ついに全日本選手権が開幕!山田が自己ベスト更新でFS進出!

フィギュアスケート

全日本フィギュアスケート選手権 12月19日~22日 東和薬品RACTABドーム

 12月20日、ついに全日本選手権(全日本)が開幕。毎年1年の終わりに開催される国内最高峰の舞台に、今年も全国各地からトップ選手たちが集結した。大会初日、最初の種目である男子シングルショートプログラム(SP)には、山田琉伸(人通2=埼玉栄)が初出場。全てのジャンプを着氷させ、自己ベストとなる60・20点をマーク。目標に掲げていたフリースケーティング(FS)進出を果たした。

★男子シングルSP

伸びやかに演技をする山田

 山田は第3グループで登場。今シーズンシニアに上がったばかりの山田にとっては、この日が全日本デビュー戦。「今シーズンは全日本出場だけを見てやってきた」と語る夢の大舞台に、ついに出場を果たした。会場に入った時に、「この舞台は国内大会だけどレベルが違うというか、規格が違うな」と感じたと言い、「他の試合と比べて気合の入り方が違う」とやはり緊張があった。それでも、名前がコールされると落ち着いてリンク中央へ向かい、大きな会場いっぱいの観客から送られる声援に応えた。曲は『戦場のメリークリスマス』。きれいな演技をしよう、というコンセプトで選んだプログラムだといい、スケーティングで魅せられる演技を目指してきた。

 そっと顔を伏せたポーズから、音楽がかかると同時にふわりと両手を上げ滑り出す。しっとりと繊細な曲調は山田の得意分野。柔らかな腕遣いで観客を世界観に引き込んでいった。冒頭のジャンプは当初3回転アクセルを予定していたが、練習から調子が上がらず、2回転アクセルに変更。着実に成功させた。続く3回転フリップは公式練習から成功が高かったジャンプ。本番も軽やかに成功させ、流れそのままに臨んだコンビネーションスピンでも、軸のしっかりした回転で、0・39点の加点を得た。

 後半には難易度の高いコンビネーションジャンプを組み込んだ。一つ目の3回転ルッツの着氷時にやや姿勢がかしいだが、二つ目にはきっちり3回転トーループをつける。「強みはジャンプや技の安定感、練習通りの演技が試合でできるところ」と語った通り、抜群の安定感を発揮し、3本のジャンプをノーミスでまとめあげた。その直後から音楽は一気に力強さを増し、滑りにも力がこもる。「滑りがうまい選手」が理想のスケーターだと語り、今シーズンはスケーティングに特に力を入れて練習してきた。その成果を発揮し、感動的な音楽にのせて、柔らかに魅せていく。長身を活かしたダイナミックな振りと滑らかなスケーティングを披露した。

 音楽がますます盛り上がりを見せる中、ラストに用意しているのは立て続けのスピン。ジャンプを得意とする反面、今まではスピンのレベルを取りこぼしがちだったが、今回は後半のスピン2つとステップシークエンスでレベル4の評価を受け、進化を見せた。最後は、右腕をすっと伸ばして、力強いフィニッシュポーズ。大舞台で大きなミスなく滑りきった。演技後は大きく胸をなでおろし、笑顔を見せた。

『戦場のメリークリスマス』を演じる山田

 沖縄育ちの山田は、中学卒業時に埼玉へ、そして今シーズンはスケーティングを磨くために埼玉から新横浜に移籍してきた。「中学卒業して移籍した時は、正直スケートがうまくなるビジョンが見えなかった」が、埼玉のリンクで練習を重ねるうち、「それが見えてきた」という。その中で更なる進化を求め、スケーティングの強化を目指して新横浜に移った。環境の変化も大きい中で、今シーズンは安定した成績を残し続け、東京選手権11位、東日本選手権4位、とステップを積み重ねてきた。ついにたどり着いた大舞台では、完璧な出来とはいかなかったものの、着実に身に着けた実力を発揮。「ちゃんと努力してやることをやれば全日本に出られるんだということを証明できた」と喜びを見せた。

 山田のSPの得点は60・20点。昨年の全日本ジュニア選手権でマークした自己ベストを更新し、自身初の60点台に乗せた。順位は24位となり、目標に掲げていたFS進出を果たした。FSは明日21日に行われる。

(記事 荘司紗奈、写真 吉本朱里)


結果

▽男子シングルSP


山田琉伸

 

SP 24位 60・20点


コメント

山田琉伸(人通2=埼玉栄)

※全日本選手権開幕直前インタビューより

――今シーズンここまで振り返っていかがですか

 今シーズンは全日本出場だけを見てやってきたので、東日本は満足いく演技ではなかったのですが、結果的に全日本に出場できることになって、それをすごく嬉しく思います。

――目標としていた全日本選手権への出場が決まった瞬間の心境、今の心境を教えてください

 決まった時は、全日本より後の、来シーズンの目標のためには全日本出場を達成しなければいけないと思っていたので、嬉しい半分、当然と言ったらあれですけど、こうならなきゃダメだったよねという気持ちが半分でした。今の心境としては、楽しみな部分も、緊張している部分もあり、他の試合と比べて気合の入り方が違うかなという感じです。

