今シーズン最後の試合となる早慶定期戦(早慶戦)が神奈川・伊勢原射撃場で行われた。伝統の一戦で2年連続の優勝を目指した早大は、3つある種目別団体全てで勝利をおさめ、総合団体優勝を達成。個人でも全種目で早大勢が1位を独占し、文字通りの完全優勝を成し遂げた。
男女混合でチームを組んで競う今大会。3姿勢60発部門には男子部、女子部をそれぞれけん引してきた谷川諒(スポ4=早稲田渋谷シンガポール)、長島遥(スポ4=埼玉・栄北)が出場した。ことし1年、男子部のエースとして各大会で好成績を収めてきた谷川だが、早慶戦で団体戦レギュラーとして出場するのは今大会が初めて。射撃の内容自体は満足のいくものではなかったが見事に優勝を果たし、「今回はちゃんとレギュラーとして撃って役割を果たして勝つことができたので、初めて早慶戦で勝ったような気分ですね」と笑顔で語った。一方、長島も安定した強さを見せ2位に輝く。1年生の時からレギュラーとして活躍してきた長島だがやはり4年生として臨む最後の早慶戦には特別な思いを抱いていたようで、「ことしは4年生のみんなとチームを組んで一緒に試合を戦えて、うれしいとしか言いようがないです」と振り返った。
見事に有終の美を飾った谷川
後輩たちも負けてはいない。立射60発部門では、千葉朔海(スポ2=埼玉・栄北)が621.6点の自己ベストを叩き出し、2位以下を大きく突き放して優勝。さらに伏射60発部門では、来季チームの中核となる眞城永稔(教3=大阪・高槻)、中里志穏(スポ3=埼玉・浦和一女)がそれぞれ優勝、2位入賞を果たした。4年生だけでなく下級生もしっかりと好成績を残した早大は、各部門で慶大を寄せ付けず完勝。今シーズンの集大成を笑顔で飾った。
中里は来季、主将として部をけん引する
今大会をもって4年生は引退となる。金子将之主将(創理4=東京・早実)が「本当に一人一人が意識高く練習や試合に臨んでいましたし、成績自体も大きく飛躍した年になったのではないかなと思います」と語るように、ことしの早大射撃部はチームとして大きく成長し、関東、さらには全国規模の大会で上位校と競りあえるまでに躍進した。その中でも金子をはじめとする4年生の存在感は際立っており、彼らの引退がチームに与える影響は少なくないだろう。しかし競争力を増すチームの中で今季、下級生たちは着実に個々の力を伸ばしてきた。今大会でも多くの選手が自己ベストを更新し、さらなる進化の兆しを見せている。「全員がまだまだ上を目指せる可能性を秘めていると思いますので、自分を信じて取り組んでいってほしい」(金子)、「真面目にちゃんと練習さえしてくれれば結果はついてくる」(谷川)、「もちろんらいねん期待できる」(長島)と、4年生が後輩たちにかける期待も大きい。彼らの期待にこたえるため、そしてことし以上の飛躍を遂げるため、早大射撃部の新たな挑戦が始まろうとしている。
(記事 大庭開、写真 網代祐希)
連覇を達成し、笑顔を見せる部員一同
結果
【10m立射60発部門】
▽団体 1832.1点(優勝)
千葉 朔海 621.6点(個人優勝)
末本 佳那 610.3点(個人3位)
田中 美沙 600.2点
▽個人
北嶋 亮太 594.0点
毛利 綾花 592.9点
橋本龍太郎 590.2点
田曽 雅也 589.2点
藤井 尭彬 587.5点
大岡 海登 582.5点
加藤 勇祐 577.5点
清水 学志 575.3点
波多 秀馬 572.4点
三鍋 亘 570.5点
伊澤 昌平 569.5点
瀬谷 公基 569.0点
岡村 祐生 567.3点
亀山 祥吾 566.9点
池田 佳悟 565.7点
濱本 和樹 560.9点
後藤 樹 551.0点
【50m三姿勢60発部門】
▽団体 1672点(優勝)
谷川 諒 563点(個人優勝)
長島 遥 561点(個人2位)
松尾 悠佑 548点
▽個人
牧野 恭尚 536点
【50m伏射60発部門】
▽団体 1791.1点(優勝)
中里 志穏 605.1点(個人2位)
金子 将之 598.6点
松井 信衞 587.4点
▽個人
眞城 永稔 613.7点(個人優勝)
戸井田勇介 596.3点
佐藤 史江 592.4点
建部 紘男 587.5点
尾花 駿輔 586.3点
守田 慶亮 581.1点
◆総合団体順位
総合団体 5295.2点(優勝)
コメント
