有観客開催の東京選手権 早大から5人が出場

フィギュアスケート

 ついに東京選手権が開幕した。オフシーズン、そして夏の大会で力をつけてきた選手がせめぎ合う舞台に、早大からは5人が出場。会場に集まった多くのスケートファンの温かな応援を受けながら演技を行い、4人が11月に行われる東日本選手権への進出を決めた。

★山田が自己ベスト更新 更なる成長を誓う(ジュニア男子)

 東京選手権1日目、ジュニア男子の競技に出場した山田琉伸(人通1=埼玉栄)はショートプログラム(SP)1番滑走で登場。8月に出場したサマートロフィーから一新した衣装を身にまとい、『Bicycle Race』の音楽に乗って滑り出した。冒頭は3回転アクセルを回避し2回転アクセルを着実に成功させ、続く3回転ルッツも滑らかに着氷。得点源となる後半のコンビネーションジャンプは3回転+3回転を予定していたが、1本目の3回転フリップが耐えるかたちでの着氷となり、2本目が2回転となるミスが出た。しかしそれ以外は大きなミスなくまとめ、スピードに乗ってキレのある演技を見せた。得点は56・03点で自己ベストを更新。全体5位でフリーに駒を進めた。今回取りこぼしたスピン・ステップでのレベルを取り、さらに3回転アクセルを組み込めるようになれば、まだ得点を伸ばすことができ、期待が高まる。

SPで演技をする山田

 最終グループでフリースケーティング(FS)の演技を迎えることとなった山田。SPからガラリとイメージが変わり、チャイコフスキーの『ピアノ協奏曲第1番』を演じた。FS最初のエレメンツは3回転アクセル。回転不足でダウングレードの判定となったものの、転倒せずに着氷する。3回転フリップからの連続ジャンプでは、1本目で着氷が乱れるも、立て直して3回転サルコウをつけるという修正力の高さを見せた。ピアノの一音一音を捉えながら滑らかなスケーティングを披露し演技後半へと入っていくと、曲も盛り上がりを見せる。スピードに乗って3回転+3回転の連続ジャンプや3回転フリップ+2回転アクセルのシークエンス、そして最後の単独3回転ルッツを転倒せずに決めると、会場が大いに沸いた。片膝をつくポーズで演技を締めくくると右手を掲げ、ガッツポーズを見せた。ジャンプでの転倒やパンクなど、大きな過失なく演技を終えることができた山田に、会場からは大きな拍手が送られた。
8月に行われたサマートロフィーから成長した姿を見せた山田のFSの得点は105・89点で総合6位。点数では自己ベストをマークしたものの、連続ジャンプでの回転不足が目立ち、得点を大きく伸ばすことはできなかった。「一応自己ベストは出すことはできたのですが、満足する順位ではない」、「もう少し点数取れるようになりたい」と更なる飛躍を誓う大会となった。

観客の声援に応える山田

★廣田がフリーで自己ベスト 11月の東日本選手権へ駒を進める(シニア男子)

 シニア男子の競技には廣田聖幸(スポ3=千葉・東邦大東邦)がエントリー。サマートロフィーや東京夏季大会を経て、この東京選手権に臨んだ。
今年のSP『It’s gonna be alright』の軽快な音楽に乗って滑り出すと、最初のエレメンツ、3回転フリップを成功。今シーズン安定感を増しているジャンプを加点のつく出来栄えで決めた。しかしその後は「納得のいく演技ができなかった」とスピン・ステップでのレベルの取りこぼしや着氷の乱れなど、細かなミスが続く。ジャンプでの転倒や回転の抜けこそはなかったものの、出来栄え点でのマイナス評価がつくエレメンツが多かった。それでも終盤のステップでは音楽に乗り、全身を大きく使った演技で観客を引き込む。有観客大会ならではの温かな拍手に包まれながらSPの演技を終えた。廣田の得点は45・72点。細かなミスの影響で目標としていた50点という点数には届かず、全体21位で翌日のFSに臨むこととなった。

