WASEDA ON ICE 2025 3月1日 ダイドードリンコアイスアリーナ
2021年から始まり、今年で5回目となる早稲田大学スケート部フィギュア部門のエキシビションショー、WASEDA ON ICE(WOI)。個人演技はもちろん、他団体とのコラボナンバーや部員自身が振付を行ったグループナンバーなど魅力が満載。部員が一から作り上げたショーは、まさに部員一人ひとりが輝く場となった。
★オープニング
照明が落とされ会場が暗闇に包まれると、中央モニターに歴代WOIの映像が流れる。過去4回の開催を経て、WOIは今年で5回目となった。その幕開けを飾るオープニングナンバーは『The Greatest Show』。えんじ色のジャケットを羽織った部員たちが照らし出され、勇ましい音楽に合わせ、全員で息のあった演技を見せた。その後は一度リンクから下がり、数人ずつ再登場。各々の個性が感じられるパフォーマンスが行われた。中には、シングル選手同士でのリフトなど、ここでしか見られない貴重な場面も。最後は今年で部を引退する4年生5人が早稲田ジャージを着て登場。一人ひとり技を披露した後、5人で手をつないで客席に向けて笑顔でお辞儀をした。
客席に向けてお辞儀する部員たち
★現役生演技①
『The other side』を演じた坂﨑
現役生の個人演技、最初に登場したのは坂﨑愛介(基理2=東京・早大学院)。同級生の山田琉伸(人通2=埼玉栄)が振り付けた『The other side』を披露。部内の「お笑い担当」という坂﨑だが、演技中は一変、穏やかな表情で情感豊かに滑った。
『The Little Mermaid』を演じた穂積
2番滑走は1年生の穂積乃愛(人通1=東京・駒場学園)。自身で振り付けを行った『The Little Mermaid』のプログラムを披露した。ディズニーのメルヘンな世界観にぴったりな可憐な滑りを見せた。
『Xanadu』を演じたマッカートニー
木谷真優子(東京薬科大学)・マッカートニー学斗(アメリカ・キーストン)組は、今回唯一のアイスダンスカップル。『Xanadu』の明るい音楽に合わせ、結成1年目とは思えない息の合った滑りを見せた。
『A Whole New World』を演じた笠井
アメリカ出身の笠井美好奈(文構2=アメリカ・メティアヴァリー高等学校)は、日本のリンクで滑るのはこの日が初めて。『A Whole New World』の音楽に乗せ、柔らかな滑りで物語の世界観を表現した。
『Audition』を演じた清野
清野桃葉(国教1=東京女子学院)は、過去シーズンで使用した『Audition』を再び演じる。壮大な音楽に負けない大きな滑りを見せ、最後は、冒頭に他部員からも紹介された回転速度の速いスピンで演技を締めた。
『Learning to Fly ~Dance for Me Wallis~』を演じた妻鹿
現役生演技前半の部、最後に登場したのは、妻鹿愛(政経3=大阪桐蔭)。上品な青緑色の衣装に身を包み、『Learning to Fly ~Dance for Me Wallis~』の音楽に合わせ、うちに秘めた情熱が燃えるような力強い演技を見せた。
★グループナンバー Aladdin
現役生演技の間には、『アラジン』の楽曲を使用したグループナンバーが行われた。ジャスミン、アラジン、ジーニーの3役を中心に、ダブルキャストで物語が展開されていく。最初の曲は『Arabian Night』。ジャスミン役の穂積とアラジン役の山田で動きを揃え、アイスダンス選手さながらの意気のあった滑りを披露。続く『Friend Like Me』では、山田とジーニー役の廣田聖幸(スポ4=千葉・東邦大東邦)が自由自在に笑顔で氷上を駈ける。ここでキャスト交代。アラジン役の坂﨑はジャファーに追い詰められるも、ジーニー役のマッカートニーと力を合わせて打ち倒す場面を演じた。最後は『A Whole New World』が流れる中、ベリーダンスの衣装を着た女子部員らと共に踊り、ジャスミン役の笠井と手を取り合ってフィニッシュ。観客をアラジンの世界に引き込んだ。
アラジンの物語を演じた部員たち
★現役生演技②
『象王行』を演じた趙
