「撃つこと」だけに集中
2017年9月、関東学生選手権秋季大会(秋関)でファイナルに勝ち残り、3位入賞を果たした眞城永稔(教=大阪・高槻)。4年生にして初のメダルを獲得。「ようやく獲れたな」と嬉しい気持ちを表した。そこには眞城の競技生活が垣間見えた。
高校では軟式庭球部に所属していた。ワセダには推薦ではなく一般入学。大学から始めても戦えそうな、珍しい競技を条件にし、それまで縁のなかった射撃部に入部した。「最初は本当に何もわからなかったので練習していくとどんどん伸びていくっていうのが楽しくて」と当時を振り返る。そして、同期の中で一番になろうという思いがあった。上達していくうちに伸びが止まることはあるが、そこから練習をしていけばまた上がると考えることのできる真面目でポジティブな選手だ。
秋関のファイナルでメダルを手にした眞城
だが、2、3年生になると部の仕事が忙しくなった。試合のエントリーを提出したり、宿の予約をしたりする仕事だ。モチベーションが落ち、持ち直せないほどだったという。ただ、「撃つ人が変なことに気をとらわれずに撃つことだけに集中できる環境を作れたらな」と考えるようになった。2年生の終わり頃には、火薬の力で弾を飛ばすスモールボアライフルを持てるようになったことを機にまた頑張ってみようと意気込んだ。初めて撃った伏射は想像以上に当たり、「頑張ればいいところまでいけるんじゃないか」と思えるようになった。親身に教えてくれた先輩の存在も大きかった。
2016年の関東学生選手権春季大会(春関)では50メートル伏射60発部門で604.8点という高得点が出た。次の日本学生選抜選手権ではファイナルへの道も予期していた。だが結果は594.8点。眞城は「ひどい点を撃ってしまった」と共に「緊張もあって」と口にした。緊張したり考えすぎたりすると、力が入ってうまく当たらない。力が入ることが駄目だと分かっていても心の問題であるから上手くコントロールすることもできない。だからこそ、この頃から「とにかく力を抜く」ことを大事にするようになった。一点を目掛けての勝負は、心の動きで左右されやすいのだ。
メンタルスポーツともいわれる射撃。眞城は4年間を通して「忍耐強くなった」と語る。初心者で競技を始め、同期に負けないように努力し続けた。そして部の仕事で部員を支えた。この経験がラストイヤーでのメダル獲得につながったのだろう。今後も射撃を続ける予定で、社会人になってからは「国体とかに出てみたい」と話した。大きな大会で再び、的を撃つ姿をみる日が来るかもしれない。
(記事 成澤理帆、写真 吉岡篤史)