどうでしたか

 氷はまだ作られたばっかりで、仕上がっている氷という訳では無い感じでしたが、フリーの本番の氷はかなり感触がよく、施設も大きく綺麗なため、個人的に好きなリンクです。

――東日本に向けて、意気込みや目標を教えてください

 東日本までに、怪我を治し、今までのジャンプを戻す、さらに良くする、スピンステップ繋ぎなども、徹底的に練習し、東日本、ショートフリー共にいい演技ができるように頑張りたいです。

吉本玲(国教3=兵庫・芦屋国際中教校)

――今日の演技を振り返って

 元々ジャンプは最近やっと戻ってきた感じで、不安定なところはわかっていたので、そこはまだまだ自分で練習を積んでいかないとな、というのはあるのですが、今日はスピンでミスをしてしまったことが1番悔しくて、今までだったら滑りとスピンでまずは点を稼いでいく気持ちでやっていたのでそこが今回大分悔しいです。

――スピンでミスが出てしまったのには、その時の気持ちや何か原因がありますか

入る時に氷の溝にはまってしまって引っ掛かって抜けてしまったのですが、気持ちの部分でも焦ってしまったところがあったのかなと今振り返って思います。どんな氷の状態でもできるようにしたいなと思います。

―― 前回の東京夏季大会では帰国してから日も浅いということもあったと思うのですが、今回ジャンプはどのくらい調整できましたか

この1、2週間で2回転アクセルと3回転ジャンプができるようになってきて、今回の曲にも2回転アクセルが入るかなというぐらいで。でもまだやっぱり試合でとなった時、安定したものができあがっていなかったので、そこは次の試合までにもう少しできたらいいいなと思っています。

――次の大会に向けて

次の東インカレ(東日本学生選手権)の試合が数週間後に迫っているので、それに向けてジャンプの飛ぶ姿勢であったり、スピンやステップの取りこぼしがないようにだったり、集中した練習ができるように頑張りたいです。

穂積乃愛(人通2=東京・駒場学園)

――今日のFSの演技を振り返って

今日は最初から演技全体をまとめる構成で臨んだのですが、最初の3回転サルコウが決まらなくて正直悔しい気持ちはすごく残ってるのですが、次の東日本につながる演技ができてひとまずほっとしています。

――東京夏季大会はシングル競技を欠場、今回は2回転中心の構成でしたが、怪我の具合は大丈夫ですか

怪我の状態があまり良くなくて、自信につながる練習や3回転を数跳ぶ練習ができていなかったので、最初からサルコウとループはフリーにも組み込む予定だったのですが、順位的にも厳しいかなと思いましたし、フリーで長く演技するとなったときに少し身体的にも自信がなかったので、今回は安心をとってダブルでまとめた感じです。

――東日本までに治りそうですか

今実は2か所疲労骨折しているので、完治するかは正直私もわからないのですが、このブロックのような構成だと東日本で通用しないので少しでも自分が納得いく演技と、3回転ジャンプももう少し組み込んでいけるようにしっかりケアに専念してまた頑張りたいと思います。

――ショートの演技を振り返って。また、ショートからフリーにどう切り替えましたか

ショートは正直頭が真っ白のまま終わってしまったというのが印象的でした。もちろんノーミスするという気持ちで挑んでいたのですが、どこか不安なところが残ってしまっていたので、フリーは同じことにならないように最初から少し構成を落としてしっかりと滑りやスピンにも目を向けていける構成に切り替えました。気持ちも少し落ちていたので、一度ショートのことは忘れてフリーにしっかり気持ちを向けました。

――東日本に向けて

全日本に進むのが高校生からの目標。枠の数はすごく少ないのでなかなか難しいところもあるかもしれないのですが、納得のいく演技ができるように練習を頑張りたいと思います。

中野真桜(政経1=東京・早実)

――今日の演技を振り返ってstrong>

この前の夏期(東京夏季大会)が終わってから右足を怪我してしまって、昨日ぐらいからジャンプの練習を始めて少し不安だったのですが、その中では自分のできることをやれたかなと思います。

――右足の怪我の状態はいかがですか

 今日やっていてやはり痛いなと思ったので、次の東インカレ(東日本学生選手権)までには直したいなと思っているのですが、まだ治るかはわからないという感じです。

――今大会に向けて準備してきたことを教えてください

 1番は怪我の回復ですし、精神的にもきていたので平常心でいられるように頑張りました。

――新しいリンクでしたが、どうでしたか

 昨日初めて滑りました。全然寒くなくて、暖かいです。なので滑っていると滝汗みたいな、暑いなという感じでサウナみたいでした。冬は良いんじゃないかなと思います。

――東日本学生選手権に向けて

 まずは怪我を治して、今ずっとショートをやっているのですが、東インカレではフリーになって曲も長くなるのでそれに向けて体力作りとかもしていきたいと思います。