全日本選手権への出場が決まる大一番。競技2日目の女子フリースケーティング(FS)では、昨日のショートプログラム(SP)で4位の川畑和愛(社1=沖縄・N高)、11位の永井優香(社4=東京・駒場学園)、男子SPで6位の石塚玲雄(スポ3=東京・駒場学園)が登場した。無観客で行われている今大会。今までとは違う緊張感の中、FSでの演技が終わり、すでにシード権で全日本出場が決定している川畑は5位、永井は6位、石塚が8位で来月開催される全日本選手権に駒を進める。
東日本選手権での最後の演技
永井にとって東日本選手権での最後の演技。FSは『エデンの東』。曲が始まると、エッジが綺麗な円を描く。最初のジャンプ、3回転を予定していたが1回転ルッツになってしまった。しかし、続く2回転アクセル-3回転トーループを美しく決めると、その後の3回転サルコーでも安定感のあるジャンプを見せ、最初のミスから立て直した。あとのレイバックスピン、フライング足替えのコンビネーションスピンでもレベル4を獲得。そして、曲調が変わり、しっとりとした音に合わせて、永井の優しいスケーティングが会場を包み込んでいく。後半一本目の3回転ルッツを決めると、少し安心したというような表情が垣間見え、続く、3回転ループも難なく決めた。手の動かし方、体の使い方で柔らかさを表現し、音楽と合わさってとても心地が良い。最後の2回転アクセル-2回転トーループでは2本目で少しまわり過ぎてしまった印象があったものの踏ん張りよくまとめた。すべてのジャンプを終え、曲が一番の盛り上がりに達すると、その音を捉えて、力強く、かつ繊細な心のこもった滑りを見せる。そして最後のスピンでもレベル4を獲得し、手を前後に大きく広げ、演技が終了した。笑顔は見えなかったものの、昨日の悔しそうな表情とは違った様子を伺えた。FSだけの点数は106.33点で順位は5位。最終結果は5つ順位を上げて154.20点で6位。永井優香の名前の隣にはQのマークがつき、全日本選手権の出場が決まった。「全日本ではもっと本番を楽しんで滑れるように」。後悔のない演技ができた先には、きっと最高の形があるはずだ。永井にとっても、そしてそれを見守る人々にとっても最後の全日本選手権。その舞台での演技からは目が離せない。
(記事 岡すなを、写真 アフロ/JSF)
SP『⻩昏のワルツ』にて
FSで伸びやかなスケーティングを見せた川畑
上品な白をベースとし、上半身はカラフルで華やかな衣装で登場した川畑和愛。FSのプログラムは昨シーズンからの継続で、ステファン・ランビエールさん振り付けの『夢二のテーマ』。 前日のSPでは転倒してしまい「フリーでしっかり決めたい」と話していた冒頭の3回転ルッツ-3回転トーループの連続ジャンプを着氷。二本目が回転不足ながらも、直前の6分間練習で確認して「フリーでは自信を持って跳べた」と振り返る通り、一本目のダイナミックなジャンプから勢いを失うことなく全体としては流れのあるものだった。続いて両手を上げて跳んだ3回転ルッツは途中で回転が開き1回転になってしまい、悔しそうな表情を見せる。演技後は「絶対にしちゃいけないミスだった。NHK杯でも全日本でも二度と同じことを繰り返さないように。」と振り返った。演技後半の3回転サルコーでは、片手を上げて跳ぶことで加点を狙ったが四分の一回転足りないという判定を受けた。ジャンプでのミスはあったもののそれぞれの要素の間でのリンク全体を大きく使った濃厚な繋ぎが演技構成点の高評価に繋がったのだろう。一蹴りでよく伸びるスケーティング、上半身の美しく大きな動きを生かした緩急のメリハリのあるステップ。複雑なターンを丁寧にこなし、加点を得た。レイバックスピンののち、音を正確に捉えてポーズを決めると曲が盛り上がる演技後半へ。アップテンポな曲に合わせてスケーティングのスピード感も増していく。重心を下にして力強く滑ったり、軽やかにホップしたりと特徴的な振り付けのコレオシークエンスでは出来栄えを表すGOEで大きく加点された。終盤の二つのスピンでは安定した回転速度とスムーズなポジション変更で、最高評価レベル4を獲得。演技後はやや曇った表情で下を向いた。 3回転フリップ、3回転ルッツの転倒、回転不足などジャンプにやや苦しみ、フリーのみでは97.62点で9位だったが演技構成点では全体3位という好成績を残し、昨年全日本選手権のメダリストとしてさすがの表現力を見せた川畑。例年と異なる環境のなか始まった今シーズンはまだまだ続く。3週間後に控えたNHK杯、シード権を持つ全日本選手権では技術面でも表現面でもさらに洗練された演技が見られることだろう。