スタート位置に向かう廣田

 SPで思うような演技ができず、悔しさを抱えながらFSに挑んだ廣田。FSでは、「(SPの)悔しさをぶつけて全力で滑った結果」が出た演技となった。
 披露したプログラムは昨季から継続の『ロケットマン』。朝早くから集まった観客の声援を受けながらポジションにつくと、落ち着いた表情でゆったりと滑り出した。序盤の3回転フリップはきれいに着氷。今回は3回転ルッツを回避したものの、続く2回転ルッツも着氷し、上々の滑り出しを見せた。疲れが出る演技後半以降はジャンプ着氷時にステップアウトなどのミスが見られたものの、SPから引き続き転倒せずに、3回転トーループや2回転アクセルを決めた。スピン・ステップは、レベル2になるものも多かったが、コンビネーションスピンでは最高評価のレベル4と出来栄え点でのプラス評価を獲得。前日のSPよりも確実に決めたエレメンツと、終盤にかけて盛り上がっていく曲に乗って観客を引き込んだ滑りを見せた。細かなミスはありながらも、好演技で東京選手権を締めくくった。
 FSの得点は90・30点。今大会で目標にしていた90点を超える点数を叩き出し、キスアンドクライでは笑顔が見られた。順位はSP21位から総合17位まで上げ、SPでの悔しさを晴らす結果となった。掲げていた目標を1つクリアした廣田。しかし、「3回転ルッツと3回転フリップを1本ずつ確実に降りて、(中略)95点くらい、100点を目指して頑張りたい」と更なる成長を目指す。

FSで演技をする廣田

★それぞれが全力の演技を披露 木南、吉本が東日本進出(シニア女子)

 馬場はるあ(社4=東京・駒場学園)はシニア女子SPの4番滑走で登場。穏やかな表情でリンクに立った番場は、音楽に合わせてゆっくりと滑り出した。前半のコンビネーションジャンプを危なげなく成功させ、0・56点の加点を得ると、続く3回転サルコウも回転不足が取られたものの着氷させた。後半の2回転アクセルは回転が足りず転倒してしまったが、その後のステップは丁寧に力強く踏んでいった。最後まで集中を切らさず、情感たっぷりに『My Blood』のプログラムを演じ上げた。2回転アクセルでの転倒が響き、得点は38・91点と伸び悩んだが、全体22位でFS進出を決めた。

SPで演技する馬場

 木南沙良(人通3=東京・日大一)は17番滑走で登場。笑顔でスタートポジションに着くと、前半の3回転+2回転のコンビネーションジャンプと3回転サルコウ、後半の2回転アクセルを全て滑らかに着氷させた。3回転サルコウでは回転不足が取られたが大きなミスなくまとめ、2つのスピンではレベル4を獲得するなど、完成度の高い演技を見せた。全身を大きく使ったステップでは、挑発的な笑顔も見せるなど表情豊かに演じ、『Skyfall』の音楽に合わせ、力強い演技を披露した。演技後には、リンクサイドで見守る武田奈也コーチに顔を向けて嬉しそうな笑顔を見せるなど、本人も納得の出来となった。得点は46・03点をマークし、全体10位でFS進出を決めた。

SPで演技する木南

 吉本玲(国教1=兵庫・芦屋国際中教校)は、昨年まで関西を拠点にしていたため、東京選手権には初参戦。SPは最終グループで登場し、デヴィット・ウィルソン氏振り付けの『展覧会の絵』を披露した。夏の地方競技会では体調不良での棄権もあり、苦戦気味だった吉本。しかし、今大会では課題としていたジャンプを決める上々の演技を見せた。冒頭の3回転トーループ+2回転トーループのコンビネーションジャンプと、3回転サルコウは危なげなく着氷。回転不足や出来栄え点でのマイナス評価もないきれいなジャンプで演技をスタートさせた。良い流れに乗って、持ち前の一歩一歩が伸びる美しいスケートと滑らかな動きで観客を魅了していった。後半のアクセルジャンプこそ1回転になったものの、その後は美しいスピン・ステップで演技を締めくくった。アクセルジャンプのミス以外は減点要素のない演技を見せた吉本の得点は46・00点。木南とわずか0・03点差で11位につけた。

SPで演技する吉本




 大会最終日に行われた女子FS。SP22位でFSに臨んだ馬場は、柔らかいピンクとグレーの衣装に身を包み、リンクに立った。
 演技序盤、3回転+2回転を予定していたコンビネーションジャンプで、1本目の3回転サルコウの回転が足りず転倒してしまう。演技後半のサルコウジャンプに2回転トーループをつけてリカバリーするなど意地を見せたが、他にも3回転が2回転に抜けるなど、ミスが相次いだ。試合の3週間前に負った背中の肉離れの影響で十分にコンディションを整えられず、ジャンプはミスが目立った。しかしミスを引きずらずに、それ以外の要素は確実にこなしていく。前半の厳かな音楽から柔らかい音楽に切り替わると表情も柔らかくなり、ジャッジの前で優しい笑顔を浮かべてアピールをした。演技を終えるとやや辛そうな表情を浮かべた馬場。「ショート、フリーともにボロボロだった、自分の満足いく演技ができなかった」と振り返った。得点は64・55点。総合22位で、惜しくも東日本選手権への進出は叶わなかった。10月には全日本学生選手権(インカレ)につながる東日本学生選手権が行われる。2年連続のインカレ出場に向けて、今後も努力を続けていく。

