熊田、表現力で魅了し笑顔の引退!

フィギュアスケート

 シーズンの締めくくりとなる交流戦、バレンタインカップ。この試合を最後に現役から退く4年生スケーターも多く、選手同士の温かい声援が飛び交う中で競技が行われた。早大からは小林里紗(社3=東京・三輪田学園)、木村遥香(文1=群馬・中央中教校)、土橋美菜海(国教1=ドイツ・インターナショナルスクールオブデュッセルドルフ)、そして今大会で引退となる熊田のぞみ主将(文構4=神奈川総合)が出場。

 1級女子の小林は、「ジャンプが全て思うように決まらなかった」と表情を曇らせる。最初のコンビネーションジャンプは何とかバランスを保ったものの、次のルッツ、最後のフリップ-トーループでは軸がぶれてしまい失敗。それでも手の先まで意識した丁寧な滑りが功を奏し、6位に入った。

来季は熊田から主将を引き継ぐ小林

 5・6級女子の木村は、先月の日本学生氷上競技選手権(インカレ)以降、スピンを入念に調整してきた。その成果が現れ、終盤でも失速せず美しいスピンを披露。一方ジャンプでは、得意なはずのルッツとフリップで体が開いてしまい回り切れない。得点源での取りこぼしが響き、結果は11位となった。同じく5・6級女子の土橋は今季を通して、2つのダブルアクセルを入れることを目標にしてきた。練習での調子もよく満を持して臨んだが、序盤の1本目では転倒。焦りが出て2本目もシングルとなってしまう。しかし、「残りのジャンプをきれいに決めよう」と気持ちを切り替え、後半の連続ジャンプは流れ良く降りた。インカレではスピードが出なかったステップでも、大胆かつしなやかに舞う。持ち前のスケーティング技術が光り、5位につけた。

 会場全体から大きな歓声を受けつつリンクに上がった3・4級女子の熊田。ところが、音源がかからないという思わぬアクシデントに見舞われ、数分間氷上で待機することに。一時は動揺するも、「それが演技に影響することはなかった」と4年生らしい落ち着きを見せた。今回、熊田はプログラムを一新。『オペラ座の怪人』のメロディーに乗せて演技をスタートさせると、冒頭のルッツ-ループを着氷。そこで気持ちに余裕が生まれ、豊かな表現につながった。特に中盤での足を高く上げたスパイラルや、体を大きく使ったステップは秀逸で、見る者を曲の世界に引き込む。アクセルでのミスや滑走中につまずいての転倒などがあり14位に終わったが、随所で持ち味を発揮し、笑顔で競技生活に幕を下ろした。

感慨深げな表情で最後のポーズを決める熊田

 「『これだけ練習したんだから』という思いで、悔いなく楽しんで滑ることができた」と熊田。その姿勢は後輩たちにも伝わったことだろう。初めて尽くしのシーズンだった木村と土橋は、「きょうの演技を糧にしてどんどん修正する」(木村)、「試合の雰囲気を知ることができたので、次はもっと良い演技ができるようにしたい」(土橋)と来季への意気込みを語る。次期主将の小林も、「普段から120パーセントの練習をしたい」と気合は十分だ。たゆまず努力し本番を楽しむ心を熊田から受け継ぎ、早大スケート部フィギュア部門の選手たちはこれからも躍進を続ける。

(記事 又坂美紀子、写真 後藤あやめ)

結果

▽1級女子

小林里紗 6位


▽3・4級女子

熊田のぞみ 14位


▽5・6級女子

木村遥香 11位

土橋美菜海 5位

コメント

熊田のぞみ主将(文構4=神奈川総合)

――きょうの試合を振り返って

まさかあんなところで、何もないところで転ぶとは思っていなかったので、それがとても残念なのと、あと何よりも、音源がかからなくてそこでとても焦って。本来は予備音源というものを別媒体で用意して、すぐ出せるようにしておかなければならないのですが、それが今回できていなくて。「まあいいか」と思ったときに限ってこういうことが起きるんだなと、次、もうないんですけれども、この経験を生かして、さぼることのないようにしたいなと思います。

――最初の音源トラブルというのは心理的にも影響しましたか

今回はあまりなかったですね。(曲が)かからないこと自体に「どうしよう」と思ったのですが、それで演技がどうこうっていうのは今回なかったです。

――11月の交流戦から曲を変えられましたが、その練習はいかがでしたか

いま思えば、やはりもっと曲をかけてもっと練習しておけばよかったと思うんですけれども、変えたこと自体はよかったなと思っています。私は実は変えることにそんなに乗り気ではなかったんですが、先生の勧めに従って変えたらやはり気分転換にもなりましたし。前の曲はそれだけ思い入れもありますけれども、悪い思い出とか嫌な思い出とかもあるので、(曲を)変えて一新して、最後引退できたのはよかったかなと思います。

――きょうのジャンプで一番うまくいったものは何ですか

冒頭のルッツ-ループですね。最近あまりジャンプの調子がよくなくて、転んでばかりだったので、最初決まったのは、そのあと余裕を持っていけたかなと思います。

――表現面で心がけたことはありますか

先生が、表現力を打ち出しなさいということで踊るパートをたくさん入れてくださったのですが、踊る前のアクセルジャンプでバタバタしてしまったので、そこに思うように表現できなかったのがすごく残念です。

――ホームリンクでの試合はやりやすいですか

そうですね。いつも練習している環境でできるので、氷の硬さとかも同じですし、天井の低さとか明るさとか、そういうのも全部含めてやりやすかったです。

――今季はどんなシーズンでしたか

私は3年間しか競技をやっていないんですけれど、その中でも一番練習したし、一番いろんなことがあったシーズンでした。いままでは発表会という気持ちで試合に出ていたのですが、今季はやっぱり夏休みも練習したし、「これだけ練習したんだから」という思いで、悔いなく楽しんで滑ることができたシーズンだったかなと思います。