現役生演技後半、一人目は趙政(文D2=中国・上海中学)。自身で振り付けを行い『象王行』の中国らしい音楽を表現した。漢服の衣装をまとい、扇や剣といった小物も活用するなどこだわりが見える演技に客席からも感嘆の声が出た。
『エリザベート』を演じた浅間
浅間百合子(商2=東京・東洋英和女学院高等学校)は途中入部のためこれが初めてのWOI。ブランクを感じさせない力強い滑りと柔らかな腕使いで、同級生の山田が振り付けた『エリザベート』を丁寧に演じた。
『フリネの踊り』を演じた西俣
西俣仁衣奈(文構1=福岡雙葉)はバレエ仕込みの美しい所作が大きな武器。ピンと伸びた姿勢と繊細な指先の表現が印象的な演技で、バレエ音楽『フリネの踊り』を華やかに力強く滑りきった。
『The Giving』を演じた小林
続いて登場したのは中学生のころから早大スケート部への入部を決めていたという小林遙佳(政経1=埼玉・早稲田大学本庄)。明るい黄色の衣装と大きなリボンを身につけ、しっとりと、しかしどこか可愛らしく『The Giving』を演じた。
『Bloody Mary』を演じた栁田
栁田梨穂子(創理2=埼玉・川越女子)はふんだんにフリルがあしらわれた黒の衣装で登場。『Bloody Mary』を楽曲のリズムを活かしながら妖艶に演じた。妖しげに笑みを浮かべたりと、大人の魅力が詰め込まれた演技だった。
『The Phantom of the Opera』を演じた山田
現役生演技最後は山田琉伸(人通2=埼玉栄)。『The Phantom of the Opera』を力強く壮大に演じ、見せ場のイナバウアーでは会場から大きな歓声が上がった。場内でも紹介された通り「早稲田のエース」らしい堂々とした滑りを披露した。
★コラボレーションナンバー
第一部の最後は、早大のアカペラサークルであるStreet Corner Symphonyとのコラボレーションナンバー。昨年福原美和氏が引退したことに伴い、今年度から早大フィギュア部門の監督に就任した八木沼純子監督(平7教卒)が振り付けを行った『L-O-V-E』を演じた。Street Corner Symphonyのメンバーが紡ぐ小粋なジャズのメロディーに乗り、シックな黒い衣装を身にまとった部員たちも軽やかに滑っていく。全員で横一列になって手をつなぎリンク上を回ったりと、大人数ならではの迫力ある振り付けでも楽しませた。
氷上で歌うStreet Corner Symphonyのメンバー
★グループナンバー minion
整氷をはさみ、第二部が開幕。最初の演目は『怪盗グルーシリーズ』の楽曲を使用したグループナンバー。早大ホッケー部門の部員との共演も見どころだ。ミニオンたちが歌う『Universal Fanfare』の音楽とともに、黄色いシャツにオーバーオールを重ね着してミニオンになりきった部員たちが登場。全員で高速スピンを披露し、最後は廣田がおどけたようにひっくり返って転ぶと会場は大きく沸いた。その後はホッケー部門の選手たちがフィギュア部門の選手たちを猛スピードで追いかけたり、一緒に円になって踊ったりと、ホッケー部門とフィギュア部門でともにミニオンの愉快な世界観を作り上げた。
ミニオンに扮した部員たち
★引退生演技
『愛の賛歌』を演じた嶋田
4年生最初の演技者は、副主将の嶋田輝(教4=千葉・昭和学院秀英)。深い青色の衣装にハーフアップの髪型で氷上に上がった。両手をそっと広げ笑顔で滑り出す。音楽に溶け込むようなジャンプも次々と成功させ、会場からは大きな拍手が響く。『愛の賛歌』の音楽に乗せ、柔らかに腕を使いながら、しっとりと曲を表現。一つ一つの振り付けを大切に演じていった。最後は静かに両手を前に差し出すようなポーズでフィニッシュ。大学入学後に本格的に競技を始めたという嶋田だが、大学生活の中で丁寧に磨き上げたスケートで魅了した。演技後は満面の笑みで歓声に応えた。
『ロケットマン+Bennie and the jets』を演じた廣田
引退生演技2人目は廣田。部員とハイタッチを交わした後、リラックスした表情でリンク中央へ向かった。プログラムは、自信も振り付けに関わった『ロケットマン+Bennie and the jets』。前半は『ロケットマン』の壮大な音楽に合わせた、ゆったりとしたイーグルや大きなジャンプを披露した。後半リズミカルな『Bennie and the jets』に曲が変わると、廣田もノリノリで演じていく。次々とポーズを変え、スピンやジャンプもスピードに乗ってこなす。指差しポーズをとるなど疾走感とエネルギーにあふれた楽しいプログラムで観客を熱狂させた。演技前後の挨拶も含め、終始楽し気な笑顔が印象的な演技だった。廣田は来年も現役を続行することを表明している。
