【連載】『令和2年度卒業記念特集』第14回 岩田悠一朗/少林寺拳法

少林寺拳法

誰よりも部のために

 「人生の軸になる」4年間だった。岩田悠一朗(人=埼玉・川越東)は自身の部活生活を振り返り、そう表現した。昨年度、全日本学生大会2連覇という快挙を果たした早大。二度の日本一を経験した岩田は、その貴重な経験をはじめ、部活生活を通して困難や問題を解決してきたことが、今後の人生の指標になると力強く語った。

 少林寺拳法に出会ったのは高校入学時。はじめは入部するつもりはなかったものの、部活体験でその魅力に引き込まれ、この道に進むことを選んだ。個人スポーツでありながらチーム力が大切になるこの競技は、1人が強ければ勝てるわけではない。全体を俯瞰することの大切さを学びながら、岩田は少林寺拳法にのめりこんでいった。

  主将に抜てきされたときは、「部を引っ張っていくことへの責任を感じていた」と言う。1人でも欠けると優勝できないため、チーム一丸となって自分も含めた全員で勝つことを大切にしていた。また、前主将である刈屋壮基(人=埼玉・川越東)は高校時代からの先輩でもあり、常に一番近くで背中を見ていた者として、抱えていた想いは人一倍強かったと語った。
そんな岩田は、前主将も大切にしていた後輩指導も全力で行った。次の世代へと系譜を継いでいくために、後輩の自主性を尊重するとともに、上達のために何を強化すればいいのかを一緒に考えてきたと言う。岩田は後輩のために、部のために、誰よりも全力で動き、伝えていくことを心掛けていた。

全日本団体戦で力強い演武をみせる岩田(手前の列、左から二番目)

 コロナ禍で苦労も多かった1年間。大会が中止・延期になったり、順位をつけない形で大会が行われたりと、例年とは異なるシーズンとなった。目標として掲げていた『全日本3連覇』は、順位をつけられないため果たせない目標となってしまった。しかし、目標は叶えられずとも、『早稲田』の名を背負うものとして、その名を轟かせるような行動ができたと言う。岩田はこの1年間を「コロナでも全員で乗り越えることができた。かけがえのない宝物」だと語った。
そして、そんな岩田は主将としての自分を90点だと採点した。大会が思うようにできなかったところはあったものの、やはり部で一丸となって乗り越えてきた1年間は達成感に満ち溢れていたようだ。

 早大少林寺拳法部を支えてきた男は、少し照れながらも主将としての自分を支え、励ましてくれた同期部員への感謝を語っていた。また、これからの少林寺拳法部を担う後輩たちへ、「自分たちもコロナ禍を乗り越えられたという確固たる事実がある。それを糧に部をまとめていってほしい。1人では部は成り立たない。自分ができることを全員がやれば必ずいい部活になる。」とエールを送った。
例年よりも苦しい思いをすることの多かった1年間。そんな1年間でも困難に負けず部のために戦い続けた拳士の姿がそこにはあった。卒業後も競技と関わっていきたいという意思を示す岩田にとって、この部での経験は間違いなく「人生の軸」となり、これから歩んでいく道を照らしてくれるだろう。

(記事 高鳥希実、写真 工藤竜輔氏)