熱戦が繰り広げられている全日本選手権。競技2日目、アイスダンスのリズムダンス後に行われた男子フリースケーティング(FS)に早大からは昨日のショートプログラム(SP)で9位の島田高志郎(人通1=岡山・就実)が登場。初披露のプログラムでミスはあったものの、観客を引き込む好演技でSPから順位を一つあげて最終順位は8位となった。
リンクを大きく使いながら滑る島田
6分間練習では、ジャンプの入り方を入念に確認。同グループの選手が次々と高難度な技を決め拍手が起こる中で、島田も3連続ジャンプを着氷するなど調子の良さがうかがえた。 ステファン・ランビエールコーチとグータッチを交わして、リングサイドを離れ、名前がコールされると真剣な眼差しで中央に向かう。SP後のインタビューで120、150パーセント自分を信じられるようにと意気込んでいたFSのプログラムは『パガニーニの主題による狂詩曲』。曲が始まると、顔つきがきりっと変わった。深い青の生地の上にお腹から肩にかけて連なるスパンコールがキラキラとリンクの上で輝く。冒頭の4回転サルコーでは入り方、空中姿勢はよかったもののクオーター着氷になってしまった。続く4回転トーループは勢いよく飛び上がったが着氷の足がぶれてしまい転倒。しかし、直後の3回転ループを綺麗に決め、立て直した。その後の3回転アクセルは着氷が少し乱れたが力を入れ踏ん張った。鋭く胸を突くパガニーニの旋律に合わせて長い手足を存分に生かした大きな振りを見せ、ステップシークエンスでは、表情を細やかに変化させながら島田の世界観を作り出していく。そこから流れるように入ったフライングシットスピンはレベル4。そして演技は得点が1.1倍になる演技後半へ。ボーカルと楽器が奏でるハーモニーが重なり深みが増していく中で3回転アクセル-オイラー-2回転サルコーの3連続ジャンプを最初のジャンプがクオーター着氷になってしまったが成功。さらに音楽に合わせて3回転ルッツ-3回転トーループの連続ジャンプも着氷した。最後のジャンプ、3回転フリップでは踏み切りが甘くなったものの、2回転トーループをつけてうまくまとめた。フライング足替えコンビネーションスピン、そしてチェンジブットコンビネーションスピンでは最後の力を振り絞って力強く回りともにレベル4を獲得。左手を伸ばす最後のポーズを決め演技を終えると目を閉じてくるりと回り笑みを浮かべた。そんな島田に会場から大きな拍手が送られる。リンクサイドに戻るとステファンコーチと今日の演技を噛み締めるように強くハグを交わした。得点は、149.06点。2本目の4回転ジャンプで転倒があったものの、冒頭の4回転サルコーを含むそれ以外のジャンプは無事着氷。「自分がポジティブな気持ちで終えられるいいフリーだったなと思います。」と試合後語った。
コロナウイルスの影響で例年とは全く違う状況の中開催された全日本選手権。「自分のこれから生きていく糧に絶対になるぞ、という本当にポジティブな気持ちしか、演技前には出てこなかった」と語りそのような思いで挑んだ演技は、ミスがあったものの、スイスでの練習で積み重ねてきたこと、そしてスケートに対する強い気持ちが表れているものであった。この全日本での経験を糧に次の舞台ではどのようなスケートを見せてくれるだろうか。島田のさらなる成長に今後も目が離せない。
(記事 岡すなを、写真 アフロ/JSF)
結果
▽全日本選手権男子FS
島田高志郎 8位 220.94点(FS 149.06点)
コメント
島田高志郎(人通1=岡山・就実)※Zoomでの囲み取材より抜粋
――まずは全日本、ショート、フリーを滑り終わっての率直な感想をお願いします
もちろん、自分の目標としていた点数というものには本当に程遠い結果にはなってしまったのですが、でも、ここ2シーズン、フリーでいい思いができていなかったので、やっと自分がポジティブな気持ちで終えられるいいフリーだったなと思います。
――きょうのフリーのどこに充実感や手応えを感じたのか、詳しく教えてください
手応えを感じていたのは、もうすでに自分が滑る前からですね。うまく自分のゾーンに入れていたというか、自分ができるイメージというものを本当にうまく頭の中で繰り返すことができていたので、それがすごく今後の試合に役立つ重要なキーとなった感覚でしたね。
――どういうふうに自分をゾーンに持っていくかという具体的な手法というのはあるのですか
そうですね、ちょっと振り返ってみないとわからないんですけど(笑)でも、その充実感だったりとか、気持ちの入れ方というものは昨日のショートプログラムが終わった時点でうまくできていたのかな、というふうに思っているので、それを今後さらに上に上っていくために極めていきたいな、というふうに思います。
――今後の大会というのは不透明な状況ですが、今後どういうところを課題として磨いていきたいというのはありますか
試合でやっとうまく気持ちを持っていけたのはいいのですが、やはりまだ技術面、ジャンプ、4回転(ジャンプ)の安定性だったりとか、その他のスピン、ステップでのスピード感だったりとか、そういったものがいつもの自分の半分くらいしか出せなかったなというふうに、きょうは。きょうは気持ちよく滑れていただけだったので、そういった技術面だったりとか、アスリートとしての部分はまだまだこれからきっちり練習していかないといけないなというふうに思います。
――4回転ジャンプが入りましたが、そのことに関して、ご自分で何がよかったのか、またステファンコーチから何かお話があったのかを教えてください。
最初の4回転サルコーに関しても、2回目の転倒してしまったトーループに関しても、6分間練習ではすごくいいものが決まっていたので、そのところはきのう(SP後のインタビューで)言っていたように120%、150%(自分を)信じることができたのですが、転倒してしまったトーループは、練習で100%降りていられたらミスをしないだろうなというトーループの上がり方だったので、そこは練習からもっとああいったミスに対してというか、ああいった浮き方に対して調整する練習が必要なのかなと思います。ステファンコーチは演技後涙してくださっていて、驚きもしたのですが、色々な思いを伝えてくれました。その内容については、ちょっと内緒でお願いします(笑)
――試合の数が少ない状況というのはまだまだ続くと思いますが、この10ヵ月間、試合があまりない中でどうやってコンディションを上げていったかということについては、どのように考えていますか
本当にこの全日本選手権というのはすごく難しくて、僕にとっての(今シーズン)ほぼ最初の試合で集大成の演技をしないといけない、というすごく矛盾した感じなのですが、それでもやはりこの大会をどれだけ楽しみに、どれだけ心待ちにしていたかというのも、フリーの最初の自分のポーズに立つまでずっと実感できていたというか、(リンクに立ったとき)視野がすごく広がっていて、見てくださっている方々一人一人の顔が、目にくっきり見えるくらい、それくらいすごくオープンな気持ちで臨めましたし、やはり試合を心待ちにする、(この試合が)自分のこれから生きていく糧に絶対になるぞ、という本当にポジティブな気持ちしか、演技前には出てこなかったので。それが今、こうして気持ちよく終えられている原因かなというふうに思います。