FSで演技する馬場

 前日のSPで11位につけ、FS後半グループに登場した吉本。SPでは課題としていた3回転ジャンプを成功させる好演技を見せたが、FSでは一転、精彩を欠く演技となってしまった。
 披露したプログラムはSPと同じくデヴィット・ウィルソン氏振り付けの『ロミオとジュリエット』。スピードに乗って伸びやかに滑り始めるが、最初の3回転トーループで転倒。冒頭のミスを引きずってしまったのか、続く2回転アクセルでも転倒、サルコウジャンプも2回転となる。演技中盤には安定感のあるスピンや緩急豊かな滑りで魅了したステップを見せ、良い流れに乗ったと思われたが、後半も3回転ジャンプは2回転となり、2回転アクセルでは再度転倒してしまう。演技全体を通して成功したジャンプは少なく、苦戦する様子が見られた。それでも終盤のスピンではレベル4を獲得するなど、最後まで丁寧に、全力で演技を行った吉本。ミスが続いた中でも、シニア転向後初めて披露した『ロミオとジュリエット』の世界観を演じ切り、観客を魅了した。
 吉本の得点は69・97点でFS19位。総合順位も19位となった。相次いだ転倒により技術点、演技構成点ともに伸ばすことができなかった。今回のミスについて、「上半身に力が入りやすいので、そこの部分で練習だったら降りられそうなところも、転んでしまったり反応が鈍かったりしたので、気持ちの部分でもっと余裕を持って臨めるように練習を積んでいきたいと思う」と冷静に分析する。今回の演技も、必ず次に繋がるはずだ。

FSで演技する吉本

 SP10位の好位置でFSを迎えた木南は、薄紫色の和風の衣装を纏い、昨シーズンから継続のプログラムである『SAYURI』を披露した。
 木南の演技は、思わぬハプニングから始まった。演技開始直後に氷に引っかかって転倒してしまった。しかし、それで「逆に緊張が解けた」と言う。動揺せず、転倒直後に跳んだ3回転+2回転のコンビネーションジャンプを落ち着いて決め、続く3回転サルコウと3回転トーループも着氷し、良い流れに乗る。いくつかのジャンプで回転不足が取られるなどのミスはあったものの、その後もほとんどのジャンプを成功させ、演技をまとめた。スピンは全て最高のレベル4を揃え、ステップは和太鼓の音に合わせ、力強く丁寧にこなした。後半に向けてどんどん勢いを増していく好演で『SAYURI』の強い女性を演じ切り、演技終了直後には満面の笑みを浮かべた。
 FSの得点は82・96点。SPとFSの合計は128・99点で総合10位をキープ。2年連続、東日本選手権への切符を掴んだ。恐怖感があったという東京選手権でSP、FSともに「やってきたことが出せた」と充実した表情で語った木南。苦手と感じていた大会を克服したこの経験を糧に、更なる飛躍が期待される。

FSで演技する木南

(記事 荘司紗奈、吉本朱里、写真 吉本朱里)

結果

※Qは東日本選手権進出を示す

▽ジュニア男子


山田琉伸

 

SP 5位 56・03点

FS 6位 105・89点

総合 6位 161・92点 Q


▽シニア男子


廣田聖幸

 

SP 21位 45・72点

FS 15位 90・30点

総合 17位 136・02点 Q


▽シニア女子


木南沙良

 

SP 10位 46・03点

FS 12位 82・96点

総合 10位 128・99点 Q


吉本玲

 

SP 11位 46・00点

FS 19位 69・97点

総合 19位 115・97点 Q


馬場はるあ

 

SP 22位 38・91点

FS 22位 64・55点

総合 22位 103・46点


コメント

▽ジュニア男子


山田琉伸(人通1=埼玉栄)

――東京選手権に向けてどのような点に意識してきましたか

 ジャンプの回転不足を改善しようというのを合宿の後、8月の終わり頃から始めて、1カ月で良いところまで持ってくることができたので、そこを重点的に練習できていたかなと思います。

――SP、FSの演技内容を振り返っていかがですか

 演技内容は良かったかなとは思ったのですが、まだ回転不足がついてしまう部分があったり、スピンのレベルだったり、演技構成点の部分がもらえてなかったりしたので、まだまだ改善点はあるかなと思います。

