1月24日から開催された国民体育大会冬季大会(国体)のフィギュアスケート競技。早大からは、成年男子部門に石塚玲雄フィギュア部門主将(スポ4=東京・駒場学園)と廣田聖幸(スポ1=千葉・東邦大東邦)、成年女子部門に小室笑凜(スポ3=東京・開智日本橋学園)が出場。それぞれの都道府県チームに貢献する活躍を見せた。
★石塚が現役最後の公式戦での演技、東京代表として5位入賞(成年男子)
この国体が現役最後の公式戦となる石塚玲雄(スポ4=東京・駒場学園)は東京都代表として出場。同じく東京都代表の鈴木楽人(法大)と共に戦い、5位入賞を果たした。
「自分の演技で、見てくださっている方に楽しんでいただくのはもちろんのこと、楽人と共に入賞すること」を目標として臨んだ最後の国体。前半のショートプログラム(SP)は、自身の振り付けによる『The Beatles Concerts』。東京都代表の選手たちのエールで送り出される。
冒頭の3回転フリップ-3回転トーループの連続ジャンプ、そして2回転アクセルをダイナミックに決めた。後半のジャンプでミスがありつつも、スピンでは抜群の安定感を発揮した。羽ばたくようなこだわりの振り付けを随所に散りばめたステップシークエンスでは鮮やかに美しく舞う。SPの点数は58・82で、全体の8番目の点数で折り返した。
後半のフリースケーティング(FS)は、「明るい雰囲気や、スケートが楽しいという気持ちを受け取ってもらえれば」という思いで滑り続けてきた『雨に唄えば』。ジャンプ要素では冒頭の連続ジャンプ、2回転アクセルを着氷。さらに、今シーズン苦戦していた3回転ループをしっかりと決めてプラスの出来栄え点を獲得した。演技後半、2回転アクセル-3回転トーループを予定していたが、単発の1回転アクセルになってしまう。しかし、「どこでもセカンド3Tをつけれる練習をしていた」と冷静な判断で直後の3回転フリップに3回転トーループをつけるリカバリーに挑戦。転倒したものの、日頃の入念な練習の成果が伺えた。
ステップシークエンスでは、持ち前の高いスケーティング技術を生かし、メロディーの緩急に合わせてエッジを切り替えながら楽しげに滑っていく。無観客ではありながら、画面越しに応援するたくさんのファンの手拍子が聞こえてくるような明るいプログラムを、美しいコンビネーションスピンで締め括った。演技後はやや悔しそうな表情を見せたものの、笑顔で四方に丁寧に挨拶をしてリンクを去った。最後のFSの得点は、全体の8番目の113・48。鈴木の結果と合わせて、東京都としては5位入賞という成績を納めた。
今大会はSP、FSを通して、得意の磨き上げてきたスピンでは実施した要素の全てがレベル4の判定。毎日の練習での積み重ねが認められた結果だろう。演技後、「回転速度はもう少し速く回りたい」とさらなる高みを見据えつつも「回転数に関してはしっかり回ることを心がけていた」と手応えを感じていた。
都道府県ごとに競う今大会は、個人競技であるフィギュアスケートには珍しい形態だ。同じ東京都代表の選手たちのリンクサイドでの応援や、演技後の拍手による出迎えが力になる。「チーム東京の仲間と沢山話ができたり僕自身も皆んなの応援ができたので最高でした」と、チーム戦ならではの楽しみも存分に味わい尽くす最後の公式戦となった。
今シーズン最初の試合後のインタビューで、「普段から皆の手本になりたいと思って練習しています」と話していた石塚。その姿勢を背中で見せるべくシーズン序盤から多くの試合に出場してプログラムを磨き、進化を遂げてきた。4年間の最大の目標であった全日本選手権でのFS進出も果たし、ラストシーズンにてSP、FSともにパーソナルベストを更新し、ラストイヤーにふさわしい充実したシーズンとなった。今後は、WASEDA ON ICEを含めたいくつかのエキシビションを控える。フィギュア部門を引退するその瞬間まで、見届けたい。
賞状を持つ石塚(左から2番目)
(記事 中島美穂、写真 本人提供)
★廣田がシニアデビュー戦で充実の演技(成年男子)
廣田聖幸(スポ1=千葉・東邦大東邦)は、千葉県代表として25日にSP、26日にFSを滑った。直前に7級に合格し、7級としては最初の試合となったが、個人ではSPで19位、自己ベストを更新したFSでは17位を記録し、合計18位で幕を閉じた。都道府県別では同じ千葉県代表であった佐藤由基選手(日大)の11位と合算し、10位となった。初めての成年男子としての出場であったが、「シニアデビュー戦にしては上出来だった」と自信を見せた。
