全日本学生ヨット選手権大会 10月30日〜11月3日 江ノ島ヨットハーバー

出場選手一覧

10月31日から11月3日にかけて、第90回全日本学生ヨット選手権大会(全日本インカレ)が江の島沖で開催された。早大はこれまで前人未到の総合5連覇を達成しており、今大会では連覇記録の更新に注目が集まった。一方で、前哨戦となる10月の関東学生ヨット選手権では、ライバルの日大に王座を譲る悔しさも味わっている。王者に土が付いたことで、近年まれに見る混戦が予想された今大会。冷たい風が吹き始めた江の島の海で、4日間にわたる熱戦の幕が上がった。

1日目は両クラスそれぞれ3レースの計6レースが行われた。早大は第1レースで早速好成績が出る。重松陽・松山組が470級で、桔川・吉見組がスナイプ級でトップフィニッシュを果たした。スナイプ級では続く第2レースでも桔川・吉見組が、さらに第3レースでは重松陽・畠山組が続け様にトップを奪い、クラス別の総合スコアで1位につけた。しかし、470級ではともに出場する残り2艇の順位が伸び悩み3位に。総合順位では日大に続く2位で初日を終えた。
続く2日目。この日の江ノ島は風に恵まれなかった。長い待機時間の後、スナイプ級ではスタート後にノーレースとなり、470級の1レースのみが行われた。早大は重松陽・松山組が3位、青山・植屋組が5位、安永・長屋組が9位と、3艇とも上位に食い込み、1位を走る日大との差を僅かに縮めた。いい流れを作りながら、大会は折り返しを迎える。

3日目は風の向きや強さが不安定な難しいコンディションの中、両クラス第1レースがノーレースとなり、各3レースで争われた。「(海の状態に)変化のある長いレースの中でも集中力を切らさず最後まで戦い抜くことができた」と、河田大智主将(法4=神奈川・逗子開成)が振り返るように、早大は安定して上位フィニッシュを積み重ねた。悪天候に苦戦を強いられるライバルチームも多く出る中、着実なレースを展開した早大が約70点差を覆し総合1位に踊り出る。チームの勢いは最高潮、総合優勝への臨みをつなぎラストスパートをかける。
運命の4日目。上位2チームの総合得点はわずか2.3点差と、大混戦で迎えた最終日は両クラス2レースが実施された。流れに乗り、優勝まで走り抜きたい早大だったが、第1レースからアクシデントが発生する。これまで470級で好成績を残していた重松陽・松山組が無念のリタイアとなり、日大に再び突き放される展開へと傾く。スナイプ級では重松駿・畠山組が第1レースに今大会3度目となるトップフィニッシュ、さらに後半戦に調子を上げてきた向井・中井組が最終レースで5位につけるなど、最後まで1位の座を守り切った。しかし、大きく開いた日大との差を埋めるには及ばず。全4日間、両クラス合わせ17レースに及ぶ死闘を戦い抜き、早大は総合スコア2位という結果で全日程を終えた。