両者とも満足のいく出来ではなかったが、表現面では圧倒的な魅力を放ち、スピンでもしっかりとレベルをとるなど実力を見せつけた。永井が今大会で6位になったことにより、シード権を持つ川畑と共に、早大から女子シングルで2名が全日本選手権の代表に決まった。川畑は、まず、NHK杯で今大会の反省点を生かし悔いのない演技ができることを期待したい。そして、永井は「ブロック(大会)のときも正直ショートのときからダメかもしれないと思っていた」と語るように、決して絶好調とは言えないシーズンでも現役最後の全日本選手権への切符を掴みとった。スケート人生集大成の大舞台へ向けてあと少し、最後まで永井の輝きを見届けたい。
(記事 中島美穂、写真 アフロ/JSF)
※掲載が遅くなり、申し訳ありません
結果
▽東日本選手権女子
川畑和愛 5位 155.97点(FS 97.62点)
永井優香 6位 154.20点(FS 106.33点)
▽東日本選手権男子
石塚玲雄 8位 153.92点(FS 98.64点)
コメント ※石塚選手に関しては後日、別の記事でインタビューを掲載します。
永井優香(社4=東京・駒場学園)
――全日本出場おめでとうございます。今日の感想を教えてください
ひとまず、次につながるということでホッとしています。
――ショートが終わって、ギリギリといえばギリギリというところで滑るという緊張感はどうでしたか
もちろん、順位のことで緊張していないといったら全く嘘にはなるんですけど、今まで、2年前くらいまでは3位までしか行けないという時もあったので、それに比べたらやることをやれば大丈夫かなと思っていたし、もしもここで終わったとしても後悔しないように最後まで頑張れたらそれでいいんじゃないかなというふうに思っていたので、結果的にいけることになったのでよかったんですけど、そこまで重く考えることなくやりました。
――いつ終わってしまうかわからない中で大会に出るということは怖いというか勇気のいることというか心が安定しないのかなと思うんですけど、その辺に関してはどうですか
うーん。そうですね。色んな想定していたので。ここで終わるパターンとか。ブロックの時も正直ショートの時からダメかもしれないと思っていたくらいなので、ここまで来れてよかったなというくらいの気持ちでやっていました。
――リンクサイドで目頭、顔を抑える仕草?が遠くから見えたのですが
いや、全く今日はそういった感情はなかったです。ただただ疲れたという感じでした。
――泣いているのかなと思いました
今日は泣いてないです。よく泣いているんですけど。今日は全然泣いてないです。
――全日本の出場が決まりました
一回一回の練習や、練習以外の私生活もスケートのこと考えて、これから先人生を振り返った時あの時あーしとけばよかったと思わないように日々大事に過ごしていきたいなと思っているのと、全日本ではもっと本番を楽しんで滑れるように練習は厳しいこともあるかもしれないんですけど、本番のためにやっていけたらなと思います
――今まではいかなきゃいけない、越えなきゃいけないという気持ちが大きかったと思いますが、本当に表現とか演技力の部分といったようなところにもより一層力が入りますよね
本当に泣いても笑っても最後なので、やるしかないかなという感じです。
――嬉し涙を流せるように頑張ってください
流せるといいんですけどね。なかなか難しいけどがんばります。
川畑和愛(社学 1=沖縄・N 高)
――フリーの演技を振り返っていかがでしたか
最初のコンビネーションジャンプは自分の中でいいものが跳べたかなと思うんですけど、ループで失敗してしまってそのあと立て直せずに練習の 1 番悪いのが出てしまったかなと思っています。
――昨日、3 回転 3 回転のコンビネーションを初めとあと一回成功させたいとおっしゃっていましたが何か意識は変えましたか
今日の身体の動きっていうのが自分ではあまり良くなくて、それは分かっていたのでしっかりと身体を動かして氷の上に上がれて、練習からコンビネーションジャンプは少しずつ良くなっていたので、フリーでは自信を持って跳べたと思います。
――この東日本選手権の次が NHK 杯ですが、それまでに改善したい点はありますか
まずは、本番で滑るときに自信を持てるように練習から本番のつもりで、ジャンプもしっかりとクリーンなものを決めていけるようにしていきたいで す。
――緊張はありましたか
今日は結構緊張していたほうだと思うんですけど、6分間(練習)からそれはコントロールできていたかなと思ったんですけど、ループの失敗で身体が余 計に硬くなってしまったかなというのはあります。
――東日本選手権での収穫はなんですか
やはり 1 番は、ループとかは自分が自信を持って決められるジャンプの一つなので、絶対にしちゃいけないミスだったかなって思って。NHK杯でも全日本でも二度と同じことを繰り返さないように今日のことをしっかり反省して次に生かしたいです。
――大事な試合が続いていきますが、意気込みを聞かせてください
練習が本番に繋がるようにしっかりと練習から集中して本番の意識を持ってやっていって試合で自分のできることを出し切れるよう頑張ります。