『You Raise Me Up』を演じた中村
続いて出番を迎えたのは中村華(人4=群馬・高崎女)。年齢は一つ上だが、留学をしていたため、今年卒業を迎える。花の模様があしらわれた可愛らしい衣装で登場し、片腕を上げ見上げるような姿勢でスタートポジションにつく。今シーズン通して使用してきた『You Raise Me Up』の音楽がかかると静かに滑り出した。冒頭から3連続ジャンプを成功させるなど完成度の高い演技を披露。しっとりとした感動的な曲調を表現しながらも、場内の他己紹介で嶋田から「いつも魅力的な笑顔を絶やさない人」と紹介された通り、常にあたたかい笑顔を浮かべていた。演技後は丁寧に会場を見渡して挨拶をし、リンクから降りた。
『Dangerously』を演じた木南
木南沙良(人通4=東京・日大一)は薄青色と白のグラデーションの衣装で登場。『Dangerously』の音楽がかかると切ない表情で滑り出す。何かを乞うように差し出した腕を引き寄せる振り付けなど、大人っぽい仕草で、危険なほどの愛を歌った曲を表現した。疾走感のある大きな滑りで魅了しつつ、3回転ジャンプやポジションの安定したビールマンスピンなど技術的な完成度の高さも見せた。演技後は一度くるりと回ってからお辞儀。廣田からは「人一倍強い気持ちで真剣に練習する姿を見て自分も頑張れた」という感謝の言葉も送られていたが、そんな木南のスケートへの強い想いが伝わる演技だった。木南は現役続行を表明している。
『Exogenesis Symphony』を演じた千葉
WOI2025個人演技ラストは、千葉紫織(文構4=東京・筑波大付)。主将として1年間部を引っ張ってきた千葉は、演技前の他己紹介で「彼女がいたから今の部とWOIがある」とまで言われた大きな存在。リンクに上がった千葉には部員から大きな歓声が送られた。曲はこの1年を通して使用してきた『Exogenesis Symphony』。音楽がかかるとふっと顔を上げ、お辞儀するかのようにリンクの両サイドを向いてから滑り出した。長い手足をしなやかに使い、多彩な振り付けを丁寧にこなしていく。感動的な曲調と千葉の美しいスケートに、客席からも自然と拍手が起こる。たっぷりと時間をとったスパイラルでリンクを縦断する姿も千葉の美しさが良く表れていた。最後はしっかりと客席を見つめて挨拶し、笑顔でリンクから降りた。
★フィナーレ
WOI2025のラストを飾るのは『I Was Born To Love You』。まずは4年生が氷上にゆっくり姿を現し、続いてリンクに上がった現役生とともに滑り始める。その後はリンクの両サイドに分かれる体制をとった部員たちが、2人ずつ順番に中央に進み出て、スピンやジャンプなどそれぞれの得意技を披露する時間もあった。優しくも力強い音楽と、スケートを楽しむ部員たちの気持ちが伝わる明るい表情が印象的なナンバーだった。最後は4年生5人が真ん中で円を作り、その周りを現役生が囲む体制でフィニッシュ。4年生は片手を突き上げて外側を向いていたのに対し、現役生は内側を向き引退生の方に手を差し伸べるポーズをとっており、現役生から引退生へのリスペクトも込められているようだった。
円になった4年生たち
★挨拶、クロージング
ショー本編終了後には、部を引退する4年生へ、現役生から花束が贈られた。現役生と4年生が一人ずつ抱きしめあい、早大フィギュア部門の絆も感じられた。 その後は、4年生からの挨拶の時間が設けられ、それぞれが自分のスケート人生を振り返った。感情があふれ出し涙ぐむ選手もおり、スケートへの想いがこもった言葉に、客席からも温かい拍手が送られた。木南と廣田は改めて現役続行を表明した。
クロージングセッションでは、部員がリンクを周回したり、家族・友人らがリンクに降りて写真撮影を行ったりした。WOI2025は部員の笑顔があふれる中幕を閉じた。
(記事 荘司紗奈、写真 荘司紗奈、吉本朱里)
※掲載が遅くなり、申し訳ありません