関東を拠点にする大学生スケーターたちが一挙に集う本大会。初日に行われた7、8級クラスでは、女子に永井優香(社3=東京・駒場学園)と小室笑凜(スポ1=東京・開智日本橋学園)が、男子には石塚玲雄(スポ2=東京・駒場学園)がそれぞれ出場して滑りを披露した。
永井優香は白地に夜空のような青色のグラデーションが裾に広がる衣装に身を包み、鈴木明子さん振付の「白夜を行く」を初披露。冒頭、観客を世界観に引き込むような振りからスタート。最初のトリプルトーループートリプルトーループの得点源の連続ジャンプを綺麗に着氷。大きな歓声が上がる。しかし続くルッツジャンプは6分間練習では高さのあるものを成功させていたが本番では回転が抜けてしまい、キックアウトと得点が入らず。次の要素のフライングキャメルスピンは今回久しぶりに構成を変えて臨んでいる要素。「今までのだとレベル4がとれない」ということでドーナツスピン(キャメル・サイドウェイズ)の姿勢を追加してレベル要件を満たせるように。今までより姿勢変更の回数が増えたことで、今回はその分スピン中にもたつく様子が感じられたが今後は洗練されていくに違いない。演技後半、ダブルアクセルを流れの中で着氷するとそのままホップしてステップシークエンスへ。全体にゆったりしたテンポの曲ではあるものの、ターンが細かく入った繊細なステップを情感たっぷりに演じた。ステップの最後、良いアクセントとなっている5回転のツイズルから間をあけずチェンジコンビネーションスピンへ。こちらもレベルを確実にとるために新たに足を上げる姿勢(アップライト・サイドウェイズ)を加えた形で披露した。プログラムの最後はお馴染みのレイバックスピンでフィニッシュ。この「白夜を行く」は永井に非常に似合ったプログラムで、本人も「この曲が好き!」と強い思いを持って選んだ曲。今回も十分魅力ある演技だったが、永井は「まだ全然自分の思い描いているものとはかけ離れている」と言う。完成した演技のお披露目を期待したいところだ。
永井の上品な美しさは健在だ
初めてインカレに出場した小室笑凜はシルク・ド・ソレイユより「O」を新しいSPとして披露。リンクサイドに多くの選手が集まり、大きな歓声や応援が湧き上がる独特の雰囲気で、「緊張してしまった」と演技後振り返った。かたくなってしまったか、トリプルトーループを両足着氷、トリプルサルコーは途中で開いてしまい2回転に、アクセルも1回転になってしまい、後半のジャンプ2つが無得点とミスが相次いだ。しかしリンクを前後に進みながらも左から右まで大きく使い切ったステップシークエンスではスケーティングスキルの向上が垣間見えた。また短い時間でレベルを狙いに行くようなスピンの構成を組んでいるためか、つなぎの部分での表現に余裕が見える形に。特に羽ばたくような大きな腕の使い方が印象的で、小室が「O」を選んだきっかけの1つである鈴木明子さんのプログラムに近いものが感じられた。「壮大に、ダイナミックに、駆けていくようなプログラムにしたい」という言葉の通り、身体を大きく使ったスケールの大きい動きをしようという気持ちが伝わった。この「O」はもともと、様々に姿を変えるプールを舞台にところどころで炎を効果的に使用し迫力あふれるパフォーマンスを行う、シルクドソレイユの中でも歴史がある大人気のサーカスである。小室の衣装も2色の青地に、炎が絡みつくようなデザインでまさに舞台を具現化したようなもの。本家と同じくらいに、観客を楽しませる演技をこれから楽しみにしたい。
インカレデビュー戦を飾った小室
石塚玲雄が演じたのは、おなじみの1曲「Per Te」。「実はもうこれが最後の「Per Te」だった」と語ったように、競技会で披露する最後の機会となった。大歓声の中笑顔で滑り出し、曲の世界観に入り込んで始めのポーズを取った。持ち前の伸びやかなスケーティングで滑らかに加速していく。最初に挑んだトリプルルッツでは惜しくも転倒したが、次のトリプルトーループートリプルトーループの連続ジャンプは着氷。トリプルジャンプを2つ繋げる、難易度の高い構成に果敢に挑戦した。柔軟性を生かしたポジションをスムーズに移動するスピンは、この日も観客を存分に魅了した。アクセルジャンプが抜けてしまうミスはあったが、「感謝の気持ちを込めながら、でも表現の方もしっかり切なさとかも出していこうと思って演技しました」と明るい表情で話した表現面は、一段と深みを増した感動的な仕上がりとなった。歌詞や音楽の緩急に合わせ、感情を指先にまで乗せて舞った。プログラムの最後を飾るスピンを終えると、余韻をたっぷりと残しながら滑走を終えた。演技後は「今一番課題なのが本番でどう決めるかということ」と口にした。「今日とか少し緊張と雰囲気に少し飲まれてしまった感じはある」と分析しながら、「緊張感とかも含めて、それがあるからスケートって楽しいんだな、って思えるようにしたい」と前向きに話した。さらに、「全日本に出てフリーを滑るというのはもう当たり前」とも落ち着いた口調で語る。昨年、全日本選手権出場の目標を見事果たした石塚。次の試合以降使用予定だという新ショートプログラムにも注目が集まる中、今後の活躍から目が離せない。
気持ちを込めて丁寧に演じた石塚
これからの早大フィギュアをけん引していくことが期待される3選手。夏を経て、今後どのように輝いてくれるか楽しみだ。
(記事 青柳香穂、犬飼朋花、写真 犬飼朋花、小出萌々香)
※掲載が遅くなり、申し訳ありません
結果
▽女子7.8級
永井優香 3位 53.04点
小室笑凜 29位 28.97点
▽男子7.8級
石塚玲雄 8位 48.63点
コメント
永井優香(社3=東京・駒場学園)
――今日の演技振り返っていかがでしたか
