6月4・5日に関東学生有志大会が新横浜で開催された。多くの大学生スケーターが集結した今大会には、早大フィギュア部門からも総勢10名が出場。大会1日目は5名が初・1級男子部門、3級女子部門、5級女子部門、5・6級男子部門で演技を披露した。
今大会トップバッターで登場したのはチェンドンシェン(文構3=シンガポール・マクファーソンセカンダリースクール)。今大会で試合出場は2回目。それを感じさせない堂々とした面持ちで最初のポーズを取った。
『春よ来い』のゆったりとした曲調に合わせて滑り出すと、冒頭のコンビネーションジャンプを着氷するが、その後のジャンプは乱れる。スピンも回転がほどけてしまうなど、納得のいく演技を見せることはできなかった。それでも、中盤に披露したレイバックイナバウアーでは関係者から拍手が送られた。結果は8・67点で2位。演技後は、温かい雰囲気の会場での演技に、「あまりできていないのに気持ちよく滑ることができた」と嬉しそうに語った。出来る限りたくさんの試合に出場し、今年中に3級を取得することを目標に掲げる今シーズン。今回苦戦したエレメンツの精度や表現力が伸びていくのが楽しみだ。
落ち着いた表情で演技を行うチェンドンシェン
女子3級部門に登場したのは中村華(人3=群馬・高崎女)。スピードを活かせる、明るい曲を滑りたいと選んだ新プログラムは『I got rhythm』。リンクサイドの部員たちと会話を交わし、リンクに飛び出した。
今年3月に3級を取得したばかりの中村。プログラムの準備がギリギリだったこともあり、「諦めないで最後まで滑り切る」ことを目標に演技に臨んだ。序盤はアクセルジャンプや2回転ジャンプなどを着氷。曲が盛り上がるにつれて、持ち前の明るい笑顔と軽快な振り付けで曲を表現した。ジャンプの回転がほどけたり、滑る向きを間違えてしまうなど細かいミスはあったものの、演技をまとめあげた。2回転ジャンプを1本降りるなど、準備不足の中でも「頑張った」と振り返った中村。初めての3級部門での試合を27・02点の9位で終えた。次戦の東日本学生選手権大会(東インカレ)に向けて、表現の面でもよりノリノリで滑れるように滑り込み、エレメンツを完璧にこなせるようにしたいと語った。
楽しげに舞う中村
続く滑走者は新副主将の土屋凜菜(国教4=東京・頌栄女学院)。「最後のシーズンなので、自分の好きな曲をやりたい」という思いで選んだプログラム、『ハレルヤ』を初披露した。曲の神秘的な雰囲気に合う淡いブルーのグラデーションの衣装を身にまとい、滑り出した。
2週間前に作ったばかりのプログラムを、まずは滑り切ることを目標に演技に臨んだ。冒頭のアクセルジャンプは余裕のある着氷。その後もコンビネーションジャンプなどを決める。中盤に単独ジャンプで転倒してしまうもすぐに立て直し、その他のエレメンツでは安定感を見せつける。後半、曲が盛り上がるにつれて体を大きく使った緩急のある滑りを見せ、ラストシーズン最後の演技を笑顔で終えた。結果は40・39点で全体1位。今後は2回転ルッツを構成に入れるなど、プログラムの難易度を上げることに挑戦するという。次戦に向け、ラストシーズンの『ハレルヤ』に磨きをかけていく。
笑顔でポーズを取る土屋
ラストシーズン最初の演技を迎えた正村は、新しいプログラム『Speechless』を披露。深いピンク色の衣装に、同じ色のリボンを髪に結び登場した。
冒頭のコンビネーションジャンプはこらえるかたちになり、中盤には転倒もあった。しかし、ミスをしても次のジャンプではきれいに着氷するなど、「一個失敗しても次に引きずらないようにする」という目標通り演技を進めた。後半にはコンビネーションやアクセルジャンプを美しく決め、最後は「重点的に練習していた」というステップ。長身の映える上半身を柔らかく使った振り付けで、以前から使いたいと思っていた、という曲に合わせて伸びやかな踊りを見せた。結果は40・83点で11位。ラストイヤーに向けては、「東インカレを突破するために、自分の課題を一つ一つ見つめてそれを達成していきたい」と意気込んだ。