最終滑走を引き当てた初日のSP、プログラムは手の大きな動きが特徴的な『Overtake』。滑走前にはコーチや同じ千葉県代表のメンバーとうなずき合いリンクへ向かった。左胸を叩いて気合を入れると、顔を覆うポーズとともにスタートポジションへ。序盤からジャンプを成功させると、その後の曲調の変化とともにゆったりとした滑りを見せる。足換えコンビネーションスピンでレベル4の評価を得ると、続く軽快なステップでは「ステップの転倒がなければ、もう少し点が出た」と悔しい転倒。しかし、その後は低音の激しい音楽とともに落ち着いた滑りを見せた。最後には、左半身が黒、右半身が白と、左右で色が異なる衣装がかわるがわる姿を変え、美しいスピンを見せた。「ジャンプはうまくいったほうなのですが、スピンでのレベルの取りこぼしやステップで転んでしまった」と振り返ったように、伸びしろの期待できる滑りで2日目に進んだ。
「ショート通過してフリーを滑ることが目標」と迎えた2日目、ノービス時代のプログラムを延ばしたという、今シーズンでは初披露のプログラムで挑んだ。軽快な音楽に合わせたステップから滑り出すと、「加点がもらえるほど綺麗に飛べたことはとてもうれしかった」と3本のジャンプを決める。曲調が激しさを増す中で飛んだジャンプは、惜しくも回転が足りず着氷。そこから一気に転調し、しっとりとした静寂が訪れると、レベル3のスピン、コンビネーションジャンプを次々に成功させる。終盤にかけてはテンポの速い音楽に合わせて、細かいステップを見せると、最後は振り向きながらポーズを決めフィニッシュ。自己ベストを更新する滑りを見せた。キスアンドクライの場面では、同じコーチの下で一緒に練習をしているという成年男子の佐藤選手、少年女子の三枝選手とともに笑顔で写真を撮るなど、和気あいあいとした様子もうかがえた。現時点で2位というスコアが発表されるとコーチからは「惜しかった」と一言。大きな拍手とともにリンクを去った。
インカレで5、6級のカテゴリーで個人優勝、総合優勝を遂げ、目標としていた7級を取ることも果たした今シーズン。「充実したシーズン」と振り返ったが、今大会を終えてPCSの低さを課題として挙げた。来シーズンに向けて、PCSを上げるとともに、3+3のコンビジャンプの習得や3回転アクセルへの挑戦を意気込んだ。「来年のインカレでは7級のカテゴリーで島田先輩(島田高志郎、人通2=岡山・就実)と西山先輩(西山真瑚、人通2=東京・目黒日大)と出場できたらいいなと思っています!」と気合は十分だ。廣田のこれからの躍進にも期待がかかる。
(記事 宮島真白)
★小室、地元開催の国体は収穫の多い試合に(成年女子)
栃木代表の小室笑凜(スポ3=東京・開智日本橋学園)のSPは昨シーズンまで使用していたプログラムである『O』。指先までしなやかに伸びる動きが閑雅なピアノの音色にマッチし、曲の持つ独特な雰囲気を加速させていく。冒頭の3回転トーループ+2回転トーループから続く3回転サルコウ、スピンを挟んで2回転アクセルまで、回転不足は取られたものの全てのジャンプで転倒は無かった。決めた瞬間は、悔しい試合が続いた中でも練習を重ねてきた成果が実ったことを感じ、グッときたという。その思いをぶつけたかのような渾身のステップで荘厳な世界観を作りきり、最後は笑顔のガッツポーズ。「大学に入ってから今までで1番だった」と振り返る理想的な演技で、目標のFS進出を決めた。
翌日のFSは、前半のエネルギッシュで壮大な雰囲気から、後半には繊細で柔らかな佇まいへと切り替わる構成が印象的で、小室の表現力が光った。ジャンプ面では全体的に乱れが目立ち、結果は23位。「結果的にはよくなかった」内容となったものの、練習不足を要因に挙げるなど改善策は明確になった。
地元である栃木県開催の国体。良い演技をしたいという強い思いを持って臨み、「応援の力を近くで感じることができた」と振り返る。今シーズンは緊張やプレッシャーから本番で苦戦を強いられてきたが、今大会を通してメンタル面との向き合い方に手応えを掴んだ小室。今後も試行錯誤を重ねながら成長を続け、残りわずかとなるシーズンを良い形で締めたい。
(記事 中村凜々子)
※掲載が遅くなり、申し訳ありません
結果
▽成年男子
