早大スケート部フィギュア部門の部員たちが一から作り上げるアイスショー、WASEDA ON ICE。2回目の開催となった今年は、コロナ禍で国をまたいだ移動が困難な中、海外拠点の選手も合流。部員全員で当日を迎えることができた。新型コロナウイルスの影響により無観客開催とはなったが、配信を見ている画面の向こう側の観客にも伝わる演技を披露。アイスショーならではのグループナンバーでは、直前に初めて部員が全員集まったとは思えないほど息ぴったりの滑りを見せた。製氷中には部員によるトークショーが行われるなど、開演から閉演まで、終始観客を楽しめる演出が施されていた。また、今シーズンで引退する4年生の2人にとっては現役最後の演技の場。ショーの最後には後輩からメッセージと花束が贈られ、感動的なシーンも見られた。
現役生演技第一グループ第一滑走は、中村華(人2=群馬・高崎女)。黒にピンクのラインが入った衣装を身にまとい、『江~姫たちの戦国~』のプログラムを滑らかに滑り始めると連続ジャンプを決める。その後のスピンから曲調が変わると音を捉え次々とジャンプを着氷し、最後は笑顔で声援に応えた。
2番目の演技、岡島右京(商2=東京・早大学院)は『ドラゴン桜』を披露。曲に合わせてキレのある振り付けで引き込んでいく。リンクを大きく使い、丁寧にエッジを刻みながら、曲の盛り上がりに合わせてステップに思いが込められていく。すべてのジャンプをクリーンに着氷させ、石塚玲雄主将(スポ4=東京・駒場学園)のSNSではMVPに選ばれるほどの好演技で会場を沸かせた。
続く、正村瞭子(文構3=東京・早実)の演技は『新・仁義なき戦い』。すらりと伸びる長い手足を生かした大きな振りと、やわらかいスピンを見せる。そのような滑りの中で曲の力強さをしっかりと表現し、来年度、最高学年として堂々と演技を終えた。
ピンクに黄色のグラデーションの衣装に身を包み登場したのは、原中優梨子(人通1=東京・四谷インターナショナルスクール)。プログラムは『美女と野獣』。細やかなエッジさばきを見せ、そのたびにキラキラと衣装のラメが光る。会場には手拍子が響き、最後のスピンまで丁寧に滑り切った。
続いて白い衣装に身を包みレースを揺らしながら登場したのは高浪歩未(国教3=ケイ・インターナショナルスクール東京)。『Unchained Melody』の音楽に合わせ、流れるような美しいスケーティングを見せ、スピンのポジションも正確にこなしていく。イーグルからのジャンプを着氷し、全身で音をキャッチしながら、一振り一振りに思いを込めて最後まで滑り切った。
小室笑凜(スポ3=東京・駒場学園)のプログラムは『Cirque Du Soleil』。曲が始まり、どんどんとスケーティングの速度があがっていくと、三回転を着氷させ、笑顔を見せる。演技中にベンチにいる部員とアイコンタクトを交わしアピールすると、楽しい雰囲気が会場を包む。回転の速いスピンで会場を沸かせ、最後まで勢いのあるスケートで盛り上げた。
木南沙良(人通1=東京・日大一)は『When There Was Me And You』を披露。2回転アクセルを着氷するとリンクを端まで大きく使い、ビールマンスピンで体のしなやかさを披露する。最後は手を広げ、まるで天使のようなふりで演技を終えた。
ベンチでグータッチを交わし、黒い衣装で登場したのはこのグループ最終滑走の西山真瑚(人通2=東京・日大目黒高)。『Anthem』の曲が始まると一気に空気が変わり会場をグッと引き込む。スピードのあるスケートを見せ、一つ一つの動きを丁寧にこなし、曲の雰囲気を捉えながら表情豊かに表現していく。美しいイナバウアーでリンクの中心を勢いよく滑ると最後のスピンまで心のこもった演技で第1グループのトリにふさわしいプログラムを披露した。
第二グループ一番滑走のチェン・ドンシェン(文構3=シンガポール・Nanyang Polytechnic)は、白い衣装で『春よ、来い』を披露。終始笑顔で、音に合わせて手足を大きく使ったメリハリのある演技を見せた。ジャンプにも果敢に挑戦し、後半のイナバウアーでは会場の関係者から大きな拍手が送られた。
土屋凜菜(国教3=東京・頌栄女学院)は、『Les Miserables』の曲に合わせて舞った。スピード感のある滑りと、曲調に合わせたしっとりとした表現で魅了した。安定感のあるスピンを見せ、笑顔のフィニッシュ。
土屋とハイタッチして登場したのは、千葉紫織(文構1=東京・筑波大附属)。曲は『The Mission』。よく伸びるスケートと高さのあるジャンプが印象的だった。軽やかなステップでは、会場の関係者から手拍子が起こり一年生らしいフレッシュな笑顔が弾けた。
