節目の10回目を迎えたアクアカップ。ショートプログラム(SP)とフリースケ―ティング(フリー)を1日で滑る過密スケジュールの中、早大の山野井英未(国教2=千葉・渋谷教育幕張)がホームリンクで結果を残した。SP、フリー共に昨季の得点を上回り、いずれも2位。優勝候補・船迫麗愛(千葉経大付高)には及ばなかったものの、シニア女子最年長らしい大人びた演技で魅了した。
午前中に行われたのは、今季好調を維持しているSP。エントリーした4名のうち、唯一の大学生である山野井は最終滑走で登場した。ガラリと変わった会場の雰囲気。まずは冒頭の3回転サルコウ―2回転トーループを決め、この日も好スタートを切る。2つ目のジャンプも降りると、『黒い瞳』の荘厳な音楽に乗せ伸びやかなスケーティングを披露した。しかし、慎重になりすぎたという3つ目のアクセルジャンプはシングルに。最後は代名詞となりつつあるレイバックスピンからのフィニッシュで締めたが、会心の笑顔を見せることはできなかった。
滑り慣れたSP。次戦では自己ベストを狙う。
SPの約5時間後に行われたフリー。疲労が残る中、淡いピンクの衣装に身を包んだ山野井は、昨季から継続のプログラム『アーティスト』を演じた。前半3つのジャンプを確実に決めると、ここからは全身を使って抜群の表現力を発揮する。バレエジャンプなどを組み込んだ明るくはつらつとした動きから、繊細でしなやかな振り付けまで。曲調の変化に合わせ幅広く舞うその姿は、まさに氷上の『アーティスト』。さらに後半のジャンプでは、構成を変える攻めの姿勢を見せる。これまでは最後に跳んでいたループを後半の冒頭に入れ、3回転に挑戦。なんとか着氷すると、ラストは両手を上げた2回転フリップからシングルアクセルへのジャンプシークエンスを決め、見事全てのジャンプを降りてみせた。渡米前最後のフリー。目標の80点には届かなかったが、「心を込めて踊れました」と、納得の表情で演技を終えた。
フリーはこれでしばらく見納め。観衆を引き込む4分間だった。
ジャンプの安定感が増すなど、昨季からの確かな進化を証明した山野井。来月、ついに留学前最後の大会を迎える。早大に新風を巻き起こしたスーパーヒロインは、有終の美を飾ることができるのか。「ノーミスの演技でアメリカに行きたい」。8月、新たな船出に華を添える、最高のラストスケ―ティングを見届けたい。
(記事 川浪康太郎、写真 杉田陵也、村田華乃)
2つの銀メダルを掲げる山野井(右)
結果
▽シニア女子SP
山野井英未 2位(36.70点)
▽シニア女子FS
山野井英未 2位(70.64点)
コメント
山野井英未(国教2=千葉・渋谷教育幕張)
――今回の大会全体の感想をお願いします
ジャンプが回転不足になってしまったり、曲がってしまったりしてジャンプ自体は完璧ではないという感じでしたが、全体を通して目立つミスはなかったし、楽しく思い切りできたので、悔いはないです。
――今回の大会に向けてどのような練習をしてきましたか
全部のジャンプを降りて、パンクせずに思い切りやることが目標で練習してきました。
――まず、ショートプログラムを振り返っていかがでしたか
前半の2つはまあまあ大丈夫だったのですが、最後の1個でちょっと慎重になり過ぎて1回転になってしまったのですごく悔しかったです。
――表現面はいかがでしたか
体も結構動いていたと思うので思い切り踊ったつもりです。でもフリーの方が心を込めて踊れました。
――フリーのジャンプ面についてはいかがでしたか
曲がってはいたのですが、とりあえず立てたことはよかったなと思っています。終わった後先生がガッツポーズじゃないけど、そのようなことをやってくれたので、全体としてはよかったかなと思います。
――ショートプログラム、フリーともに去年と同じプログラムでしたが、去年と比べて成長したところや、意識していたことなどあれば教えてください
昔ほど緊張して練習通りできないということはなくなってきて、だんだん練習に近いものができるようになってきました。冷静にできるようになってきたおかげで全体的に点数も前よりは上がるようになってきたし、完成度は上がったかなと思います。
――今回ショートプログラムとフリーを1日で行う日程でしたが、大変だったことや工夫したことはありましたか
全然スケートとは関係ないのですが、先週は課題とかプレゼンで練習があまりできなくて睡眠不足が続いていて、急に試合直前になって練習をがーっとやったので、朝からすごい脚が疲労していて、かなり筋肉痛とかがあり、疲労回復のためにいろいろ工夫しました。
――最後に、次の試合に向けての意気込みをお願いします
次の試合は留学前本当に最後のSPになるので、やっぱり目標はジャンプを回転足りてきちっとばしっと決めて、ノーミスの演技でアメリカに行きたいです。