東日本選手権 10月25-27日 テクノルアイスパーク八戸
10月25―27日にかけて、八戸のリンクで東日本選手権が開催された。本大会は全日本選手権の選考会を兼ねており、男女それぞれ上位5人に入った選手のみが全日本選手権に進むことができる。早稲田からは3人の選手が出場し、ベストを尽くした。会場に緊張感が漂う中、実力を発揮した2年生の山田琉伸(人通2=埼玉栄)が全体4位に入り、初めての全日本選手権進出を決めた。
★シニア女子SP
最初に出番を迎えたのは、今年で3年連続の東日本選手権出場となる4年生の木南沙良(人通4=東京・日大一)。「SP、FS共に笑顔で終わりたい」という目標を掲げて臨んだ。落ち着いた様子でスタートポジションにつき、柔らかな表情で滑り出す。3回転サルコウからのコンビネーションを含む3本のジャンプは、回転不足を取られたものもあったが、いずれも滑らかに着氷させ、安定感が光った。後半のステップシークエンスは、全身を大きく使い強弱をつけながら滑っていく。「自分の武器として大事にしている」という演技力を存分に発揮。キスクラで「楽しかった」と言葉にした通り、『To Love You More』の優しい音にぴったりな、幸せあふれる笑顔で演じた。点数は41・59点で15位。FS進出を決めた。
続いて登場したのは、今回が初めての東日本選手権となる1年生の穂積乃愛(人通1=東京・駒場学園高等学校)。緊張した面持ちで位置についたが、音楽がかかると笑顔で滑り出した。冒頭のコンビネーションジャンプは小気味よく着氷。残りのジャンプは着氷後、姿勢が少し傾いてしまったものの、「練習通りのタイミングで跳ぶことができた」と、順調に得点を重ね、難易度の高い構成を大きなミスなくまとめ上げた。ジャンプをすべて終えて迎えたステップシークエンスは、伸びやかさとエネルギッシュさを兼ね備えた滑りを見せる。全日本選手権がかかる大舞台だが、全日本を気にしすぎず、「とても楽しんで滑ることができた」と笑顔を見せた。51・86点で4位。
★シニア女子FS
東日本選手権最終日は女子FSの試合が行われ、まずは木南が出番を迎えた。静かにたたずむようにスタートポジションにつき、『New Cinema Paradiso』の音楽がかかると同時にふと顔を上げて切なげな表情で滑り出す。前半は静かな曲調に合わせてしっとりと滑り、その中でも確実にジャンプを決めていった。後半には曲調が激しいものに変わっていく様を、加速するスピンで表現。その後のコレオシークエンスは木南らしく、情熱的かつ感動的に演じた。得点は80.55点のシーズンベストを記録。SPとFSの合計では122・14点で12位と、過去最高の順位に入った。「(SP、FSとも笑顔で終えるという)目標を達成できた」と喜んだ一方で、「まだまだ伸び代がある」と前を見据えた。
最終グループで登場したのは穂積。冒頭のジャンプは決めたものの、続くジャンプで転倒。「絶対に失敗してはいけない」という気持ちが強く出てしまったといい、気持ちがかみ合わなかった。その後すぐに立て直し、得意のスピンも安定した美しさを見せるが、演技後半2本続けて3回転が抜けるミス。緊張からか力んだジャンプが多くなってしまった。それでも滑りの美しさは健在。会場からの手拍子に背を押され、メリハリのある音楽に合わせてダイナミックなステップを披露した。演技後は氷上でうつむき、「東日本に向けて強化してきたものが中々発揮できないまま終わってしまった」と涙をこぼした。FSの得点は86・12点。SPとFSの合計は137・98点で9位。目標としていた全日本選手権への出場は叶わなかった。
★シニア男子
シニア男子の競技に出場したのは、同じく今回が初めての東日本選手権となる山田。「全日本に行くことだけを考えて練習してきた」という山田にとっては、今大会は確実に好成績を上げなければならない大会だ。『戦場のメリークリスマス』の静かなメロディーに合わせて、腕を大きく使いながら滑っていく。後半のコンビネーションジャンプは、1本目の3回転ルッツがやや堪える形になったものの、3回転トーループをつける意地を見せ、3つのジャンプをいずれも予定通りに成功させた。直後に激しさを増す音楽に合わせ、山田の滑りも情熱的なものに切り替わる。感情が迸るようなステップシークエンスを終え、最後は片手を掲げてフィニッシュ。演技後はほっとしたような表情を見せた。点数は58・64点で全体3位につけた。
翌日行われたFS。山田は最終グループで出番を迎えた。「終始ガクガクだった」といい、緊張した様子でリンクに上がった。今シーズン、冒頭は毎回3回転アクセルに挑戦していたが、今回は確実性を取り2回転アクセルに変更。その分完成度が求められることになるが、見事にこれに応え、次々とジャンプを成功させた。後半は3回転ルッツでステップアウトし、コンビネーションにすることができなかったが、最後のジャンプに3回転トーループをつけてリカバリー。転倒したものの、リピートを回避し、着実に得点を積み重ねた。ボーカルが入り力強さを増す音楽に負けることなく、丁寧な滑りを見せる山田。最後のスピンにもやや乱れが出るなどベストな出来とはいかなかったが、それでも堂々とした滑りで112・95点を獲得した。SPとFSの合計は171・59点で全体4位。シニア一年目にして、全日本選手権の切符を掴んだ。「(全日本が)決まった瞬間は安堵と嬉しさで自然と涙を流してた」と語った通り、緊張の中でも強さを見せた。