西浦穂香(スポ2=東京・都立墨田川)は、お気に入りだという鮮やかなブルーの衣装で登場した。『ラプソディ・イン・ブルー』の木管楽器の音に合わせて滑りだすと美しい2回転アクセルを着氷。メリハリのある曲調を捉えた丁寧なステップで魅了した。
廣田聖幸(スポ1=東京・東邦大東邦)は、『Overtake』を披露。序盤の特徴的な腕の振り付け、スピードの落ちることのないステップで魅力を発揮した。上半身を大きく使いながらもしっかりと氷を捉えたスケーティングが印象的だった。
馬場はるあ(社2=東京・駒場学園)は、グラデーションの美しい衣装で『Within』に合わせて優雅に舞った。美しいレイバックスピンや丁寧なステップを見せる。優しさの中に力強さを感じるスケーティングと表現で、情感たっぷりに演じ切った。
川畑和愛(社2=東京・N高)は、淡い水色の衣装に身を包み『スパルタクス』を披露。序盤のダイナミックなバレエジャンプを見せると、持ち前のしなやかでよく伸びるスケートで魅了した。工夫した入り方のレイバックスピンでは、美しいビールマンポジションに拍手が起こった。
島田高志郎(人通2=岡山・就実)は『Godspeed』に合わせ、しっとりとした演技を披露。一音一音を繊細に捉えた丁寧な表現と、ダイナミックなジャンプで技術力の高さを見せる。ラストの高速スピンでは、会場の関係者を沸かせた。
現役生演技が終了した後に行われたのは、グループナンバー。ジャケットを羽織って登場した部員たちは、BTSの『Permission to Dance』に合わせて踊り出した。弾けるような笑顔で部員全員での演技を楽しむスケーターたち。滑る喜びと、仲の良さが伝わってくるようなパフォーマンスだった。最後は4、5人ずつ列になり、カメラに向かって手を振りながらリンクを後にした。
グループナンバーを披露する部員たち
製氷を挟み、次に行われたのはガールズナンバー。会場にはYOASOBIの『群青』が流れ、おそろいの白いシャツに色とりどりのスカートを身につけた女子部員たちが軽やかに現れた。後半、曲が盛り上がるところではスケーターが一列に並び、端から二人ずつダンスを披露。最後は川畑を囲むかたちで円になり、満面の笑みでパフォーマンスを終えた。
川畑を中心に円になり、ポーズを決める女子部員たち
ボーイズナンバーの曲は、ブルーノ・マーズの『Just the Way You Are』。ジャケットやワイシャツなどの衣装で男子部員たちが登場した。序盤、島田のソロ演技では氷上に寝転がるパフォーマンスを見せ、関係者が集まる会場内が朗らかな雰囲気に。その後西山、石塚に続き男子部員が氷上に並ぶと、スペシャルゲストとして永井優香(令3社卒)が登場。一人一人から花を渡された永井とともに、息のあったダンスを披露した。
男子部員たちから花を受け取る永井
そしていよいよ引退生、副主将の佐々木風珠(政経4=東京・早実)と主将、石塚玲雄が登場。2人でグータッチをしてから氷上に立ち、時折リンクサイドに集まった部員たちと会話をしながら最後の6分間練習を行った。
最後のグループ、一番滑走は佐々木。純白の衣装に身を包み、『Forever Aint Enough』に合わせて滑り出した。冒頭の2回転アクセルやコンビネーションジャンプを着氷すると、丁寧な滑りでしっとりとした洋楽を表現。体を大きく使った振付や、伸びやかなスケーティング、安定感のあるスパイラルなどを披露し、会場からは大きな拍手が送られた。会場にいる関係者だけではなく、画面の向こう側の観客にも丁寧で美しい、感情のこもった滑りを届けた佐々木。演技を終えると、現役最後の演技を噛み締めるような表情を見せながら挨拶をし、カメラに向かって手でハートを作るなどして感謝を表した。
『Forever Aint Enough』に合わせて演技をする佐々木
佐々木の演技を讃え、次に部員たちに送り出されたのは主将の石塚。小道具の傘を持って登場した。今回の演目は、昨年末行われた全日本選手権で「スケート人生最高の演技」を披露したときのプログラム、『雨に唄えば』。石塚は、観客を煽る仕草を見せながら見ている人を曲の世界に引き込んだ。傘を開いた状態でのスピンを披露するなど、アイスショーならではのパフォーマンスも。氷上のエンターテイナーは、充足感に満ちた表情を見せ、ガッツポーズで演技を終えた。鳴り止まない拍手の中、観客に挨拶をし、リンクを去った石塚。すると、今度は黒いジャケットと帽子を手に戻ってきた。アンコールの曲は『Mr.S』。先ほどとは打って変わったクールでワイルドな表現でさらに会場を沸かせる。2連続での演技だとは思えないほどのエネルギッシュでハードなパフォーマンスをやり切った。最後は会場内の関係者や画面の向こうの観客に感謝を伝え、現役最後の演技を終えた。
