全日本選手権 12月22日 大阪・東和薬品RACTABドーム
全日本選手権競技最終日に行われた女子フリースケーティング(FS)。早大からはショートプログラム(SP)で自己ベストを更新し、3位につけていた千葉百音(木下アカデミー/人通1=宮城・東北)が登場。表彰台を目指し演技を行なったが、ジャンプにミスが重なり、FS7位、総合4位という悔しい結果となった。
「率直に悔しいっていう気持ちがすごく強い」。自己ベストを大幅に更新する会心の出来で終えたSPから一転、FSを終えて報道陣の前に姿を現してくれた千葉の目には涙の跡が残っていた。6分間練習からジャンプに不安要素があったという中での本番。冒頭の3回転フリップ+3回転トーループの着氷までは順調だったものの、次の3回転サルコウで回転不足となり転倒。もともと苦手意識があったというジャンプで綻びが出てしまった。後半も転倒こそなかったが、回転不足の判定を受けるジャンプが続く。「まだまだ固くて練習通りにいかなかった」と、練習で何度も見せていた軽やかなジャンプを決めることができなかった。

『Ariana Concerto No.1』を演じる千葉
演技後は肩を落とし、表情には悔しさがにじみでていた。それでも、千葉の洗練された滑りと最後まで力いっぱい滑り切る姿に、観客から大きな温かい拍手が送られる。ジャンプ以外のエレメンツでは全て最高評価のレベル4をそろえ、高い出来栄え点も獲得。課題としていた演技中の表情においても、演技が終わる瞬間まで笑顔を絶やさずに繊細でたおやかな表現を見せるなど、千葉のスケートの魅力や、積み上げてきた地力の高さは間違いなく今回の演技にも表れていただろう。

笑顔で演じた千葉
千葉のFSの得点は130・97点。SPと合わせて205・69点で、表彰台にはわずかに及ばず4位。SPから順位を1つ落とす結果となった。目標としていた表彰台を逃し、「涙が込み上げてきてしまった」という。そんな悔し涙で瞳を赤くした状態でも、報道陣の前では足の疲労が溜まった状態で滑っていたことや、6分間練習でずれが生じていたジャンプに不安が残っていたことなど、失敗の要因を冷静に分析。気持ちは次へ向かっている。「悔しさから得る強さも本当に大事」だと力強く前を向いた。悔いが残る全日本となったが、安定して好成績を残してきたシーズン前半戦の結果も考慮され、選考基準に基づき、四大陸選手権、世界選手権への出場権を獲得。1月初めには冬季ワールドユニバーシティゲームズも控えている。さらなる強さを得た千葉のスケートを、シーズン後半も楽しみにしていきたい。
(記事 吉本朱里 写真 荘司紗奈)
結果
▽女子シングル
千葉百音
SP 3位 74・72点
FS 7位 130・97点
総合 4位 205・69点
コメント
千葉百音(木下アカデミー/人通1=宮城・東北)
※演技後囲み取材より――表彰台を逃すかたちになりました
グランプリシリーズとグランプリファイナルで良い結果を残してきたからこそ、このフリーのミスは本当に心に響いていて、率直に悔しいっていう気持ちがすごく強いのですが、靴を脱いだり着替えたりしている間に気持ちはもう来シーズン、次の試合に向かっている感じがしています。本当に来シーズン絶対に4回転入れてやるぞっていう気持ちが芽生えてきたという感じで、やっぱり悔しさから得る強さも本当に大事だなと思います。
――目には涙が浮かんでいますが
先ほど受けたテレビのインタビューで、泣かないと思っていたのですが、ちょっと涙が込み上げてきてしまって。サルコウが昔から苦手なジャンプで、今シーズンは緊張した場面でしっかり踏ん張って跳べていたところ、全日本ではちょっとタイミングが合わなかったというところで、本当にこれからハートも強くしていかないといけないところですし、サルコウ以降のジャンプも転びはしなかったのですが、まだまだ固くて練習通りにいかなかったものもあったので、そこは本当に、明日の練習からしっかり1からまた強いジャンプを跳べるように重点的に練習していきたいです。
――全日本の独特の緊張感はありましたか
そうですね。独特というよりかは緊張一筋という感じでした。今日のフリーは、6分間練習の時は結構良い精神状態だったと思うのですが、ジャンプは落ち着いて跳べていたけど決してとても良いジャンプではなかったというところで、そこがちょっと不安要素としてあって。本番の時にちょっと傾くジャンプが出てしまったので、そこを6分間練習の時にしっかり修正できるようにというところが大事かなと思います。
――後半戦に向けて、今回の経験はどう生かしていきたいですか
本当に表彰台に乗りたかったというのが率直な悔しさでもあるのですが、とりあえず4位という結果をまず受け止めて。次はユニバーシアードの試合があるので、今シーズンの目標でもある、シーズン全般通して安定した演技をするという目標を本当に忘れずに、気持ちを強く持って、向上心も強く持って、また臨みたいです。
――(音声不良)滑り出す前の心境は、慎重に行こうという感じだったのですか
前の人の点数はあまり気にならなかったのですが。そうですね、今日の敗因は何かと言われたら、6分間練習の時に(ジャンプが)ずれていて。でも6分間で(その)軸を修正するというのは結構難しいことなので…。そうですね、筋トレしかないです。
――スピードが少しゆっくり見えましたが、スピードを落としていったというわけではないということですか
公式練習でも結構足の疲労が溜まりながらの練習だったので、あまりのびのび滑ることができなかったというところで、それに比較すると今日の本番は公式練習の曲かけと比べたらまだ滑れた方なのですが、それでもまだスピードが足りなかったというところで、やっぱり足腰の強さというか、どんな氷でも坂本選手(花織、シスメックス)のように、いつもすごく大きいスケーティングができないといけないなと思いました。やっぱりファイナルまでの試合が続いている中で、疲労もとりながら、ちゃんと強さも保たないといけないなと気づきました。
――いつもにない緊張はありましたか
力みはいつもよりかはちょっとあったかなと思うのですが、グランプリの2戦とグランプリファイナルとかと同じような緊張でした。
――自分に対する期待値は
そうですね。期待値というか、自分がどういうふうに安定しているべきなのかというのは自分でよくわかっているので。これからそれを目指すだけというか。
――来季4回転を入れるというのは
「4回転来季入れる」という言葉の裏には、もう、たくさんやらなきゃいけないことがあるのですが、4回転を入れるからには余裕のあるトリプル(3回転)で、4回転以外のところを常に鉄板にしておくことと、着氷に耐えられる筋力とかももっと鍛えていかないといけないですし。今季のシーズンオフからトレーニングなどを見直して、鍛え直して少し強くなったところはあったのですが、やっぱり4回転降りるのとプログラムに入れるので、もっともっと強くなっていかないといけないなというのは感じるので。全体的にもっと安定させるためにという感じで、鍛え直します。
――ロシア選手権などを見てそう思ったのですか
ロシアが来季加わってくるところで意識しているというのもあると思うのですが、自分自身が今率直に思った感じで、もっと強くなりたいです。