――点数、順位についてはいかがですか

 一応自己ベストは出すことはできたのですが、満足する順位ではないのと、もう少し点数取れるようになりたいなと思っているので、まだまだだなと思います。

――今後の目標やより良くしたい点を教えてください

 全日本ジュニアで8位以内に入るのが今シーズン1番の目標なので、東日本では絶対に落ちないように、とりあえずジャンプの回転不足とスピン、演技構成点の部分で点数をもらえるようにしていきたいと思います。


▽シニア男子


廣田聖幸(スポ3=千葉・東邦大東邦)

――SP、FSの演技を振り返っていかがですか

 ショートは自分の納得いく演技ができなくて、全体的に細かいミス、レベルの取りこぼしがあって点数が伸びなかったと思います。フリーはもうその悔しさをぶつけて全力で滑った結果なのかなと思います。

――目標として挙げられていたFS90点を達成されましたが、点数についてはいかがですか

 今回はわりと跳べば下の点が出るような傾向があって、フリーは頑張ってジャンプを転倒せずに堪えたという部分で、(点が)出たのかなと思います。

――SPでは衣装を少し気にされていましたが

 ちょっとチェックが足りなかったというか、ちょっと運が悪かったというか…というだけで、あまり気にはしていないです。

――東インカレ、東日本選手権に向けての意気込みと、より良くしたい部分を教えてください

 今回ちょっと練習で膝をぶつけてしまってあまり構成を上げられなかったので、フリーでは3回転ルッツと3回転フリップを1本ずつ確実に降りて、具体的な点数で言うと、95点くらい、100点を目指して頑張りたいと思います。


▽シニア女子


馬場はるあ(社4=東京・駒場学園)

――今大会に臨む上で、コンディションはいかがでしたか

 3週間前に背中の肉離れになってしまってずっと練習ができていなかったのですが、なんとか出場できて良かったです。

――SP、FSの演技内容を振り返っていかがですか

 両方とも自分が臨んだような演技ではなくて、結構ボロボロでした。

――今後に向けて、より良くしたい部分や目標などを教えてください

 試合ではいつも力が入ってしまうので、リラックスして試合を楽しめるような意識を持ってやりたいと思っています。


木南沙良(人通3=東京・日大一)

――今大会に向けて、どのような点を意識して練習してきましたか

 全日本や、全日本ノービスを含めて出たことがなくて、ブロックや予選というものには少し怖いというか恐怖感を持っていたのですが、練習の中で怖いという気持ちを持ちつつも、できることはやって練習してきたのが今日は出せたと思うので、良かったかなと思います。

――SPとFS、振り返っていかがですか

 おととしはSP落ちして、昨年もギリギリ通過だったのでSPはすごく緊張したんですけど、うまくまとめることができて、ブロックのSPの中ではいいものが出せたので良かったかなと思います。

――FSの演技冒頭、転倒するハプニングがありましたが、影響はありませんでしたか

 緊張で足が震えまくっていて、頭もポカーンという感じだったのですが、逆に緊張がほぐれたかなと思います(笑)。

――東日本選手権に向けて、目標や意識することを教えてください

 東日本選手権に向けて、ちょっとでも自信がつくような練習を積み重ねて、また楽しんで演技ができるように準備したいなと思います。


吉本玲(国教1=兵庫・芦屋国際中教校)

――今大会に向けてどのような点を意識して練習してきましたか

 夏の試合でもジャンプが課題で、自信が持てないジャンプが多かったので、ジャンプを安定させるためにどうしたら良いかを考えてきました。スピードだったりリズムだったりがジャンプの前に遅くなりやすいので、スピードを活かしてリズムよく跳べるように意識して練習してきました。

――SP、FSそれぞれの演技を振り返っていかがですか

 SPはジャンプの時に意識していたスピードやリズムを全力で出し切れて、1つ失敗はしてしまったのですが、自分の中で修正できるなっていう意識があります。FSは、シニアになってから滑るのが初めてなので、結構緊張もあったのですが、楽しみな部分もありました。SPと変わらずスピードとリズムは意識していたのですが、上半身に力が入りやすいので、そこの部分で練習だったら降りられそうなところも、転んでしまったり反応が鈍かったりしたので、気持ちの部分でもっと余裕を持って臨めるように練習を積んでいきたいと思います。

――東日本選手権へ向けて、目標や意識する点を教えてください。

 目標は、SPとFSで、自分の中で今回より良い部分を増やしていけるようにすることと、さっき言ったような(ジャンプの)スピードとリズムを継続して、100%ではなくても、ジャンプをどんな態勢でも降りてこられる確率を上げていきたいです。