石塚玲雄(東京都)
SP 8位 58・82点
FS 8位 113・48点
総合 8位 172・30点
廣田聖幸(千葉県)
SP 19位 41・04点
FS 17位 83・93点
総合 18位 124・97点
▽成年女子
小室笑凜(栃木県)
SP 18位 41・30点
FS 23位 63・22点
総合 23位 105・31点
コメント
▽成年男子
石塚玲雄(スポ4=東京・駒場学園)
――最後の公式戦を終えた感想を教えてください
あまり最後という感じで試合に出ていなくて(笑)。しっかり『国体』として、活躍したくて試合に出ていました。そのため、5位入賞という形で少しでも東京都の力になれたのが良かったなと思っています。
――今回の大会はどういったことを目標に臨みましたか
自分の演技で見て下さっている方に楽しんで頂くのはもちろんのこと、楽人(鈴木、法大)と共に入賞することを目標にしていました。
――その目標は達成できましたか
がくとと一緒に入賞できました。がくとも伸び伸びとFSで良い演技をしてくれたので嬉しかったし、達成もできました。
――FSの後は少し悔しそうにも見えたのですが、演技内容振り返ってどのように感じますか
悔しかったのは2A +3Tですね。1Aになってしまったので。でも、どこでもセカンド3Tをつけられる練習をしていたので、リカバリーで3F+3Tを跳びに行くことができました。
――SP、FS通してスピンは全てレベル4でしたがそのあたりいかがでしたか
SP、FS通してというのはとても嬉しいです。回転速度はもう少し速く回りたいですね。でも、回転数に関してはしっかり回ることを心がけていたので、それがオールレベル4という形で評価して頂けたと思います。
――東京都代表として出場されましたが、仲間の健闘や応援は力になりましたか
めちゃくちゃ力になりました。応援してもらえたのはもちろんですが、チーム東京の仲間と沢山話ができたり、僕自身もみんなの応援ができたので最高でした。
――公式戦は最後だとおっしゃっていましたが、この後の出演のご予定を教えてください
まずはバレンタインカップのエキシビション。その後は、大トリがWASEDA ON ICEですが、その前にもう1つ出させて頂けるかもしれません。
廣田聖幸(スポ1=千葉・東邦大東邦)
――今大会はどのようなことを目標に臨みましたか
まずは、SPを通過してFSを滑ることが目標で、良ければ県として入賞できればいいなと思っていました。
――今回のSP・、FSそれぞれ振り返っていかがですか
ショートはフリップを綺麗ではなかったもののきちんとクリーンで降りられたことを含め、ジャンプはうまくいったほうなのですが、スピンでのレベルの取りこぼしやステップで転んでしまったりと、もう少し点が出せるところでのミスがあったのでそこは悔しいです。フリーは最初の3本のジャンプを加点がもらえるほど綺麗に飛べたことはとてもうれしかったですが、アクセルと最後の3Tをパンクしてしまったことが悔やまれました。
あとは、どちらもPCSが低かったので、そこは強化すべき点なのかなと思いました。
――点数はどう捉えていますか
ショートはステップの転倒がなければ、もう少し点が出たのかなと思います。
フリーはかなり前に作ったものを伸ばしただけなので、ジャンプを入れられた割にはあまり出なかったかなと思います。やはりPCSの低さがどちらも目立ちました。
――FSのプログラムを新しくした意図があれば教えてください
もともと4分のプログラムは別で既にテストを受けるために作ってあって、ノービス時代に使っていたものを延ばしたものです。
――成年男子のカテゴリーでは初、大学生になってから初の国体でした。大会全体を振り返って感想としてはいかがですか
国体の直前に7級に合格して、7級としての初めての試合でしたが、やはり他の選手に比べて自分のレベルがまだまだ低いことを実感しました。でも、シニアデビュー戦にしては上出来だったのかなと思います。
――千葉県代表として出場されましたが、仲間の健闘や応援は力になりましたか
とても力になりました。リンクサイドにいてくれた同じ成年男子の佐藤由基くんと少年女子の三枝知香子さんは同じコーチのもとで一緒に練習しているので、フリーの前は緊張をほぐしてくれました。自分の実力はまだまだですが、入賞を狙える位置にはいたので、足を引っ張らないよう頑張ろうと思えました!
