久々の有観客開催 温かな雰囲気の中演技を披露

フィギュアスケート

 3年ぶりに有観客で行われたげんさんサマーカップ。真夏の滋賀のリンクには多くのスケートファンが集まり、活気に満ちた雰囲気の中大会が行われた。選手権男子の競技に出場した廣田聖幸(スポ2=千葉・東邦大東邦)、選手権女子の競技に出場した小室笑凜(スポ4=東京・開智日本橋学園)と馬場はるあ(社3=東京・駒場学園)も、久々の有観客試合に明るい表情を浮かべ、演技に臨んだ。


★シニア本格参戦の廣田、憧れのプログラムで観客を沸かせる(選手権男子SP、FS)


 全国大会や国際大会で活躍する選手が集まった選手権男子の競技。11日に行われたショートプログラム(SP)には廣田が登場した。「できることをやり切ることと、とにかく楽しむこと」を目標に臨んだ今大会。印象的な手の振り付けから『Overtake』の演技が始まった。最初のエレメンツは直前の6分間練習で入念に確認していた3回転サルコウ。慎重に踏み切るが、回転がほどけて2回転となってしまう。それでも直後の3回転+2回転のコンビネーションジャンプはしっかりと着氷。後半の2回転アクセルではバランスを崩すも堪え、転倒せずにまとめた。キレのある動きでスピード感のある曲を表現し、堂々とした演技を見せた廣田。演技後は観客に丁寧に挨拶し、笑顔でリンクを後にした。単独ジャンプが2回転になってしまったミスが響き、得点は39・52点。キスアンドクライでは首をかしげるような仕草を見せるも、「その他のエレメンツをきちんとこなすことができた」と振り返ったように、充実した表情が見られた。



スピード感とキレのある演技を見せる廣田


 SPから中1日空け、フリースケーティング(FS)の演技を迎えた廣田は、黒に水色と赤の線が入った衣装で登場した。シニア本格参戦1年目のFSに選んだのは、憧れのプログラム『ロケットマン』。 壮大な雰囲気の音楽に合わせて滑り出し、ゆったりとジャンプエレメンツに入っていく。演技冒頭のフリップジャンプは回転が抜け2回転になったが、続く2本目の3回転フリップは、回転不足の判定ながらなんとか着氷した。曲にボーカルが入り、力強い曲調へと変化すると次は、本人も見どころと話すコレオシークエンス。有名なサビの旋律に合わせたイーグルやニースライドで会場を魅了した。その後の3回転サルコウは、直前の6分間練習では苦戦していたジャンプだったが、綺麗な着氷を見せた。 その後も、2回転ルッツと2回転アクセルのジャンプシークエンスや、3回転―2回転のコンビネーションジャンプでは会場を沸かせた廣田。ジャンプの失敗はあったものの、「改めて観客の方々の温かい拍手のありがたみを感じた」と、観客の手拍子に乗せ、終盤のステップシークエンスもスピードを落とさず滑り切る。最後は、客席に手を振って「ずっと出てみたかった大会」での演技を終えた。



FS『ロケットマン』を演じる廣田


(記事 吉本朱里、及川知世 写真 吉本朱里)

★新プログラム披露の小室、連戦の馬場 課題が残る演技に(選手権女子SP)


 13日に行われた選手権女子のSP。2番滑走で登場した小室は、コーチと言葉を交わし、呼吸を整えながらリンクへと向かった。プログラムは美しい女性ボーカル曲、『Reflection』。少し固い表情だった演技前とは一変、曲が始まると柔らかな表情で伸びやかなスケーティングを見せる。冒頭のコンビネーションジャンプは1本目の3回転でわずかに着氷が乱れてしまったが、2本目を成功させうまくまとめた。その後のジャンプでは、転倒はなかったもののジャンプの回転が抜けるミスが目立ってしまった。得点は32・46点。翌日のFSに進むことはできなかった。それでも一音一音に合ったステップをみせ、肩から指先まで繊細かつダイナミックに使った表現を印象付けた小室。主将として迎えたラストシーズンはまだ始まったばかりだ。ここからさらに磨きをかけ、「一つ一つの試合を想いを込めて」滑っていく。



体を大きく使った表現を見せる小室


 8月6、7日に行われた北九州オープンフィギュアスケート競技会(飯塚杯)からの連戦となった馬場。コーチと握手を交わし、少し笑顔を見せてリンクに登場した。昨シーズンから継続のピアノ曲『Within/Nero』に合わせて滑り出すと、冒頭の3回転ルッツで転倒。すぐに切り替え、続く3回転トーループ+2回転トーループのコンビネーションジャンプは曲調に合わせて流れるようにきれいに着氷した。しかし、演技後半の2回転アクセルはステップアウトし、回転不足になってしまう。ステップやスピンにも少しミスがあった。それでも、しなやかに滑り、起伏のあるピアノ曲を見事に表現。その世界観に引き込むような演技を見せた。キスアンドクライではコーチと言葉を交わし、演技を振り返る様子が見られた。SPの得点は33・76点で30位。FSに進むことはできなかった。連戦で多くの課題や収穫を得た馬場。次戦では今回得た課題を修正した演技が期待できるだろう。