『雨に唄えば』を披露する石塚
昨年度からパワーアップしたWASEDA ON ICE 2022。部員たちからも「とにかく楽しかった」という声が多く、終始充実した表情を浮かべていたのが印象的だった。引退生の思いを受け継いだ後輩たちが作り上げていく来年以降のWASEDA ON ICEにも期待が高まる。
(記事 岡すなを、中島美穂、吉本朱里、写真 及川知世、田島璃子)
コメント
(※コメントは引退生のみ掲載)
石塚玲雄(スポ4=東京・駒場学園)
――最後のWASEDA ON ICEを終えていかがですか
とにかく楽しかったです!みんな1月ごろから準備してきたので、全員の集結したパワーがすごかったです。そして、みんなのおかげですごく高いクオリティーでアイスショーをできたのではないかなと思います!また、こんなに幸せなショーで笑顔で送り出してもらえるなんて、僕はとんでもなく幸せ者です。
――初めて部員全員が集まった中で、仲間達と滑ったショーはいかがでしたか
18人全員が現地で揃ったことがとにかく嬉しくて!感動しました。みんな笑顔で、僕も笑顔で、ずっと笑顔でした。グループ演技も本当に楽しくて、みんなに感謝だし、早稲田最高だなぁと改めて思いました。レベルとか関係なく部員全員が同じ立場で同じ空間を一緒に楽しむことができるのが早稲田の最高なところです。
――スケート部での4年間振り返っていかがですか
大学入学後に初めて3回転ループを跳べるようになりましたし、その後も今に至るまで自己ベストを更新してくることができました。全日本選手権に4回出場したのも全て大学生です。それだけ、大学入学後に成長できたと思っています。また、早稲田大学に入学できたことで『早稲田で活躍するぞー!』という気合が最初から物凄かったです。早稲田に入れて幸せでしたし、全てが最高でした。監督に恵まれ、先輩にも同期にも後輩にも恵まれて、この4年間、もうこれ以上の幸せはありません。
――早稲田のスケート部フィギュア部門に入部してよかったと思えることはなんですか
いろいろなキャリアを持った選手と身近に話すことができるので、レベルとかは一切関係なく1人の部員としてみんなと接することができるところがよかったと思います。しかもみんなめちゃくちゃ優しいですし、お互いを尊敬し合っています。部にいるだけで温かさを感じることができるので入部してよかったと思いました。今はスポーツ推薦の方式が他の大学よりも厳しかったりしますが、今後更によくなって早稲田を希望してくれる人が入りやすくなることを期待しています。そして、ぜひみんな早稲田に入ってこの『部活の楽しさ』を体験してほしいです!
佐々木風珠(政経4=東京・早実)
――最後のWASEDA ON ICEを終えていかがですか
1番はすごく楽しかったという言葉があります。4年間早稲田のフィギュア部門として活動してきて、本当に良かったなと思いながら最後は滑っていましたし、みんなの演技を見て、(会場に)お客さんはいなかったのですが、配信を見ている方に伝えたい、という思いが伝わる演技をみんなしていて、楽しそうに滑っていたので、私もこのイベントの開催に向けて努力した甲斐があったなと思います。
――スケート部での4年間振り返っていかがですか
私自身はすごく結果を残せる選手では無かったので、早稲田のみんなには申し訳ないなという気持ちも大きかったのですが、その中でも私の演技が好きだと言ってくださっている方がいたり、私自身小さい頃は練習に行くのが本当に嫌で、友達と遊びたいというのが大きかったのでいやいや行っていたこともあったのですが、大学生になってからは本当に上手くなりたいとか、子供の頃よりももっと自分のことを考えて、自分がやりたい演技を、という風に考えて、練習を重ねることができたので、すごく意味のある4年間だったかなと思います。
――これから後輩にはどういったことを期待しますか
私たちも先輩たちからバトンを引き継いで今回WASEDA ON ICE第2回を開催させていただいたので、来年はもっと豪華に、もっと多くの人に届くようなイベントにしていって欲しいなと思います。部活動としては、去年から部練を月に1回は必ずやるように決めていて、結構部員も増えてきたのですが、参加率も最後の方には高くなって行ったので、来年度以降もそれを続けていくということを意識して頑張って行って欲しいなと思います。