「積み重ねてきたことの証」を披露 島田が上々の演技でSP2位/男子SP

フィギュアスケート

  実力者が肩を並べる最終グループ5番滑走で登場した島田高志郎(人通3=岡山・就実)。 昨シーズンよりも難易度を上げ、今シーズンは4回転2本を含むショートプログラム(SP)に挑んできた。後半グループの実力者たちのミスが相次ぐ中大きなミスなくジャンプをまとめ、87・69点で見事2位に。24日のフリースケーティング(FS)につながる素晴らしい演技を見せた。

SPで演技をする島田

 スーツベストをクールに着こなしてリンク中央に登場した島田。曲が始まると体を大きく使ってリズムを刻み、曲の世界に引き込んでいく。迎えた冒頭の4回転サルコウはステップアウトしてしまったが、なんとか持ち堪える。続いて挑んだのは4回転トーループから3回転トーループのコンビネーション。1つ目のジャンプで惜しくも回転不足を取られてしまったものの、ほとんど減点はなく綺麗な着氷でまとめた。さらに曲の後半に入っても好調を維持し、SP最後のジャンプとなるトリプルアクセルも見事成功。2点超えの加点を受ける完璧なジャンプに仕上げた。

 ダイナミックなジャンプで会場を湧かせた島田。さらにここから持ち味である表現力が存分に発揮されるスピンやステップに入っていく。曲の一つ一つの音に合わせて表情を変え、『Sing Sing Sing』の賑やかさを表現。 後半は疲れを感じたというが、観客を最後まで楽しませた。また後半のスピンは2つとも最高評価のレベル4を獲得。大きなミスなくまとめ上げた島田は、演技が終了すると小さくガッツポーズも見せ、喜びをあらわにした。

演技後、スタンディングオベーションを受ける島田

 2位に食い込んだ島田は、キスアンドクライで点数を確認すると何度も頷き、安堵した様子を見せた。MKジョン・ウィルソン杯ではパーソナルベストをマークし、充実さが伺える今シーズン。今大会の目標は「自分に打ち勝つ」ことと話す島田はこのまま持ち味を生かし、力を出し切ることができるか。「一番のライバル」、「自分に打ち勝つ」という思いで、力を発揮したSP。25日に行われるFSでの戦いも見逃せない。

(記事 濱嶋彩加  写真 吉本朱里)

結果

▽男子シングルSP


島田高志郎

 

SP 87・69点 2位 Q


コメント

島田高志郎(人通3=岡山・就実)

※囲み取材より抜粋

――演技を振り返って

 本当に試合の前からいい集中ができていました。パーフェクトな演技ではなかったのですが、この舞台で4回転2本の構成でまとめることができたのは、今まで自分が積み重ねてきたことの証だなと思います。

――ジャンプの出来はどうでしたか

 練習からも完璧ではないですが、逆に完璧すぎると不安になってしまう部分もあったりするので、ちょうどいい調整ができたと思います。すごくいい状態で臨めてはいるので、このまま良い調整をしてフリーに臨みたいと思います。

――他の選手にミスが続いている中の演技でしたが

 周りのことは気にせず、一番のライバルは自分だと思って、自分に打ち勝つので精一杯だったので、それが今回はたまたま良いかたちでできたのではないかなと思います。本当にこの全日本は特別な舞台で、誰かどのような演技をするかわからないですし、滑る前は恐怖、ワクワクと高揚感と色々なものが積み重なって、スタートポジションに立つまでも色々な感情が入り混じっていました。同じようにみんな頑張っていると思うので、フリーはさらに良い試合になることを祈っていますし、自分もその一員となれたらなと思います。

――フリーに向けて

 順位は関係なく、自分がやるべきことをやるだけだと思っています、それ以上でもそれ以外でもないですし、今できる自分の全てが出せたら幸せだなと思います。

――演技中に気持ちはどう乗っていきましたか

 やることにただただ精一杯で、後半のステップは疲れてるなーとか脚動いてないなーとかそういった気持ちの方が大きかったです。まだまだ100パーセントの演技ではなかったので、悔しい部分もあるのですが、まずはこんな大舞台で、すごい緊張の中で、まとめることができたのは自分のキャリアの中で見ても成長できたところだなと思いますし、フリーに向けていいスタートが切れたなと思います。

――演技をまとめることができた要因は

 もちろん今までの経験が助けになった部分はあると思うのですが、明日の自分はどうなっているかわからない、というのが選手誰でもそうですし、毎日全く違った気持ち、全く違った体の状態、というところで1日ごとに新たな経験が待っていると思って最近は過ごしています。なので、例えばハプニングがあっても落ち着いて自分がやるべきことをただやるだけという風に常日頃から考えているので、そういったものが助けになったと思います。

――いつ頃からそういった風に考えて過ごすようになったのですか

 いつなんですかね(笑)。色々失敗を積み重ねてきて、一つの失敗から学ぶことが色々重なり合った結果色々考えるようになっていったと思います。

――グランプリシリーズの試合を終えてからこの大会に向けてはどのようなことを意識していましたか

 4回転2本の安定感を求めたら毎日どれだけ練習しても足りないと感じていました。その中で大事なのは、自分が納得いく練習を積み重ねること、たとえ調子が悪くても、たとえあまりうまくいかない日でも自分はよくやったと褒めてあげたり、その中でできる最大限のことをやってきました。

――日本代表としてはジュニア最後の年のグランプリファイナルでの表彰台などがありますが、今の世界舞台への気持ちは

 ジュニア最後の年は自分の中でも一番印象に残っているシーズンで、過去の自分に囚われていた部分もあったりしました。でもこうやって今自分が一人のスケーターとして大舞台でまだ戦えているのはすごくうれしいことですし、これからいつまで続くかわからないですけど、限られた試合数の中で少しでも存在感、自分がスケートをやっている意義、楽しさやスケートの魅力を伝えられたらなというのが目標です。