滑らかなスケーティングで氷上を舞った馬場


 スピン、ステップの規定の変更などにより、調整の難しさはあっただろう。ジャンプの面でも、それぞれ課題が残るような演技内容だった。それでも、観客席から温かい拍手が響く会場で披露した演技は、フィギュアスケートという競技の魅力が存分に伝わるようなものだった。

(記事 濱嶋彩加、佐伯栞 写真 及川知世)

結果

▽選手権男子

廣田聖幸

SP 16位 39・52点

FS 14位 75・19点

総合 15位 114・71点


▽選手権女子

馬場はるあ

SP 30位 33・69点


小室笑凜

SP 35位 32・46点

コメント

※馬場選手は連戦のため、今回はインタビューを行っていません

小室笑凜(スポ4=東京・開智日本橋学園)

――今大会に出場した意図と目標を教えてください

 大会出場の目的としては、ブロックまでに場数として出場するための試合を増やしたいことと、ラストシーズン一つでも多くの場所で演技をしたいという思いがありました。目標は、自分が抱えている課題の改善を、練習と同じ程度再現したいと考えてました。また、新ルール改正に伴い変えてたスピンやステップのレベルを取りたいと思ってました。

――久しぶりの有観客試合でしたが、会場の雰囲気や緊張感などはいかがでしたか

 名前を呼ばれた際や演技後に聞こえる拍手がすごく新鮮に感じました。こんなに温かい拍手を感じて演技をできる競技なんだと感慨深かったです。

――SPの見どころや、気に入っているところがあれば教えてください

 まだ見どころとなる部分を確立できるほど完成していないと思います。ただ、ステップシークエンスは一番自分の表現をできる部分だと思うので、自分が思い描く表現をしきれるよう練習していきたいと思います。

――今回の演技を振り返っていかがですか

 観客の方が見ているという、いつもと違う緊張感の中、気持ちをコントロールできたとは思います。ただ、硬くなってしまい動きに鈍さが出ていた場面が多かったので、次回の試合に向けてコントロールできるよう改善していきたいと思います。

――順位、点数に関してはいかがですか

 数字の部分をみると全く良いとは思いません。厳しい結果になりましたが、しっかり受け止めて前向きに取り組んでいけるよう頑張ります。

――次戦が決まっていましたら教えてください

 次は再来週に開催される東京夏季フィギュアスケート選手権に出場予定です。

――今後に向けての意気込みをお願いします

 明確になった課題は山ほどあるので、しっかり優先順位をつけて東京選手権に焦点を合わせられるように調整していきたいと思います。ラストシーズン、シーズンインしたので一つ一つの試合を想いを込めて滑りたいです。

廣田聖幸(スポ2=千葉・東邦大東邦)

――今大会に出場した意図と目標を教えてください

 全国レベルの選手が集まる大会に出場して、自分のレベルや位置を知ることが出場した意図です。目標は、できることをやり切ることと、とにかく楽しむことでした。

――有観客の試合でしたが、会場の雰囲気や緊張感などいかがでしたか

 かなり久しぶりの有観客で、演技前や演技後の拍手がとても温かく、とても力になりました。点数も大事ではあるのですが、ずっと出てみたかった大会で雰囲気をとにかく楽しみたかったので緊張はなく、とてもワクワクしていました。

――SP、FSの、演技全体を振り返っていかがでしたか

 SPは最初の3回転サルコウをパンクしてしまったことが悔やまれますが、その他のエレメンツをきちんとこなすことができたこと、7月の大会よりもスピンのレベルが取れるようになっていたことが良かったと思います。FSは、所々ジャンプの失敗はありましたが、お客さんに楽しんでもらえる演技ができたかなと思います。

――FSの見どころやこだわりなどありましたら教えてください

 今シーズンは僕の憧れでもあるネイサン・チェン選手が北京五輪のフリーでも滑った『ロケットマン』で滑るのですが、演技中盤あたりの曲が少し盛り上がる部分のコレオシークエンスが見どころだと思っていて、曲もすごく好きな部分で自分が得意なものを詰め込んだ部分なので、注目してみていただきたいです。

――特にFSの後半では会場が沸きました。たくさんの観客の方々の前で演技をしていかがでしたか

 FSは後半がアップテンポになり、足首の怪我の影響もあり体力作りがあまりできなかったので体力的にとてもきつかったのですが、ジャンプがきちんと決まらなくても大きな拍手をいただき、とても力になり、諦めずに滑り切ることができました。久しぶりの有観客の試合だったので、改めて観客の方々の温かい拍手のありがたみを感じました。

――次戦が決まっていましたら教えてください

 次の試合は東京夏季大会を予定しています。

――今後に向けての意気込みをお願いします

 山本草太選手(中京大)や友野一希選手(上野芝スケートクラブ)の演技を生で見て、スケーティングや踊りの部分の凄さを生で感じることができ、お二人とも写真を撮っていただいたので、今後の練習をより頑張ろうと思えました。山本選手の伸びのあるスケーティングや友野選手のキレのある踊りを見習い、いいところを少しでも多く取り入れて自分の演技に活かせるように今後の練習も頑張りたいと思います。今シーズンの大事な試合が次はブロックになるので、そこまでに体力をつけて、ジャンプの構成を上げていきたいと思います。