久しぶりの試合だったのと、初めて披露するプログラムだったので緊張はしたんですけれどもまあ1回目の割にはまだ良かったなと思っています。
――ジャンプに関してはいかがでしたか
練習では最近少しずつ良くなっている点も多かったのでそのまま本番に繋げたいなと思っていたんですけどやっぱりなかなか本番は難しくて足が震えてしまって、その中で3回転+3回転が決まったことは大きかったなと思います。
――スピンの構成が変わりました
今までしばらく変えていなかったんですけど、フライングキャメルの方は今までのだとレベル4がとれないのでちょっと練習してみようと思ってやってみたのと、コンビネーションの方は今まで先生に認定されづらいポジションだと言われていたので、他に良いのがないかなと思って多くの方やっている姿勢を発見したので練習し始めたんですけどまだ下手くそなので。でもあれが回れれば1番効率的にレベルが取れるかなと思います。
――表現の面に関してはいかがでしたか
練習の時ビデオを撮ってもらってそれを見返したりするんですけどまだ全然自分の思い描いているものとはかけ離れているのでこれから少しずつ良くしていきたいなと思います。
――新しいプログラムですがこの曲に決めたのはどうしてですか
前からすごく曲がいいなと思っていたんですけれども、1番初めは町田樹さんがエキシビで滑っていてそのときに衣装が凄い特徴的で、どういうお話なんだろうと気になっていたのとすごく良い曲だなと思って。そのあと樋口新葉ちゃんもエキシビで滑って良い曲だなと思っていて。今年の冬のインカレ(日本学生選手権)の時期にインフルエンザになってしまったんですけど、そのときに時間ができたのでドラマを観てみようと思って観てみたらすごいハマってしまって。この曲が好き!と思ってこれにしました。
――振付はどなたですか
鈴木明子さんです。
――新しいプログラムはどういうイメージで滑りたいですか
ちょっと難しいんですけど、これはドラマの方の白夜行で私はまだドラマの方しか観ていないんですけど、それを観た自分の感想がすごく複雑で言葉にならないような感情なので、表現するのは難しいんですけど、自分の感じているものを出したいなと思います。
――次の試合はいつになるでしょうか
夏にどこかの試合に出ようかなと思います。
小室笑凜(スポ1=東京・開智日本橋学園)
――今日の演技振り返っていかがでしたか
ショートを滑ったのが半年ぶりだったのとみんなの応援がすごいっていうのがあって緊張してしまったんですけど、振り返ると結構練習でやっていた通りにはあんまり上手くいかなかったので、今後本番でどうするかっていうのがちょっと考えていかなきゃなと思いました。
――初めてのインカレでしたが雰囲気はいかがでしたか
すごく色んな人が応援してくれるし、それで自分も頑張るぞっていう気持ちにはなるんですけど、逆に見られているっていう気持ちもあってそこで集中する難しさというのがあるかなと思いました。
――新しいプログラムですがなぜこの曲を選びましたか
もともとシルクドソレイユの「O」が結構好きで、鈴木明子さんが以前に滑っていたのを見て、素敵だなと思って、私も滑ってみようかなという感じで選びました。
――振付はどなたですか
私が今教わっているコーチでもある重松先生です。
――どういうイメージで滑りたいなと思っていますか
壮大に、ダイナミックに、駆けていくようなプログラムにしたいなと思います。
――素敵な衣装ですがどのように決めましたか
ほとんど衣装の方が考えてくれて多少自分でも記事とか長袖とかどうするか決めたんですけど、センスがあまりないので衣装の方にいつも頼んでいます。
――今1番練習していることはなんですか
シーズン近くではないので、スケーティングを中心にやっていて、あとはジャンプにクセが結構強かったので今はジャンプの基本の形とかただ立つだけでも骨盤の位置とかずれちゃっているのでそこから、本当に基礎の基礎から直している状態です。
石塚玲雄(スポ2=東京・駒場学園)
――本日の演技を振り返っていかがですか
一番率直に思うのは、練習でやっていることが本番で決められなかったなっていう感じです。
――力を入れて練習してきたことがあったのでしょうか
ジャンプをシングルからトリプルまで、回転数は変わるんですけど同じジャンプを跳ぶことを意識して練習してきました。トリプルでも4回転でも特別なジャンプではなくて、全部同じ種類のジャンプなんだと意識づけるためというのもあって。
――6分間練習で綺麗な連続ジャンプを跳んでいましたが、そういった部分で効果は感じられていますか
練習では効果は感じられていますし、まあこれからどんどん良くしていければいいんですけど、今一番課題なのが本番でどう決めるかということなので、これからどんどん本番強くなれるように力をつけたいと思います。
――プログラムを持ち越した理由はなんですか
ショートプログラムの作成が間に合わなかったので今日「Per Te」で滑ったんですけど、実はもうこれが最後の「Per Te」だったので、それもあって本当に感謝の気持ちを込めながら、でも表現の方もしっかり切なさとかも出していこうと思って演技しました。
――大学に入って2年目のシーズンを迎えますが、目標はありますか
全日本に出てフリーを滑るというのはもう当たり前なんですけどそれ以上に、緊張感とかも含めて、それがあるからスケートって楽しいんだな、って思えるようにしたいと思っています。今日とかは少し緊張と雰囲気に少し飲まれてしまった感じはあるんですけど、それもスケートの魅力というか、緊張して試合迎えるのもスケートの楽しいところなんだなっていうのを、どんどん自分で出していきたいと思います。