――今シーズンの大きな公式戦としては最後だったのでしょうか。大学1年目のシーズン全体的に振り返っていかがですか
そうですね、大きな試合としては今シーズン最後でした。最後のジュニアシーズンが東京ブロックであっという間に終わってしまって少し悔しかったですが、全力を出せたと思っていたので次に向けてすぐに切り替えることができました。インカレで5、6級のカテゴリーで個人と総合で優勝できましたし、7級も取れたので、とても充実したシーズンでした。
――今後に向けての意気込みをお願いします
まずはPCSを上げること、来年以降シニアで戦っていくためにスピンとステップのレベルをきちんと取ること、そして3+3のコンビジャンプの習得、さらには3Aに挑戦していきたいです。来年のインカレでは7級のカテゴリーで島田先輩と西山先輩と出場できたらいいなと思っています!
▽成年女子
小室笑凜(スポ3=東京・開智日本橋学園)
――地元開催の国体でした。特別な思いはありましたか
地元開催のためやはり良い演技をしたいという想いが強くありました。過去2回の出場よりも、応援の力を近くで感じる事ができました。
――今回の大会にはどういった目標で臨まれましたか
フリーに進出することと、今できる技術をベストな状態で出し切ることを目標にしていました。
――SPについてからお聞きします。演技後にガッツポーズもありましたが、演技を振り返ってみて、いかがですか
大学に入ってから今まで一番の演技だったと思います。今シーズンは試合で思うような演技ができず苦しい時期が続いていましたが、国体前にSPの曲を昨シーズンのものに戻し、ほぼ理想に近い演技ができて本当に嬉しかったです。
――キス&クライでステップの時泣きそうだった、というお話が聞こえたのですが、演技中はどのような感情だったのでしょうか
ジャンプを全て成功させ、最後ステップにいく前にグッときてしまいました。今シーズンは試合で悔しい思いばかりしていましたが、どんなに苦しい結果が続いても、日々練習を重ねてきた事が実り嬉しさがこみ上げました。
――今シーズン使っていたプログラムではなく、以前のものに戻した意図を教えてください
昨年まで使用していたプログラムの方が評価が高かったからです。また、自分の中でも自信をもって挑めるプログラムだったので、都民大会のフリーが終わった日にコーチと話して変えました。
――SPを終えてからFSを迎えるまでの心情面での変化はいかがでしたか、緊張などはありましたか
もちろん緊張もありましたが、楽しむだけだと思い気持ちの持っていき方はよかったと思います。
――FSの演技内容を振り返っていかがですか
FSに関しては、自分の練習不足でジャンプはほとんど成功していないので結果的にはよくなかったと思います。ただ、失敗の仕方が抜けてしまうような感じではなく、締めきって失敗したので、そこはまだよかったのかなと感じています。
――都民大会からサルコウに苦戦しているように見られたのですが、そのあたりの調子はどうでしたか
練習での確率は良かったのですが、試合になると飛べない現象が発生していました(笑)。そこで、どのくらいの感覚や力で飛べばうまく入るのか、どのくらい意識をするべきなのか試行錯誤して、調整していました。
――今シーズンはなかなか本番でジャンプがはまらず、上手くいかない試合が多かったという話を以前伺いました。今大会のSPでは少しそういった状態からの脱却の兆しが見えたのかな、と感じたのですが、大会までの調子や大会全体振り返ってどう感じていますか
今回の試合でプレッシャーや緊張に対応しながら自分の演技をする力が成長したと感じました。元々、色々掘り下げて考える癖があり、試合では練習以上にジャンプを意識をしてしまって失敗していたのですが、今回はあえて自分の感覚中心でほとんど考えないで飛んだらハマりました。今後も、自分の調子に合わせて試合での気持ちの持ち方を試行錯誤していきたいと思います。
――次に出場予定の試合とそれに向けての意気込みをお願いします
次の出場予定の試合はまだ開催は未定なのですが、3月の栃木県大会に出場するかもしれないです。また、試合ではないですが、決まっているのはWASEDA ON ICEです!残りの試合もカウントダウンに入ってきているので、試合もアイスショーも楽しみながら、日々成長した姿をお見せ出来るよう頑張ります!