(記事、写真 荘司紗奈)
※掲載が遅くなり、申し訳ありません結果
▽シニア女子
穂積乃愛
SP 4位 51・86点
FS 10位 86・12点
総合 9位 137・98点
木南沙良
SP 15位 41・59点
FS 11位 80.55点点
総合 12位 122・14点
▽シニア男子
山田琉伸
SP 3位 58・64点
FS 5位 112・95点
総合 4位 171・59点
コメント
木南沙良(人通4=東京・日大一)
――今大会の目標と、どのような点に力を入れて練習してきたか教えてください
スピンやステップ、表現面により気持ちを込めて練習してきました。評価していただくことが増えてきた面でもあるので自分の武器として大事にしています。
――SP、FS振り返ってそれぞれいかがですか
SP、FS共に笑顔で終わりたいという目標を達成できたことが嬉しいです。スピンやステップでの評価がもらえた一方、どちらもジャンプの回転不足や転倒、スピンの取りこぼしがあったので、まだまだ伸び代があると捉えています。
――SPは演技中も演技後も笑顔が印象的でした。どのような気持ちで滑っていましたか
練習の時から演技を楽しめるようになっていたので、本番も楽しく滑ることができました。踊ることが好きなのでステップでは特に表情に出ていたのかなと思います。
――FSはシーズンベストを更新しました。点数についてはどう考えていますか
去年シーズンで1番悪い結果になってしまった東日本という舞台で、シーズンベストを出せたことは成長した点かなと思いました。まだまだ取りこぼしが多かったので、また練習を重ねさらに点数を伸ばしたいです。
――今シーズン残りの大会に向けて、意気込みを教えてください
国体予選、インカレ、国体と試合が続くので、スピンやステップを強化しつつトリプルを安定させたいです。毎試合笑顔で終われるよう、練習を積み重ねます!
穂積乃愛(人通1=東京・駒場学園高等学校)
――今大会に向けて、どのような点に力を入れて練習してきましたか
プログラムの繋ぎでジャンプを確実に跳ぶことを強化する練習に意識して取り組みました。もしミスをしても次のジャンプは必ず決める、ミスをしてもそれを引きずらないような練習をしてきました。
――SP、FS振り返ってそれぞれいかがですか
オーバーターンなど細かなミスはありましたが、SPは練習通りのタイミングでジャンプを跳ぶことができました。自分自身、とても楽しんで滑ることができたのでそこも良かったと思っています。FSは絶対に失敗してはいけないと言う気持ちが強く出てしまい、やや慎重になってしまった印象があります。いつも転ばないようなジャンプで転んでしまったり、ミスも多く、東日本に向けて強化してきたものが中々発揮できないまま終わってしまいました。
――全日本選手権のかかる大舞台で、プレッシャーも大きかったかと思います。演技中や演技後の心境を改めて教えてください
SPはあまり全日本を意識しないでただ楽しむことだけを考えて滑れたのですが、FSはSPの順位もあってか、絶対にミスをしてはいけないという意識が強くなりすぎてしまいました。演技後は気持ちの整理が中々つかず頭が真っ白だったのですが、先生方にたくさん励ましていただけたり、今後について一緒に考えてくださったおかげで今はしっかり前を向けて練習に取り組めています。
――今シーズン残りの大会に向けて、意気込みを教えてください
毎試合で自己ベストを更新していけるように頑張りたいです。少し先の話にはなりますが、来年は確実に全日本に出場できるよう、1年かけてしっかり準備していきたいと思っています。ひとつひとつ積み重ねて着実に成長していけるよう、まずは目先の大会を全力で頑張ります。
山田琉伸(人通2=埼玉栄)
――今大会に向けて、どのような点に力を入れて練習してきましたか
ひたすら仕上げる、細かいところまで点を取りに行く、ジャンプの確率をあげる練習をしてきました。
――SP、FS振り返ってそれぞれいかがですか
ショートは落ち着いて、今できることができたと思いますが、フリーは緊張しすぎて、全然納得いく演技ではありませんでした。
――演技後はほっとしたような表情も見えました。全日本選手権のかかる大舞台でしたが、緊張はありましたか
僕はショートが苦手なので、ショートが全日本いけるかどうかを決めると思っていました。その中でショートをミスなく終えて、フリーでのいい滑走順を取る事ができました。フリーは、第3グループの追い上げもあり、とても緊張していました。普段は何本かジャンプを飛ぶとリラックスできるのですが、今回のフリーは終始ガクガクでした。
――改めて、全日本選手権進出が決まった直後の心境を教えてください
今年は全日本に行くことだけを考えて練習してきたので、どうなるかと思いましたが、点数出て決まった瞬間は安堵と嬉しさで自然と涙を流してました。
――全日本選手権に向けて、意気込みをお願いします
初めての全日本、満足のいく結果で終われるように、全力で頑張りたいと思います。また、今回全日本にいけなかった、チームメイトや同大学のメンバーの分まで頑張りたいと思います。