【特集】シンクロナイズドスケート、世界で活躍するワセダ

フィギュアスケート

※この取材は5月11日に行われたものです。

シンクロナイズドスケート世界選手権に出場した、早稲田フィギュアスケート部に所属する2人の選手の対談を行った。対談は終始和やかな雰囲気で行われた。

対談は終始和やかな雰囲気で行われた

――まず、シンクロナイズドスケートを始めたきっかけを教えてください

佐々木 わたしは5歳から中学3年までフィギュアのシングルをやっていました。神宮のスケートリンクに所属しており、そのリンクにシンクロのチームがあると聞いて、高校生になってから入部しました。

斎藤 シンクロってあまり知られてなくて、わたしもそうだったのですが、高校3年のときに誘われて始めました。

――次にシンクロナイズドスケートの魅力を教えてください。

佐々木 1人じゃなくて16人で一緒に滑るところです。1人のときとは迫力も一体感もスピード感もやはり違うのでおもしろいです。

斎藤 やはり1人だと表現が限られると思いますが、大人数で演技することで色々な表現ができたり、それこそ迫力が出るのでそこが魅力だと思います。

――シーズン中の練習状況について教えてください。

佐々木 シーズン中はほぼ毎日です。

斎藤 氷上は週3、4であとは陸上トレーニングです。

佐々木 氷上は他の選手もいるので使用時間が限られるため、貸切が難しいので、陸上でもトレーニングしてみんなで合わせ練習せたりします。

――世界選手権前の練習では何か変化をつけたりされましたか。

佐々木 月一くらいのペースで合宿を長野でやってました。世界選手権直前には二泊しました。

佐々木 合宿で詰め込みます。

――お互いの出会いは?

佐々木 小学3年生ごろからですね。

斎藤 シングルでずっと一緒にやってました。

――コーチは同じですか?

斎藤 違いますが、神宮に通ってる子はだいたいみんなお互いに把握してました。

――次は、斎藤選手から佐々木選手、そして佐々木選手から斎藤選手の他己紹介をお願いします。

斎藤 年齢的にはわたしが上ですが、スケートを始めたのは佐々木選手が先で、チームでも引っ張ってくれる存在です。やはりチームを辞めてしまう子もいるのですが、そんな中でもチームをまとめてリードしてくれる存在です。

佐々木選手 斎藤選手は上手なので以前から知っていて、一昨年チームに入って来てくれて嬉しかったし、陰で努力する人です。高校も同じだったので、いい意味で距離が近いです。

斎藤 スケートだと上下関係がないんですよ。だから友達みたいな関係です。

――では相手選手の魅力は何ですか。

佐々木 前から思っていたのは、スピードがよく出ることと、膝をよく曲げて滑るところが魅力だと思います。樋口豊先生にずっと習っていて、そういうスケーティングはいいなと思います。

斎藤 もちろんスケーティングは綺麗だし、演技全体をまとめるコントロール力があります。

――さらに、相手選手の尊敬するところは何ですか

斎藤 やはり年下だけどみんなを引っ張ってくれるところ。あと落ち着いているところかな。チーム内でも人間関係で色々あるのですが、一番冷静ですね。

佐々木 斎藤選手は場を明るくしてくれます。いつも笑顔で、暗い気持ちも表に出しません。

――お二人は普段リング外でどんな感じですか。

斎藤 わりとそのままだよね。

佐々木 リンクの方がお互い真面目な気がします。

――それでは、世界選手権についてお伺いします。まず先程合宿に行かれたというお話をしていただきましたが、合宿ではどのような練習をなさったのですか

齊藤 まず演技の調整というか、やっていくごとに「あれ、おかしい」というところが出てくるのでそれを良くするため、または滑りを良くするために毎回変えていきます。そして合宿の最後のあたりは表情や顔の向き、パフォーマンス系を鏡の前でひたすら細かくやったり。

佐々木 4人でとか。

齊藤 あと、最後は通しを一気にやります。

――その通し練習は一度に何回ほど通すのでしょうか

2人 5、6(回)とか?

齊藤 ショートとフリーを、ショート5(回)、フリー5(回)?

佐々木 フリー4(回)?

齊藤 フリー4(回)か。ショート5(回)フリー4(回)くらいを一気に通して。

佐々木 一気にがっとやって。

齊藤 それが恒例行事みたいな。

佐々木 恒例ですね。

齊藤 野辺山のリンクは酸素が薄いのですが、そこでやってみたいな感じです。

――ショートの演技を振り返っていかがでしたか

齊藤 全日本(全日本選手権)の時に結構いつもより点が出て。今年はいつもと違ってわりとスピードが出て迫力のある感じのプログラムだったので、いつもよりいいんじゃないかと思っていました。(世界選手権で)思ったよりは点は伸びなくて、でも内容的には最初のピボッティングが最高のレベル4を取ることができて、

佐々木 毎年その技がレベル4はとることができなくて、ほかの海外チームもとることのできるチームは少ないんですけど。

齊藤 レベル4取ったのが3つとか。わりとプログラム的にはよかったんですけど、ひとつウィールがレベル1になってしまってそことかMEの取りこぼしとか。

佐々木 小さいミスがちょっとあったので、技のレベルを取ることができたところもあるけど取れなかったところもあったので、トータルで普通に落ち着いたというか。でも演技的には悪くなかったと思います。

