ことしも、フィギュアスケートの季節がやってきた。全日本選手権(全日本)出場への最初の関門であるブロック大会。東京ブロックのシニア女子は、32人中上位13人が東日本選手権への出場権を獲得できる。今季は他のブロックから移行してきた選手も多く、激戦必至。初日のショートプログラム(SP)、早大の松嶋那奈主将(スポ4=東京・駒場学園)と永井優香(社1=東京・駒場学園)はいずれも万全の出来とはいかなかったが、表彰台を狙える位置につけた。
夏は2大会に出場し、実戦の中で課題と向き合ってきた永井。完全復活へ向けた本当の戦いが幕を開けた。まずは、冒頭のコンビネーションジャンプを基礎点6.4点のトリプルループ―ダブルトーループから基礎点8.6点のトリプルトーループ―トリプルトーループに変更。高得点を狙い、3回転―3回転の成功にこだわった。3回転―3回転の中では最も基礎点の低いコンビネーションではあるが、勢いの落ちないダイナミックなジャンプで会場を沸かせた。しかし続くトリプルループは抜け、「ジャンプを跳ぶことに精一杯になってしまって、他の部分がおろそかになってしまった」と語るように演技構成点も伸びず。50点台に乗せることはできなかった。それでも、1位との差はわずか1.62点。あすのフリースケーティングでの逆転優勝は射程圏内だ。
永井は連続3回転ジャンプを跳び観客を魅了した
ラストシーズン、全日本出場への思いは誰よりも強いが、松嶋は「今できることをやって乗り切ろう」と平常心で今大会に臨んだ。練習時同様、SPでは自慢のジャンプが決まらない。得点源であるコンビネーションジャンプは2つ目のトーループがダブルに、トリプルループは着氷が乱れた。だが、松嶋にとってこれは想定内。『Only time』最大の見せ場であるステップシークエンスで挽回する。ジャッジ前での柔らかな笑顔でその始まりを印象づけると、体を大きく使い、緩急をつけた振り付けで壮大な音楽の世界に溶け込んだ。ジャンプのミスを強化してきたスケーティングや表現面で補い、混戦の中45.13点で7位スタート。ことしの松嶋はジャンプだけじゃない。見る者にそう感じさせる新鮮な2分50秒だった。
松嶋は進化した表現を見せた
3回転―3回転を決めた永井、ステップで実力を発揮した松嶋。シーズンの本格化に合わせ、共にスケーターとしての新たな顔をのぞかせた。昨季は共に表彰台に上った二人だが、松嶋も3位とは3.5点差につけており、今大会でも早大コンビでのW表彰台は十分に狙える。最高のスタートを切り、それぞれの特別な1年へとつなげたい。
(記事 川浪康太郎、写真 中井彩夏)
結果
▽シニア女子SP
松嶋那奈 技術点24.53点 演技構成点20.60点 計45.13点(7位)
永井優香 技術点24.36点 演技構成点24.80点 計49.16点(2位)
コメント
松嶋那奈主将(スポ4=東京・駒場学園)
――最後の全日本選手権(全日本)に向けた第一歩でしたが、特別な思いはありましたか
全日本にはいきたいのですが、今のところ練習してきていてきょうのような仕上がりだったので、今回は今できることをやって乗り切ろうという気持ちで臨みました。東(東日本選手権)に合わせてミスしないように練習していきたいと思っているので、きょうは楽しく滑って悔いなく終われればいかなと思っていました。きょうの出来はまあまあという感じだったので、あしたもこのままの気持ちで楽しく滑りたいです。
――実戦間隔が空きましたがどんな調整をしてきましたか
ジャンプの確率が悪かったのでジャンプを強化して、スピンもより速く、1個1個かたちをきれいにということを意識してきました。スケ―ティングも強化して、表情も柔らかくなるように練習してきました。
――ジャンプを振り返って
きょうは勢いが足りなかったので、1個目で詰まっちゃって2個目を3回転から2回転に変えたのはいい判断だったかなと思います。ループはまだ全力でいけなくてひるんでしまったので、東では自信を持って跳びたいです。
――ジャッジ前での笑顔が印象的でしたが
一番そこがアピールできるところだったので、ジャンプのミスを補えるように表現面をしていこうということで笑顔で滑りました。
――衣装が新しくなりましたがこだわりはありますか
特にないです(笑)。先生がこれと言ったのでそうなりました。
――あしたのフリーに向けた意気込みをお願いします
あしたもまだまだ練習からしたらいい状態ではないので、今できる限りのことをして、楽しく悔いなく全力で滑れればいいなと思っています。
永井優香(社1=東京・駒場学園)
――3回転―3回転(ジャンプ)決まりましたね
はい。夏の大会が終わった時点で(東京)ブロックから3(回転)-3(回転ジャンプ)を入れられたらいいなと思っていました。そこが入ったのはよかったかなと思います。
――連続ジャンプが決まったのが良い感じだという印象を受けたのですが
3(回転)―3(回転ジャンプ)を降りることのできる回数は1か月の間で結構増えてきました。でも、まだ跳べないときは全然跳べなかったりして、怖くなってしまうとその貸切の時のジャンプが全部だめになってしまったりするので、コンスタントに跳べないと本番で自信を持って跳べないかなと思います。
――ジャンプの調子があがってきた要因は
はっきり言ってあまり分からないんですけど、アップで良い感じの状態に仕上げられるようになったかなという感じがしています。氷上でも動けるなという感じがするのが増えてきたのかなと思います。
――きょねん苦しんだ分そういった発見があるのですね
身体の調子がきょねんに比べると良い感じがしています。
――前の自分に戻りつつある感じですか
まだルッツもコンスタントに跳べていないのでまだまだ全然なんですけど、少しずつできることが増えてきているので一歩一歩いけたらなと思います。
――フリー(スケーティング)で進化させたところはありますか
フリー(スケーティング)は特に変わってないですけど、少し振り付けも手直ししてもらいました。(振り付けを)変えたばっかりでちょっと不安な部分もあるんですけど、少しでも発揮できたらいいなと思います。
――関カレ(関東学生フィギュアスケート選手権)からどのような部分を強化してきましたか
8月にも試合が2つあってどんどんシーズンに入っていくので、早く跳べるようになりたいなと思ってそんなに焦らず、でも少しでも良くなれるようにいろいろなことに気をつけて練習してきました。
――きょうの試合で表現面はいかがでしたか
きょうははっきり言って6分間(練習)であまり調子があがらなくてすごく焦ったまま自分の順番になってしまいました。それでジャンプを跳ぶことに精一杯になってしまって、他の部分がおろそかになってしまったかなという印象があります。