曲の雰囲気に合う切なげな表情を見せる正村
大会が行われた新横浜のリンクをホームリンクとする岡島は、5・6級男子の1番滑走で登場。近頃はリンクが使えなかったり、バッジテストに向けた練習をメインに行なっていたりと、プログラムを通す練習が満足にできていなかったという岡島。調子も悪く、普段は2本組み込んでいる2回転アクセルを1本にして、プログラムを少しでもまとめあげようと挑んだ。
調子が悪い、という言葉通り、冒頭の2回転アクセルでは転倒。続く2回転の単独ジャンプも手をついてしまうなど、全体を通してジャンプに粗さが見られた。中盤の連続ジャンプは綺麗に決まり、冒頭の転倒以外は転倒無く、なんとかプログラムをまとめ切ったが、多くの選手が2回転アクセルや3回転を決め、ハイレベルな争いとなった5・6級男子では力及ばず結果は55・56点の5位。試合後は悔しさを滲ませたが、「試合で良いパフォーマンスができるように、他の人に追いつけるように、意識してやっていきたい」と前を向いた。
引き締まった表情で演技する岡島
今シーズンのプログラムが初披露されるなど、フレッシュな雰囲気で競技が行われた大会1日目。課題が残る演技も多くあり、それぞれが今後に向けての収穫を得た試合となった。伸びしろたっぷりの早大スケーターたちの今後に期待が高まる。
(記事 及川知世、吉本朱里 写真 大日結貴、吉本朱里)
結果
▽初級・1級男子
チェンドンシェン
2位 8・67点
▽3級女子
土屋凜菜
1位 40・39点
中村華
10位 27・02点
▽5級女子
正村瞭子
11位 40・83点
▽5・6級男子
岡島右京
5位 55・56点
コメント
▽初級・1級男子
チェンドンシェン(文構3=シンガポール・マクファーソンセカンダリースクール)
――今回は2回目の試合でしたが、今大会の目標を教えてください
今回の目標は、転ばずに滑りきることです。
――今回の演技を振り返っていかがですか
あまり良くなかったと思います。振り付けを最初忘れてしまったりして、ジャンプもあまりうまくできず、スピンも全然できていなかったので、本当に今回は全体的に良くなかったなと思います。
――レイバックイナバウアーを披露した際に会場からは拍手が送られましたが、そのような雰囲気の中での演技はいかがでしたか
あまりできていないのに、こんなに拍手してくれたので、感動しましたし、気持ちよく滑ることができました。
――今後への意気込みをお願いします
これからも出来る限りたくさんの試合に出場したいです。また、今年中にがんばって3級まで取りたいと思っています。
▽3級女子
土屋凜菜(国教4=東京・頌栄女学院)
――今回披露した新しいプログラムについて教えてください
最後のシーズンなので、自分の好きな曲やりたいな、というのはありました。かつ引退だからこそ誰もが知っている曲でやりたいなということで、ザ・引退曲みたいになってしまって恥ずかしいんですけど、先生と話した結果、『ハレルヤ』が一番良いのではないかということになりました。
――今大会の目標を教えてください
実はこのプログラムを作ったのが2週間前で、全然滑り切れてない状態だったため、最後まで滑りきるというのが目標でした。ラストシーズンの初試合ということで、自分なりに一つ一つの試合を大切にしたいという気持ちで、やれることをやりきった感じです。
――今回の演技を振り返っていかがですか
ジャンプとか失敗してしまったのですが、2週間しか練習していない割には気持ちよくできたというのがあるので、磨くところは磨いていきたいなと思います。
――最後に今後への意気込みをお願いします
同じジャンプの構成をやってきたので、2回転ルッツを試合に組み込んだり、もっと高度なことに挑戦していきたいと思います。
中村華(人3=群馬・高崎女)
――今回披露した新しいプログラムについて教えてください
『I got rhythm』というプログラムです。選んだ理由は、私があまり綺麗に表現力があるタイプではなくて、今までスピードという感じのタイプだったので、明るい曲を選びました。あと(同じプログラムを滑った)浅田真央さんとかも好きだったので、この曲を選びました。