――他の試合と違うというのは

 他の試合と比べて規模が違うし、先生方や周りの人たちの全日本への印象も違うので、大きな試合だなと感じています。

――中学卒業時に沖縄から埼玉へ、そして今シーズンは新横浜へと練習拠点を変更しました。これまでのスケート歴を振り返って、それぞれで得た力は何だと思いますか

 中学卒業して移籍した時は、正直スケートがうまくなるビジョンが見えないというか。そんな感じだったのですが、埼玉で環境が変わって練習を重ねていくうちにそれが見えていきました。続けていくうちに、今自分に足りないところや、この環境でうまくなれるのか?というのを色々考えて、今横浜の方に移籍して、自分に足りないところをひたすら磨いています。

――ご自身で思う足りない部分と、逆に強みだと思う部分を教えてください

 最近力がついてきた実感はあるのですが、やっぱりスケーティング、演技の部分の力をつけていきたいと思っています。埼玉や沖縄にいた時は、すごくそれが欠如した選手だったというか、スケーティングスキル、踊りのスキルが劣っていたと思うので、それを磨くことができると思って移籍したというのもあるので、さらに磨いていきたいです。強みはジャンプや技の安定感、練習通りの演技が試合でできるところだと思っています。

――改めてSPとFS、それぞれの見どころは何ですか

 SPは、きれいな演技をしようというコンセプトで作成したものなのですが、自分の人生の中で最高難易度の構成です。後半に3回転+3回転を入れたり、3回転アクセルを入れたり。アクセルは他の試合ではやっていないのですが、全日本ではチャレンジしようと思っています。FSに関しても、踊りの部分、スケーティングを魅せることができるプログラムになっていて、後半のステップシークエンスからのコレオシークエンスが特にジャッジに評価してもらいたいなと思っている部分です。見どころとしては、その部分かなと思っています。

――全日本での目標は何ですか

 今年は全日本でFSを滑ることが第一の目標です。そのためには、SPでのノーミスや3回転アクセルが必要になってくると思います。さらに上を目指したいのもありますが、今自分ができることを精一杯出すことが目標です。

――最後に、全日本に向けての意気込みをお願いします

 SPで3回転アクセルを入れたプログラムでノーミスをしたことがないので、全日本の舞台でそれをできるように頑張りたいです。FSも滑ることを目標にしているので、進出できたら、3回転アクセルを投入して良い演技ができるように頑張りたいです。

※SP後の取材より

――滑ってみていかがでしたか

 初めての全日本で緊張している中、落ち着いて演技することができたと思います。

――今年は環境が変わったんですよね

 そうですね。今年の6月に埼玉のクラブから新横の方に移籍して、練習時間がたくさん増えた状態でスケーティング、ステップの練習をひたすら積んできました。

――先生を変えるという決断の理由は

 親離れをして、自分の一番の課題であるスケーティングの部分を伸ばしたいというのがあって。それができるのが、新横の紀子先生だと自分の中で思ったので、移籍というかたちになりました。

――理想のスケーター像は

 そうですね。滑りがうまい選手がすごく好きで。羽生選手や宇野選手の滑りの部分がすごくうまいなと思っています。女子だったら三原選手の滑りをすごくお手本としています。滑りがうまい選手、ジャンプやスピンをつけても全部ちゃんととりこぼさず取れるような選手になりたいと思っています。

――環境の変化に慣れるのは大変でしたか

 そうですね。慣れるのは結構大変でした。練習時間も今までの4倍くらいになったので、今も慣れ切ってはいないんですけど、すごく自分にとってもスケートにとってもプラスの環境だと思うので、頑張っていきたいです。

――1日の練習時間はどれくらい増えましたか

 埼玉の頃が曲かけの練習が週に大体4回くらい、全部で1時間前後くらいの枠しかなくて。新横では1日2時間以上は曲かけの時間があるので、4倍くらい増えたかなと思います。

――練習量が一番自分の演技に現れていますか。練習の仕方やテクニックなどは

 貸切練習の一番初めにスケーティング練習を、先生に言われた課題だったりを元に20分から30分くらい毎回やるようにしていて、その練習のおかげで自分の滑りが変わってきたなと実感しています。

――沖縄出身のスケーターは珍しいと思いますが、沖縄でスケートやっている子たちに勇気を与えたいといった気持ちはありますか

 自分は中学卒業した時に沖縄から出てきたのですが、その時は正直全日本は夢のまた夢で、ここまでうまくなれるとは思っていなかったんですけど、ちゃんと努力してやることをやれば全日本に出れるんだということを証明できたというか、沖縄で今スケートをやっている小さい子たちも頑張って全日本や上の大会を目指してほしいと思います。

――スケートはどういうきっかけで始められたんですか

 母親がスケートが好きで、趣味の範囲くらいなんですけど、高校生大学生くらいの時にスケートをしていて。子供の時に母親に沖縄のスケートリンクに連れて行ってもらって、教室に入りました。

――沖縄でスケートをやっていることは珍しいことですか

 もう沖縄でスケートやってるって言ったら、みんながもうえ?ってなるくらい、マイナーな競技で、みんなスケートに馴染みが全くないような環境だったので、スケートやってるだけですごいみたいな感じでした。

――全日本選手権はどのような舞台だと感じていますか

 小さい頃からテレビでずっと見ている舞台であり、会場に入った時に、この舞台は国内大会だけどレベルが違うというか、規格が違うなと自分で感じています。前日の公式練習から緊張があったんですけど、憧れの選手が滑っていた舞台に出ることができてすごく嬉しく思います。