金子将之主将(創理4=東京・早実)
――今大会を総括していかがですか
本当に一人一人が最後の最後まで慶大に勝つという気持ちを貫いてくれたと思います。
――4年生として最後の早慶戦でしたが、どのような意気込みで臨みましたか
ことしのチームはやはり一人一人個が強いと思っていたので、自分はいつもどおりに撃つことを心掛けて、そしてチームメイトを信じて撃っていました。
――主将として過ごした今シーズンを振り返っていかがですか
個人的には競技面でなかなか伸び悩むことが多かったですが、そういう経験ができたのも主将だからこそだと感じていますので、本当にやって良かったと思います。
――主将を務める中で心掛けていたことはありますか
一人で悩みこんでしまうことが運営面でも競技面でもあったので、なるべく周りの人に助けてもらえるように自分から発していくようにしていきました。
――今後何らかの形で射撃競技に関わることはありますか
そうですね。今のところ続けようと思っています。学生の射撃はもう終わってしまうので、一般の社会人として大会に個人的に出場するというように考えています。
――主将という立場から見て、今季のチームはどのようなチームでしたか
本当に一人一人が意識高く練習や試合に臨んでいましたし、成績自体も大きく飛躍した年になったのではないかなと思います。
――最後に後輩へのメッセージをお願いします
全員がまだまだ上を目指せる可能性を秘めていると思いますので、自分を信じて取り組んでいってほしいというのと、何か悩むことがあったら自分や先輩たちにたよってほしいと思います。
谷川諒(スポ4=早稲田渋谷シンガポール)
――早慶戦で2年連続の優勝を達成しましたが、今のお気持ちを教えてください
早慶戦に勝てたこと自体は嬉しいです。私は去年、レギュラーとして出ていなかったのですが、今回はちゃんとレギュラーとして撃って役割を果たして勝つことができたので、初めて早慶戦で勝ったような気分ですね。
――ご自身の射撃の内容についてはいかがですか
良くなかったです。点数だけ振り返ってみるとことしの点数とほぼ同じではあるのですが、ことしの後半の全日本(全日本選手権)の時のようにK(膝射)を使って点数を稼ぐことができなかったのでその点で良くなかったですね。S(立射)もそうですが普段からSとKで足を引っ張っていて、そこでいつも最終的な点数が決まってしまうため不安定なところにいるので、そこを最終的に学生の間には解決できなかったのが残念ではあります。
――最上級生として臨んだ今シーズンを振り返っていかがですか
本当はAR(エアーライフル)がもっと当たれば良かったのですが、SB(スモールボアライフル)自体を始めたのがことしからなので、ここまでこれたのは上出来だったのではないかなと思います。僕自身ことしファイナルに5回出たのですが、上級生として、下級生にSB持ってる期間が1年だけでもファイナルの常連になることができるというのは証明することができたので、次は後輩に優勝できるというのを証明してもらいたいところですね(笑)。
――最大の目標に掲げていた全日本学生選手権(インカレ)でのメダル獲得はかないませんでしたが、そのことについてはどのように受け止めていますか
やはり射撃でメダルをとるにはファイナルに残ってかつファイナルで勝たないといけないので、正直いわゆる本選といわれている試合とファイナルというのは別の競技だというのを実感させられて、現状というか前回のインカレの段階では自分はとれなかったんだなと思いました。やはり経験しているファイナルの量が違いますし、慎重にならざるを得ない競技形態でもあるので、私はこれからも競技を続けますが、一般の大会でもファイナルでプレッシャーなく打てるように今後も励んでいきたいと思います。きょう一応メダルはもらえたので、今はそれで我慢しておきたいと思います(笑)
――射撃部として4年間を過ごした中で得たものを教えてください
そもそも(大学入学以前に)射撃をやったことがなくて、射撃の知識や技術は一からだったのでそれらはもちろんですが、やはり知らない業界の人たちと出会えて、例えば同期とかみんなそれぞれ違うことをやっていて、所属している学部も他の部活と比べると傾向が偏ってなくていろいろな人がいて、そういう意味ではいろいろな人脈が広がったなと感じます。それはきっとこれからも生きていくでしょうし僕にとって大切な人たちになっていくと思うので、それは射撃部の4年間で最終的に得ることができたものだと思います。
