伝統の一戦を彩るエキシビションに、中塩美悠(人通3=広島・ノートルダム清心)が登場した。練習拠点を兵庫県に置く中塩だが、この日は早大スケート部フィギュア部門を代表して新横浜のリンクへ。新ショートプログラム(SP)を披露し、満員の観客からの大歓声を浴びた。
滑り終え、リンクサイドに並ぶ仲間たちに照れたような笑顔を見せた中塩。実は演技直前、靴ひもがほどけるという思わぬアクシデントに見舞われていた。その影響から、この日はトーループが2回転、ループとアクセルが1回転に。いつものダイナミックなジャンプで会場を沸かせることはできなかった。しかし、中塩の魅力はジャンプだけではない。美しいレイバックスピンとコンビネーションスピン、そしてこれまでとはまた一味違う繊細なステップで視線を一点に集めた。「一つの作品を観たような、あっという間に終わるようなものを目指してやっています」。昨季までの明るくはつらつとしたプログラムから一転、洗練された大人のスケーティングがその言葉を裏付けていた。今季のSPに選んだ曲は『Time to Say Goodbye』。さらなる進化を目指し、1年かけて『作品』を磨いていく。
しっとりとした演技は中塩の新境地だ
今季の初戦は、約3週間後に迫った関東学生フィギュアスケート選手権。この日も応援に駆け付けた松嶋那奈主将(スポ4=東京・駒場学園)、永井優香(社1=東京・駒場学園)と共に7、8級女子の表彰台独占を狙う。「全日本(選手権)に出る」という最大の目標への第一歩。今度は照れ笑いではなく、最高の演技で最高の笑顔を見せてくれることだろう。
ビールマンスピンでは観客から歓声が沸き起こった
(記事 川浪康太郎、写真 冨田千瑛、藤岡小雪)
コメント
中塩美悠(人通3=広島・ノートルダム清心)
――いつもと違う雰囲気の中での演技でしたが、いかがでしたか
せっかく来たのでちゃんとやりたかったんですけど、最初に一瞬滑ったときに「あ、ひもほどけてる」と思って。(ひもを)くくり直したんですけど、「選手準備してください」と言われてもう何も出来ませんでした。調整したんですけど、ジャンプ1本目跳んで、ああこれダメだと思いました。でもせっかく滑らせていただいているし、新ショートプログラム(SP)だったので、ちゃんと演技しようと思って演技はしました。スピンとかする度に(アイス)ホッケーの人がわーってなってくれたので、それはフィギュアスケートの試合では無い雰囲気だったと思いました。
――今回のプログラムの使用曲は何でしょうか
『Time to Say Goodbye』です。初めてアメリカの先生に振り付けてもらって、選曲もしていただきました。
――プログラムの見どころは
今回はジャンプとか全然入っていなかったんですけど、このプログラムはジャンプとかスピンとか全部含めて一つの作品みたいに作っていただきました。だから1個(ジャンプで)転んだりパンクしたりしたら演技が途切れてしまうような流れるプログラムです。今まではじけるような元気なプログラムばっかりだったので、一つの作品を観たなみたいな、あっという間に終わるようなものを目指してやっています。
――表現面で気を付けていることはありますか
今回のコラムに詳しく書こうと思っているんですけど、今まで強い曲をやってきた分、優しい曲をやるのに慣れていなくて、強すぎる演技になってしまうことが多いです。それをすごく先生に指摘されるので、強すぎる演技にならないような強弱の加減がすごい難しいです。
――フィギュアスケート部門の選手がたくさんリンクサイドにいらっしゃっていましたがなにか言われましたか
「靴がゆるいんじゃけど」って言ったんですけど、「大丈夫大丈夫、みんな応援してるから」と言われました。そういうのも楽しいなと思いました。
――次の試合の予定は
たぶん関カレ(関東学生フィギュアスケート選手権)なので、次はちゃんと靴ひもをしめて出たいなと思います。
――今季の目標を教えてください
今季は五輪の枠の争いが女子はすごい激しいんですけど、それを狙って今までジュニアで出ていた人たちがシニアに上がってくると思います。そしたら推薦の6人っていう訳にはいかなくなってくるので、全日本に出場するのがすごい大変だと思います。まず全日本に出ることが目標です。
――次の試合の目標をお願いします
関カレはSPなので、このプログラムをしっかり滑りこみたいです。あと3週間ほどなので、完ぺきにはできないかもしれないけど、試合になるくらいには完成させたいです。今全然跳べていないという訳じゃないので、ちゃんとアクシデントがないように事前に準備して、最初が一番下なのでここからどんどん上げてもっと今より良いプログラムをできるようにしていきたいです。