全国から精鋭が集う日本学生選抜大会。ハイレベルな戦いで、高校の先輩後輩にもあたる千葉朔海(スポ3=埼玉・栄北)と田中美沙(スポ2=埼玉・栄北)が入賞を果たし、まさに「すぐりし精鋭」となった。
田中は、50m三姿勢60発部門に出場。本戦では、伏射で自身初の100点台を叩き出す好調ぶりを見せ、1位でファイナルに駒を進めた。迎えたファイナル。ファイナルは、本戦で8位以内に入った選手が出場できる決勝戦で、制限時間内に姿勢を変え、余った時間で試射をしなければならない。本射は、他の出場者と同時に打ち始め、膝射、伏射、立射の順に争い、撃つ時も制限時間が設けられる。後半になるにつれ、点数の低い選手から脱落し、最後まで残った選手が優勝となるサドンデス方式。よりプレッシャーがかかる状況に置かれるため、ファイナルは、普段とは全く違う競技になると言っても過言ではない。田中は、前回のファイナル出場時に、「初めてで立射がきつかった」とこぼしていた。しかし今回は、本戦の勢いそのままに伏射で抜け出し、1位に躍り出る。一時は2位以下を大きく引き離し、このまま逃げ切りたかったが、立射がやはり鬼門だった。終盤は、1発ごとに1位と2位の順位が目まぐるしく入れ替わる。最後は、残り3発の時点で6点台を撃ってしまい、2位に終わった。それでも、試合後のインタビューで、「練習の成果がやっと出たかなという感じです」と、恥ずかしそうに目は下に向けながらも、努力を噛みしめるように言葉を紡いだ。伏射は元々苦手だったという田中。時間をかけて築き上げてきたものが、結果として実った堂々の2位だった。
伏射は元々苦手だったという田中
千葉は、50m三姿勢60発部門と10m立射40発部門に出場。50m三姿勢60発部門では、田中に次ぐ3位という成績を収めた。本戦は、立射で点数が伸びなかったものの、世界レベルの安定感は健在。しっかりと8位以内には名を連ね、ファイナルに進出した。始まる前は「特に何も考えない」と、リラックスした表情で仲間の声援に応えて臨んだファイナル。序盤、点数が伸びない。自身は「銃が止まり過ぎていた」と振り返った。そこで修正できるのがエース千葉。今度は長く狙い過ぎず、早いタイミングで撃つことで点数を伸ばし、じわりじわりと順位を上げる。よりプレッシャーのかかる後半にも関わらず、「立射はみんな(点が)落ちると思ったので」と、試合後に言ってのける姿からは、試合中の強い精神力がうかがえる。その立射で腕の高さを見せつけ、終わってみれば3位。それでも「1位を狙いたかったです」と3位で満足することはなかった。さらに、10m立射40発部門でもファイナルに出場し、こちらでも追い上げる展開となる。一時は下位に転落したが、立ち位置を修正し、最後は3位に食い込んだ。彼女の言葉の所々には気持ちの強さや負けん気が表れる。その性格と自信で、必ずやもっと高い場所へ上り詰めるだろう。
千葉の体幹はコーチからの評価も高い
田中と千葉、それに中里志穏主将(スポ4=埼玉・浦和一女)の盤石トリオで、2大会連続の団体優勝(50m三姿勢60発部門)も果たした女子。修正力の高さが光った大会だった。次の大きな戦いは、学生日本一を決める全日本学生選手権。部としても大事な大会に位置付けている。男子も躍進したいところだ。
(記事、写真 吉岡篤史)
2位3位フィニッシュを決め、笑顔を見せる田中(左)と千葉(右)
結果
【男子50m伏射60発部門】
▽個人
眞城 永稔 572.9点
【女子50m三姿勢60発部門】
▽団体 1714点(優勝)
田中 美沙 577点(1位) ※ファイナル439.7点(2位)
千葉 朔海 574点 ※ファイナル431.4点(3位)
中里 志穏 563点
▽個人
佐藤 史江 534点
【女子10m立射40発部門】
▽団体 1219.9点(4位)
千葉 朔海 412.0点(2位) ※ファイナル222.1点(3位)
末本 佳那 405.4点
加藤 モナ 402.5点
▽個人
毛利 綾花 395.2点
コメント
田中美沙(スポ2=埼玉・栄北)
――本戦を振り返って
膝射の最初を失敗してしまって、そこから、9.9点ぐらいでいいから撃っていこうとしたら、いつも通りに戻ってきました。伏射は、初めて100点を撃つことができて、そこから、きょうはいけるかもしれないなと感じ始めました。立射は、いつも通り9点撃っていけばいいやというぐらいで頑張りました。そしたら、自己ベストが出てました。
――ファイナルはいかがでしたか
春関(関東学生選手権春季大会)でファイナルをやって分かってきて、緊張せず楽しめたのでいいかなという感じです。
――ファイナルでは、伏射で引き離しました
今まで試合してきたなかで、一番調子が良かったです。
――何か要因は感じてますか
SB(スモールボアライフル)を始めた時は、伏射は苦手過ぎてて、練習する時は、必ず伏射から練習していました。やっと練習の成果が出てきたかなという感じです。
――立射はいかがでしたか
立射は、銃が止まらなくて(狙いが定まらない)自分がここだと思って撃っても、全然入らないので(狙いが外れる)そこが今後の課題かなという感じです。
千葉朔海(スポ3=埼玉・栄北)
――本戦はいかがでしたか
立射を失敗してしまって、点数があまり伸びなかったので、次は撃てるようにしたいです。
――ファイナルが始まる前は何か考えていたことはありますか
特に何も考えてないですね。
――序盤は、5.6位にいましたが、調子が良くなかったですか
膝射が、あまりあたらなかったです。多分、銃がすごく止まっていたので、長く見すぎてしまいました。それを反省して、伏射の後半は(長く間を持たないで)すぐ撃つというようにしました。
――立射で追い上げましたね
立射はみんな落ちると思ったので。それでも失敗しちゃったので、1位を狙いたかったです。
――ファイナルの時間制限はギリギリなんですか
そうですね。準備(姿勢の変更)が遅くなってしまうので。その時間のなかで準備と試射をやるとなると厳しくて、そこを練習していかないといけないなと思いました。
――本射の時間制限は気になりませんか
そうですね。
――ファイナルだと、応援の声が大きいですが、それは気になりますか
全く気にならないです。
――10メートル立射40発部門は、暑いなかでの試合でしたが
本当に暑くて大変でした。
――本戦もファイナルも後から追い上げる展開になりましたが、途中で変えたことはありますか
立ち位置を間違えていて、途中で気がついて直したらあたりました。