――最後に後輩たちへのメッセージをお願いします
正直まだまだなんですけど、今後良い点数うちそうだなってやつがたくさんいるので、真面目にちゃんと練習さえしてくれれば結果はついてくると思うので真面目にやることだけを頑張ってほしいと思います。
長島遥(スポ4=埼玉・栄北)
――きょうの三姿勢60発部門を振り返っていかがですか
いろいろトラブルもあってなかなか思うようにはいかなかったですが、とりあえず4年間の集大成の試合が終わって、今ほっとしています。
――最後の早慶戦、どんなお気持ちで臨みましたか
私自身これで引退で射撃をやめてしまうのでその思いをぶつけるつもりで全力を尽くしました。
――優勝という結果でしたが喜びの声をお聞かせください
2連覇することができて、私自身1、2年生のときもレギュラーとして試合に出させていただいているのですがそのときは僅差で準優勝となってしまったので、きょねん勝ててうれしかったですし、ことしは4年生のみんなとチームを組んで一緒に試合を戦えて、うれしいとしか言いようがないです。
――大学での射撃生活を振り返っていかがでしたか
思うことはいろいろありますが、やはり楽しいことだけではなく辛いこともすごく多くて、というのも何度もやめたいなとか才能がないなと思った時期もあったのですが本当に同期の方に支えていただいて周りの支えあってこその4年間だったと実感しているので、4年間終わってみると続けてよかったなと思っていますし、後悔はしていないですし、全部自分の財産になったかなと思います。
――後輩に向けてメッセージをお願いします
1年間、私が指導もしてきたのですが吸収率が良いというか、伸び率が高くていきなり飛躍した選手もいたので、もちろんらいねん期待できるのですが、早慶戦だけではなくてインカレや全日本選抜などの大きな大会で入賞する選手が増えてくるのではないかと思っているので是非あきらめずに、辛いですけど4年間やり通してほしいなと思っています。
中里志穏(スポ3=埼玉・浦和一女)
――きょうの試合を振り返っていかがですか
新人戦で自己新記録を出してから2週間たって少し調子を落としていましたが、その中でレギュラーとして最低限守らなければいけないラインは守れたので、試合内容には点数も含め不服ですが勝てたのでよかったです。
――種目別団体で優勝という結果はどう受け止めていますか
ワセダはことし1年間、男女共に伏射に力を入れて頑張ってきて関東でも全国でも勝てるようになってきたので、そこを考えれば優勝して当然な部分もありましたが、個人的にはあのメンバーで優勝できたのがうれしいです。
――早慶戦に向けてどのように練習に取り組んできましたか
P60(伏射60発部門)という競技は姿勢が一つしかないのでそこに向けて一定の姿勢で撃つとか本当に基本的なところから1から確認しなおして、当日どんな状況でもどんな体調でも撃てるように練習してきました。
――これから主将としてどのようにチームを引っ張っていきたいですか
いろんな学部の人がいて、もちろん今まで部活をやってきた人もいれば大学で初めて部活に入るような人もいて、個性が強くて主張が強いような人もいる中で自分がどういう主将になるかというのはまだ全然先が見えないです。どういう主将が射撃部にとって良いのかというのは全然わからないけれど、記録でみんなを引っ張っていけるような選手になれるのがよいかなと思います。みんなに支えてもらって成り立つような主将かもしれないけれど、最後に中里が主将でよかったと言ってもらえるような主将になれるよう、探りながら頑張ります。
――引退される4年生にメッセージをお願いします。
4年生には本当に競技面でお世話になりました。やはり経験者が少ない競技なので4年生から教えてもらうことはたくさんあって、SBマスターの長島さんとか、自分の練習もあるのにすごく教えてくれたし本当に支えてもらって、ありがとうございました。副将なのに結構やりたい放題やってしまったところも多かったですが、その中で自由にやらせてくれた金子さんは本当に、自分のミスも含めて全部を回収してくれるような主将だったので、ごめんなさいと共にありがとうございました。4年間本当にお疲れ様でした。