――今大会の目標を教えてください
私は今まで2級のカテゴリーに出ていて、3級に受かったのが3月で、この試合がありますって言われたときにはまだ曲もなくて、そこから準備をしました。なので、今日はとりあえず諦めないで最後まで滑り切ることが目標でした。
――今回の演技を振り返っていかがですか
最初の方から反対向きで滑って、最後まで反対向きでやるっていうなんかすごく小学生みたいなやらかしを犯して(笑)。あとは、スピンとか多分ポジションの回転が足りなかったり、細かいところでたくさんマイナスがついていたと思うので、ちょっと微妙です。自分では満足できないのですが、2回転ジャンプを2本中1本は降りられたりとかはしたので、まあ1ヶ月にしては頑張ったかなと思います。
――今後への意気込みをお願いします
今回は、最初から方向を間違えたりとか、あとはスピンもそうですし、ジャンプも2回転トウループを失敗したりしちゃったのですが、そこをしっかり完璧にできるようにしたいです。あとは、表現力とか、全然ノリノリで滑れていないので、そこはもっと滑り込んで、次は多分東インカレになると思うので、通過して1位の凜菜ちゃん(土屋)と日本学生氷上競技選手権大会(インカレ)に行けるように頑張りたいと思います。
▽5級女子
正村瞭子(文構4=東京・早実)
――今回披露した新しいプログラムについて教えてください
プログラムは『Speechless』です。もともと大学1年生のときに映画アラジンを観て、この曲を使いたいなと思っていたのですが、結構周りの選手が一斉に使い始めちゃったので使っていなくて。最後のシーズンは自分の好きな曲で踊りたいなと思って選びました。あと、『Speechless』の歌詞の、強い女性のイメージが好きだったので選びました。
――衣装にこだわりなどはありますか
ジャスミンとかはお腹を見せるイメージなのですが、ちょっと上品で高貴なイメージにしたくて、肌はあまり見せないデザインにしました。
――今大会の目標を教えてください
練習通りの、演技をすることと、結構失敗を引きずってしまう癖があるので、1個失敗しても次に引きずらないようにするということを心がけていました。
――今回の演技を振り返っていかがですか
全体的にジャンプは回転不足を取られると思うのですが、きれいにまとまったなというのはあります。ジャンプとかスピンはケガもあってあまり練習できていなかったのでステップを重点的に練習していました。そこは練習通りにできたかなと思います。
――今後への意気込みをお願いします
まずはインカレに行くために東インカレを突破することが目標なので、とにかくケガをせずに、自分の課題を一つ一つ見つめて、それを達成していくことが目標です。
▽5・6級男子
岡島右京(商3=東京・早大学院)
――リリーカップ以来の試合だったと思いますが、今大会の目標を教えてください
5月1カ月間新横浜のリンクが閉まっていてクラブでの練習ができず、なかなか貸切の練習に乗れなくて、曲で通すということがここ1週間くらいでようやくできるようになった感じなので、正直この大会も出るか迷ったのですが、何かしら得るものがあればいいなと思って出場しました。
――今回の演技を振り返っていかがでしたか
すごく調子が悪くて、2回転アクセルも練習でも1回も決まらない日が多かったので、本当はいつもアクセルを2本入れているのですが、1本にして、演技全体をなんとかまとめられればなと思っていたのですが、疲れてしまったかなという感じです(笑)。練習不足だったなと感じています。
――今後への意気込みをお願いします
他の選手の演技も見ていたのですが、一人だけ置いて行かれているなというのがあるので、すごく今6級を取ることに注力して練習しているのですが、試合でも良いパフォーマンスができるようにとか、みんなに追いつけるようにとか、級のためだけにではなくて、試合で結果を出せるように意識してやっていきたいと思っています。