挑戦の4年間
「終わりのない挑戦」。令和4年度、全日本学生選手権(全日本インカレ)3連覇を成し遂げた早大ヨット部の主将・鶴岡由梨奈(社=東京・立教女学院)は、ヨットという競技を一言でこう表した。主将まで務めた鶴岡だが、一般入試での早大入学であり、大学入学までヨット競技は全くの未経験であった。男女の区別がないヨットという競技に果敢に飛び込んだ、鶴岡の4年間の終わりのない挑戦の日々を振り返る。
3連覇をつかんだ全日本インカレでの表彰式。優勝トロフィーを手に笑顔を見せた
早大を志した理由もヨットとは関係なく、師事したい教授がいたことや、国際色豊かでありスポーツの方面にも強く、何事にも力を入れている大学のカラーに惹かれたためであった。
そんな鶴岡だが、体験入部でヨット部を訪れた際に「こんなにも難しい競技があるのか」と衝撃を受け、4年間をかけて頑張りたいという思いや、女子で未経験というハードルの高さすらも飛び越えようという挑戦心に火がつき、ヨット競技に身を投じることとなる。
ヨットには男女の区別がなく、なおかつ未経験者であったために、身体面、知識面、経験面で劣っていると感じた鶴岡は、いかにそれをカバーしチームに貢献できるかを追求し、時には大学の枠を飛び越えて他大学の女子選手に教えを乞うなど、自分自身の成長を貪欲に追い求めていく。そんな中で、今日できたことが明日再現できなくなるほど細かく変化する自然環境に対応して最適な行動を考え続けることにヨット競技のおもしろみや深みも改めて感じる日々だった。そのような変化についていくための試行錯誤の中で、2年時にペアを組んだ、当時の主将であった松尾虎太郎(令3スポ卒=山口・光)からは、事前の念入りな準備の大切さを学んだ。それまでは才能の塊だと思っていた松尾が、不測の事態に対応するために入念に準備している姿を目の当たりにした鶴岡は、それを機にどれだけ準備をしても十分すぎるということがない、ヨットという競技の奥深さに引き込まれていく。
松尾元主将との写真。松尾は先の全日本インカレにも応援に駆けつけていた
そうして迎えた最終学年。早大ヨット部の歴史で初の女性主将に就任した。スローガンに掲げた言葉は「相互研鑽(けんさん)」。昨年まで在籍していた先輩の引退により競技力の低下が見込まれていたため、学年関係なく全部員一丸で学び合い、ヨット競技ではなかなか見つからないとされている正解をみんなで考えていこうという、これまで周りを巻き込み成長を続けてきた鶴岡らしいメッセージだった。女子であることを特段意識することはなく、勝利のために何が必要かを考え続け、日々噴出する問題に全力で立ち向かっていった。
そして主将となった年、ヨット部としての集大成が、昨年11月の全日本インカレ3連覇達成であった。鶴岡は、「監督、コーチ、OBOGの方々など誰が欠けても成し遂げることはできなかった」と振り返る。お世話になった方に結果で恩返しすることをモチベーションとし、大会期間中も最後までみんなで成長することを意識しながら戦った末にたどり着いた景色は、下級生の頃とは違った特別なものだったという。共に栄光をつかんだ同期、後輩には、「頼もしい仲間がいたからチームのために頑張ろうと思えた」と感謝するとともに、後輩に対しては「新たな歴史をつくってほしい」とし、前人未到の全日本インカレ4連覇への期待をにじませた。
全日本インカレでトップフィニッシュを飾った鈴木義弘(スポ=山口・光)・鶴岡組
いつどこにいてもヨットのことを考え続け、仲間と共に海に入り、チーム全員で戦うという大切な経験をすることができたとして、ヨット部を「青春の場」と表現した鶴岡。卒業後は、ヨット部で学んだどんな状況でも問題に向き合い考え続けていく姿勢を活かし民間企業に就職する。ヨットからは離れることになるが、人生という大航海への「終わりのない挑戦」は続いていく。
(記事 畠山大輝、写真 本人提供)