――ショートとフリーでプログラムのイメージががらっと変わりますが、二つの演じ分けについてコーチから言われていたことやチーム内で話し合っていたことはありますか

佐々木 あるね。「ショートは動物になれ!」とか。

2人 「あなたはゴリラ!」とか。

――フリーはどのようなことを言われていたのですか

齊藤 フリーは優しい笑顔でって。

佐々木 終始笑顔って感じで。あとちょっと曲調が変わるところは、楽しそうにという感じで。

佐々木  滑り方をもっと元気にみたいな。

齊藤 フリーはノーハンドの所がすごく明るいテンポになっていくんですけど、最初が優しい感じから入って曲が変わったところで明るくという。でもまあ全体的にフリーは前を向いて明るくというようなイメージの曲なので、そういうところは意識して滑りました。

――フリーの演技を振り返っていかがでしたか

佐々木 転倒が出てしまったところはすごく残念だったのですが、いつも心配だったリフトとかがちゃんとできたというところはよかったなと思います。

齊藤 私が直前にデススパ(デススパイラル)を失敗していたのですが 、本番ではリフトもデススパもうまくいきました。ノーハンドの所で転倒はあったのですが、その後もすぐに戻って。全体的には今の実力を出すことはできたのではないかと思います。

――順位についてはいかがでしたか

齊藤 目標が11位で、昨年が12位だったんですよ。それで今回が13位でした。12位以上というのは結構高い目標なんですけど、そこを目指していて。それでフランスと2点差で、それに転倒の2点で勝てたかな、勝てなかったかなとかあったんですけど、それも含めて今の実力だったので13位でも落ち込む順位ではない。

佐々木 海外のチームもどんどんレベルが上がっていて、それに追いつききれていない。

齊藤 海外はリンクも多いし、練習時間もあるし。

2人 環境がいいからね。

佐々木 その中で昨年より順位を上げるということはすごく難しいことなので。

齊藤 これが妥当な結果だったのかなと思います。

――今お話にも出てきた海外チームについてですが、試合で印象に残ったチームはありますか

齊藤 私はまずロシアのパラダイスという本当に強いチームがあるんですけど、ショートがすごく良い演技だったのですが、フリーでリフトが一個失敗して、そこが印象に残ったというかびっくりしました。優勝するものだと思っていたので。

佐々木 いつも失敗しないので。

齊藤 シングルと同じで、絶対に(失敗)しないロシアというような感じなので。あとはMarigold Ice Unity(フィンランド)が今回優勝したのですが、フリーが最初から本当に完璧で取りこぼしがないというか、全部が迫力もあるしちゃんとレベルもとっていました。あんな風になれたらなと思いますね。

佐々木 私はスウェーデンのチームサプライズというところです。やっぱりスウェーデンで開催されたので、周りのお客さんもすごく応援していたし、チームも今まで以上に練習してきたと思うので、気合の入り方が違いました。演技でも 絶対にミスしないというのが見えてかっこよかったです。

齊藤 日本人の木内(千彩子)さんという方がサプライズでやっているんですけど。

2人 もうあこがれだよね。

齊藤 なんか最後に真ん中で人を回す見所があるんですよ。世界ワールドの広告みたいなものにも載っているくらい有名で。

佐々木 すごいよねー。

齊藤 かっこよかったね、あれは。

佐々木 かっこよかったです、あれは。

――今、国内でシンクロに力を入れ始めているところがありますが

齊藤 愛知とか。

――それを見て素人からしてもすごいな、と思ったのですが

齊藤 私たちもそうなっています。

――そうなのですね。そういう動きについていかがですか

佐々木 そうですね、愛知が急に、しかも愛知の連盟が主催して。それで多分級も持っている上手い人たちが入っているので、「あ、これは強敵になるのかな」みたいなことをチームで話してたよね。

齊藤 かと言って私たちもやるべき事をやるしか無いので。

佐々木 でもマイナー競技だから、やっているチームが少ないから知られていないという部分もあるし。

齊藤 増えるのは嬉しいよね。

佐々木 増えるのは嬉しいことだし、私たちのやる気も増すし、五輪競技になって欲しいという思いもあるので、そういうチームができるということはだんだん有名になっていって。

齊藤 愛知とかが力を入れたということは、これは五輪に近づいているのかな、とか思っちゃったりして

佐々木 意識し始めているのかなって。

――これからのチームの目標というのはDreams On Iceの後に決めるのでしょうか

齊藤 まだアイスショーに向けてやっているときで。

佐々木 今年のチームの目標もまだだよね。

齊藤 まだだね。

――それでは、最後に今後に向けて一言お願いします

齊藤 やっと今年で少しシンクロに慣れ始めることができました。でもまだまだやっとできたくらいなので、今季は自分が演技の流れを作っていけるようになりたいなと思います。

佐々木 私は今年で4年目のシーズンになるので、やっぱり新しく入ってくる人たちにちゃんと見本となるような、頼ってもらえるような人になりたいです。

――ありがとうございました!

(取材・編集 尾崎彩・糸賀日向子)

(左・佐々木選手、右・斎藤選手)

◆斎藤聖果(さいとう・せいか)

1999(平11)年3月24日生まれ。153センチ。早稲田大学系属早稲田実業学校(東京都)出身。商学部2年。2017年世界シンクロナイズドスケーティング選手権大会出場(12位) 2018年世界シンクロナイズドスケーティング選手権大会出場( 13位)

◆佐々木風珠(ささき・ふうじゅ)

1999(平11)年10月23日生まれ。167センチ。早稲田大学系属早稲田実業学校(東京都)出身。政治経済学部1年。2017年世界シンクロナイズドスケーティング選手権大会出場(12位) 2018年世界シンクロナイズドスケーティング選手権大会出場( 13位)