――きょうで現役最後の試合となりましたが、やはり感慨はありますか

ありますね。やっぱり滑る前にみんながうわーっと応援してくれたのが本当にうれしくて、もう滑る前から泣きそうでした(笑)。でもあまり考えすぎるのはやめようと思って、先生にも、「自分がうまく滑ろうと思うから緊張するのであって、そうではなくて人をいかに感動させられるか(が大切)だ」という風に言われたので、それで肩の力が抜けたというのもありました。

小林里紗(社3=東京・三輪田学園)

――きょうの試合を振り返って

ジャンプが全て思うように決まらなかったので、ちょっとそこが悔しいです。

――11月の交流戦からの調整で、心がけたことはありますか

スケーティングを基礎から見直して、滑りをもっときれいにしていくことです。それからフリップとルッツをきれいに決めるというのが目標だったんですけど、きのうまで割と調子よく決まっていたのに本番で失敗してしまったので、そこがこれからの課題です。

――最初の連続ジャンプについてはいかがですか

微妙に失敗しました。流れが止まってしまったので。合計3回のジャンプは最初がループ-トーループ、次がルッツ、最後がフリップ-トーループです。

――今季はこの試合で締めくくりとなりますが、シーズン全体を振り返っていかがですか

本番ではいつもの練習の通りにはいかないので、普段から120パーセントの練習をして、試合では100パーセントの力を出せるようにすることが大切なのかなと思いました。

木村遥香(文1=群馬・中央中教校)

――きょうはどのような意気込みで臨まれましたか

シーズン最後なので、集大成となればと思って臨みました。

――調子はいかがでしたか

全然自分の力が出せなかったと思います。自分でわかるのですが、足がふわふわしている感じがあり、氷をつかめていない感じがしました。とても悔しいです。

――緊張などはありましたか

この大会はとても楽しいので、逆に緊張がなさすぎちゃったのかなという感じですね。

――インカレからはどのように調整されましたか

インカレのときは思ったよりもスピンができませんでしたが、スピンの回転速度や同じポジションで回る練習を何度もしたので、スピンに関してはインカレよりは良かったと思います。

――スピン以外の技術面を振り返っていかがですか

普段はあまりしないのですが、パンク(回転数が減ってしまうこと)がちょっと起きてしまいました。焦ってしまって、前に前に気持ちが行ってしまいました。そこは反省しています。

――特に悔いの残ってしまったジャンプは

ルッツとフリップです。いつもその2つは決まって他が決まらないくらい得意だったので、悔しいです。

――逆に上手くいったと思うジャンプは

ループは苦手だったので、それが試合でできたというのは心の支えになりますし、アクセルも一応転ばずに済ませることができたので良かったです。

――表現面の方はいかがですか

応援してくれる人がいると自然と笑顔になれますし、楽しめました。でも、ジャンプのミスで焦ってしまって、手の先までの神経があまり気をつけられなかったなと思います。

――衣装を変えられたと思いますが

前の衣装が首のところがきつくて動きにくいと感じることがあったので、少し大きめの衣装に変えました。

――今シーズンを振り返っていかがですか

大学生になったら出たいと思っていた試合にたくさん出られて、良い経験をさせてもらって、ワセダのスケート部に入って本当に良かったと思えるシーズンでした。

――今後に向けての目標をお願いします

とりあえずまずは関カレ(関東学生フリースケーティング選手権)があるのですが、それに向けてきょうの演技を糧にしてどんどん修正して、良い演技ができるように頑張りたいです。

土橋美菜海(国教1=ドイツ・インターナショナルスクールオブデュッセルドルフ)

――きょうはどのような意気込みで臨まれましたか

きょうは主将の先輩が最後の試合ということで、インカレでは目標にしていたダブルアクセルが2つ入れられなかったので、きょうに向けてダブルアクセルを2つ入れることを目標にしてきました。

――そのダブルアクセルはいかがでしたか

練習では最近調子が良くて、きょうはできるかなと思ったのですが、最初のアクセルを失敗して動揺してしまいました。2つ目もシングルになってしまったので、少し悔しいです。

――コンビネーションジャンプは上手くいったように見えましたが

アクセルを失敗してしまったので、残りのジャンプをきれいに決めようと思いました。

――後半は安定した滑りでしたね

最初にアクセルで転んでしまって焦ってしまったので、落ち着いてジャンプを全部成功させようと思いました。

――一番上手くいったジャンプは

これが上手くいったというのはないのですが、インカレのときと比べて、最後滑っているときに余裕があって、楽しく滑れたので良かったです。

――表現面を振り返っていかがですか

最初の方はアクセルを跳ばなければならないという思いでいっぱいで、表現の方は少し劣ってしまったかもしれません。しかし、最後は落ち着いてできたので、楽しく滑ることができました。

――後半の滑りは緊張がほぐれたというのが大きかったですか

そうですね。やっぱり自分の一番課題にしているジャンプを最初に持ってきていて、他のジャンプは自信をもって跳べるので、安心してできました。

――試合直後には悔しい表情も見られましたが、ご自身の演技の評価は

練習ではできていたものが本番でできないのが本当に悔しくて…。私の中で先輩の引退試合では絶対に跳ぶと決めていたので悔しかったです。

――今シーズンを振り返っていかがですか

全部の試合が私にとって初めてだったのですが、試合の雰囲気がどのような感じか知ることができました。次試合に出るときに今季よりももっと良い演技ができるようにしていきたいです。