大会を振り返り、多くの選手が口にしたのが「チームの雰囲気」だった。出足でライバルにリードを許し、追い上げを図った2日目は悪天候によるノーレースで差を縮められない苦しい展開。それでも雰囲気を落とすことなく、チームの勝利を信じて粛々と自らの結果にこだわる姿勢は、まさに王者の精神だった。3日目の猛追を支えたのも、その一体感にほかならないだろう。
一方で、最後まで隙を見せなかった日大に対し、「詰めの甘いところが出てしまった」(河田)と悔しさをにじませた早大。6連覇達成にはあと一歩届かなかった。
「強いライバルと優勝を争った経験は部員にとって大きな財産になる」と関口功志監督(平18人卒=愛知・半田)が語るように、受け継がれてきた王者の精神と、鮮烈な敗戦の悔しさは、彼らのさらなる飛躍へとつながっていくだろう。早大ヨット部の新たな船出を、期待せずにはいられない。
(記事・写真 西川龍佑)
大会後コメント
※本記事では監督・主将のコメントのみ掲載。こちらでその他の出場選手のコメントを掲載しております。ぜひご覧ください。
関口功志監督(平18人卒=愛知・半田 )
ーー今大会を振り返って、総括をお願いします
勝ち切れる力を持ちながら、負けるべくして負けた大会だったと捉えています。結果としては、1つの艇体トラブルが敗因となりましたが、ほかにもトラブルが多く、詰めの甘さが残る大会となってしまったことに責任を感じています。そして、その詰めの甘さは、1年で驚異的なレベルアップをした日大の前では致命的な弱点となってしまいました。
ーー3日目の追い上げ、監督の目にはどのように映っていましたか
これまでの練習の成果を発揮すれば自ずと成績はついてくると捉えていましたので、3日目の追い上げに驚きはありませんでした。ただし、逆境のなかで持てる力を出し切ることは容易ではなく、それを跳ねのけた選手たちを誇りに思っています。
ーー最終日、どのような言葉で選手を送り出しましたか
最終日だから特別にこうするということではなく、練習と同じようにいつもどおりのルーティーンでいつもどおりのパフォーマンスを出すことに集中してほしいと願い、そう伝えていました。それぞれが苦しい場面があっても、その瞬間に自分にできることに集中することができれば、優勝につなげられると信じていました。
ーー今年度の4年生はどのような代でしたか
後輩・チームへの思いが強く、みなまじめで一生懸命な代でした。チームを第一に考える4年生への信頼は厚く、4年生のリードによってチームは一丸となって戦うことができました。470級のヘルムスマンの安永・青山・藤村は、けがや病気で最後の1年間、目一杯の活動ができなかったことが心残りではあります。
ーー最後に早大ファン、部員、関係者の皆さんに一言メッセージをお願いいたします
今年度も多くの皆様にご支援・ご声援をいただき、誠にありがとうございました。今回は非常に悔しい負け方をしたことは残念ですが、強いライバルと優勝を争った経験は部員にとっては大きな財産になると信じています。ヨット部は、長年勝てないところから、悔しさをばねに強くなってきました。改めて、今回の敗戦を糧により強いチームになれるよう部員とともに前進していきたいと思います。
河田大智主将(法4=神奈川・逗子開成)
ーー今の率直なお気持ちをお聞かせください
今は、目標にしていた総合優勝に届かず、この感情をなんと表したらいいかわかりませんが、すごく悔しい気持ちが強いです。
ーー大会全体を振り返っていかがですか
最初から最後まで、チーム全員が一丸となって戦うことができました。1日目と2日目は苦しい展開が続きましたが、昨日(3日目)はトップにしっかり上がることができてよかったです。しかし、最後は船のトラブルでリタイアというのが一番大きな敗因になってしまったので、詰めの甘いところが出てしまったのかなと思っています。
ーー3日目、逆転する展開もありましたが、振り返っていかがですか
3日目はコンディションはあまり良くなく、不安定でトリッキーな海の状態だったので、順位を安定させていくことは難しかったです。しかし、そういった変化のある長いレースの中でも集中力を切らさず最後まで戦い抜くことができたのが、あの追い上げに繋がったと思います。
ーー最終日に向けてどのような意気込みで臨みましたか
今まで通りやろうと、いつも通りのパフォーマンスをすれば後から結果はついてくるという思いでした。また、13レースを終えてわずか2点差というとても面白い展開に、スポーツをやっているものとして楽しんでいこうという話をしていました。
ーー最後に早大ファン、部員、関係者の皆さんに一言メッセージをお願いいたします
1年間、いろんなことがありましたが、最後までチームのことを応援していただき、レース後も「お疲れさま」とたくさん声をかけていただき、感謝しています。本当にありがとうございました。
大会結果
